真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
……その後の話をしよう。擬似的なボルテクス界となった異界が消滅してから俺と結梨ちゃんは無事に元の場所、現実世界にある京都ヤタガラス残党の拠点へと戻って来ていた。
そこはおそらく【アマラ転輪鼓】が設置されていたと思われる施設の中枢部の様だったが、丁度転輪鼓が嵌りそうな形状の機材や土台だけが残されて転輪鼓は存在せず、更にあの【魔人王 コンス・ラー】の姿もどこにも無かった。
「逃げた、いや見逃されたか。……異界消滅に乗じて【龍脈渡り*1】を実行して姿を隠すとか訳の分からない技量してるな。アレは俺でも龍穴を介してか【回帰のピラー*2】が無いと安定して使えないのに」
「……それよりもヤマト、なんかめっちゃマガツヒ出てるよ?」
「あ、やっべHP回復するのを忘れてた。メディアラハンメディアラハン*3」
ただ。結梨ちゃんに言われてから魔神王に斬り裂かれた傷口から
……戦っても確実に勝てない魔人王相手に何とか異界消滅までの十分ちょいを稼ぐ為に会話に集中してたからかね、ここまで初歩的なミスを犯すとは。
「とりあえず素の場所に戻って来れたのだから誰かキリギリスの人とかヤタガラスの人を探して合流しよう。……アオビト、生体反応は探知出来るか?」
『少し待て……発見した、チームDATのメンバーの生体反応がこの部屋から出て少しした先に確認された。合流を推奨』
「じゃあ早く行こっか」
その後は特に何かトラブルが起きる事はなく無事にチームDATメンバーと合流する事が出来た。一応何か罠とかないか気を付けて進んだんだが何もなかったです。
「おお、ヤマトに結梨ちゃん無事だったか、良かった良かった。……異界に取り込まれた時に二人だけ居なくてちょっと焦ったぞ」
「異界構造が以前にヤマトから聞いた【ダアト】に類似する点があったから、何か貴方に関係してるんじゃないかとは思ったけどね。……こっちはキリギリスと帝都ヤタガラスのメンバー総掛かりで、一番怪しかった【魔王城】を攻略してた所よ」
「ザ・魔王城って外見でクッソ怪しかったっすからね。出て来る悪魔は普通に倒せたんすけど、城内のギミックである暴風エリアが鬱陶しいの何のって……風で飛ばされなきゃいけないルートとか面倒極まりないんだが」
「正解のルートを選ばないと初めからやり直しだから思ったよりも時間を食ってしまった。……まあ俺達以外にもそれでもマップ埋めが得意な面子とかリドルが得意な面子を集めて突破したが」
「そうしてボス部屋に居た【魔王 アリオク】【破壊神 チェルノボグ】【地母神 イシュタル】を倒して次の階層に行ける……って所で異界が消滅してここに戻されたんだが。……そっちで何かしたのか?」
どうも話を聞くに向こうは向こうで暴風罠とか暴風罠とか暴風罠とか*4で大変だった様なので、とりあえずヘビクラ体調の指示の下お互いの情報を擦り合わせて現状を把握するべく情報交換を行う事になった。
向こうは異界の【上層】とアオガミが言ってた所に取り込まれたまでは知ってたが、そこが嘗ての【ダアト千代田区】を模した場所になっていて魔王城まであったとは。
「……成る程、そっちでは平均レベル50〜70ぐらいの悪魔が居て、更に異界の核と思われる場所にはレベル80越え悪魔まで居たから、どうにか悪魔狩りでレベルを上げて攻略したと。……良く生き残れたな」
「まあ以前に一度戦った軸の悪魔ばかりだったのが幸いだったんだろう。……ヤマトのレベルが機械式で80超えてて結梨ちゃんも70代とか凄い事になってるが。自己判断だとそれぞれ『レベル78』と『レベル72』だったっけ?」
「レベルだけならヘビクラ隊長と並んだっすね。そんでもって異界の格であったアマラコンピューター? ってのに会って、なんか色々とヤマト達の過去周回について聞いたと」
「それで色々と分かったは良いが、そこに【魔人王 コンス・ラー】なるレベル99のヤベー奴が現れて窮地に陥ったが、異界が消滅寸前なのと相手が転輪鼓狙いという事を突いて口八丁でどうにかした……そんなレベルの奴がいたのに気付けないとか」
「その魔人王とやらは既に転輪鼓を持って行方を眩ませていると……とりあえず他のキリギリスや帝都ヤタガラスに連絡だな。時間の流れが違ったのか現実では30分も経ってない様だが」
それでこっちの事情を説明すると概ね『二人だけで良く生き残れたな』とか『魔人王とはヤバい奴いたのか』って感じの感想になった後、ヘビクラ隊長が異界の消滅に混乱しているであろう他の人達に連絡しながら状況の把握に勤める事となった。
……それから他のキリギリスや帝都ヤタガラスとの連絡は特に問題なく繋がり、少なくとも異界の上層に取り込まれた者達は無事に現世へと帰還出来たのが確認された。
「お前達二人と違って千代田区側に飛ばされた連中は拠点攻略用のチーム単位だったからな。確かに悪魔をそこそこ強かったが、それでも対応出来ないレベルじゃなかった」
「加えて施設攻略用の装備やアイテムを駆使して異界探索や合流がスムーズに出来たからね。少なくとも負傷者重傷者はいても蘇生不可能なレベルの死者は出なかったわ」
「ただ、ここに居た京都ヤタガラス残党に関してはキリギリスがボコって戦闘不能にしたり、或いは拘束したまま異界に取り込まれたので殆どが犠牲になったみたいっすね。流石に連中を守りながら攻略出来る異界じゃなかったので」
「残ってた者達も異界に取り込まれて悪魔に始末されたみたいだな。上手く捕虜にできた者も少数いるが、実質的にここの京都ヤタガラス残党は壊滅したと見ていいだろう」
「他にも石化させたとかで一部生き残ってる者もいる様だから情報はそこから引き出す事になるか。……首魁の二名はなんか合体して合一神になってお前たちに倒されたんだったか」
「ええ、オンギョウキから聞いた情報に加えて戦った【ザオウゴンゲン】もそれらしき事を言っていたので」
そんな感じでこの拠点にやって来た目的である『京都ヤタガラス残党の殲滅』は一応達成出来たとも言えるが、お世辞にも問題なく進んだなどとは言えないイレギュラー続きであったので調査やら報告やらで事後処理は必要になる。
幸いというか敵対勢力である京都ヤタガラス残党は壊滅していたのと、最大級のイレギュラーである魔人王の姿が影も形もなかったので戦闘は起こらなかったが、特に京都ヤタガラス残党の情報を求めている帝都ヤタガラスの人には色々と事情を聞かれる事になった。
「つかれたー」
「色々と聞かれたけど首魁二名の末路と異界の核が俺の過去周回由来の転輪鼓だった事、後は魔人王についてとかぐらいしか答えなかったけど良かったんです? 俺の過去に纏わる事とか」
「それは別に京都ヤタガラス残党の目的や異界の発生に関わる事じゃないだろ。……その辺りを報告するなら巫女さまに報告書でも提出するべきだろうしな、帝都ヤタガラスもそんな事言われても困るだろう」
「事後処理面倒だから帰ったキリギリスも多いからなぁ。俺達はロールプレイ的に帝都ヤタガラスの地味な事後処理とかも積極的に手伝う方針だからもう少し頑張れ」
まあ京都ヤタガラス残党が行動を起こした原因とかボルテクス界を発生させた魔人王の情報はともかく、俺や結梨ちゃんの過去情報とかまでは話す理由はないよね。その辺りを気を付けつつ報告を纏めるとしようか。
……報告書を正しい書式で書くのは面倒くさいけどね。やり方はチームDATに入った時に教えてもらったけど、防衛チームロールプレイとしてちゃんとした会社で採用出来るレベルの報告書を書かされるから。
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「……さて、ここまで来れば追手は来ない筈。監視網や追跡呪術の類も無いのは確認済み。……転輪鼓と制御装置の確保は出来たからまあ目的は達成出来たか」
一方その頃、転輪鼓を奪取した【魔人王 コンス・ラー】一行はボルテクス界の外に残されていた帝都ヤタガラス霊能者などの監視網に一切引っかかる事なく、誰の目にも映らないままその場から離脱する事に成功していた。
その上で彼女達は事前に準備しておいた『隠れ家』の一つに戻って、流石にボルテクス界を形成するなどで疲労していた事もあり身を休める事にしたのだった。
「……ですが、これでキリギリスなどの護国系勢力にも私達の存在はバレましたね。イレギュラーが多かったとはいえ」
「ククク、失ったモノの方が多かったのではないか?」
だが、そこに仲魔である【イシス】と【セト】からわざわざ自分の存在を隠す為にボルテクス界まで展開したのに、自らの存在と『ボルテクス界を展開できる』程の脅威であると敵対勢力に認識された事に対する苦言が提示された。
……実際、魔人王自身も今回は転輪鼓欲しさにイレギュラーな異界形成になっても構わず突き進んだ事が原因で不利な状況になった事は自覚しているのだが、それでも『アマラ転輪鼓を欲する理由』があったのだ。
「仕方ない、どうしても転輪鼓と制御装置は手に入れておきたかった。……この前の【ダアト】形成、そしてその後の次元移動中に『三勢力』に襲われたせいで私達の【箱舟】──試作型次世代揚陸艦改造型【太陽の船】が破損した。その時に持っていた転輪鼓は使い潰して、更に内蔵していた次元移動用の【ピラー】も破損したから代わりが欲しい。今のままだと次元移動はおろかアマラ経絡の移動にも支障が出る有り様だし」
今回、魔人王がここまでの無茶をした理由には転輪鼓が有していた機能や情報だけでなく、そのアマラ深界への干渉能力を転用して自分達が有する箱舟の次元移動能力を修復したいが為でもあったのだ。
……そして今回手に入れた転輪鼓とその制御装置である【アマラコンピューター】は多少破損してはいるものの彼女の技術をもってすれば修復可能な範囲であり、それを組み込んだ【太陽の船】であれば世界間移動は勿論、【アマラ経絡】を通じての超高性能な【龍脈渡り】により彼女達は
「だから私の存在と脅威がバレるデメリットよりも今後の活動範囲を広めるメリット、そして何より嘗てのダアトの詳細なデータを入手するメリットを優先した。……転輪鼓やピラーの複製も出来なくはないけど材料を入手するのが困難な上、私ですら難易度が高い作業となるからある所から取った方が楽だし、それでも運用データまでどうにか出来る訳ではないから」
「まあそういう事なら。……あの三勢力が活動を本格化させる前に移動手段は確保して起きたいのは本音です」
「我らは所詮『仲魔』であるからサマナーの選択には従うさ。……だが、いずれ脅威となるであろう『あのナホビノ』を生かしたまま見逃す事になったが? まあ我としては戦いになった方が楽しいのであるが」
尚、サマナーの事を思って苦言を呈するのはイシスだけで、セトの方はサマナーの行動を割と面白がる為に発言している感じだったりするが、基本律儀な魔人王はしっかりとその疑問にも答えた。
「あの時、転輪鼓に何もしなくても後10分程度で異界は消滅する状況で、こっちがそれまでに転輪鼓を確保して離脱する準備を整えるのが必要だった。加えて向こうが積極的に転輪鼓を狙う気であり、残り時間では私でも蘇生不可能なレベルで彼等を消滅させるのは困難。……だから戦わずに会話という選択で異界消滅までの時間を稼ぎたい向こうと、残り時間で転輪鼓だけは確実に確保したいこちらの思惑が噛み合っただけ」
「クク、成る程。まあこれでお前を敵視して追う者が現れるのだから我も退屈せずに済みそうだ。……今の我は『世界を滅ぼす脅威』でも『裁定者の半身』でもない単なる仲魔だから気楽に戦いを楽しめる」
ちなみにヤマト達が情報を受け取った直後に奇襲する形で登場した魔人王ではあるが、実は下層に降りて調査している内に異界の消滅準備(アマラコンピューターによるもの)が始まっている事に気が付きかなり急いで中枢部に移動。
そうして付いた時に丁度彼等が情報を受け取った所だったので慌てて奇襲して転輪鼓を奪おうとしたのが真相だったので、表示や雰囲気には一切変化が無かったが内心は時間切れを懸念して結構焦っていたりした。
「……それに、私は本質的に“戦士”じゃないから彼等と戦っても負ける可能性もあった。以前『北海道受胎』の時にレベル差を覆してこっちの目的を砕いた“あのうるさい男”とかの、所謂『英雄』と呼べる力の差を覆す者達に近い感じがあったから」
「そうか? 戦士としては一線級だが“ワイルド”達の様な規格外でもなさそうだが」
「戦士として一線級だけで戦士としては二流レベルな私からすれば十分に警戒に値する。……どこまで自己改造で強化しても本質が戦う者じゃないからカグツチに負けたし、今でも三勢力のボス達レベル100越えの超越者やシュバルツバースで会った『化け物みたいなデモニカ』にはまともに戦っても絶対に勝てない。これが非才の身である私の実力」
実を言うとレベル99で大量のスキルを有して強力な仲魔を従えているにも関わらず、この魔人王の戦闘面に対する自己評価は非常に低いので可能な限り直接戦闘を避けようとする傾向がある。
……まあ、負けてはいけない場面でカグツチに敗北して大切な者を失い、その後の暗躍でも直接戦闘になったら人間讃歌歌う変態やワイルドや現アイドルとかに負けて、更には三勢力のトップや痴漢デモニカの様な超越者との遭遇もしているので仕方ないとも言えるが。
「……だから、戦闘が可能な限り避ける方向性は変えない。少なくとも科学者や術者として戦わずに勝つ方法を作ったり、逃げ回りながら目的を達成するならそれなりに自信がある。……シュバルツバースでもあの化け物デモニカの目を掻い潜って目的だけは達成したし」
逆に言えば魔人王は戦闘能力こそ(相対的に)然程でもないにも関わらず、レベル100越えの超越者がいるトライアドに取り込まれる事も倒される事もなく個人で活動を続けていたり、最強クラスの英雄と交戦しても生き残るか戦わずに出し抜くなど『逃走や暗躍』に関する能力は一級品とも言える。
……ただし、彼女の“目的が目的”故に無茶をしなければならない状況も多く、現状だと手段を手探りで探している状態であるので本来の暗躍向き能力を活かしきれていないとも言えるのだが。
「じゃあ、休憩も終わったから痕跡を消して出発する。……とりあえず最近流行ってる【アストラルシンドローム】を探る為、元凶の電脳空間に作られた認知世界に修復した【太陽の船】のバックアップさせつつ偵察用の電霊を忍ばせる。“あの程度のセキュリティ”なら偵察だけであれば誰にも気付かせずに潜入できる」
「それで如何する? 首魁でも仲間にするか協力するのか?」
「“アレ”にそこまでの価値はない。コヴェナントもない以上は只の凡人だし、少し調べた限りでも単に適当な研究を継ぎ接ぎしてるだけだから。……まあ、継ぎ接ぎした素材にアマラ深界関係もあるみたいだからそれ狙いでこっそり火事場泥棒と情報収集。まあ転輪鼓と制御装置の修復とデータ吸い出しの合間にやる作業としては丁度いい」
……失った大切な者を取り戻す為、魔人王は例えか細い道でも進む事を諦める事が
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『……以上が今回の京都ヤタガラス残党の殲滅作戦で起きた事の全てです。京都ヤタガラス残党は事実上壊滅しましたが、未だに不明点は多いので引き続き調査は進められる予定だそうです』
「報告ご苦労様です、これらの情報はこちらで上手く使います。…………魔人王ってなんなのよぉ……魔人ってだけでも面倒なのに、なんで『王』とか付いてるのよぉ……」
子飼いのエージェントから今回の一件に関する報告を『SOUND ONLY』な通信で聞いた【巫女さま】は、まるではぐれメタルの様に液状化しながら机に突っ伏した。
まあレベル99の悪性ドリフターに加えて幾つかのイレギュラーが起きた事から詳しい報告を聞く必要があると判断して報告を受けたが思ったよりも面倒だったのでダウンする巫女さまだったが、そこはこの世界の度重なる厄ネタと満喫したサブカルによって精神強度を上げている事もあって直ぐに形状記憶合金の様に実体を取り戻して今の情報を整理していく。
「【アマラコンピューター】とやらから引き出した情報に関しては報告された範囲内では特に問題ないわね。その殆どが既に私が“過去視”によって知っている事か他のドリフターからの情報にあるもののみ。しかもゲーム攻略サイトの概要レベルの情報だから脅威度は低い。……ここ時間の流れが違うからネット攻略サイトも少し見にくいのよね」
ただし、残り二台のより深い情報を収集したアマラコンピューターという懸念点もあり、それらが【イデアオーブ】関係の事件*5の様に過去周回からの遺物がトラブルを起こす可能性も考えられた。
……最も今の所は存在すら確認されていない以上は下手な考えをしても意味ないと割り切り、何か問題が起きてから対処するしかないと一旦置いておく。
「問題は【魔人王】の方ね。……レベル99ぐらいならまだなんとかなると思える今のインフレ具合だけど、直接接触した二人以外のキリギリスや帝都ヤタガラス、拠点攻略だから探知能力持ちも複数いた筈なのに誰もその姿を捉える事が出来なかった。報告があった後に探知術や過去視などで調査しても“魔人王がいた痕跡は誰も発見出来なかった”程の隠密性があると」
つまり危険思想持ちで日本列島を受胎させた経験を持ち、今回もボルテクス界を作り上げる様な悪性ドリフターが誰にも補足出来ないレベルの隠密性で暗躍している……という下手なレベル100越え敵よりも面倒な相手だと考えた巫女さまは再び頭を抱えた。
「あー、正義の味方は事件が起きてからじゃないと対応出来ないのよねー。事前調査も帝都ヤタガラスとかで出来るけど向こうがどのくらい尻尾を出すような行動をするかどうか次第だし。……まあそういう意味では今回存在を知れたのは幸いだったわね。暗躍されたままで気付いたら手遅れってのが最悪のパターンだし、今回姿を現さざるを得なかったって事はボロは結構出しやすそうかしら」
ただ、他にも優先すべき調査対象が多い故に隠密活動に長けた個人戦力に回せる人員などおらず、少人数程度ではそもそも補足出来ずに意味がない事が目に見えているといった理由で対応には苦慮する相手ではあるのだが。
「やっぱり人手が全然全く足りてないのよね〜。……となると、今回のドリフターである彼と彼女はどこまで使えるかしら。今回の一件でレベルが上がったのか両者共にレベルは70以上とドリフターの中ではトップクラスの実力ではあるみたいだけど、『最後の大隊』や『最後の二人』みたいに実力ではなく実績や貢献度で信用度は決めたいのだけど」
そう言いながら巫女さまは【八坂ヤマト】と【一柳結梨】の情報が書かれた資料を手にとって、貴重な高レベルドリフターである彼等二人をどう扱うか思案しだす。
「八坂ヤマトの方は元はこの世界の一般人だったが、過去周回から来た神造魔人【アオビト】と融合して悪魔人間となり、デビルバスター集団【チームDAT】に保護されてその一員として働いていると。……まあ、その後はいくつかの事件をチームDATと一員として解決しているし、そのDAT自体行動は変人集団でもインフレ初期から帝都ヤタガラスの依頼も受けているぐらいに真っ当なデビルバスターチームとして動いているねぇ」
ただし、巫女さまの周回知識でも【八坂ヤマト】と言う存在は確認出来ていないので、人間のままの場合殆どの世界で一般人ってして終わっているのではないかと考えていた。
「本人曰く“ちょっと特殊な悪魔人間”らしいけど本人もDATの一員として真っ当にデビバスやってるから今の所危険度は低いのかしらね。……まあ、元一般人にしてはレベルが上がりやすすぎるとか不審点もあるから信用できる程ではないけれど、今のインフレ環境ならそのぐらい無くはないレベルだし」
更に本人も『アオビトがいた世界の様な被害を出さない為』としてデビルバスターとしては精力的に活動しているので、行動パターンが読みにくい分信用には値しないが何か対処しなければならないぐらいの危険性は薄いと判断した。
「チームDATに関しても周回で確認出来たパターンが少ないのよね。……ただ【ジャグラスジャグラー】と名乗るダークサマナーが『今明かされる衝撃の真実ぅ〜!』とか『昔大きな木を斬った事があってなぁ……』とか言って活動するのは見てるんだけど。……どう考えても関係ありそうよねぇ」
……とは言え、過去周回の知識云々で因縁を付けても無意味だし、少なくともこの世界のDATはデビルバスターのチームとしては真っ当に活動している部類なので今の所はなにか対応する必要性は薄いだろうと思いつつ次の資料を手に取った。
「さて次に彼女……一柳結梨の事だけど、これまでは崩壊後の世界で聖華学園に保護されるパターンがそれなりにあるわね。ただその殆どで自己犠牲的に特攻して消息不明になっているけど。……そう言えばドゥべに特攻して行方不明になって以降の周回では見かけなくなったけど、そのタイミングで現行世界に転移したのかしらね」
資料にはこの世界に来てからは【黎明の祈り手】の推薦もあり聖華学園に高校一年生の新入生として入学、一時的にドリフター用の特別クラスに入ったものの常識・学力・倫理テストなどの全てで合格点だったので“ドリフターを一般異能者用クラスに編入させるテストケース”の一人として選ばれている。
「その後のこの世界の異能者との学園生活でも問題は起こす事なく、一般生徒とも普通に過ごしているので特に問題なくテストケースとしてはまあ成功例の部類とみられていると。他のドリフターが問題行動起こすから相対的にかもしれないけど。……聖華学園に保護された時には崩壊前の世界の常識を知っている第三生徒会に面倒を見てもらっていたらしいからそのお陰かしらね」
また、デビルバスターとしても同級生とチームを組んで積極的に活動しており、ヤマトから聞いた話では本人も『今度こそ友人を守る』という意思はある模様。
……出来れば今回は自己犠牲以外の方法を取ってほしいとも思う巫女さまだったが、レベル70越えになった彼女をどう扱うかには学園に丸投げで良いかとも思っていた。そのぐらいの生徒は今ならそれなりにいる事だし。
「まあ、現状はそれぞれDATと学園に預けたままで問題なさそうね。……というか、こっちもドリフターの面倒を全員見れる程にリソースの余裕があるわけでもなし、既に生活基盤があるならわざわざこっちから何かする程の問題行動を取ってる訳でもないからね。態々取り込む程の信用もないから現状維持で。……じゃあ気分転換に録画しておいたスーパーヒーロータイムでも見ましょうか」
そんな感じで一仕事終えた巫女さまは増設したシアタールーム(時間加速中)で今週のスーパーヒーロータイムをご視聴した……のだが、仮面ライダーギーツ第40話の全方位曇らせ展開にちょっと気分は落ち込んだりした。
まあ、その程度でスライム化する巫女さまではないので気分転換にティアキンでゾナウギアを組み立てて遊んだり、取り寄せていた仮面ライダー冬映画のブルーレイを見たりして英気を養っていたが。
あとがき・各種設定解説
八坂ヤマト&アオビト:レベルはめっちゃ上がった
・過去を正しく取り戻したが魔人王には逃げられた上にアマラコンピューターの残り二機という懸念点も出来たので、今後はどうにか自分と仲魔の更なる強化を図っていこうと考えている。
・魔人王は強敵ではあるが“勝算もある”相手だと考えているので、とりあえず今後は邪教の館による仲魔強化を中心に行なっていく予定。
魔人王コンス・ラー:超面倒くさいタイプ
・正面戦闘能力は(ラスボスクラスと比べると)そこまで高くなく、本人も戦闘面では良いとこ二流なので各勢力のラスボスやそれらと戦うキリギリス最精鋭などと戦えば負ける目が十分あると考えている。
・ただし、術者・科学者としての技術に関しては超一流であり、直接戦闘を行わないのであれば各勢力のトップクラスですら翻弄する立ち回りが可能なレベルになっている。
・保有する移動用の箱舟【太陽の船】は過去周回で手に入れたレッドスプライト号系列の強襲揚陸艦、その小型モデルの試作品をマシン系列悪魔化や各種呪術、更には手に入れた未来科学技術などを組み込んで魔改造した代物。
・機能としては直接戦闘能力は無いが世界観移動やアマラ経絡を利用しての超長距離龍脈渡りなどの移動能力他、殆どの探知能力を無効化するステルス機能にサポートAIによる自立行動及び各種支援や内部施設での技術開発など盛りだくさん。
・少なくとも太陽の船が動かせる魔人王はトライアドからも普通に逃げながら行動出来る様になって非常に厄介であり、逃げに徹している間は通常の方法ではどの勢力にも補足不可能な立ち回りが可能。
・ただし、本人が目指す“目的”の難度が高すぎるのでどうしても今回の様にリスクを犯さなければならないケースがあり、それ故に暗躍や行動パターンに手筋への縛りが存在している点が魔人王達の最大の隙になっている。
読了ありがとうございました。
これでナホトラマンの真実や過去を明らかにする+ラスボスの魔人王との邂逅連続イベント編は完結になります。次は掲示板と幕間と悪魔合体かな。