真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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注意喚起と新たな出会い

「……そういう訳で実はこの世界はなんかループしてるらしくて、更に今現在過去の周回と言われる異世界からの来訪者である【漂流者(ドリフター)】と呼ばれる人間が多数この世界にやって来ているの。そして貴女達が使っている【CHARM】も過去周回でグランギニョル社と関係のあったドリフターが持ち込んだCHARMのデータを元にして開発と調整が行われているのよ」

「「「えぇっと……(困惑)」」」

 

 そうして【朋美・ヌーベル】社長夫人と邂逅したチームDATと聖華学園第三生徒会は『待合室で話し合うのもアレだしね』という理由で用意されていた会議室(防諜設備完備)へと移動し、そこで世界のループやドリフターの事やそれらをグランギニョル社が積極的に徴用している事などについての説明を受けた。

 ……最も困惑しているのはそれらの情報が初耳だった生徒会メンバーのみで、特に既に事情を知っていたチームDATの面々は特に動揺はしておらず、ヘビクラ隊長と天才技術者のミツヒロに至っては『やはりグランギニョル社が武装COMPをこれだけの速度で実用化したのはドリフターからの技術提供があったからか』と納得していたが。

 

「お母さま、世界がループしているなんて眉唾物な話を本当に信じているんですの? 私も学園の方からドリフターと呼ばれる突然この世界に現れた人間を迎え入れているという話は聞いておりましたが……」

「まあループ云々自体は私も半信半疑って所ね。……でも実際にグランギニョル社製のCHARMなのに技術レベル的に制作は数年は先に作られる予定の物を持ったドリフターがいるから状況証拠は揃ってるのよねぇ。ループがダメなら異世界とか並行世界みたいな解釈でも問題ないとは思うけど、少なくとも“我が社よりも技術レベルが数世代未来のグランギニョル社が有った世界”から来てるのは間違いないわよ」

「ううむ、それらも眉唾物な事は変わらないとは思いますが、実際に証拠があるならそれに関しては認めざるを得ませんか。……そもそも私達が使っているCHARMも出来たばかりなのに“長期間使ってデータを揃えて最適化させた”ぐらいに正確な調整がされてますし」

「ああ、その辺りは『別世界の貴女達【第三生徒会】が使っていたCHARMの運用データ』をこっちで保護していたドリフターが持ってたからね。それを基準に調整したから。……そっちの結梨ちゃんのデータは無かったから調整が甘いけど」

 

 その事実を聞いて流石に驚きが隠せない第三生徒会メンバーだったが、逆に武装COMPに詳しく自力で整備が可能な技術を持つ楓とミリアムはどこか納得した様な表情を浮かべた。

 

「なるほどのぅ、通りで送られてきたCHARMの調整が個人個人に完璧に合わせておったと前々から疑問に思っておったが、並行世界の自分自身の運用データが使われていたなら納得出来るの。……ひょっとしてワシが百由様にオリジナルCHARM【ニョルニール】の設計図面を送ったら、より高性能な設計図面とそれによく馴染むパーツを送ってきたのも……」

「それは過去周回のぐろっぴが使ってた【ニョルニール】のデータを元に添削とパーツ選びしたからね〜。流石に幾多の実践を得て改造を重ねたっぽいCHARMと比べたら性能面では劣るでしょ」

「やはりか! ……うむむ、技術者としては別世界の未来で経験を積んだ自分とは言え、こうもあっさり自分が考えた物よりも高性能なヤツを出されるとちょっとショックじゃな」

「まー今のご時世では自分で使うなら性能に妥協しちゃいけないからね。その悔しさをバネに別の自分の技術も飲み込んでより強く成長するのじゃぐろっぴよ。……私も過去周回の自分が作った【メカルンペルシュティルツヒェンmarkⅨ】とかいうマシン悪魔を解析と量産が出来ないかとか無茶振りされてるしね! そもそもこっちじゃ悪魔とマシンの融合はまだ理論段階なのに〜!」

 

 過去周回からの未来技術を受け取って技術者のプライドとかが揺らいだミリアムと、未来技術をどうにか実用化しようと日々徹夜しながら技術開発している百由が嘆いたりしているが、それでも技術者の視点から過去周回やドリフターについてあっさりと受け入れていた。

 また事前に【ドリフター】という存在のさわりぐらいは聞いていた楓、梅、夢結の上級生組もループ云々は想像し難い概念だから半信半疑なものの、高い技術力と頭脳を持つ百由がそれを事実と受け入れている事、何よりグランギニョル社の社長夫人が言っている以上は『異世界より来た漂流者』の存在は事実なのだろうと納得していた。

 

「うーん、ループとかドリフターって言われても実感が湧かないなぁ。結梨ちゃんはどう思う?」

「ドリフターは普通に居るし世界がループしてるってのも多分本当だと思うよ。だって結梨もドリフターで別の世界からここに飛ばされて来たもん」

「…………え?」

 

 それに対して与えられた情報にどう反応すれば良いのか迷っている様子の梨璃だったが、そこで結梨が『丁度いいから結梨の事情も話しちゃおう』ぐらいのノリで自分がドリフターである事をカミングアウトしたせいで思わず絶句してしまっていた。

 ……勿論、結梨としても適当な理由で話した訳では無く、ドリフターの事を知らない人には話してはいけないと言われていたから今までは話さなかったが、自分にとって大切な人達である第三生徒会メンバーが事情を知ったなら『ドリフター』という存在の事をよく知って貰う為にも事情を話しておいた方が良いと考えての事である。

 

「……結梨はこことは別の世界、この世界と違って【クズリュウ】に文明が破壊されてクズリュウが討伐された後も崩壊した文明で色々な勢力が争っていた世界で第三生徒会のみんなと一緒に戦ってたんだ。……そこに現れたセプテントリオンと結梨は戦って、全属性無効のアイツを倒す為に特攻を掛けてどうにか倒そうとして自爆した後に気が付いたらこの世界に飛ばされたの」

 

 そうして自分の事情を説明していく結梨だったが自らの出生に関してはヤマト達側のナホビノ関係の事も関わっているので余り話さない方が良いと言われていたので具体的な事は話さず、自分が過去周回で第三生徒会として戦っていた事とそれからこの世界に飛ばされた事を簡潔に話していった。

 それからこの世界に来て【黎明の祈り手】に拾われた事、同じドリフターである事が縁で知り合った(という事にしている)ヤマトがいる【チームDAT】と知り合った事、そして彼らの好意で再び聖華学園に入学してもう一度第三生徒会と友達になれた事を語った。

 

「……そんな感じで結梨はドリフターの一人として聖華学園に入学して生徒会に入ったって感じかな。それと他にも聖華学園にはドリフターが結構お世話になってるみたい」

「結梨さんが言っている事は本当ですわ。私も教師達や第十三生徒会辺りから少しドリフターについて話を聞いておりましたから、結梨さんの事もドリフターである事は少し前に知っていました。……まあ事情が事情なので吹聴する事は出来ませんでしたが」

「それに関しては事情は分かりましたし、結梨ちゃんと楓さんが言うならドリフターっていう人達が本当にいる事は信じます。……でも、結梨ちゃんが別の世界の“私”と会ってたのに私はその事を何も思い出せなくて……」

 

 結梨や楓の説明を得た事もあって『とりあえず【ドリフター】という人達がいる事は理解しておこう』と言う形で情報を各々理解して飲み込んだ下級生組だったが、その中でも梨璃だけは結梨の話を聞いて申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

 ……その様子を見た結梨は少し苦笑気味の笑顔を浮かべながら梨璃に近づき、その両手を優しく自らに両手で包み込みながら語り出した。

 

「大丈夫だよ梨璃、別に思い出せなくても。……というより、過去周回の“梨璃”と今の梨璃は違う人なんだから別の世界の事なんて思い出せない方が普通なんだしね」

「でも……」

「それに結梨が梨璃と友達になろうとしたのはもう一度梨璃と友達になりたいって思ったのがキッカケだけど、この世界で改めて友達になれたのは結梨が学校で話し掛けた時、梨璃が初めて出会った結梨の事を笑顔で受け入れてくれたからだから。……それから二水や生徒会のみんなとも友達になれたから、そのキッカケをくれた梨璃にはとても感謝してる。前の世界とか関係無く今の梨璃と友達になれた事が嬉しいの」

「結梨ちゃん……」

 

 結梨としては『前の世界の梨璃達第三生徒会』の事は今でも大切に思っているが、それはそれとして今の梨璃と第三生徒会の事も当然の事ながら大切な友人達であると思っており、今の世界の梨璃達と友達になって共に在りたいと思ったからこそ再び生徒会の一員となったのだ。

 少なくとも過去では無く今の自分達を見ている事が分かる結梨を見た梨璃は同じく笑顔を浮かべ、それを見た他の第三生徒会メンバーやチームDATの雰囲気も柔らかいものとなった。

 

「うーん、やっぱりこの二人のほんわかした、まるで姉妹の様な関係性はいいですねぇ。そういう尊い関係性が多そうな第三生徒会のスカウトに乗って良かったです」

「うむ、こういうお互いを想い合う少女達の尊い関係性はいつ見ても良い物だな。心が洗われる様だ」

「……貴方も“尊み”がイケる口ですか。私は聖華学園第三生徒会に所属している二川二水と言います」

「俺はチームDAT所属の新人隊員八坂ヤマトだ。君の事はお兄さんのケンジロウさんとかから聞いているよ。……どうやら君と俺は“親友(ソウルフレンド)”の様だな」

 

 そんな二人のやり取りを後ろの壁際で見ていた二水とヤマトはその“尊みオーラ”的なモノにでもやられたのか、お互いの目を見て一言二言交わしただけで“尊み信仰者勢”同士で変なシンパシーが生まれると共になんか無言でガッチリ握手していた。

 ……それを傍目から見ていたケンジロウが『何この愚妹と新人隊員なんかいきなり仲良くなってるんだけど。怖っ』と想いつつジト目になっていたりもしたが、それはともかく第三生徒会メンバーがドリフターの情報を理解した所で生徒会長である楓が母親に向かって“話の本題”を問いかけた。

 

「それでお母様、ドリフターに関しての事情は大体理解しましたが、一体なぜ今この話を私達にしたんですの? 私達は確かに聖華学園の退魔生徒会でありグランギニョル社のCHARMのテスターもやっておりますが、わざわざ会社の秘匿事項であるドリフター関係の情報を話したからには何か理由があるのでしょう?」

「……そうね、まず一つ目はさっきも言ったけど貴方達に試験運用を頼んでるCHARMには“過去周回の貴女達のデータが使われているからね。今我が社では確保したドリフから得た未来技術製のCHARMの実戦データを元にして武装COMPの発展と強化を急ピッチで進めているわ。貴女達にテスターを頼んでいるのも過去の貴女達のデータを実用化させるなら、同一存在である貴女達に過去データから再現されたCHARMを使わせるのが一番安全かつ効率的だからというのもあるわね」

「まあ、コネを使って生徒会の装備を頼んだ私が言うのもアレですが、明らかに要望以上の装備を送って来た以上は会社にも相応の理由があるのだとは思ってましたわ。お父さまが私に気を利かせてくれたにしても多過ぎましたし」

「親バカのあの人がそういう名目で楓がいる生徒会への支援を増やしたと言う面がない訳でもないのだけれども、まあメインの理由は効率的なデータ収集の為よ。……そして貴女達に正確な事情を話したのは潤沢過ぎる支援に疑問を覚えられるだろうから、先に説明しておいた方がいいと考えたのが一つ目ね」

 

 現在グランギニョル社では過去周回の武装COMPなどのデータを現行世界の同一存在に使わせる事で、可能な限り実験運用の安全性を保ちながら効率的に運用データを収縮して、そこから過去周回の技術を汎用的なものとして実現する技術開発をメインに行っていた。

 実際、第三生徒会メンバーは同一存在が過去周回でCHARMを運用していたケースが多く、引き込んだドリフターから得たデータをそのまま使えば武装COMPに『COMP改造における“マスター効果*1”の運用』『魔晶装備スロット最大3つ』『コマンダースキルも一つなら採用可能』と言った現行最高レベルの性能で運用可能かつそのデータを収集出来るので、現在のグランギニョル社でもトップクラスに重要な試験運用部隊と見られていた。

 

「そんな重要なポジションにある貴女達に詳しい事情を話さないのは不義理だし、何より情報を話さない事によって起きる不利益の方が大きくなるだろうからね。楓やそこのミリアムちゃんの様に疑問に思う子も出てくるだろうから、それなら先に話しておいた方が良いと言うのが一つ」

「……と言う事はドリフター関係の情報を話したのにはまだ理由があるのですわね」

「ええ、もう一つの理由は現在グランギニョル社が悪性のドリフター組織に狙われてる可能性が高く、社長令嬢である楓やドリフター技術を使った最新CHARMの運用試験を行なっている貴女達が狙われる恐れがあるから注意喚起する為なのだけど……そうね、詳しい話はこっちで保護したドリフターを交えて話した方が良いかしら。入って来て良いわよ」

「……失礼します」

 

 朋美社長夫人言われて会議室へと入って来たのは5人の少女達──グランギニョル社で保護されて最新武装COMPの運用データを届けたドリフター【ヘルヴォル】の【相澤一葉】【飯島恋花】【初鹿野瑤】【芹沢千香瑠】【佐々木藍】の五名であった。

 

「お久しぶり……いえ、この世界では“初めまして”でしたね。私はグランギニョル社所属最新鋭武装COMP試験運用部隊【ヘルヴォル】の隊長を務めています相澤一葉です。ヌーベル社長夫人から紹介された通りこの世界に来た漂流者(ドリフター)の一人でもあります」

「相変わらず硬いなぁ一葉は。アタシは飯島恋花、一葉と同じ世界から来たヘルヴォル所属のドリフターで副隊長みたいな事をやってるよ。改めてよろしくね」

「ヘルヴォル所属の初鹿野瑤。同じくドリフター、よろしく」

「ヘルヴォル所属の芹沢千香瑠と申します。私含めこの五人は同じ世界から一緒に飛ばされて来たドリフターになりますね」

「……ささきらん、よろしく」

「彼女達がグランギニョル社で保護しているドリフターで“別世界の貴女達”が使っていたCHARMの運用データを持っていた者達よ。それで保護した後は最高待遇で我が社に迎え入れたわ」

 

 それから朋美社長夫人はヘルヴォルの事情──彼女達がグランギニョル社日本支部が管理している異界に流れ着いた所を保護され、有していたCHARMや実戦データの有用性から自社に迎え入れて武装COMP運用の実験部隊として雇っている事などを簡潔に説明して行った。

 そして話はグランギニョル社が現在狙われている可能性があると判断するに至った情報、彼女達ヘルヴォルがいた世界でグランギニョル社が悪性のドリフター系組織と思われる【ガイア再生機構】に買収されて【G.E.H.E.N.A】と言う非人道的な活動をも辞さない組織へと変貌した事へと移っていた。

 

「この【ガイア再生機構】はこちらで調査した所、この世界の侵略を目的とした悪性のドリフター組織である可能性が高いと判断されたの。ヘルヴォルがいた世界ではグランギニョル社を買収してそれを隠れ蓑に好き勝手していたらしいわ」

「私がいた世界ではグランギニョル社は【G.E.H.E.N.A】と言う組織に変貌した後、世界崩壊を乗り越えると言う名目で人体改造や人間の悪魔化、果ては悪魔と人間と機械を融合させた【ヒュージ】と言う兵器を作るなどして暴虐の限りを尽くしていました。……私達はそこで人体改造を受けた強化人間だったのですが、そのやり方に反発して過去周回の【楓・J・ヌーベル】がリーダーを務める元グランギニョル社のメンバーで構成された反G.E.H.E.N.A.・反ガイア再生機構の組織に入って戦っていました」

「まあ向こうは世界を復興させてる正義のガイア再生機構様だったからねー。こっちは社会から終始悪者のテロリスト扱いでG.E.H.E.N.A.の悪行を叫んでも無視されて、隠しきれなくなったら『悪のG.E.H.E.N.A.を倒すガイア再生機構』なマッチポンプで切り捨てだったから。加えて私達は情報操作でG.E.H.E.N.A.の残党のテロリスト扱いされたし」

「早期にG.E.H.E.N.A.とその裏で糸を引いていたガイア再生機構の危険性を“両親が暗殺された事で”気が付いた楓さんが作ったレジスタンス組織でしたが、終始相手の方が一枚上手で結局は私達ヘルヴォル以外は全滅してしまいました。……ですが彼女がいなければ組織的な反抗すらも出来ずに私達はガイア再生機構に使い潰されていたでしょうが」

「……私達は当時個人でガイア再生機構へのテロ活動をしていた【ジャグラス・ジャグラー】に助けられてこの世界に来たけど……」

 

 暗い表情をしながら過去周回で起きた事を語るヘルヴォルのメンバーを見て嘘は言っていないと思う第三生徒会だったが、説明中レジスタンス組織の立ち上げやら圧倒的戦力差のガイア再生機構相手にもやり合った卓越した戦術眼とカリスマ性を持つ指導者的存在として自分の名前が出て来る楓はちょっと宇宙猫になっていた。

 ……それと最後あたりで【謎の魔人 ジャグラス・ジャグラー】の名前が出た瞬間にチームDATメンバーは一斉にヘビクラ隊長の方を見たが、本人は『まったく心当たりはないなー。そもそも過去周回の事だから今の俺には関係ありませーん』と言わんばかりの素知らぬ顔をしていた。

 

「楓さん前の世界でそんな事をしていたんですね、凄いです」

「梨璃さんに褒められるのは悪い気はしませんが、今の私にとっては全く知らない過去の話なので反応に困りますわね。……グランギニョル社が間違った道に進むならそれを正すために声を上げるぐらいはするかもしれませんが、本当に過去の私は何故そんな事になっているのか」

「うーん、でも楓ならそのぐらいやりそうな気もするけどなー。何だかんだで自分との実力差がどれだけあっても悪や理不尽には屈しない強メンタル持ちだし」

「私としてはあっさり暗殺されて娘にそこまでさせる過去周回の自分が情けなく思うけど、それよりもガイア再生機構とやらがこの世界にもやって来ている事が確認されてるのが問題ね。同一組織であるのなら過去周回と同じ様にグランギニョル社を買収したり、或いは過去に自分達相手に抵抗した楓達に何かして来る可能性があるわ。だから貴女達に今日注意を促す事にしたのよ」

 

 今回第三生徒会を呼び出してドリフターの情報を教えた真の理由はそれであり、世界を何度も侵略している連中であれば過去周回で利用出来そうな勢力と同一勢力を取り込んだり、邪魔だった人間の同一存在を排除する可能性があったから注意喚起をして警戒を促す目的だったのだ。

 今もグランギニョル社ではヘルヴォルなどのドリフターから得た情報と共に対ガイア再生機構用の買収・暗殺・諜報対策で社長を始めとした専門家達が動いており、事情を知っている多くの社員が技術開発と並行してブラック労働一歩手前ぐらいに働いていたりする。

 

「要するに原作崩壊系2次創作で原作キャラを排除して好き勝手なオリ展開やろうぜとか、ゲーム二周目で周回知識活かしてRTAプレイとかして来る悪性ドリフター勢力対策に情報を伝えておいた方が良いと判断した訳。幸いというかいまのグランギニョル社はフランスの本社を始めとして世界にある支部の殆どが壊滅状態だから逆に買収が難しいし、例え買収しても世界をどうにかする程には“使えない”だろうけど。防諜する範囲も日本支部含めて一部の狭い範囲で済むから比較的楽だし」

「余りに酷い例えですが非常に分かりやすいのがなんか悔しいですわ。それと実家がボロボロだから逆に買収され難いとか言われても反応に困ります。……まあそう言う状況であればグランギニョル社取り込みの優先度は低くなるでしょうが」

「ですが油断は出来ませんよ楓さん。既にガイア再生機構が動いている情報は掴んでいますし、先日レルムに現れた“謎の超巨大悪魔”。アレと同種と思われる巨大悪魔は私達がいた世界でも現れていて、それらを再生機構が倒した事で奴等は一躍世界の救世主と祭り上げられました」

「まあその後の調査とかこの世界で他のドリフターから聞いた情報を総合すると再生機構のマッチポンプの可能性が高いわね。レジスタンス時代の推測だけど巨大悪魔による社会不安を起こしつつ、自分達が存在をアピールして社会経済に介入しやすい状況を作るのが目的だと考えられてたし」

「まあその巨大悪魔は現地のデビバス達だけで倒せたんだがな。掲示板ではレベル高いくせにデカジャデクンダも使わない情けないボスで、デカくて強いだけの雑魚を倒してレベルアップうま〜とか話題だったな。チームDAT的には巨大怪獣と戦うとかやってみたかったんだが気付いたらもう終わってて残念だったが」

 

 そんな事を言うヘビクラ隊長であったが、これで第三生徒会への説明が一通り終わったと見て『何故自分達チームDATもここに呼び出されたのか』を社長夫人に聞く事にした。

 

「さて、そろそろ俺達チームDATまで同席させた理由を聞かせてもらえるかな? ……余程グランギニョル社は()()()()なのか?」

「相変わらず話が速くて助かるわねヘビクラ隊長。……今のグランギニョル社はフランスの支援とか再生機構対策の活動とか技術開発とかで本気で人手が足りてないわ。加えて有しているデビルバスターの実力も欧州戦線に腕利きが取られてる事もあって、足切りライン(レベル50)は超えてるけど再生機構の平均レベル60越えな戦力を相手にするのは不安なのよね」

「つまりドリフターについて詳しく前からグランギニョル社の依頼を受けてるから信用もあり、再生機構の戦力ともやり合えるだけの実力もある俺達を囲い込みたいって事か?」

「正確に言えば対ガイア再生機構関係でグランギニョル社とチームDATで協力関係を敷きたいって話ね。そっちのスタンス的にはフリーでいたいでしょうから会社に所属しろとは言わないけど、今まで以上に相応の報酬は出して依頼するからこれまでよりもドリフ関係で情報交換や戦力的な分野で協力を強めていきたいって事よ」

 

 現在絶賛人員不足中なグランギニョル社はドリフターやフリーのデビルバスターなどの取り込みを積極的に実行しており、今回チームDATを呼び出したのも実質的に自分達の子飼いか紐付きにする為でもあった。

 まあ、相手のスタンス的に形式上は今まで通りにフリーへ依頼する形式の方が好まれるだろうからそこは崩さず、付き合いのあるデビバス達の中でもトップクラスの実力と実践、そしてドリフターについても把握していて何より娘がいる第三生徒会との繋がりもある戦力として協力関係を結ぶのが最終的な落とし所と考えていたが。

 

「……分かった、俺達チームDATはグランギニョル社と対悪性ドリフター関係で本格的に協力関係を結ぶ事に同意する。こっちでも独自に悪性ドリフター組織に着いて調べてるんだが情報収集的にも戦力的にも限界が見えていたからな。巨大会社の本格的なバックアップはありがたい」

「ありがとう、思ったよりも話があっさり決まったわね。……そっちでも調べてるのなら協力関係は上手くいきそうかしら」

「それに第三生徒会関係に関してもちょっと面倒な事態になってるからね。……どうもウチで預かってるドリフターであるヤマトが元いた世界にいたキチガイドリフターが夢結を狙ってるらしいから」

「ちょっと待って下さい美鈴お姉様、それは初耳なんですが」

 

 協力関係を結べたと思ったらいきなりそんな話をされて流石に驚くチームDAT以外の面々だったが、注意喚起をするなら丁度いいタイミングだったのでアンヌとヤマトは先日起きた【新しき神話】の一派による襲撃の情報を掻い摘んで説明する事にした。

 ただし、合一神関係の情報を迂闊に話す訳にも行かないので、その部分は『夢結を悪魔と融合させて上位の存在にするのが正しいと思い込んでいるキチガイじみた動機で動いているらしい』という悪魔業界ならまあまあ聞く感じの情報にボカして伝えたが。

 

「……そういう訳で、もしかしたら夢結の元に『貴女を新世界の神にしてあげるわ』とか言って悪魔合体を勧めてくる不審者が現れても決してついていっちゃ駄目よ。レベルも推定90超えだから戦わずに逃げた方が良いわね」

「レベル90……まあそれは分かりましたがお姉様、流石に新世界の神になれるなんて詐欺にしか思えない話に頷く程私はバカじゃないですよ。そんな“悪魔の囁き”には耳を貸さないこの業界の常識は弁えてますし」

「まあ気を付けてれば大丈夫なら“悪魔の囁き”とは言われないんだがな。……人間は弱いから自分の力だけでどうにもならん事があって、それを『力が欲しいか……?』的に人間を越えればどうにか出来ると言われたら飛び付いてしまうものなんだよ。デビルバスターの常套句に『悪魔に乗っ取られない様に気を付けて』って言葉があるぐらいに、昔から現代まで“悪魔の囁き”に乗って人を止める者が後を立たないんだよなぁ」

「俺だって悪魔に襲われて死にかけてから契約を持ちかけられて人間を辞めたからな。追い込まれた人間はあっさり悪魔の囁きに乗ってしまうのも分かる。……それに俺も過去周回では“新世界の神”とやらを目指してしまっていたからな。世界がどうしようも無く理不尽過ぎると思い込んでいた所に『貴方には新世界の神になって理想の世界を叶えられる権利があります』と言われたら抗うのは難しいものだ。人に願いや欲望がある限りはな」

 

 最も嘗て新世界の創世の為に戦ったヤマトとアオビトも、創世した新世界があっさり滅んだ事と転生を得て色々な情報を知ってからは『新世界の神なんてどっかのスターオブザスターズオブザスターズレベルの滅私奉公聖人マインドでも無ければロクなモノじゃないし、そもそもたった一体の神がトップに立ったぐらいで理想の世界が出来るなら世界はループを繰り返してないよね』という結論になっているが。

 なので現在の彼等はナホビノではあるが既に創世の意思を放棄して、今この世界にある“尊み”を守る守護神的なルートに進んでいたりするが(笑)それはどうでも良い話なのでチームDAT川の情報を聞いた朋美社長夫人合一話を纏める事となった

 

「まあ、とにかくドリフター関係で厄介ごとに巻き込まれる可能性があるから、貴女達も学園内部はともかく外部で活動する時には可能な限り自分達だけで行動しないか戦力を十分に準備させた上で行動してほしいわね。ドリフ関係なくても最近はヤクザやマンハントなどの突発的な襲撃がよくあるし」

「それと私達ヘルヴォルも楓さん達の護衛を兼ねて聖華学園に転入する事になりましたので改めてよろしくお願いします。聖華学園では未成年ドリフターの受け入れを行なっているという事なので試験を突破すれば編入は可能だそうなので」

「ええ、聖華学園退魔生徒会として転入生は歓迎しますわ。……最近非常に編入生が多く、彼らがドリフターと言うとまでは聞いてましたがこう言う事情でしたか。どうりで最近は問題児が多いと思ったら」

「異能者系問題児を〆るのは退魔生徒会の基本業務だから梅達も変な編入生のトラブル解決には駆り出されてるからなー」

「学内の異能者が変わり者なのは珍しくないのだけど、一般常識すら怪しいと言うか価値観が大きくズレてる生徒が増えている正確な理由が分かったわね」

「えーっと、一応アタシらはちゃんとした一般常識はあるし迷惑は掛からない様にするから」

 

 日夜学内の問題を解決してながら自分達のレベリングも並行してやっている退魔生徒会であるので、特に仕事量が多い上級生組学園疲れた様子を見せるのもまあしょうがないだろう。

 ちなみにヘルヴォルの入学に関しては寄付金とかで学園に伝手があるグランギニョル社が手を回したのと、まで未成年の彼女達には学校に通って普通の子供らしい生活を送って欲しいと言う社長の配慮があったりもするが。

 

「ま、ヘルヴォルの皆さんの学園転入に関してはまた後で考えるとして、ドリフター関係で他に何か私達に伝えたい事ややって欲しい事などはありますのお母様?」

「特に無いわね。今日言われた事を注意しながらこれまで通り退魔生徒会と最新CHARMの試験運用をしてくれれば良いわ。出来れば今日はついでにちょっと会社で本格的なCHARMの調整とデータ収集をしてくれればありがたいぐらいかしら」

「……それだけですの? 今グランギニョル社が大変な事になっていると言うのに……」

 

 ……楓・J・ヌーベルと言う人間はまだ学生だが高い実力(学園基準)を持つ異能者であり、その力を他者の為に使う事を厭わない高潔で善良な性格をしているが故、ドリフターの情報で実家や世界が思った以上に大変な事になっていると知って自分達は学園で普通に学生をしていろと言われればどうしても不満は出る。

 それは同じく善良で責任感がある他の第三生徒会やヘルヴォルのメンバーも少なからず思っている事であり、善良で判断力のある子供だからこそ力があるのに何もするなと言われれば自分達を否定された様な気になってしまうのは“当たり前”なのだ。

 

「人材不足とは言え未成年の学生を戦場に出さねばならない程に我が社もこの世界もは追い込まれている訳じゃ無いからね。……それに貴女達が最新鋭CHARMを運用して得たデータはグランギニョル社の最新鋭技術にとって非常に役に立ってるから、これまでと行動パターンを変えて貰う方がむしろ困るわね。フランス奪還に動いてるヌーベル家のデビバス達からも貴女達の運用データで作られたCHARMは好評だから、それが途絶えたら彼らにとって死活問題よ」

「それにドリフター関係なら聖華学園の退魔生徒会が担う役割はかなり大きいぞ。今の聖華学園では多数の未成年ドリフターを保護しているから、そこの治安維持とかドリフ達への対応は重要だろうからな」

「そういう事でしたら……分かりました。ワガママを言ってしまい申し訳ありません、お母様」

 

 そういう子供の心情を理解している朋美社長夫人とヘビクラ隊長は頭ごなしに『子供だから戦わなくて良い』と言うのでは無く、彼女達にも出来る事を安全性を考慮した上でやらせて、それが今の世界には必要な事であると言い聞かせて納得させていた。

 二人とも力のある子供に『子供だから』と全く戦わせないのは逆効果で、むしろ善良な子供である程に思い詰めて暴走する事もあり得ると考えており、だからガス抜きの意味も込めて“ある程度安全だが社会に役立つ仕事”を適度に与える事も必要だと考えて、それを持ち前の利発さから察して自分達もやるべき事があると納得した楓は素直に謝罪した。

 

「よくよく考えると今でも実験部隊気味にCHARMの試験運用と各種データまとめ報告とかして、更に退魔生徒会としての業務もやってるハードワークなのでこれ以上仕事を増やされるのはイヤですわね」

「ドリフター関係の情報が思ったよりも大きかったから色々と考え過ぎたかしらね。日々の業務をこなしつつ外出時には注意するぐらいで良いかしら」

「CHARMの実験運用に関しては我々ヘルヴォルも手伝いますので!」

「分かってくれれば良いのよ。それはそれとして貴女達にはこれからも多数のCHARMやら魔晶やらの試験運用で働いて貰うけどね……失礼、ちょっと電話が。緊急回線とは何が……」

 

 そうして話し合いが終わったタイミングで朋美社長夫人の“緊急連絡用通信機”より連絡が来たので、彼女は訝しみながらも通信に出た。

 

「……監視していた影異界の……そこから謎の機械……成る程、確かに緊急事態ね。今動かせる人員は………………丁度いいわね。悪いけどチームDATの皆さんに緊急の依頼があるのだけれど」

「一体なんだ? 協力を約束した以上は可能な限り依頼は請け負うが」

「ええ、今グランギニョル社日本支部が監視していた【影異界】の一つから【ヒュージ】の発生が確認されたわ。貴方達にはそのヒュージの撃破、及び影異界の調査を依頼したいの」

「ッ⁉︎ ヒュージですって⁉︎」

「ヒュージ? 一体なんですのそれ」

「詳しく話してくれ。依頼を受けるかはそれ次第だ」

 

 彼女の口から出た単語を聞いて驚くヘルヴォルと知らない単語に困惑する第三生徒会を差し置いて、ヘビクラ隊長は依頼に関する詳しい事情を聞くべきと判断して話の続きを促した。

 ……こうしてチームDATの新たな戦いの舞台である『儚くも美しく戦う少女(リリィ)達と異界から来る謎の機械生命体』が関わる戦いが幕を上げるのだった*2

*1
SH2においてCOMP改造効果の最後に“★”がついた機能。一つのCOMPで特定の機能の種類の中から一つだけを選んで行える最大改造。

*2
ただし先の展開は未定なので“ヒュージと戦うリリィ”が出ない可能性もあります。ヒュージと戦うのが一般デビバスとか。




あとがき・各種設定解説

ヤマト&アオビト:ソウルフレンドが出来た(笑)
・昔『俺が新世界の神になる!』的ムーブをしてたのは今では黒歴史、創った新世界があっさり滅びたのが割とショックだったのでその反動で今の世界を守る事最優先の尊みの守護神になってる感じ。

第三生徒会:めっちゃ忙しい
・保有しているCHARMは武装COMP機能平均5つに一つはマスター効果まで改造済みで攻撃力強化と属性適正向上も行なっているのフルカスタムで、魔晶もかなりの性能のものを三つは入れられて更にコマンダースキル(負担無し)も一つは使える豪華仕様。
・その分COMPとしての仲魔の使役機能が削られており、デビルコミュニケーションやデビルアナライズ、オートマッピングはあるが契約できる仲魔は一体だけでスキル枠も4つのみ。
・最も第三生徒会にサマナーはいないので武器として使うだけなら特に問題にはなっておらず、仲魔との契約機能ももしかしたら使う可能性も考慮して最低限のものが残されただけと言うのが本当。
・ちなみにヘルヴォルの過去周回に居なかった結梨はデータが少ないのだが、高位の悪魔人間である彼女なら多少の負担は無視できると言う事もあって生徒会メンバーから得られたデータを元にした一般向け高性能CHARM試作型と言う名目で同等のスペックの物が与えられている。

グランギニョル社:絶賛ブラック労働ギリギリ一歩手前中
・それでもギリギリブラック労働にならない範囲を見極めて動いているが、これは不満や過労によるリタイア者が出たりすると逆に効率悪くなるし再生機構の買収対策とかで労働環境は維持しなければならないなど切実な理由がある。
・ちなみにグランギニョル社の闇堕ちには【楓・J・ヌーベル】の存在が大きく関わっており、彼女が生きていれば闇堕ちしないか彼女を旗頭にグランギニョル社がゲヘナに立ち向かう展開になるなどかなりの重要人物。
・ただし彼女が死んでいると善人の社長と社長夫人が機能停止するか善意から暴走して高確率でゲヘナ堕ちして人体実験やヒュージ量産などからヤバい組織になるルートになるので、だから先んじて彼女を学園に確保しておく必要があったのですね(by巫女さま)
・現在一般販売中のCHARMは可変機能無し、COMP機能もマスター無しで魔晶スロットも最大2つでコマンダースキル無しぐらいだが、各種データを提供するなら日本支部のアーセナル(武装COMP技術者)との相談の下でより高性能な専用CHARMが作れる感じ。


読了ありがとうございました。
・J・さんは巫女さまが見た中でも番長達と一緒にセプテンと戦うメンバーに入っていたり、受胎で現世回帰のコトワリがいけるなど重要ポジションなので過去周回でも色々と活躍している設定です。スペック高い大企業の令嬢でメンタル聖人なので重要人物になりやすい感じ。
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