真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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顕現する災厄

「……さて、比較的真新しい戦闘痕を調べていたが途中で大規模の戦闘痕があってから途絶えてるからヒュージと戦って全滅したか? ダメージを負ったヒュージが居たからまだ戦ってる者が居ると思ったんだが」

「流石に戦闘痕だけで何があったかを調べるのはちょっと厳しいわね。調査用の符術を使っても分かった事は『3日ぐらい前にヒュージと人間の大規模戦闘があった』ってぐらいね。調査が専門じゃない私じゃ【サイコメトリー】レベルの過去の詳細調査は難しいわ」

「アオビトの神造魔人のレーダーにも生体反応はなし。ソシャゲのストーリー間に挟まる戦闘パートぐらいの頻度で襲いくるヒュージを倒しながら索敵してコレだから、少なくともこの階層には居ないと思われます」

「話の途中で悪いがワイバーンだ……ってノリで襲いくるからな。俺の眼でも人間は見なかったぞ。……ただ異界の構造のせいなのか眼界でもシェルターの今いる階層しか見れず、これより下の階層は見えなかったから下に誰かいる可能性はある」

 

 地下シェルターと思われる異界を調査していたチームDATであったが、生存者探しについては戦闘痕ぐらいしか手掛かりがなく襲いくるヒュージと戦わねばならない事もあってかなり難航していた。

 一応シェルター自体の調査は進んでおり残っていた資材や断片的な生活痕からヒュージからの避難目的で作られて、おそらくヒュージに乗っ取られたらしい事までは掴んでいた……が、メインの目的である生存者へ見つからなかった。

 

「さて、あくまで調査がメインで生存者の救助はオマケ、そもそも生存者がいる俺の読みが外れてる可能性も出て来たし一旦戻るか「生存者はいるっぽいぞ」……何だって?」

 

 一時撤退も視野に入れ掛けたヘビクラ隊長だったが、何やら地面に魔法陣の様な図面を描いて術を使っていた天才技術者ミツヒロがあっさりそんな事を口にするしたので思わず聞き返した。

 

「ちょっとで調べてみたらこの異界に残ってた精霊達が生存者居るって言ってきたぞ。どうも精霊術師系列が生き残って隠密系の術で痕跡消しながら身を隠しているみたいだな」

大地の声自動効果スキル精霊、地霊、妖精と会話し、情報1つかアイテム1つを入手する。

昔ミツヒロがヤタガラスの霊山で必要な素材を(無断で)入手する為に習得した精霊などとの交渉技術や精霊魔術。

 

 ミツヒロが探っていたのはシェルター内に残っていた悪魔として現界する事もない自然霊に近い精霊の反応、霊的存在としてはか弱く一部の魔術師か特殊なスキル持ちぐらいしか使わない故にヒュージにも無視されていたそれらから情報を引き出してみせたのだ。

 

「ふぅん、ヒュージから逃げて今は下の階層にいるっぽいな。……交渉で精霊相手に使役と物乞いする事に特化した俺と違って、精霊側から救いの手を差し伸べられるとか生存者は相当に好かれてるな。普通は自我が希薄な自然精霊はここまで詳細な情報を伝えてくれないんだが」

「フーン、それは“どちらにとっても”運が良かったかな。……さて、下の階層に行くなら階段がエレベーターでも探したい所だが、さっき見つけた下へ続いてる非常階段は崩れて使えなかったからなぁ」

「じゃあ俺のケルベロスの【冥界の門*1】を使いましょうか。時間はそこそこ掛かってマガツヒも相応に消耗しますがこれなら下の階に行ける筈です」

 

 生存者がいる事を知った彼等は直ぐに行動に移り、まずヤマトが呼び出したケルベロスが下の階層へと繋がる門を呼び出し、更にミツヒロが精霊魔術の応用で“精霊を操っている誰か”の元に繋がりやすい様に運を上げる魔術を使って生存者に遭遇出来る確率を僅かでも上げた。

 

「まあ運を良くすると言っても所詮は人間である俺の魔術だから高位神格みたいに因果にまで干渉出来る訳じゃない。ぶっちゃけ確率的にはソシャゲでガチャ回す前に行う“儀式”レベルの代物だが」

「そこは好みの美少女百合ップルの尊みの深いメモリアを引く為に課金天井した俺のLUCK値を信じてください!」

「1ミリも信じられる要素がない件についてwww。……まあ下の階層に行ったらヤマトのレーダーやケンジロウの眼で探せば良いだけだから何処に繋がろうと問題ない訳だが」

 

 そんな身内以外の目がないのである意味キリギリスらしい会話をしつつも、油断なく戦闘準備を整えてから【冥界の門】の準備が整った時点でチームDATは下の階層へと向かったのだった。

 

 

 ──────◇◇◇────ー

 

 

「思わず殴ってしまったが状況的に敵っぽかったしヨシ。それよりもようやく第一村人発見だな、俺の運も捨てたもんじゃないらしい。大丈夫かいお嬢さん?」

「え? えっと、は、はい」

 

 そんな訳でヤマトは冥界の門を通って下の階層へと入ったら、いきなり美少女に襲い掛かろうとするヒュージを見て思わず万能属性パンチでぶん殴ったと言う事なのだ。

 まあ助けられた紅巴の方から見るといきなり現れた特撮ヒーローっぽい謎の人型が、目の前の高レベルヒュージを一撃で殴り飛ばすと言う訳の分からない光景なので混乱が続くのも仕方ないのだが、それを敵ヒュージ【エクスアントラー】が待ってくれる訳では無かった。

 

『ギ、ギィィィッ!!!』

「ッ⁉︎ ヒュージがまだ動いて「致命打(クリティカル)にはならなかったか。ケルベロス追撃」

「オラァ! 叩き潰してやる!」【マッスルパンチ*2

 

 ……まあ、当然倒しきれていない事にはヤマトも気付いていたので直ぐに呼び出していたケルベロスに追撃を指示、それに応えて即座に門から飛び出したケルベロスは強烈な体当たりを見舞ってエクスアントラーを粉々に粉砕したのだった*3

 そんなレベルは最低でも60以上のラージ級ヒュージを謎の人物が一蹴した光景に呆然とする紅巴だったが、そこに開いたままの【冥界の門】から残りのチームDATメンバーが現れたので何かを言うタイミングを逃してしまった。

 

「おお、本当に生存者が見つかるとはな。ガチャ天井で乱数調整でもしたのか?」

「ここで生存者接触最短ルートへと行く為にガチャは爆死する必要があったんですね。……それよりもとりあえず彼女から話を「あ、あの!」ん?」

「凄腕のデビルバスターだと見込んでお、お願いがあります! 叶星様達を、私の仲間を助けて下さい!」

 

 だが、今も憧れの先輩や友人が戦っている事を思い出した紅巴はあの【黛冬優子(CHARMユーザー)】にも匹敵すると思われる超高レベルのデビルバスター達(彼女視点)相手に涙目になりながらも、慣れない大声で頼みながら頭を深く下げて懇願した。

 ……目の前の見ず知らずの彼等が信用出来るかどうかは分からないが、それでも今【グラン・エプレ】の仲間達が助かる方法はこれしか無い故に彼女は躊躇わなかった。後にどれだけの代償を要求されても支払う覚悟は出来ていた。

 

「ふぅん、まあさっきから戦闘音が聞こえるしな。ヤマト、ケンジロウ」

「4時方向にアオビトのレーダーに彼女以外にも4つの生体反応を確認、ヒュージの反応もあって交戦中の模様」

「こっちの眼でも確認した。大型ヒュージと少女一人が交戦してるのと少女三人がヒュージの群れと交戦中。どれもそれなりのレベルでヒュージとの戦いにも慣れている様だな」

「またCHARM持ってヒュージと戦ってるドリフターは女の子なのね。CHARM持ちって女の子じゃなければいけないルールでもあるのかしら」

「グランギニョル社の趣味人が過去周回で同じムーブしてるなら少女に優先して配備とかするんじゃないか?」

 

 それを聞いたヘビクラ隊長はまず索敵要員の二人に周辺を確認させ、そこから得られた情報が目の前の少女の言葉と相違ない事を確認した後に行動に移った。

 ……そもそも『ウルトラシリーズのカッコいい防衛隊ムーブをする』事が最優先な変人集団であるチームDATであるので、涙目で必死になっている少女に助けの手を差し伸べないと言う選択肢は元より無い。勿論ドリフターにはこっちの常識が通じない事も多いので“騙して悪いが”展開は常に警戒しているが。

 

「このままじゃ話を聞く所じゃないから先にヒュージを殲滅するしかないな。貴重な情報源を死なせる訳にも行かんし、何より防衛チームとしては少女に助けを乞われたなら答えないとなぁ。……ヤマトとミツヒロは大型ヒュージの方を潰して戦ってる子を保護」

「了解、じゃあ行ってきます」

「距離も短いから俺でもギリギリヤマトの足に付いていけるしな」

「残りは俺と一緒に三人戦ってる所に行ってヒュージを殲滅する。……ああ、そこのキミも一緒に着いて来てくれ。この異界の中だと個人行動は危険だし、こっちの手数も足りないから一緒に居てくれた方が対応しやすい」

「了解、まあ私達だけでもどうにかなるでしょう」

「ヒュージには銃が効くからやりやすい」

「は、はい!」

 

 とにかく情報を入手するにはヒュージを殲滅して彼女達から話を聞くしかないのは事実であるので、ヘビクラ隊長は早急にチームを分けるとヒュージと戦っている【グラン・エプレ】メンバーの救助に赴くのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

「……さて、ヒュージは片付いたな。耐性がマシン系で一律だから奇襲で先手を取れれば手早く数を減らせる。状態異常も降魔属性は通じるし」

「氷結が効きにくいのが面倒だけど、魔法耐性のバフを積んで自己を防止しつつ殴ればレベル差もあってどうにかなるわね」

「俺の眼で捉えられる範囲内では敵性ヒュージは確認されず、ヤマト達の方も大型ヒュージを撃破して戦闘していた少女を保護している。……やっぱりこの【DATハイパーバスター】だと攻撃力が不足気味だな」

 

 そう言う訳でチームDATはグラン・エプレを襲っていたヒュージの排除を終えていた。ダイジェスト気味だが彼女達と戦っているヒュージに横から殴り掛かって先手を取り、そこからバフを盛って石化や範囲銃攻撃や万能魔法で掃討しただけなので。

 ……それにヘビクラ隊長にとって問題はこれからであり、先程の戦闘では追い詰められていたのもあるがリーダー格の少女の指示で割り込んで来た自分達と直ぐに共闘の態勢を取ったとはいえ、逆に言えば即座にそういう判断が下せるレベルの“やり手”である相手との交渉なのでとりあえず慎重に行く事にした。

 

「か、叶星様! 高嶺様! 灯莉ちゃん! 大丈夫でしたか!?」

「ええ、大丈夫よ紅巴ちゃん。……ところでそちらの方々は……」

「初めまして、俺達は“いきなり現れた”この異界の調査を依頼されたデビルバスター【チームDAT】、俺がリーダーのヘビクラ・シンゴだ。……そうそう、あっちで大型のヒュージと戦っている君達の仲間もウチのメンバーが保護したそうだぞ」

「ありがとうございます。……申し遅れました、私達は対ヒュージ・喰奴のデビルバスターチーム【グラン・エプレ】、私がリーダーを務めている【今叶星】と申します。改めて私達と仲間を助けてくださって感謝します」

 

 そう言って深々と頭を下げる叶星を見てヘビクラ隊長は『デビバスとしては礼儀正しいし今すぐに仕掛けてくる様なタイプじゃ無く、戦闘は避けたい故に敵意が無い事をアピールしてる。同時にこっちがまだ警戒してるのも気付いてて万が一に備えて後ろに金髪の子には戦闘態勢を崩させてない。ドリフターとしては対人関係が出来てデビバス達しての経験も積んでるタイプか』と思考する。

 同時に悪魔化が進行した悪魔()()である【喰奴】専門のデビルバスターチームにしては“良い子”過ぎるので、恐らく彼女達は日常的に喰奴と戦う環境……多数の人食い悪魔人間らしい敵性ドリフター大勢力の一つ、掲示板では【禍の団】などと呼ばれている連中と戦っていたとも推測しつつ話を続けようとする。

 

「……あ、叶星様! 高嶺様! 後灯莉と紅巴も無事で良かったわ」

「定森〜! 幽霊じゃ無いよね? 足着いてる?」

「ひ、姫歌ちゃ〜ん!!! 姫歌ちゃんが一人でラージ級ヒュージに向かっていった時には私、私!」

「足は着いてるわよ! 後紅巴も落ち着きなさい! ……まあ姫歌もちょっと死ぬ所だったけど。横合いから現れた謎の人型もといヤマトさんが一瞬でボコボコにしてたけど」

「どうも謎の人型です。あ、隊長、ヒュージを叩きのめして助けた子を連れて来ました」

「……ご苦労様」

 

 だが、そのタイミングでヤマトとミツヒロが助けた姫歌を連れてきて、それを見た灯莉と紅巴が彼女に抱きつくと言う感動的なシーンが展開されたので、とりあえず悪性ドリフって訳でも無さそうだし手早く話を進めた方が良さそうと判断する。

 ……何よりまだヒュージが彷徨くこの異界で長々と探り合いの話をやってる暇はないからと言う事情もある。今もケンジロウに周囲を警戒させているのだし、とりあえずDATメンバーに手早く自己紹介だけさせてグラン・エプレ側のメンバーも名前だけは聞いて本題に入っていった。

 

「さっそくだが君達にはこの異界についての情報を聞きたいのだが、最近異世界とかから漂流者(ドリフター)と呼ばれている人間、及び彼らが住む異界などがこの世界に漂着する事件が多数起きていてな。今回もこのまま地下シェルター型異界が突然発生して、内部から漂着物として前例が確認されていた【ヒュージ】が現れたから調査を依頼されたんだ」

「まあいきなり異世界に飛ばされたと言われても信じられないと思うから、とりあえず貴女達を連れて一旦この異界から脱出したいんだけど。流石にヒュージが跋扈するシェルター内で話を続けたいとも思わないし、ヒュージと戦って上を目指してたって事は貴女達も此処から脱出したいでしょう? ……他に生存者がいるなら状況次第で救助するのも考えるけど」

「……いえ、おそらく私達以外には生存者は居ませんし、私達の目的もこのシェルターからの脱出でしたので地上まで護衛してくれるのはありがたいです。……それに異世界に来た事は予想していましたから、簡単で良いなら私達の世界の事もお教えします」

 

 ヘビクラ隊長やアンヌ副隊長としてもドリフターや過去周回周りの説明が一番面倒だからとりあえず地上へ連れていって其処で話を進めれば良いと思っていたので、あっさりとグラン・エプレ側が理解を示してくれたのには少し驚いていた。

 ……まあ、グラン・エプレ側としてもこれ以上の連戦を行うのは難しく、超級のデビルバスター達(グラン・エプレ視点)であるチームDATの助けが無ければ脱出出来ないのは自明の理であり、少なくとも悪意は無く誠意を持って此方に話しているのは伝わっていたので信じる賭けに出るには十分だと叶星は判断したのだ。

 

「そもそもこのシェルターはヒュージと人喰いの悪魔に制圧された地上を捨てて別世界へと逃げる為に作られたものですから。……ただ、私達の体感時間で半年程前にヒュージの襲撃にあい乗っ取られて、3日前にシェルター奪還作戦の為に偵察に私達グラン・エプレを含めた複数のデビルバスターチームが赴きましたがヒュージに見つかって調査隊は壊滅、生き残ったのはおそらく私達だけです」

「他の調査チームは一番年若い私達を逃す事を優先してくれたので……。それからはヒュージにも気付かれていなかったシェルターの隠し部屋に篭っていましたが、これ以上隠れるのは無理だと判断して地上への脱出を試みて今に至ると言う訳なので脱出の手助けをしてくれるのは有り難いです」

「なるほどね」

 

 其処から彼女達の世界の事についての情報も概要だけは聞けた。大体メシアガイアファントムヤタガラスとかは居たが大規模な事件が起きる事も無く、複数勢力の拮抗状態とは言え文明を維持したまま平和な時を過ごしていた世界だったらしい。

 だが、世界の滅びの“噂”と共に幾つかの大事件が連続して起き、その影響で勢力間のバランスが崩れて争いが多発。更にいきなり何処からか現れた無数の人喰い悪魔人間が世界中を襲って損耗していた勢力は大半が壊滅、ようやく残った人類が手を組んで対応しても圧倒的過ぎる物量と力の差を覆せなかったそうだ。

 

「追い詰められた人類側が逆転の為に作られたマシンと悪魔の融合体が【ヒュージ】だったんです。私達の主力武器だったCHARMを生産していたグランギニョル社を中心にして作られたヒュージは、人喰い悪魔──人類を纏めた反抗組織からは【禍の団】と呼ばれていた圧倒的な物量を持つ敵に対抗する為、その人喰い悪魔自体を捕食して生体素材として取り込んで自己増殖・自己進化を行うと言うコンセントだったんですが……」

「ああ暴走して人間を襲う様になったと。ヒュージは複数の世界で作られているが生体素材を使ったものは悉く暴走してるらしいからな」

「まあそう言う事です。最初は普通に人喰い悪魔達を倒して取り込んでどんどん増えてたらしいですが、いつしか制御を受け付けなくなって人間すら捕食して増殖する様になり、最終的にはヒュージと人喰い悪魔と人間の三つ巴……いえ、ヒュージと人喰い悪魔の戦いに巻き込まれた人類は絶滅寸前だったと言うべきですね」

「勝った方が我々の敵になるだけです展開の世界だったか」

 

 内心では『デビルガンダムもどきと人喰い悪魔軍団がお互いを食い合うとかB級映画かな』と思ったヘビクラ隊長だったが、目の前のグラン・エプレを名乗る少女達の沈んだ様子から流石に揶揄う様な発言は控えた。落ち込んでる少女を揶揄っても面白くないしね。

 

「そうして私達だけが先も言った理由で生き残ったんです。……私達も隠し部屋の存在を教えてくれて、私達を逃す為に殿になってくれた【ジャグラス・ジャグラー】を名乗る魔人が居なければ死んでいましたが」

「ブッ!」

 

 ただし、流石のヘビクラ隊長も叶星の口からまたも聞き覚えのある名前が出てきた時には思わず吹き出してしまったが。今日で【ジャグラス・ジャグラー】の単語を聞くのは二度目なんだがどうなってるんだ的な視線を隊員達が向けてくるし。

 ……その上で『やっぱりウチの隊長が黒幕なのでは?』『いつ裏切っても良い様に殴れる準備はしてるぞ』『普段の闇ムーブのせいで信用度低いから』『まあ原作ジャグジャグも黒幕では無いから』みたいな会話をコソコソしてるのが聞こえて来るので米神を抑えつつ話を続けようとする。

 

「でもでも、そこのヘビクラ隊長だっけ? 2回も助けられるなんて縁があるよね〜」

「灯莉アンタ何言ってるのよ。彼らとは初対面でしょうが」

「え? 定森気づいてないの? あのトゲトゲさんの中の人はあのヘビクラ隊長だよ。だって『色』後同じだもん」

「えぇっ⁉︎ でも確かここは既に私達が居たのとは別の世界で、アレでもそれなら、うーん……」

「やっぱりもう確定じゃ無いんですかね隊長。ところで次の【ジャグラス・ジャグラー】の衣装はホログラム的な正体隠蔽式かデモニカ的なメカちっく【JUGGLUS】にするかどっちが良い? デジタライズは実用性に難があったからな」

「分かってて言ってるだろミツヒロ。……はぁ、とりあえずこの世界とドリフターや過去周回の事についてサクッと説明するから」

 

 そう思ったら灯莉が独特の感性でジャグラス・ジャグラーの中身とヘビクラ隊長が同一だと言って来て、それを聞いたミツヒロが悪ノリして来たので溜息を吐きつつもヘビクラ隊長は分かってる限りのドリフター情報や過去周回、それと他世界の同一存在について説明する羽目になったとさ。

 

「……そう言う訳で正確に言えば異世界と言うか世界はループしてて、ドリフターとは過去周回から現行世界にやって来た漂流者って事になる。……それで繰り返してるらしい世界には名前や姿が同じ人物もいるが、あくまで外見が同じなだけで中身や過去や経験には差異がある。なのでもし万が一あり得なくはないぐらいの可能性で【ジャグラス・ジャグラー】が過去周回の俺であると言う事ももしかしたらあるかもしれないが、この世界の俺には君らを助けた記憶や経験などは一切ない実質的な別人と思ってくれ」

「うーん往生際が悪い。ほぼほぼ同一存在で確定だろうに」

「ヘルヴォルの時といい闇ムーブしながら光属性助けるのはモロに貴方じゃないの?」

「だまらっしゃい。……とにかく詳しい事情は地上に出てから改めて説明する。出来るだけ此処からの脱出を急いだ方が良さそうだしな」

 

 ヘビクラ隊長は『彼女達の世界のヒュージ』が曲がりなりにも無数の高レベル悪魔人間相手に戦闘が可能なレベルであり、おそらく今まで倒して来た雑兵よりも上位の個体がいるだろうと考えて現行戦力で長時間留まるのは危険と判断していた。

 何よりそのヒュージとこの地下シェルターの貴重な情報源である彼女達グラン・エプレを早急に安全な場所まで連れて行く事が最優先、そう考えて地上に向かう前に一旦連絡を取っておこうと異界用トランシーバーに手を伸ばして……。

 

『……ジジジジジザザザザザザァァァァァー……』

「連絡が通じないな。流石に階層を降りると電波が届かないのか?」

「……いや、このノイズ音は通信妨害の類だな。何処からか強力な妨害電波が出てる」

 

 そのミツヒロの言葉を聞いた瞬間、チームDATとグラン・エプレ全員が戦闘態勢を取り、ケンジロウと叶星がそれぞれ自分が有する探索スキルを使用して周囲を調べ、ヤマトもアオビトのレーダーによる周辺探査を試みる。

 

「私の【鷹の眼界(レジスタ)*4】でも周囲に敵はいませんが、ヒュージの中には妨害電波を使ったり自ら姿を消す能力を持つ者もいます」

「成る程、ケンジロウの目でも捉えられないなら【ドロンパ】か【幻化】系統の上位隠密スキル、或いは妨害電波だけ遠距離から飛ばしているか……そこだ」

 

 叶星からの情報より敵の正体を考えながら周囲を探っていたヘビクラ隊長だったが、目の前の何も無いはずの空間に僅かな空気の流れの違和感を感じ取って即座にそちらへ【メギドストーン】を投擲した。

 ……威力は低くても反射・無効されにくい万能全体攻撃魔法アイテムであれば透明化していても当てられて跳ね返される確率も少ない、もし無効化されたとしてもそこにいる事だけは分かる(戦闘状態になる)と踏んでの行動だ……ったのだが、隠れていた“始めてみるタイプのヒュージ”は【透化*5】スキルによる透明化こそ解除されたものの、放たれた万能の光を()()()()()()()()()()宙を舞いながら避けてみせたのだ。

 

『キィィッ!』

「ん? 万能を喰らうでもなく防ぐでもなく“避けた”か。だが戦闘状態に入れば透明化してても戦意や殺気が漏れるから、少なくともそこにいる事だけは分かる*6。……後は他に“透明化した仲間がいても”仲間が戦いになれば気配ぐらい漏らすから、その存在も把握するぐらいは出来るぞ」

「オンギョウキ【メギドラオン】」

「捉えた、そこか」【フュージレイド*7

 

 そしてパーティーのヒュージが戦闘状態に入った事で同じく姿を消していた他二体のヒュージの気配が僅かに漏れ、それによって対象を捕捉したヤマトとケンジロウがそれぞれ仲魔に極大威力の万能属性魔法で反応があった一帯を薙ぎ払う、または耐性貫通の力を持つ銃弾を広範囲にばら撒いて炙り出そうとした。

 ……だが、極大の万能の光も卓越した銃技から放たれる練習も姿を消していたヒュージ達には当たらず、最初に現れた個体と同じ様に【透化】こそ解かれたが回避されてダメージを与える事は出来なかった。

 

『『『キィィィィィィアアアァァァァァ!!!』』』

 

 そうして攻撃を回避したヒュージはもう身を隠す気は無いと言わんばかりに叫び声を上げながらチームDATとグラン・エプレに相対する。その見た目は三体全てが同じで逆三角錐型の体に手の様に二本の三角形の刃が付いた、強いていえば『クリオネ』に似た感じの姿だった。

 大きさこそこれまで多数相手にして来た中型ヒュージと同じかやや小さい程度だが、その気配から大型ヒュージ以上のレベルと戦闘能力があると察した彼等は油断なく相手の出方を見る。

 

「姿が見えなかったとは言え命中率を上げる魔眼(龍眼)持ちのケンジロウまで外すって事は……」

「気を付けて! あの動きは姫歌と同じ【アリ・ダンス】持ちよ! ダンスも出来るアイドルである姫歌の目は誤魔化せないわ!」

「見た事にないタイプのヒュージ……特型かしら。それにあの反応速度は多分反応系か見切り系スキルも持ってそうだわ」

「……へぇ、ヒュージと戦って来ただけあって想像以上に優秀だな。まあアレの特性は回避特化で間違いなさそうか」

『『『キィィィィィィァァァァァッ!!!』』』

 \カカカッ/

マシンヒュージ“クリオン”×3LV80(!)特型ヒュージに関する情報はありません。

 

アリ・ダンス自動効果スキル攻撃を受ける際、敵の命中率が半減する。P4・P5出典。

龍の反応自動効果スキル命中・回避率が40%上昇する。真4仕様。

全属性見切り自動効果スキル全属性に対する回避率が上昇する。SH2出典。

 

 その三体のヒュージ【クリオン】が複数の命中・回避率に干渉する自動効果持ちであると見破ったチームDATとグラン・エプレのメンバーは、共通してレベルや数以上に厄介な相手だろうと予測し、それでも怯まずクリオン達を迎え撃つ態勢となったのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんな風に地下シェルターに潜ったチームDATが生存者を発見しながらも特異なヒュージと交戦してしまった丁度同時刻、地上部分の警戒に当たっていた学生組+αの方でも“異常事態”が起きていた。

 ……元は影異界でありかなりの広さを誇っていた筈の地上施設部分、そこの2割程が一体の大型ヒュージが地下シェルター入り口を“粉砕しながら”出て来た時に纏めて吹き飛ばされて廃墟と化していたのだ。

 

「今のは万能属性の【メギドラオン】っすかね。学生組は大丈夫っすか!」

「ええ! トモヤさんが事前に警告を出して、二水さんがあのヒュージの接近に気が付いて直ぐ地下入り口から離れたお陰でウチの社員含めて全員無事ですわ!」

「あっちゃー、今のでちょーっと異界自体に綻びが出来たわね。とりあえず私は技術班を避難させつつ周辺に被害が出ない感じの結界を張っておくわ」

「お願いしますわ百由様! ……あのヒュージが市街地まで着いたら大変な事になりますもの」

 

 そう言った楓を含む学生組+αは周辺被害の抑止を百由と技術班に任せて、それぞれのCHARMを構えながら目の前で宙に浮かぶヒュージを見上げた。

 ……そのヒュージの姿は楕円形の胴体の背に一対の羽根が生えていて、頭部には天使の輪の様なリングが一つ、胴体部の腕に当たりそうな部分に二つの小型なリングが浮遊していると言うこれまでのヒュージとは全く違った特異な外見をしていた。

 

「……まるで、天使みたい」

「つまり完全な敵って訳っすね。天使を模してるとか絶対に碌でもないヤツっす!(一般デビルバスター感)」

「それに関しては全面的に同意するけど(メシア教被害者感)多分外見だけで本物の天使って訳じゃ無さそう」

『……クゥゥオオオオォォォアアアアアアアアアアァァァァァ!!!』

 \カカカッ/

マシンヒュージ“アンジェラス”LV89(!)特型ヒュージに関する情報はありません。

 

 その大型ヒュージ──個体名【アンジェラス】は天使の様な外見通りに悍ましいまでの奇声を上げると目の前に立ち塞がる学生組+αに意識を向け、それに気が付いたトモヤが後ろの学生組に警告を飛ばそうとする……が、それと同時にアンジェラスは彼らが予想だにもしなかった行動を取ったのだ。

 

「ッ! 攻撃が来るっす! 全員備えて……何だ?」

『キィィィィィィ!』

 

ブレイブハートコマンダースキル使用から3ターン味方全体を状態異常、弱体効果から守る(再使用9ターン)

突撃指令コマンダースキル使用ターンは味方全体の攻撃ダメージが上昇する(再使用7ターン)

プロモーションオートコマンダースキル味方全体の攻撃力・防御力・命中・回避率を上げる。

 

 最初にアンジェラスが使ったのは【デモニカ】や一部【武装COMP】でしか使えない筈のコマンダースキルであり、自分達も使うそれらをヒュージが使う光景を見て学生組は驚愕する。

 ……凡ゆるモノを捕食・吸収して自己進化するこの異界のヒュージは、元いた世界で戦ったデモニカユーザーやCHARMユーザーが使っていた武器を捕食して解析・模倣・再現する事で、コマンダースキルを始めとする“人間が使う装備品のスキル”までも使えるレベルにまで既に進化していたのだ。

 

「マシン悪魔のヒュージがコマンダースキルを使うですって⁉︎ ……まずいですわ! コマンダースキルは手番を消費しないから……」

『キイイイィィオオオオォォォァァァァァッ!』

 

メギドラオン万能属性スキル敵全体に特大威力の物理属性攻撃。

全体攻撃自動効果スキル通常攻撃の対象が敵全体になる。真3出典。

吸収攻撃自動効果スキル通常攻撃で与えたダメージの1/4分HP吸収。真3出典。

物理貫通Ⅲ自動効果スキル物理属性で攻撃時、対象の耐性・無効・吸収を無視。SH2出典。

武装COMPの機能を模倣再現してスキル化した。

デュプリケータⅢ自動効果スキルアタックが40%の確率で2回ヒット。SH2出典。

武装COMPの機能を模倣再現してスキル化した。

ハーヴェストⅢ自動効果スキルアタック時、(7+5%)分MP回復。SH2出典。

武装COMPの機能を模倣再現してスキル化した。

ATTACK(通常攻撃)物理属性スキル敵一体に物理属性で攻撃する。基本的に誰でも出来る。

 

 そうして“行動手番を消費しない”コマンダースキルによる強化を受けたアンジェラスへ即座に万物を薙ぎ払う破壊の光を放ち、そこから一部の高位悪魔お約束の連続行動(二回攻撃)にて間髪入れず両翼から羽の様な光弾(通常攻撃)を無数に撃ち出して学生+α達を薙ぎ払ったのだった。

*1
下の階への経路を作成する。所要時間は構築速度に依存。NINE出典。

*2
敵単体に中〜特大威力の物理属性攻撃。自身の残りHPが多いほど威力が上昇する。真5仕様。

*3
レベルによる威力補正(真5)+物理プレロマによる威力上昇+真1で【体当たり】は突撃相性でありマシンのヒュージ相手には75%通る。

*4
中距離の敵パーティの認識LVを2に、近距離以内の敵パーティの認識LVを3にする。中距離以内のトラップを発見。NINE出典。

*5
パーティの認識LVを3下げる。

*6
戦闘中の【透明】の効果は『敵の対象にならない状態。スキルの使用が不可能』であり敵の存在を認識出来ない訳では無い

*7
銃撃属性で敵全体に中ダメージを与え、命中・回避率を低下させる。SH2出典。




あとがき・各種設定解説

グラン・エプレ:漂流者の中では上澄枠
・ヒュージや禍の団と戦って来たので叶星と高嶺の先輩二人はレベル50後半、姫歌・灯莉・紅巴の後輩三人組もレベル50前後はあるぐらいで戦闘技術も高い感じ。
・リーダーの今叶星は元の世界では一般家庭出身だったが対抗組織に幼馴染であり生まれた時からの付き合いである(ここ重要by紅巴)高嶺と共に保護されて、それからCHARMの適性を見い出されてからは指揮官・個人戦力共にメキメキと頭角を表して主力の一角になった。
・チームを纏める指揮官としても若年で対抗組織の作戦会議に招かれるぐらいには優秀であり、個人戦力チームしても物理・銃撃・破魔・電撃・万能・補助などの多様なスキルを使い熟す万能型でチーム戦では指揮と補助含むサブアタッカーとして動く。
・宮川高嶺は幼馴染である叶星と共にCHARMユーザーとして見い出され、非常に尊い関係である(最重要ポイントですby紅巴)叶星と共に対抗組織に加入して公私に渡って互いに支え合う関係である。
・戦闘では【朧一閃】【チャージ】などによる一撃必殺の物理攻撃と命中・回避・戦闘速度を引き上げるスキルを組み合わせた速攻アタッカー型だが、HPやMPがそこまで多くないので継戦能力には劣る一面もありCHARMにはそこを補うカスタムがされている模様。
・サブリーダーの定森姫歌は対抗組織に保護されてから元の世界での最強のCHARMユーザー件アイドルだった【黛冬優子(リリィのすがた)】に憧れ、そこからCHARMユーザーに志願しつつアイドルを志して日々訓練を積んでいた所を叶星からグラン・エプレにスカウトされた。
・本人に指揮官適正があった事と高嶺自身が『叶星と距離が近すぎる自分では逆にサブリーダーには向いていない』としてグラン・エプレのサブリーダーとなり、実戦では叶星への指揮面での助力と前線での回避盾件アタッカーをやっている。
・丹羽灯莉もCHARM適正があって姫歌と同じ様にスカウトされた少女であり、生まれつき精霊や妖精を知覚出来たりMAGの色が見える特殊な霊的知覚を持っているのとファンタジー物好きが合わさったのかちょっと独特のセンスを持つ少女。
・ただし戦闘面では目の良さと高い射撃の技術を持つ卓越したガンナーでもあり、本人の特異なセンスと適正から【ドロンパ】や【精霊召喚】などの希少なスキルを習得しているので戦闘能力は高い。
・土岐紅巴は元々白魔女の見習いでありその時の“先輩”の影響などもあって“女の子同士の尊い関係”が大好きになったのだが、白魔女達が禍の団に襲われて自分以外が全滅したので対抗組織に身を寄せていた。
・指導が途中だった事と本人のカルトマジック系適正がそこまででは無かった事から魔女術の腕は微妙だが、CHARMユーザーとしての適正もあったが対抗組織に入ったばかりの時には先輩達を失ったトラウマによる戦いに対する忌避感からCHARMの整備技術を学ぶなど後方要員を目指していた。
・そんな彼女だったがある日叶星と高嶺が戦う姿を見て『あの方達こそ私の理想である“尊い関係”!』とトラウマを尊みで払拭、二人に近付く為にCHARMユーザーを目指す事を決めて魔界魔法による補助回復の適正が高かったので今ではグラン・エプレの要と言っていいレベルになっている。

クリオン:今回のラスボス
・後述するアンジェラスと共にモデルは『アサルトリリィ Lust Bullet』の第一章に登場するするボス級ヒュージであり、このクリオンが第一章のラスボスになるのでそう言うポジション……まあ三体居るとはいえレベル80なので楽勝ですね()

アンジェラス:今回の中ボス
・味方が使う強力なスキルを敵が使わない訳がないと言うのが今回のヒュージの裏コンセプトであり、先に出た大型ヒュージがDIOシステムの特性の模倣再現したなどの様に各種シリーズの機械的な技術も使用可能。
・ただし、中の悪魔をスライム化させてスキルをマシン合体と写せ身合体の複合類似理論で取得させているので、特定の悪魔に性質を寄せるのは種族を再現するぐらいまでが限界で、そうしても弱点が生えたら取得スキルに制限が出来たりする。
・他にも中がスライム化してるので『特定の悪魔のみが使う専用スキル』の類いは使えないなどの制限もあるが、逆にいえば汎用的なスキルや技術であればほぼ全て取得・使用可能である。


読了ありがとうございます。
ちなみに今回の一件は時期的に奥多摩アビス決戦編とほぼ同時期。なので他で色々と動いている時期な所為でグランギニョル社も援軍集めには手間取ってる。精鋭の私兵にはヘルヴォルから聞いた情報を元にガイア再生機構の動きを探らせたりもしているので。次回は中ボス戦から描写します。
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