真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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守護神 -ナホビノ-

 その御前──白井咲朱(さあや)と呼ばれる聞き捨てならない苗字のナホビノが現れた事で、援軍を警戒しつつ色々と“準備して”をしていたアンヌ副隊長──川添美鈴がこの世界の白井夢結と親しい者(のお姉さま)として見過ごせなかったから前に出た。

 

「……“白井”咲朱? 確か貴方が言っていた『ダアト時代の夢結が死ぬ原因になった事件』の首魁だったかしら?」

「はい、あの事件で神造魔人と白井夢結の融合による合一神化を強行したのは自分だと言っていました。……後は自称“白井夢結の姉”を名乗ってましたね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()筈ですが」

「ふぅん? そこまでの情報を知っていると言う事は貴方が嘗てのダアトを制した“あのナホビノ”で間違いなさそうね。今は八坂ヤマトを名乗っている様で、私の眼でもそう視えるわ」

 

フル・アナライズ特殊スキル対象一体のレベル、種族、名前、HP、MP、すべての属性の相性、所持スキルなどを確認できる。

人間だった頃に咲朱が持っていた【アナライズ】が【女神 ノルン】のナホビノとなった事で強化された。

 

 その疑問に答えたヤマトの眼は先程琴陽へ向けたものと比べても遥かに冷たい敵意を“敵”へと向けており、それを涼しい顔で受け流しつつ咲朱はヤマトの発言とアナライズの結果からその正体を推察していく。

 

「名前まで明確に変わっているという事は転移者ではなく転生者かしらね。まあダアトを制して世界に“人のみの世界を創世する”コトワリを敷き、私達を世界から放逐出来たナホビノであればそのぐらいはある得るでしょうが」

「(あのコトワリでコイツら追い出せてたのか、知らんかった)そこはご想像にお任せしよう(転生辺りは説明面倒くさいし態々言う気も起きないからな)」

『だが少年、情報は抜かれるが今は時間稼ぎの【ムダ話】を優先した方が良いだろう。ヤツは嘗てよりも強化されていて今の俺達がまともに戦うには厳しい相手だ』

 

 自慢げな表情で語る咲朱だったが、流石にアナライズだけでは複雑極まりない彼等の由来を正確に当てる事は出来ず、内心を隠してとりあえず『思惑通り(ニヤリ)』みたいな自信満々の表情をするヤマト達の内心までは見抜けなかった。

 彼等と副隊長が情報を漏らしたのも今異界への突入準備を整えてる他のチームDATが来るまでの時間稼ぎ、及び敵の情報を可能な限り抜く【ムダ話】を行うのが目的である。

 

「この世界の夢結にも姉なんて存在は居なかった筈だけどね。まあ転移者(ドリフター)なら過去周回で兄弟姉妹だった事があるってのは分かるけど、今の世界で関係ないなら単なる貴女と夢結の関係は“赤の他人”で夢結は貴女の妹によく似てる“そっくりさん”でしかないでしょうに」

「……相変わらず()()()()()()気に障る事を言うわね【川添美鈴】。何も知らない人間風情が毎回毎回こっちの邪魔をして来て鬱陶しいのだけど」

「おやぁ? “僕”の事も知ってるなんて、これが最近流行りの“知らない過去が追いかけてくる”ってヤツかしら。まあ、ヤマトから聞いた貴方がやってきた事……“夢結を人として殺して自らと同じ合一神とする”なんてイカれた所業を知れば、どの世界の“僕”も夢結を守る為に全力で妨害するだろうけどさ」

 

 顔は笑いながらも眼は何処までも冷たい副隊長が容赦なく辛辣な事を言い、それに対して咲朱は僅かに苛立たしそうな気配を出す事で彼等の間の空気は一気に張り詰めるぐらいには互いに敵意を向けているので【ムダ話】としてはかなり激しい舌戦になっているが。

 

「あら、私は夢結に“自分と同じ高み至って幸せになって欲しい”だけなのだけどね。それに嘗てのダアト世界での夢結を殺したのはそっちの彼よ、私は暴走した夢結を元に戻す方法を探していたのに」

「はっ、自分で暴走させておいて自分で治すとかマッチポンプ極まりない方法を取ってるヤツが言ってもねぇ。そもそもの原因になった人間合体実験を強行したヤツがどのツラ下げて言ってるのよ。ヤマトは夢結の願いを叶えてお前達の後始末をしただけでしょ」

「俺達があの世界で夢結を殺した事を否定する気はない。……だからこそ、同じ悲劇を彼女達がまだ人としての生を全うしているこの世界でまで繰り返させる気は無いぞ」

 

 そう言うヤマトとアオビトの脳裏に浮かぶのは先程聖華学園で仲睦まじく過ごしていた梨璃と夢結、そして結梨や第三生徒会メンバー達の光景であり、

 そんな儚くも尊い少女達の日常を守る為なら命を賭ける覚悟は党に出来ていた。

 ……それでも彼等には勝ち目の薄い無謀な戦いに挑まない理性はまだ残っていたので、ムダ話を引き延ばす意味と嘗てのダアトでは直ぐに戦闘に入って聞き出しきれなかった事を探る意味で話を続けるのだが。

 

「そもそもナホビノになった所で幸福になれるとは思えんがな。人間社会で幸福に生きるなら人間の方が色々と都合が良いし、例え世界が崩壊した後の戦力として考えても装備品とかで人間の方が融通が効く事も多い。……何より合一神になった時の主導権は基本的に悪魔側にあるだろう。ダアトで見た他の合一神はそうだった」

「そんな程度の低い話で“夢結の幸せ”を語っているつもりでは無いのだけれども、ナホビノになった後の主導権の話についてなり例外が今ここにいるじゃない。……嘗てのサマナーだった時代の仲魔で信頼関係を築いていた【ノルン】と合一した事で主導権を譲られた私、そして“人を守る”事を基本理念に組み込まれていた故に合一後も悪魔側が主導権を奪う気がなく人間だった時代の意識を維持出来た貴方が」

 

 確かにヤマトがダアト時代にカグツチを巡って争った他の合一神の意識陽悪魔側がメインだったが、実際に自分は神造魔人の側が主導権を握る気が無かったので人間側が主体となって行動出来ていた。

 

「悪魔は大半が己の知恵を持つ人間を半身と言いつつも実際は自分が神になる為に糧としか思ってないけど、それなら神に戻った後も人間側に主導権を譲る様に作られた悪魔を作ればいい。私としても夢結の意識が消えるのは不本意だったから、貴方から得られたデータを元に『夢結を合一神とする為の神造魔人』を作れる様になったのは感謝してるわ」

「それで結局暴走してるじゃないか」

「まあ前回は少し急ぎ過ぎたのは否定しないわ。神造魔人側の自我を大半を奪って夢結の言う通りに従う悪魔とすればナホビノになった後も自我を維持できると考えたけど、合一には双方の同意が必要である事や夢結の知恵が“狂戦士”系、或いは性質がそっちよりの英雄か猛将の類と言う扱い難いモノだった辺りが失敗の原因だったのよね。……だから次はこのデータを元に夢結の半身用に調整された神造魔人を使うわ」

 

 そう咲朱が言うとこれまでずっと彼女の背後にいたローブを纏った人物が前に出てフードを取ると、そこには見掛けは高校生ぐらいで何処と無く梨璃や結梨に似た顔立ちの少女の顔があった。

 

「お初にお目に掛かります、私は咲朱さまに仕える“神造魔人”の【L】と申します」

「神造魔人か……」

 \カカカッ/

神造魔人LLV8■備考:【英雄 ???】をベースとした神造魔人

 

 丁寧ながらも何処か慇懃な風にお辞儀をするLを見て目を細めるヤマトだったが、アナライズで見えた情報と気配が見知った自分と同じ神造魔人のものである事から納得し、それを見た咲朱が妖艶な笑みを浮かべながらLの肩に手を乗せた。

 

「彼女が夢結の半身“第一候補”となる神造魔人よ。合一には双方の合意が必要だから親しみやすい様に同年代ぐらいに設定したわ。……最も“前回の”失敗から反省したからLが必ず上手くいくとは思ってないし、そもそも()()()()()()()()から“今回は”性急に事は進めずじっくり時間を掛けてナホビノになれる様に慎重に進めていくつもりよ」

「……理解した。お前達が()()()()()()()()()()()()()()をしている事がな」

「なるほどなるほど……他の世界の“僕”やヤマトが君達の事を認めずに敵対する理由がよーく分かったよ」

 

 そんな事を自慢げに語る咲朱と対照的にヤマトと副隊長の視線は既に絶対零度を思えるレベルで冷え切っていて怒気すら漏れ出しており、そのままの雰囲気で副隊長(川添美鈴)が話を続けた。

 

「お前、夢結を幸せにしたいとか言って()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。結局は“自分にとって都合に良い夢結”を好き勝手したいだけで、この世界に生きる“今の夢結”の事をまともに見てないだろ。とりあえず夢結が自分の視点で幸せになってれば良いってぐらいで今の夢結自身の事はカケラも想ってない」

「……過去の失敗を教訓に次は上手く行かせようと考える事はそんなに悪い事かしら? そもそも漂流者なんて大体そんな連中ばかりでしょう」

漂流者(ドリフター)が過去に敗北した経験からこの世界では上手くやろうと思っているのは事実だし、俺自身もそういう考えがある事は否定出来ない。……だが、お前の場合は手段が最悪極まる。今の世界の人間の事を一切考えずに過去こうだったからこうすべきだと押し付ける、漂流者としては最悪の行動原理だ」

 

 この二人が許せないのは夢結を人間でなくさせる事でも、その為に少女型の神造魔人を量産する事でもなく、ただ“今の世界の夢結”の事をまともに見ておらずに自分の都合だけを押し付けるその在り方である。

 ……そうやって自分の視点では“絶対に必要な目的”を徹底的にこき下ろされた咲朱の雰囲気もすぐに剣呑なものとなり、ヤマトと副隊長の側も『コイツは相打ちにでもして始末するべきか』とまで考え始めるぐらいになっていた。

 

「何も知らない愚者どもめが。……この世界で幸せになるには人を捨てた高みに至る他なく、そうしなければ人類は救えないと言うのに……」

「ちょ、ちょっと待って! ……今日は御厳について探っている者の始末に来て、相手が“ダアトの勝者”だったからスカウトに目的を変える筈ですよね。なのでまずは“組織”としてスカウトに入る所から始めるべきだと思うんですが! それに組織の方の目的を語れば分かってくれるかもしれないですし!」

 

 そうして二人と咲朱の【ムダ話】がヒートアップして間にある敵意が膨れ上がり、このままでは本来の目的である交渉にならないかもしれず、更に探られたくない情報までバラしそうだと考えた琴陽が前に出て無理矢理話に割り込んだ。

 それを見た咲朱も少し落ち着いたのかこのままでは自分では話の途中で戦闘になりそうだと交渉役を代わる事を了承する意味を込めて後ろに下がり、ヤマトと副隊長もこのまま【ムダ話】を続けるなら彼女の方が都合が良いと判断して彼女との交渉を行う事にした。

 

「ええと、とりあえずさっき戦闘したのは貴方が本当にダアトの勝者かどうか確認する為だったんです、いきなり襲った事は謝りますごめんなさい」

「そこはもうどうでも良いが*1……それで“スカウト”とはどう言う事だ?」

「あ、はい。咬月さん……今はヤマトさんでしたか、貴方には私達<エウヘメリズム>に入って欲しいんです。ダアトを制したナホビノなら資格としては十分ですから」

 

 その組織名としては聞いた事のない名前に首を傾げるヤマトだったが、業界人として相応に知識の幅が広い副隊長の方は組織名ってしてはともかく『エウヘメリズム』という単語には聞き覚えがあった。

 

「<エウヘメリズム>? ……確か“王や英雄が死後祭り上げられたのが神の起源である説”の事だったわね。神々が元々人だったとされるこの説は、後に一神教にとって異教を貶める恰好の材料になったんだったかしら」

「ふぅん……確かに人類の叡智『Wikipedia』にも概要は載ってますね」

「まあそういう意味ではあるんですが、ロウやカオスと言った法の神が定めた枠組みを破壊して真なる自由を取り戻す人類救済の組織の名前としては悪くないでしょう? 法の神が異教を貶めるのに使った考えをもって法の神の枠組みを破壊するというのは皮肉が効いてて」

 

 ちょっと得意げな顔で語る琴陽だったが、それに対してヤマト達はイマイチ要領をえない内容だったのでとりあえずもう少し相手の勢力の情報を引き出せないか探りを入れる方針で【ムダ話】を続ける事にした。

 

「それで枠組みを破壊するってのは具体的に何をするんだ?」

「貴方も気付いているでしょう? この世界では人間も悪魔も唯一神が定めた秩序と混沌、白と黒の思想に分かれて殺し合っています。それを自分が正義と信じる方を光、悪と信じる方を闇として永遠に終わらない、答えの出ない戦いが続けられている事を」

 

 コイツ俺は質問してるのに何ポエムを話し始めてるんだ? 実はポエマーなのか? とヤマトは思ったが、まあ気持ちよく話しているみたいだし適当にそれっぽく頷いて先を促すかと思い直した。

 

「ほう、なるほど……それで、何故そうなっているんだ?」

「その理由はそれらが紛い物だからです。唯一神という存在が掛けた呪い、肉体という檻、宇宙という監獄に全ての思想が閉じ込められているんです。だから私達は人の魂の中の光を取り戻す為に仲間を集めているんです」

「だからこそ法の神が定めたルールではなく、終わらぬ新世界でもなく、神なる世界に統べてを導く為に我らは神話を紡ぎ続けているのよ」

(……具体的にっつってんだろ。コイツら人の話を聞いてないのか)

 

 何処までも具体性がないポエミーな発言をする琴陽と咲朱に対してヤマトは内心では辟易しつつも、多分これは偶に高位の悪魔それっぽい台詞を思わせぶりに語るヤツかなと考えた。

 この手のセリフは重要情報を知った上で後で思い出すと『アレはこういう意味だったんだ』ってなるヤツだとはダアト時代の各神話勢力巡り時に経験していたので情報を得る為にも我慢して【ムダ話】を進める事にする。

 

「ギリシャのザクレウスの神話とかグノーシス主義辺りの思想ね。まあ世界と肉体が悪で魂が光ってのは思想としては古来から珍しくないし、ぶっちゃけ今の世界を悪とするのはカルト宗教組織とかでよく聞く話なのよね」

「それで、人類を救済するってのは具体的に(強調)どうするつもりなんだ? せめて求人広告サイトレベルの具体的な説明を頼む」

「えーっと……その辺りは仲間になってからのお楽しみって事じゃダメでしょうか?」

「私達の言葉の意味がわからないなら所詮は“資格”がないという事。分かっていればこんなスカウトなぞするまでもなく我々の元へと来るのだから。……だから貴様も魔人王も天の玉座に侍る事すら出来ないのだ、神のマネカタよ」

 

 だからこっちは具体的にって言ってるんだが本気でスカウトする気があるのか(怒)……と思ってる内心を抑えつつ、恐らく彼女達的には自分達にとって重要な意味のある事を言っているつもりなんだろうと考えを回す。

 ……が、流石に具体性が無さすぎるか適当な思想のコピペみたいな発言だけでは目的を推測する事も難しく、真意を知りたければコイツらの活動方針の“根幹”を知る必要があるという結論にしかならなかったが。

 

「それでヤマトさんは私達の<エウヘメリズム>の仲間になってくれますか? ……今はそんな空気感じゃないかなーって事は流石に分かってますけど」

「私達の目的を知ればそれしか人類を救う手段は無いと言うことが分かるわ。そして夢結の幸福を思うならナホビノになって高みに至る事が唯一の道だという事を」

「そんな闇バイトの求人広告以下のスカウト文でイエスと答えるヤツは少ないと思うけどねぇ。それに夢結の事は組織の目的と言うよりは完全にアンタの私情でしょうが。そのぐらいは分かるわよ」

「クレイジーサイコシスコンレズとのカップリングとか“尊み”を感じないから推せないので嫌です。もう少し“お姉さま力”を上げてから出直してくれ、俺はゆゆりり推しなんだよ」

 

 ……そんな最悪の空気の中でのスカウト話だから上手く行かないだろうなと思っていた琴陽だったが、その中心人物である“ダアトを制したナホビノ”である筈のヤマトが言い放った言葉を理解しきれずに脳内に疑問符が溢れ出した。

 

「…………あの、今なんと?」

「クレイジーサイコシスコンレズと夢結とのカップリングは推せないのでスカウトはお断りします。ゆゆりりに挟まるならもっと尊みがある相手じゃないと嫌どす。第三生徒会の子達とかが挟まったり絡むならならイノチ感じる尊みに溢れた風景が見れるから良いんだけど、推しに無理矢理人間辞めさせる様なサイコシスコンが挟まるのは解釈違いなので」

「ブッホwww確かにそれじゃあ尊みも感じないし、自称姉を名乗るサイコな姉なるものじゃお姉さま力も足りないよね〜www」

「(イラァッ)」

 

 琴陽の再度の問い掛けに対して己の推しと尊みに対する解釈を一息で熱く語るヤマトを見て、琴陽は敵対していても実は少し尊敬していた強敵の口から出た余りにもあんまりな言葉に絶句し、後ろで聞いていたLは意味も理解できないから困惑し出す。

 そして副隊長は吹き出しながら容赦なく追撃の煽りを繰り出して、それを受けた咲朱は露骨に不機嫌ぬなりながら額に青筋を浮かび上がらせた。

 

「アンタも夢結に自分を殺させて一生その心に残るとかのムーブをしてたくせに。そっちも百合の間に男とかが挟まるのがアウトな百合豚になったのかしら?」

「その高二病はもう卒業したんでwww。今の私は“頼りになるお姉さま”ムーブを終始行ってます〜www。最近は後輩にお姉さまぶりつつも、私にもちょっと頼りたくて悩む夢結に尊みを感じて良い気分になるわね。……この世界の夢結の事を見てないアンタには分からないわね〜www」

「はぁ〜〜〜〜〜(クソデカため息)……別に俺は百合豚じゃなくて少女達の尊みに溢れる営みを見て心がピョンピョンするだけなんですが? だからそこに尊みと彼女達の幸せがあるなら別に間に男が挟まろうが文句は無い。重要なのはカップリングではなくそこに“尊み”と彼女達の“幸せ”がそこにあるかどうかなんだよぉ!!!」

 

 全力で煽り散らす副隊長と自らが思う“尊み”の概念について熱く語るヤマト達に気圧される自称エウヘメリズム勢。そも普段は真面目で戦闘ではガチだから勘違いするかもしれないが、この二人も特撮以外にも様々なオタク文化を嗜む『キリギリス』の一員故に自分の趣味に関して語らせたら結構凄い事になるのだ。

 

「ちょっとダアトの時とキャラが違いすぎませんか!?」

「俺にとっては前世(みたいなもの)だからキャラぐらい変わるさ。それにダアト時代は『自分がやらなきゃ』と思ってたから常に気を張ってたし、俺も必要に応じて外面を取り繕うぐらいは普通にするからな。……ただし、やってる事は今も昔も変わらない。ダアトでもこの世界でも俺は人が営む尊い日常の幸せが好きで、この星に生きて儚くも尊い小さいイノチを守る為に戦って来たのだから」

 

 再びこちらを見据えるヤマトの目が鋭いモノへと戻った事を見てとった琴陽は『ヨシ! これでシリアスな空気に戻れる……じゃなくてちゃんとした交渉が出来るね』と思って、咲朱を押し退けて前に出ながらヤマトとの普通の交渉を再開した。

 

「……この世界の人間に守るだけの価値があるのですか? ただ秩序と混沌に分かれて、それぞれが勝手な正義を掲げて無益な争いを続けているだけでしょう?」

「まあ俺もダアトやこの世界で碌でもない人間や悪魔は幾らでも見て来たが、それと同じぐらいに儚くも尊い日常で必死に生きている“輝く者”達を見て来たからな。だから俺は正義ではなく彼等と彼等が生きる世界を守る為に(今世)(前世)も戦って来た。……琴陽、お前は嘗てのダアトで夢結や梨璃、退魔生徒会のメンバーと一緒に過ごしていて楽しくなかったのか?」

「…………ッ!」

 

 そう語るヤマトの脳裏に思い出されるのは結梨や梨璃や夢結達第三生徒会が悪魔と戦う事を選びながらも楽しそうに日常生活を送る姿であり、嘗てのダアトで必死に日々を戦いながらも互いを支え合いながら日々を生きていた元退魔生徒会メンバーの姿でもあった。

 ……そして、そんな中には梨璃や夢結と笑顔で話す琴陽を見た記憶もあり、それについて少し悲しい目をしながら問いかけるヤマトに対して琴陽は苦虫を噛み潰したような表情となった。

 

「もう既に終わった事なんですよ、何もかもが。……それでも人類を救う為には私達のやり方しかないんです」

「だからスカウトする気なら具体的な方法を提示しろと何度も(ry ……それはともかく玉座に侍るとか神様になってコトワリを示すとかは前に派手に失敗したからもう懲り懲りなんでな。だから今は最後まで人の心の光を信じて共にこの世界で戦うと決めている。なんでお前達のスカウトはお断りだ」

「その“人の心の光”に真なる自由を取り戻すには唯一神の枠組みを破壊しないと……」

「そういう意味で言ったんじゃないんだけど、お前達は“人間をそういう風にしか見れない”んだな。……とりあえず【ウルトラマンティガ】を最後まで履修してから人の心の光について語るがいい。そこから他のウルトラシリーズに入っても良いよ」

 

 そうしてヤマトにスカウトを完全に拒否された(ついでにウルトラシリーズの布教まで行ってきた)事からもう交渉は無理だと思った琴陽は顔を顰めたまま下がり、代わりに再び咲朱が前に出て来て交渉を引き継いだ。

 最も既に交渉失敗は確定なので邪魔になり得る二人を此処で始末するか、或いはこれ以上こちらを探らせない内に撤退するかを考えながらだったが。

 

「(この子は少し優し過ぎるのよねぇ)まあ所詮は私達の目的も理解できず神なる世界に至る事も出来ない蒙昧なナホビノか。神でありながら人の世にしがみつくとは愚かな」

「その神なる世界とやらにはウルトラシリーズの最新話とかその他オタク文化があるんですか? ……え、無い?死ねよ。そもそもスカウト内容がポエム集な上にエウヘメリズムとかベテルとかカバー名ばっかりで本当の名前も名乗らないとか求人のやる気があるのか? ……なぁ【新しき神話】」

「…………へぇ、既にその名前に辿り着いていたのね」

 

 ……それもヤマトに口から秘匿していた筈の『彼女達が所属している組織の本当の名前』が出るまであり、その名を聞いた瞬間に咲朱はずっと抑えていたレベル90越え合一神の本気の気配を発しながら“自分達の本当の名前に辿り着ける敵手”へと向き直った。

 尚、ヤマトが彼女達の正体に辿り着いたのはドリフ掲示板で【ベテル】の名前が出て来て、詳しく調べたらおそらく【新しき神話】と呼ばれる敵性ドリフター勢力と関係がありそうだったからであり、今もその確認に為にカマを掛けたのでそういう反応を返してくれただけで目的は達成されたのだが。

 

「(カマ掛けは成功)フッ、俺もお前達について何も調べなかった訳では無いさ(後はそれっぽくドヤ顔しながら俺個人だけで動いていると思わせて掲示板はバレない様にしないと)」

「ふん、腐ってもダアトを支配したナホビノという訳ね。……だが、今わざわざそんな事を言ってこの場での敵対を確定させる必要は無かったんじゃ無い? 転生したのかが原因かは知らないけど“あの時”よりも随分と弱体化している様だし、今の貴方で私達を相手取れるかしらねぇ?」

「まあダアト時代と比べたら弱体化しているが、それでもお前達相手に全く戦えない程では無いからな。……相打ち覚悟であればやりようはあるぞ?」

「私も居るしねぇ」

 

 そう言いつつ仲魔達にも戦闘準備をさせるヤマトと新武装の【ダインスレイフ・カービン】を構えるアンヌに対し、琴陽とLも戦闘態勢梨取った……が、咲朱だけは途端に面倒そうな顔になる。

 

「チッ、よく言うわね。……それで戦闘になったら【ドロンパ*2】で隠れてこっちの隙を窺ってる仲間に不意打ちさせる気まんまんでしょうに。加えて直ぐにでもこの異界を破壊できる準備を整えてるって事は更なる援軍の用意もあるって事かしら?」

「…………あらら、バレちゃったか」

 

虚空の眼界自動効果スキル現在いるフロアのすべての敵パーティの認識LVを3にする。現在のフロアのすべてのトラップを発見。

人間だった頃に咲朱が持っていた【鷹の眼界(千里眼)】が【女神 ノルン】のナホビノとなった事で強化された。

 

 その魔眼を光らせながら指摘する咲朱に対して、副隊長は笑みを浮かべながらCHARMを持った方とは逆の手に忍ばせていた“異界破壊用の札”を見せびらかしてみた。

 ……実は連絡を受けていた他のチームDATメンバーは異界内部への潜入を行っており、ヘビクラ隊長による透明化によって姿を隠しながら奇襲のチャンスを窺っていて、更にキリギリスの連絡網を使っての追加の援軍派遣要請までしていたのだ。

 

「高レベル異能者を取り込むだけの異界だったから外に通じる穴を開けて仲間を呼び込むのもヤマトが戦ってる間に済ませられたわ。そしてそれが出来るなら破壊も難しくないし」

「所詮は簡易の幽世を作るだけの術式でしかないなら干渉もされるか。……仕方ないわね、撤退しましょう」

「よろしいのですか咲朱さま」

「今回は御厳について調べてる連中の始末が目的だったから色々と準備が足りてないしねぇ。……それに力を幾らか失っているとは言え、相手は『たった半年から一年程度でレベルを99まで上げてダアトに蔓延る勢力の大半を潰して勝者となった』ナホビノよ。少なくとも合一しただけでイキがるだけの“三流ナホビノ*3”共の様に一息で薙ぎ払える相手じゃないわ」

 

 そんな事をため息を吐きながら言った咲朱は撤退用アイテムである【回帰のピラー*4】を準備しながら、ヤマトと副隊長に向き合って最後の言葉を残した。

 

「この何処までも残酷な世界でいつまでそのふざけた態度が続けられるか見ものね。……いずれ私達が掲げる救済が唯一の正解だと言う事が分かるでしょう」

「だから具体的に言えと(ry ……それはともかくとしてウルトラシリーズが続いて少女達の尊みに溢れる日常が続いていく世界は絶対に守ってみせますが何か? ……この世界に生きる人間を信じて最後まで戦う、それが俺の意思だ」

 

 そんなやり取りを最後に咲朱達はその場から跡形もなく消え失せ、同時に異界と人払いの結果も消失して周囲に再び喧騒が戻って来たのでヤマトと副隊長はとりあえず他のチームDATメンバーと合流しつつ安全な場所に向かう事にした。

 ……交渉に際には戦闘になっても余裕そうに見える態度を維持していた二人だったが、内心では“戦闘になったら高確率で負ける”とも考えていたので行動は迅速である。

 

「大丈夫か二人とも。……COMP越しの通信で話は大体聞いていたがやっかいな相手に絡まれたな」

「ヘビクラ隊長、なんか向こうが俺を必要以上に過剰評価してくれたお陰で引いてくれたので助かりました。ダアト時代にレベル80ぐらいだったヤツをレベル99+レベル90後半仲魔三体ぐらいでボコったのが効きましたかね」

「それならあの警戒も当然かしらね(苦笑)……ただ、私達が狙われるなら対応は出来るんだけど夢結達にはどう説明したものかしらねぇ。御厳や合一神について話す訳にも行かないし、とりあえず最近物騒だから警戒してと言って……その辺りは今更よね」

「聖華学園にいる間はそうそう手出しは出来ないと思うが、俺達が四六時中護衛するなんてのも現実的では無いしな。……やっぱ自衛出来るまで強くなって貰うのが一番かねぇ。まったく世知辛い」

 

 そうして無事に【新しき神話】との接触を乗り越えたチームDATだったがそれは今後も連中に眼を付けられたと言う事でもあり、更には個人的に狙われている知り合いがいるなど積み重なる問題を如何すべきかと頭を更に悩ませる事となったのだった。

*1
御前へのヘイトの方が優先されたので

*2
味方一体を透明状態にする。非戦闘時では認識レベルを低下させる。

*3
格付けチェック的な意味で。レベル70代にもなれないか、なる努力もしないナホビノならそっくりさんか映す価値なし判定。

*4
最後に訪れた龍穴まで戻る。使用しても無くならない。真5出典。事前に遠距離にある龍穴をホームポイントに設定していた。




あとがき・各種設定解説

ヤマト&アオビト:尊みの守護神(ナホビノ)
・人間を守るウルトラマン達への憧れとかダアト時代に接した“輝く者”達の記憶、そして今も生きている結梨や梨璃達が幸せに生きる日常を守りたいと言う想い……が悪魔合体して尊みの推しの守護神に進化した(笑)
・ちなみに今回アオビトが話さなかったのは自分の情報を向こうに伝えない様に気を付けていたからと、人を守る想いはヤマトと同じだった(尊み云々に関しては横に置いておく)ので話す必要がなかったから。

戸田琴陽:実は割と苦労人
・過去周回でメシア教の天使人間改造の実験体とされていた時に咲朱に救われた恩もあって従っているが、彼女の個人的な目的自体には賛同している訳ではなく中立の立場で恩があるのとお互いに利害の一致から協力している形。
・どちらかと言えば【新しき神話】自体の理念に賛同している立場とイメージして書いているが、まだ新しき神話の詳しい描写が本家様で成されていないので今は詳細は不明なふわっとした感じ。
・ダアト時代では超大規模ボルテクス界である事とトライアド対策の魔人王の妨害によって新しき神話も最初は少数しかダアトに手勢を派遣できず、その内の一人として潜入した。
・そこで比較的良心的な勢力を集めて『ベテル』と言う組織を作りつつ、それを隠れ蓑にして暗躍していたが咲朱が神造魔人融合実験を行った事がキッカケで存在がバレてナホトラマンにボコられた。
・その後は辛うじて生き残って撤退しており、準備が整った本命がダアトに降臨する予定だったが『人のみの世界を創世する』コトワリで世界が再構成された所為で人外だらけの新しき神話は締め出された模様。

白井咲朱:やべー女
・合一している【ノルン】は人間だった時代の彼女の仲魔で深い絆(疑似姉妹的な意味)で結ばれており、合一事に彼女の人格が消えない様にノルン側から人間側の人格が優先される様に譲られた形。
・その結果人間だった頃の人格が主体になっているが、夢結をナホビノにする事に固執するなど人間だった頃には考えられない行動方針になっていたりと精神や人格にはナホビノ化で大分変質している。
・……こんな感じで原作アサルトリリィの『御前』の設定をメガテンナイズしているが、琴陽と同じ様に今後の本家様の新しき神話関係展開次第で設定追加・改変があるかもしれないので詳細設定は未定にしておきます。
・ちなみに撤退を選んだのはナホトラマンを警戒していたのもあるが、本格的な戦闘を行う準備が出来ていなかった事や神造魔人のLの調整が終わっていない事、後は肝心の夢結のナホビノ化の下準備もまだなので今ダメージを負うのはデメリットが多いと判断した事などがある。
・ダアト時代は琴陽と連絡を取りつつ夢結をナホビノとすべく暗躍していたがナホトラマンに阻止されて同じくボコられるも生存、そこから瀕死の琴陽を助けつつ撤退した。
・その際に神造魔人関係の資料やダアト世界にしかない“資材”を持ち出して、後にLの製造や自陣営の強化に役立てるなどタダでは負けない執念深さがある。


読了ありがとうございます。
ちなみに咲朱が言った『神なる世界』云々のポエミーな話はほびーさんから頂いた新しき神話の勧誘文句であり、メガテンあるあるの『最初は意味わからないけど後で思い返すと理解できる高位悪魔の意味深なセリフ』だそうです。なのでナホトラマンも作者も意味は分からん。
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