真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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逃れられぬ過去/それでも今を

「……成る程ね、だいたい話は理解したわ。ヤマトの迂闊なメール内容のせいでなんか変な誤解が広まっているみたいねぇ。うーん青春してる女学生やってる様で何より」

「別にメールの内容としては普通だと思うんですけど。まあ秘密の話がしたいというだけの連絡で口止めをしてなかったのはミスでしたが、まさかこんなに妙な誤解が広まってるのは流石に予想外ですよ」

「うう、すみません……」

 

 そんな感じで夢結から詳しい事情を聞いたアンヌ副隊長は少し苦笑しつつも、今回は少しばかり結梨ちゃんに電話やメールでは話せない事があったので直接会って話がしたいだけだと丁寧に説明した。

 ……その結果、自身が誤解していた事に気付いた梨璃が全力で平謝りする事でになったのだが、まあ告白云々の話で彼女達が勝手に盛り上がった程度の誤解だったので大した問題は起きなかったからアンヌもヤマトもそこまで気にしていなかったが。

 

「それで結梨ちゃんと私達だけで話をしたいのだけど確か個室を用意してくれるそうね。大丈夫かしら?」

「はい美鈴お姉様、今楓が用意していた話し合い用の個室に人払いをさせた上で結梨を待機させています。……まあ特殊な事情がある生徒はこの学園に多いので、保護者と寮生が話をするという名目でならそういう部屋の確保には手間が掛かりません」

「助かったわ夢結、まあ今回の話の重要性からしてもそのぐらいの部屋で良いでしょう。ちゃんと生徒会をやっている様で安心したわ」

「いえ、これもお姉様が暴走しがちな私のペルソナの制御技術を鍛えてくれたからで……」

 

 付き合いの長い妹分と話しているからかアンヌ副隊長(川添美鈴)の様子も少し気さくなものになっており、夢結の方も普段のクールビューティーな感じとは少し違う年頃の女学生の様な雰囲気になっていた

 それを見た梨璃も憧れのお姉様の意外な一面を見れた事をちょっと喜んだりもしていたが、彼女達の会話を聞いていたヤマトだけは眉間に皺を寄せてしまっていた。

 

「失礼副隊長、暴走というのは……大丈夫なのですか?」

「……私は既にお姉様のお陰でペルソナの制御は完全にものにしています」

「……すまない、いきなり不躾な事を言ってしまった」

 

 初対面の男性からの少し無遠慮な言葉にムッとした雰囲気で弁論する夢結を見て、直ぐに自分の失言を悟ったヤマトは直ぐに頭を下げながら謝罪したが場の雰囲気はやや悪いものになってしまっていた。

 

「あー、そういえば夢結とヤマトは初対面だったわね。私も梨璃ちゃんとは今日初めて会ったんだし少し自己紹介しておきましょうか。私はヤナセ・アンヌ、チームDATというデビルバスターチームに所属していて結梨ちゃんの保護者の一人になるわ。ああ夢結が『美鈴お姉様』って呼ぶのはまあ妹分みたいなものだから本名を呼んでいるだけよ。アンヌは呪い避けの偽名だから」

「あ、はい! 夢結お姉様から話は聞いています! ……私は一柳梨璃と言います。一つの柳の木と梨に瑠璃色の璃と書いて一柳梨璃です。聖華学園の第3生徒会所属です」

「白井夢結よ、聖華学園第三生徒会所属。以前は少しだけお姉様の下でお世話になっていた事があるわ」

「八坂ヤマトだ。チームDATに所属しているデビルバスターで、結梨ちゃんとは以前少し一緒に依頼をこなした時に仲良くなった関係だな。……それと、先程は気分を害してしまった様で済まなかった。改めて謝罪する」

「いえ、私も少しキツイ言い方になってしまって申し訳ないわ」

「はい、じゃあお互いに謝罪したからこれでヨシって事で」

 

 とりあえず自己紹介をした後にヤマトが改めて頭を下げて謝罪して来たので、流石に夢結の方も申し訳ないと思いアンヌの取りなしもあって一先ず険悪な空気は無くなった。

 ……まあ、ヤマトがここまで謝ったのはこの世界の夢結と梨璃に対して“過去周回の彼女達”を重ねて過剰に反応してしてしまった事に関する負い目の方が強いのだが。

 

「さて、じゃあちょっと結梨ちゃんに話をしたいから個室まで案内して頂戴。……まあ、ぶっちゃけそこまで大した話でもないから少しの間だけ彼女を借りる程度の事になるだけよ。安心して頂戴」

「分かりました、ではこちらです美鈴お姉様」

 

 そんなこんなで多少のゴタつきはあったがアンヌとヤマトは学園に来た本来の目的をさっさと済ませる為に案内する二人の後に着いていくのだった。

 

(ヤマト、貴方があの二人を見て何を思い出しているのかは知らないけど、ここは未成年異能者を多く抱える特殊な学園だから余計な騒ぎは起こさない様に。少し気配が剣呑なモノになってるわよ)

(すみませんでした。今の彼女達には()()()()()()()()()ですからもう何も余計な事はしません。気配も抑えます)

(前の世界の話か。まあその辺りを理解して気をつけるなら良いわ)

 

 ……まあ、その道中にヤマトの様子がおかしい事を察したアンヌ副隊長から二人には気付かれない様に注意が入り、ヤマトも流石に今までの態度は不味いと理解はしていたのでどうにか物騒になりかけていた気配を平常なものに戻すなどして外面を取り繕ったりしていたのだが。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そういう訳でヤマトとアンヌは漸く結梨に会う事が出来て、用意して貰った学内の防諜用の個室に3人で入って話をする事になった。勿論副隊長の術やアオビトのレーダー等で防諜が出来ているなどの確認済みである。

 ……最後まで梨璃は心配そうに結梨に話しかけていたが、夢結や他でもない結梨自身が別に何か物騒な事になる訳でもないと説得したので他の生徒会メンバーに連れられて生徒会室に戻って行ったのだった。

 

「それでー? ヤマトとアンヌは今日結梨になんの用事なの?」

「ええ、この前壊滅させた過去と今の京都ヤタガラスが一つに的なクソ組織の追跡調査をしていたら貴女の出生に関する情報が出て来たから伝えておこうと思ってね。まあプライバシーに関わる事だから人払いをして貰ったんだけど、思ったより大事になったのはちょっと予想外だったわね」

「ちなみに結梨ちゃん自身は自分の出世についてどれぐらい知っているんだ?」

「この前も話したけど京都ヤタガラスに造られた人造人間って事と、この前アマラコンピューター?って言うのから聞いて知った神造魔人の【アマノザコ】が元になったってぐらいだよ。……また何か結梨について分かったの?」

 

 元凶を叩きのめしてある程度は克服したとはいえ、結梨は嘗て過去周回の京都ヤタガラスに自分の出世をバラされて道具とされようとしていた事もあるので“自分の出世”に関してと聞いたら少し不安な様子になってしまっている。

 

「ああ、そんなに不安がらなくても大丈夫よ。京都ヤタガラス残党が残ってるなら面倒ごとになったかも知れないけど既に壊滅してるから。まあ単に貴女を作る際に使われた人間側の要素が前の世界の【葛葉ライドウ】と呼ばれていた【乃木園子】って人物だったってだけの話だから」

「ライドウ? えーっとヤタガラスのなんかすごい人の事だっけ」

「正確には葛葉一族なんだけど別に大した違いはないからそれで良いわ。……そもそも前の世界の事であって既に終わっている事だからね。やらかしたゴミどもが大体壊滅してるからこの世界ではそこまで大きい問題にはならないわよ」

 

 不安気になる結梨を見てアンヌは“大した事ない話”であると強調しつつ、過去周回の京都ヤタガラス残党に関する資料を結梨に見せながら一通りの事情を説明していった。

 

「……えーっと、つまりこの【乃木園子】って人が結梨のお母さん? ってことになるの?」

「まあそうとも言えなくもないわね。まあ遺伝的に変質し過ぎてるからDNA鑑定でも別人と出るレベルだとウチの天才技術者は言ってたけど。……それで、結梨ちゃんは“この世界”の【乃木園子】に対して何か言いたい事はあるかしら?」

「え? 特にないけど。だってあくまで結梨の元になったのは前の世界の【乃木園子】って人だし、この世界に同じ人がいてもその人が何かした訳じゃないし」

「ふふっ、その辺りがちゃんと分かってるならこの話はこれで終わりで良いわね。一応確認したけど思ったよりもちゃんとした答えが返ってきて感心したわ」

 

 そう言うとアンヌは調査資料を結梨からサッと奪い取って符術で跡形もなく燃やしてしまう。ちなみに証拠隠滅の為に元からあっさりと燃やせる様に細工をしてある紙だったというのがネタバレだが。

 

「実際、さっきも言ったけど此処に載ってた貴女の出生に関する情報はこの世界では特に何か意味がある事じゃないわ。結梨ちゃんの言う通り仮にこの世界に【乃木園子】が居たとしても結梨ちゃんとは全く無関係の赤の他人でしかないのだし」

「でも乃木グループとかありますけど、そっちから何か言ってくる可能性は?」

「なくはないけどめっちゃ低いわよ。……そもそも前の世界──過去周回なんて基本的に眉唾物の話でしかないんだから、前の世界で貴女の娘でした! ……とか喚こうがこの世界では単なる他人でしかないのよ。本人達がどう思うかは別の問題だけどね。だからその辺り理解してるヤタガラスとか乃木グループ側がこの情報知っても、本人達がどうこう言わないなら単なるゴシップって事でスルーする可能性の方が高いわ」

 

 尚、アンヌとしてはヤタガラス側よりもこの情報を知った結梨の方が何か問題を起こす可能性がゼロでは無いと考えて、もしダメそうなら説得する事も考えていたのだが杞憂に終わっている。

 そもそも彼女の出世云々に関しても証拠が過去周回の京都ヤタガラスぐらい残した資料しかなく、DNA鑑定も正確には出来ない以上は“単なる眉唾物の誤情報”と判断してしまっても構わないレベルの話でしか無いのだ。

 

「だから結梨ちゃんがこの情報でヤタガラスに押しかけるとか馬鹿な事をしない限りは、まあ情報だけ知って胸の内に秘めて秘匿しつつスルーすれば何か問題が起きる事はないでしょう。そもそも前の世界で既に終わった事にいちいち突っ込んでいられる程に彼らも暇じゃないからね」

「だから、こっちが何もしなければ『前の世界でそんな事があったんだなぁ』程度の事で済むと」

「むしろ単なる与太話だとしてスルーされると思うわ。……そもそもドリフター関係の話は殆どの人間が知らないのだから、本人達が喚き立てでもしない限りは与太話にしかならないのよ。まあ本人達が喚き立てるのが一番面倒だし、そういう“前の世界では肉親だった”系トラブルは結構起きてるみたいだしねぇ」

「まあドリフ側から見ると死に別れたとかした人と同じ顔・同じ名前と出会ったら中々そういう風には割り切れないんですけどね。それでも所詮は自分だけが知ってる事を勝手に喚き散らす様な事でしかないのは同意しますが」

 

 勿論、その辺りの事情を含めてどういう人間関係を作っていくのかは当人達次第でしかないのだが、過去周回云々の事情で喚き散らして面倒ごとを起こすのは駄目だろうというごく普通の話なのだが。

 

「うん、結梨もこの世界で梨璃達ともう一度友達になった時に分かったけど、やっぱり前の世界で結梨と友達になった『梨璃達』とは別の人だとは思うから。……それでも、結梨は前の梨璃達も今の梨璃達も同じ様に掛け替えのない友達だと思ってるから。だから前の世界で結梨が生まれに関わってた乃木園子?って人と同じ名前の人がこの世界にいても別に何かしようとは思わないよ……って、なんかヤマト落ち込んでる?」

「ああいや……結梨ちゃんはちゃんと前の世界と今の世界の事をキチンと割り切ってるのに、俺は色々と引き摺っててちょっと自分が情けなくなっただけだ」

「うーん、元気出せヤマトー」

 

 丁度ついさっき過去周回の同一存在と会って醜態を晒したのもあって落ち込むヤマトだったが、結梨に雑に励まされたのと彼女がしっかり考えているのを知って改めて過去(前世)の事とどう向き合うかを本気で考えようと思っていた。

 

「とは言え、低い可能性だけどヤタガラスの方から結梨ちゃんに接触してくる可能性もあるけど、それでも精々人となりを確認するぐらいの目的だろうから貴女が今のままの考えなら問題は起きないでしょう。まあ何かあったら私達に連絡を入れてくれれば良いわ。ヤタガラスにも多少の伝手はあるから良い感じに問題なく話を軟着陸させるぐらいは出来るしね」

「分かった、ありがとうねアンヌ。それにヤマトも」

「俺は殆ど何もしてないけどな。まあ悪用しそうな京都ヤタガラスは今のも昔のも壊滅してるし、迂闊にこの情報を吹聴しなければ問題ないだろう」

 

 そういう感じで妙にゴタゴタしてしまったが『調べた情報を結梨へと教える』というアンヌとヤマトが学園に来た目的はあっさりと終わったのだった。

 

「それじゃあ話は終わったし帰ろうかしら……ああそうそう、色々あって忘れる所だったわ。最近悪魔の因子を持つ人間が狙われている事件が起きてるから注意してね。特に学園の外に出る場合には決して一人で出ない事」

「うん分かった。……でもそのぐらいなら前から普通に気を付けてるよ。生徒会でも外に出る時には出来る限り単独で動かない様にって学園の生徒に注意してるぐらいだし」

「まあ最近の環境では人攫いとかも珍しくないからねぇ。……ただ、私達も今調べている最中なんだけど、如何も悪魔人間を狙ってる連中の中に面倒そうなヤツらがいるっぽいのよね。結梨ちゃんは“御厳”や“ナホビノ”についてどのくらい知ってるのかしら」

「え? うーんと確かナホビノってのはヤマトみたいなヤツの事で、御厳はヤマトが使ってたピカピカしたヤツだっけ。詳しくは知らないけど」

 

 ちなみに過去周回のダアトにおいてヤマト達の前世のナホビノと行動を共にしていた【アマノザコ】の転生体でもある結梨であったが、ヤマトと違って前世の記憶は殆ど覚えていないのでナホビノ関連の知識は以前のボルテクス界で少し知った程度だったりする。

 

「まあ詳しく知ってる必要はないんだけど、如何も悪魔人間狙ってる人攫いの一派が御厳も狙ってるっぽいから、それを知ってる貴女は特に気を付けた方がいいって話ね。まあナホビノや御厳の話は誰にもしない方が良いわ。状況に応じて話す必要があるかもしれないドリフ系の話と違って」

「うん、つまりナホビノとか御厳の事は誰にも言わなければいいんだよね。ナホビノの事は以前から口止めされてたからそれと同じだね」

「うん、結梨ちゃんは物分かり良いね。……うっかり御厳の情報を漏らした俺と違って。ナホビノが神様とか言っても偶にうっかりミスする悪癖は全然治らないんだよなぁ」

「まあドンマイ、頑張れヤマト」

 

 そんな風にちゃんと口止めの約束を守る結梨を見て更に自己嫌悪でどん底まで落ち込むヤマトであったが、実のところ“過去における失敗の象徴”とも言える梨璃と夢結と直接会って精神が揺らいでいるのが此処まで落ち込んでる原因でもある。

 

「はぁ、ヤマトはどうにも失敗を長く引き摺る悪癖があるのよね。……学園に来て何か動揺しているみたいだけど、チームDATの一員として公の場では最低限外面だけは取り繕いなさい。後失敗を引きずり過ぎるぐらいなら何も考えずに今目の前の目的を達成する事だけ考えなさい、そっちの方がマシよ」

「……すみません副隊長、醜態を見せました。どうも学園に来てから精神が安定しない……いや、言い訳はやめて最低限外面だけは取り繕って痩せ我慢します」

『体内のマガツヒを操作、精神に干渉して強制的に冷静さを取り戻させた。本来は戦闘用の技法だがこういう使い方も出来る。……如何もこちらの過去のトラウマが原因で精神に乱れが起きていた様だ。すまないな』

 

 そうして無理矢理にでもメンタルを戦闘態勢に切り替えて冷静さを取り戻したヤマトは、出来る限り前世の記憶については考えない様にしながら立ち上がるのだった。

 こうして紆余曲折あったがアンヌとヤマトは聖華学園に来た目的を無事に達成する事が出来たのだった……そもそも此処まで話が拗れる予定では無かったのだが、如何にも今日はヤマトを中心にして間が悪かったんだろうとアンヌは思ったのだったとさ。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「結梨ちゃんおかえり、大丈夫だった?」

「ただいまだ梨璃、ちょっと話をしてただけだから心配するな。話自体もそんなに大した事は無かったし」

「まあ美鈴お姉様が付いているなら妙な事にはならないわよ。……なんか心配だからって生徒会メンバーが集まって来る必要も無かったと思うんだけどね」

「あらあら揃ってるわね」

 

 そうして用事が終わった結梨を連れて部屋から出ると、そこには何故か第三生徒会メンバーが勢揃いして結梨を迎えていたのだ。

 

「二水が『結梨さんが女学生らしい青春イベントを!』とか言って騒ぐから気になってみんな来てなー。まあ夢結からの報告で勘違いだって分かったんだが」

「ううう、すみませんご迷惑を……」

「まあ二水ちゃんも相変わらずね。今回はこっちにもちょっと手違いというか間が悪かった所もあったから余り気にしないでね。話と言ってもそこまで大した事じゃ無かったから。最近物騒だから気をつけてねって感じの」

 

 ちなみにアンヌを義姉と慕う夢結は当然として、チームDATの一員である【カリヤ・ケンジロウ(偽名)】を兄に持つ二水もアンヌとは面識があったので親しげに話しており、そのお陰か初対面の生徒会メンバーともアンヌは仲良く出来ている様だった。

 ……ちなみにヤマトは過去の事は一先ず折り合いと付けたので梨璃と夢結に妙な視線を向ける事は無かったが、それはそれとして男子が自分達一人で女子比率が高すぎる空間だから居心地が悪いってもんじゃないので壁際で気配を消しながら黙り込んでいた。

 

「それよりもちょっと心配しすぎてたぞ梨璃〜。今は結梨の方がレベルは高いんだし、危なくなっても【真・夢幻の具足*1】で逃げるぐらいは出来るよ」

「うんそれは分かってるんだけど……なんか結梨ちゃんを一人で行かせたら戻って来ない気がして。……ごめんね! 結梨ちゃんが強いのは知ってるんだけど……」

「……うん、大丈夫だと梨璃、結梨は()()()()()一人で勝手に戦いに行ったりはしないから」

 

 だが、そんな様々な事情を持つ少女達が仲良くしている光景を見て“尊さ”を感じたヤマトとアオビトは『こういう当たり前な光景を守るのが今の俺達がやるべき事なのだろう』と改めて思い直してこれからも“この世界”で戦っていく事を誓ったのだった。

 ……そう考えると先程まではあったある種のトラウマによる精神的な動揺も消えていき、過去ではなく今のこの世界で“自分が成したいと思う事”が明確に見えてきた。

 

「……答えは得た、俺はこれからもこの世界を守る為に頑張っていくよ」

「あらヤマト、なんか光になって消えそうなセリフを言いながら壁際から梨璃ちゃん達をガン見して……美少女揃いだから気持ちは分かるけど」

「いやホントに辞めてくれませんか副隊長、マジで居心地がこれ以上悪くなるのは勘弁してください。そういうんじゃないんで(泣)」

 

 ……その後にヤマトが副隊長の揶揄いによって生徒会メンバーから訝しげな視線を向けられて地味に精神ダメージを負ったりしたが、概ね聖華学園でのちょっとしたお使いは何事もなく終わってDATメンバーは普通に帰路へと着いたのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんなこんなで行きと同じ様に車で学園から拠点に戻る彼等であったが、今回は車を行きとは違う道へ走らせつつ拠点から少し離れた場所にある契約した月極駐車場へ車を止めた。

 これは車を付けられて拠点の位置を割り出されない様にする備えの一つではあり、ここから少し回り道をしてから拠点に向かうのが基本なのだが今回彼等は何故か拠点から離れて人気のない場所へと向かっていた。

 

「……車に乗っても()()()()()()()()()()()()が外れないわね。付けられてるのはこれで確定として、こっちを見てるのは【眼界】系スキルか。ケンジロウのものと雰囲気が似てるし」

「神造魔人としての感覚でも“覚えのある気配”を感じます。()()()()()()()()()()()()()が予想通りであればようやく『釣れた』のかもしれません」

 

 その理由は学園を出た辺りから“見られている”事に気付いた二人が“敵対者を誘き寄せる釣り”用に予め決められたルートに誘い込む為に行った事だったのだ。

 更に気配の感じから割と良くある逆恨み系襲撃者の様な雑魚ではない事、何よりヤマトとアオビトが“知っている”気配である事から御厳事件──弾いてはダアトや合一神関係である可能性が濃厚になった故に敵の正体を判別する為に襲われやすい環境を演じたという訳である。

 

「……人の気配が消えたわね。異界に取り込まれた……いえ、それよりも浅い幽世、現世から紙一重分だけ位相をズラしてターゲットのみを取り込む術かしら。この規模と精度でやるなら高度ね」

「気配が変わりましたね、副隊長来ます……後ろか」

 

 そういう考えの下で彼等は戦闘しやすい場所を選んで移動していると突然僅かにあった人の気配が消えた事から異界に取り込まれたと判断、即座に戦闘態勢へと移行するが直後にヤマトの背後に迫る影があった。

 しかし、襲撃を予期していた彼は瞬時に合一神モードへ変身すると共に手から展開したビームサーベルを振り抜き、背後から勢いよく振り下ろされた“武装COMP(CHARM)”による【剣攻撃(フィールドアタック)】を受け止めた。

 

「アハハッ! ()()()()()不意打ちへの反応が早いですね!」

「お前は……」

『気配から察していたがやはり“彼女”だったか』

 

 鍔迫り合いとなった事によって襲撃者の姿を確認する事が出来たが、その目の前にいる淡い紫色の髪をツインテールにして頭部には猫耳の様に見える『探知機能特化型COMP』を付けて、豊満な双丘を持つ女性的なスタイルの良い身体を黒衣のドレスで包み機械的な双剣を振るう“彼女”の姿にヤマトとアオビトは見覚えがあり過ぎた。

 ……彼女の名前は【戸田琴陽】。嘗てのダアトに存在していた【ベテル】に所属してしていた人間の一人であり、ダアト世界での()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であったのだから。

*1
デビサバ2出典。障害物を無視した移動ができる。移動による行動順の遅延が少ない。使用すると味方チームの隣マスに移動が可能。レベル上昇と鍛錬によって単なる飛行だけでなく短距離なら空間転移的な移動も可能になった。




あとがき・各種設定解説

一柳結梨:現地生活に適応してるドリフター
・本人の実力や祈り手及びDATとの伝手もあるが、何より素直な性格故に“過去周回の同一人物”相手にも『もう一度友達になれば良いよね』『友達になったからこれからも頑張ろう』とシンプルに考えてるので同一視からのトラブルを殆ど起こしてない。
・割り切ってると言うよりは『前も今も梨璃達が大切な友達なのは変わらないから』と考えて普通に誠実に接しているので、当たり前にこの世界の第三生徒会とも信頼関係を築けた形。
・ドリフ関係の事情は口止めされているので伝えていないが、彼女を引き取るに当たって生徒会長である楓には学園側からある程度は事前に伝えられており、今回の件で梅と夢結の上級生組にも多少の事情は伝えられる模様。

DAT隊:思ったよりゴタゴタした
・ダアトで“嘗てあった事”に関しては一通り伝えられており、その話の一部に出てくる“謎の勢力”がどうもドリフ掲示板で得た情報に類似性がありそうとして警戒していた。
・それらも含めて襲撃対策に備考には常に気を付けており、今回もあらかじめ決められた手筈でもって誘い込んでおり他にも“色々”と手は打っている。

第三生徒会:結成したてだがメンバー同士の仲は非常に良い
・梨璃の不安がる様子に関しては彼女の“巫女”としての霊感から来る啓示や直感によって、僅かだが襲いくる脅威や過去周回での悲劇をなんとなく感じ取ったからという裏設定がある(スキル的にはTRPGの【鋭い勘】の近似能力辺り)
・現在はグランギニョル社の第三世代武装COMP【CHARM】の試験運用を行なっているが、まるで『彼女達個人の膨大な実戦データ』で調整されたかの様に問題なく運用出来ているが、高レベルだからなのか結梨の物だけは調整が甘く破損が多くなってるので改修を行ってる模様。


読了ありがとうございました。
ラストの琴陽さんはアサルトリリィ舞台版及び漫画版に登場したキャラであり、オリジナル新しき神話勢力の一人として出演しています。次はこれまでベールに包まれていた(設定考えてなかった)ナホトラマンのダアト時代を少しだけ(今後の設定変更で過去が変わるかもしれないので)の概要を含めて敵性戦力との交渉フェイズを書いていく予定です。
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