真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
「…………報告ありがとう。どうも予想以上の激戦だった様ね。まさかここまでレベルが高い敵が現れるとは思わなかったわ。……そうと分かっていれば学生を向かわせたりはしなかったんだけど」
「それは結果論ですわお母さま。実際私達が居たからこそ出て来たヒュージに対抗出来たとも言えますし、何より【グラン・エプレ】の皆さんを救助して情報を入手する事は出来なかったでしょう」
「まあチームDATだけじゃ手数が足りなかっただろうからな。学生組がいたお陰で早期に驚異度を測れたとも言える」
チームDATとグラン・エプレのメンバーが地上に戻ってきて地上メンバーと合流してから、とりあえず彼等は最低限の情報を交換した後でドリフターであるグラン・エプレメンバーを保護する目的と各種報告の為、後の調査を増援でやって来たグランギニョル社員に任せて日本支部へと戻って来ていた。
……まあ、報告を受けた朋美社長夫人が増援のアテが出来た事もあってこれ以上学生組が危険に晒されるのを嫌ったのもあるが、貴重な情報源であるグラン・エプレへの各種説明をするならそちらの方が都合が良かった。
『叶星様⁉︎ それにグラン・エプレの皆さんまで! 貴女達もこの世界に……!』
『ええと……申し訳ないけどどちら様かしら? 多分初対面だったと思うんだけど……って、楓さん! レジスタンスのリーダー格である貴女がどうして此処に……!』
『あー、またそういう展開ですのね。そちらの世界でも私はレジスタンスとかのリーダーとかやってましたの? 本当にどうしてそんな事に……』
『楓・J・ヌーベル⁉︎ レジスタンスのトップの一人にして冬優子さんと並ぶ“超A級アイドルデビルバスター”がどうして此処に⁉︎ 率いるアイドルグループの【ラーズグリーズ】のメンバーもいるわ!』
『ちょっと待って下さいまし、一体そちらの世界の私はどういう事になってましたの(真顔)*1』
……まあ、実はヘルヴォルがいた過去周回にもグラン・エプレメンバーがいたので一方的な再会(2回目)が起きたり、グラン・エプレがいた世界では第三生徒会メンバーが舞台公演やるぐらいのアイドルだったりした事が分かったりと中々カオスな事になったので事情説明を優先した方が良いという判断もあったが。
とりあえずグラン・エプレにこの世界の今現在の状況を可能な限り説明してから一旦グランギニョル社に保護される事を勧め、彼女達もそれに同意した事もあって諸々の説明を支社で行なっているという訳である。
「……それでこの世界の状況とか証拠資料になる映像媒体とかを見てもらった訳だけど、自分達が違う世界に来てしまった事などについては納得してくれたかしら?」
「ええ、大体状況は理解しました。元よりあの地下シェルターで別世界に来た事は予想出来てましたし、それが実はこの世界がループしているとなってもそこまで変わりませんから。それと私達を保護してグランギニョル社の社員に迎えてくれる話も受けさせて貰います」
「道中まだ文明が維持されている所を直接見せられたら違う世界に来たのだと納得せざるを得ないので。……今のこの世界で私達がこれ以上の好条件で後ろ盾を得られる事は無さそうですし」
「この人達からは嘘を言ってる『色』はしなかったしね。食べる為には働かないといけないのだー」
「……と言うか出現悪魔のレベルが40を裕に超えてて、デビルバスターの足切りラインがレベル50とか。レベル50代って私達の世界では最精鋭だったんだけど、この世界でやっていけるかしら」
「まああのヒュージとの戦いで私達もレベル50はギリギリ届きましたし……色々と納得しがたい事も多いですけど、事実として受け入れるしか無いんですね……」
ドリフターの積極的な受け入れを行なっているグランギニョル社の『ドリフター用現行世界情報説明マニュアル&記録映像』を提供されたグラン・エプレはコレまでとは別世界である事を納得して、グランギニョル社に保護される提案も受ける事にした。
……それと第三生徒会及びヘルヴォルとの話し合いの結果、ヘルヴォルがいた世界でもグラン・エプレのメンバーがいたがグラン・エプレ側の世界にはヘルヴォルのメンバーが居なかったので、過去に漂流した人物の同一存在は以降の周回に現れない事からヘルヴォルメンバーがこの世界に転移した後の世界から来たのではないかと推測された。それと第三生徒会はこの世界では別にアイドル活動はしてない。
「……それと申し訳ありません。私達の世界で作られたヒュージをこの世界に持ち込んでしまい、それによって多大な被害が……」
「あー別に謝る必要は無いわよ。そもそも貴女達が狙って連れて来たって訳じゃ無いって話だし、むしろ巻き込まれて転移して来た被害者なんだから。それに転移で色々なモノを持ち込んで騒ぎになるドリフなんて結構いるし、それらの責任所在云々の話を出すと面倒くさい事になるから」
「とりあえず悪いのはヒュージって事にしておくのが八方丸く収まるって事だろう。それにレベル80〜90ぐらいのマシン悪魔が現れるぐらいなら大した被害は出ないだろうしな。実際俺達も大した被害なく対処出来たし」
「我が社の方にも特に被害は出なかったからね。むしろ別世界のCHARM技術を入手出来たり腕のいいCHARMユーザーが来てくれるなら得たものの方が大きいわ」
大体の事情を理解できたグラン・エプレ側、特にリーダーである叶星が申し訳無さそうにするが話を聞く限り特に彼女達が悪いという訳では無いので朋美社長夫人とヘビクラ隊長がフォローを入れる。
まあグランギニョル社側としては優秀なCHARMユーザーをしっかりと取り込んでおきたい事もあっての物言いもあるが、まだ高校生ぐらいの彼女達を前線に出すのは気が咎めるので既にヘルヴォルと一緒に護衛の名目で聖華学園への入学を提案していたりもする。
「まあ、だからと言って今回現れた人間を襲うヒュージに対して何もしない訳には行かないのだけどね。ドリフターの中では過去周回のグランギニョル社がヒュージを作ったって話もあるから色々と風評被害とか受ける可能性もあるわ。現地に残った社員に調査結果を聞いてみましょう。……百由、消えた地下シェルターの調査はどうなってるの?」
『……はいもしもし、調査結果の報告ですか? まあざっくりした情報は得られましたよ。……まず結論から言いますが発生した異界は完全に消滅していました。チームDATの皆さんが【グラン・エプレ】の子達を連れて脱出したすぐ後に地下シェルターの大部分が消滅。その直後に元は影異界であった地上部分の異界も消滅したって所ですね。現在は技術班が異界の跡地を調査中です』
グラン・エプレとの話し合いがひと段落した所で朋美社長夫人は今回の『地下シェルター漂着事件』についての詳細な調査結果を、現地に残って異界跡地グランギニョル社員と調べていた百由に専用の映像付き通信機を介して報告させる。
「つまり異界が突然崩壊したと? チームDATが交戦した機械式レベル90越えのヒュージが逃げたという話だけどそっちの行方は?」
『逃走した高位ヒュージの所在は現在分かっていませんね。周辺を【エネミー・ソナー】などで調べてもそれらしい反応はありませんでした。……ですが調査した所、おそらく地下シェルター異界は単に崩壊した訳では無く再び現世から離れて次元の狭間に再潜航したものと思われますね。周囲の地脈や異界の残滓からの調査結果では余りにも綺麗に地下シェルター部分が消えてる上、どうやら地上部分の異界を切り離して潜った形跡がありました。彼女達グラン・エプレの話からすると地下シェルターは元が世界を超える『方舟』だった様ですから、再び現世から離れて魔界に近い部分に潜航するぐらいは可能かと。とりあえずこちらのデータをご覧下さい』
そう言うと彼女は地脈のデータやら異界の残滓の霊波などの様々なデータを見せて専門用語を交えて説明して来たが、此処にいる人間の中でそのデータを全て理解出来るのは朋美社長夫人や天才技術者のミツヒロや百由の説明に慣れてるミリアムなどのごく少数だったが。
まあ、とりあえず『地下シェルターは自然消滅したのではなく方舟としての機能を使って現世から離れた』という事らしいと分かれば十分なので、説明が終わった辺りでヘビクラ隊長が意見を出した。
「ふぅん、まあとりあえず地下シェルター異界は再度潜航して現世から離れたが故に消失した可能性が高いと。……だがそれなら異界の消滅は自然に起きた事では無く何者かの意思によって人為的に起こされたモノであり、あの地下シェルターを支配していたのがヒュージである以上は連中が地下シェルターを操って潜航させたと見るべきか。あのクラゲ型になったヒュージが逃げたのも関係してるか?」
『うーん、シェルターを占拠していたヒュージが地上に派遣した高レベルのヤツを含めて結構な味方がチームDAT達に倒されたから、地上との接続を切ってシェルターごと逃げ出したと考えるなら辻褄は合うかもねぇ。DAT隊が交戦したヒュージが逃走した直後に潜航が始まったみたいですし、その可能性は大いにアリですね』
「こういう展開だと一旦取り逃した怪獣がパワーアップして帰って来るとかあるかな、ゴルザとか見たいに。……地上に現れたモノも地下のヒュージも戦闘で倒したらパワーアップして復活しましたし」
「私達の世界でもダメージを受けたヒュージが修復・強化されて再び表れる『レストア』と言う事例はありましたが、戦闘中に急激に進化した上で復活するなんてヒュージを見たのは初めてです。あのシェルターを占拠していたのは余程に特殊なヒュージだったと思います」
『グラン・エプレからの証言とヒュージの残骸を解析した結果、この地下シェルターにいるヒュージは生体素材とスライム化した悪魔とナノマシンを混ぜて作られてる人造悪魔と推測されます。少なくとも欧州に現れた生体素材を使ってるだけのマシン悪魔ヒュージとは一線を画す出来ですね。……どっちも暴走して人間を襲ってる辺りは変わりませんが。現状だと推測ですがマシン悪魔の性質的に組み込んだ悪魔のMAGと生体素材が反応して独自の意識を持ち始めたって説が有力ですかね』
それぞれが意見を出しつつも恐らく『地下シェルターはヒュージを載せて現世から逃走する形で潜航したのでは無いか』と言う結論に落ち着き、そこで重要になるのは『逃げたヒュージは今どこにいるのか』と言う話となる。
「潜航した地下シェルターの現在位置とか分からないのか? ヤマトが言うゴルザ云々じゃないが人間を餌か素材と認識していて自己進化するレベル90近いヒュージ、それに加えてレベル50前後のヒュージも多数いる地下シェルター異界が別の場所に浮上すればそこそこの被害が出るかもしれない」
「まあ現れても日本国内ならその辺の一般デビルバスターに討伐されるだろうけど、それまでに人里近くに現れるとかで被害が出る可能性はあるから先手は打って起きたいわよね。別にあのヒュージ達に関してグランギニョル社に後ろ暗い所がある訳でも無いし、掲示板での警告とかも一つの手ね」
『今も地脈とかから追跡術式を走らせてますけど一旦潜航した異界を位置を見つけるのは中々難しいですね。そもそも魔界に近い場所の索敵なんて難度が高いですから。……でも、もう一度現世に戻って来るならそこまで長時間潜航は続けられず何処かで再浮上する必要がある筈です。潜りすぎると本当に魔界とかに堕ちてしまうので』
「確かに異界は現世と魔界の境界にある場所。一旦現世から消えれば当然魔界に近付く訳だから、魔界に堕ちない様にその深度を維持するのは相応にリソースを消費するからな。そしてヒュージが生体素材を使ってる以上は魔界に堕ちる事を是とする可能性は低いか」
『現世から離れ過ぎてる異界の索敵は無理ですが、地下シェルター異界の霊気データは取れたので潜航の限界時間になって浮上して現世にヒュージ入りシェルターが近づけばその反応をキャッチ出来る筈よ。後は現世に再び接合すれば詳細な位置情報は索敵出来るし、複数回データを取れればその移動パターンから次の浮上場所を逆算する事も出来るでしょ。少なくともアレだけ規模の大きい異界であれば潜航している状態じゃ、現世の物理的な距離でもそこまで離れた所に行く事は難しいわ』
潜航した地下シェルター異界の詳細な索敵は流石に難しいものの、時間を掛ければグランギニョル社の技術と人員であれば不可能ではないと判断されたので一部人員を捻出して調査作業を行わせる事にした。
まあ今回のヒュージ事件でグランギニョル社自体に何か責任がある訳でも無いのだが、過去周回の自分達が作ったとかの事情は除いても自分達が管理している異界から逃げ出したモノなので何もせずに放置で被害が出るのはイメージ的に少し問題がある。
「後は高性能なマシン悪魔のヒュージを捕獲したりとか、次元移動可能な『方舟』である地下シェルターを確保出来れば利益にはなるかもしれないし。まあ最優先はヒュージの駆除で技術確保へ出来ればの方針にするけど、欲を出して返り討ちにされましたじゃ間抜け過ぎるもの。……貴方達チームDATをメイン戦力で動かす事になるけど、こういう仕事は大好物でしょ?」
「まあ人間を襲う化け物退治が防衛チームの本職だからな。それに一度逃げられた相手だからきっちりケリを付けておきたいし。……勿論ちゃんと報酬は貰うが、今回の一件を含めて」
「私達【グラン・エプレ】も戦わせて下さい。私達の世界からこの世界に送り込んでしまったものですし。私達デビルバスターチームはヒュージと戦う使命がありますから」
そう言った叶星を含めてグラン・エプレの五人の少女達は決意を秘めた表情をしていたが、それは元の世界で高校生ぐらいの少女達が『ヒュージと戦う事は自分達の使命』と迷いなく言い切れるぐらいに戦って来た、それが“当たり前”なレベルで追い詰められた世界だった事に思い至った大人組は少し困った表情になった。
「(うーん、この子達が一番地下シェルターやヒュージに詳しいのは事実だから力は借りるけど)まあ貴女達もウチの社員になったのだから、地下シェルターの一件に関して必要になったら(それまでは普通に学生させるけど)仕事を回すわ。グランギニョル社はホワイト企業(仕事量を除く)だからちゃんと給料も支払うしね。それと何か他にヒュージやあの地下シェルターに付いての情報とかはあるかしら」
「ええと、ヒュージに関しては先程説明した通りで私達の世界のグランギニョル社などが中心になって組織された“反抗組織の技術者集団”が作った対人喰い悪魔用の戦闘兵器が暴走して独自の活動を行なっていたモノです。『方舟』て呼ばれた地下シェルターに関しても同じく彼等が今の世界を放棄して別の世界に異動する為に作ったモノだとしか……」
「技術者集団は色々と公にされない研究も行っていたから、あくまで一戦闘員でしか無かった私達にはそこまで情報は入って来なかったわね。CHARMの開発や整備でお世話になるアーセナル達とはよく話してたけど、ヒュージや地下シェルターの開発を行っていた専門家達は秘匿性が高かったから」
「……そういえば地下シェルターの奪還開始前の作戦会議で生き残っていた技術者から聞いたんですが、地下シェルターを世界を渡る為なんて言う荒唐無稽なアイデアの下で作られたのは『反抗組織の技術班が他の世界から渡って来た“方舟”を発見したから』だと言っていました」
良くも悪くも戦闘員である彼女達はヒュージとの戦い方は知っていてもヒュージの構造やら地下シェルターに使われた技術には詳しくなかったのだが、隊長である叶星が元の世界で地下シェルター奪還作戦前のブリーフィングで聞いた話を思い出していた。
……曰く、ヒュージを作れたのも他世界から来た『方舟』より得られた技術を解析したからで、地下シェルターも基本は避難用のシェルター作りだったのだが『方舟』を解析して得られた技術なら世界移動が出来るかもしれないと考えてそちらの用途でも使える様にしたのだとか。
「ただ、ヒュージを作った技術者も地下シェルターの次元移動機能を作った技術者も既にヒュージや人喰い悪魔に殺されていたので、残った技術者にも詳しい事情は分からなかったそうです。一応残っていた資料から地下シェルターの機能を使うだけなら出来る算段があるので奪還作戦が行われたんですが」
「末期戦らしい行き当たりばったりな作戦だが……それで地下シェルターや他世界から来た『方舟』について他に情報はあるかな?」
「ええっと、他には作戦に必要な施設の構造ぐらいしかブリーフィングでは知らされていませんでした。技術的な事は戦闘員に知らせても仕方ないので奪還してから技術者達が対応するって話でしたから。……あ、でも地下シェルター中枢部の流れ着いていた『方舟』から移植した装置の名前ぐらいは資料に載っていた様な……確か【アマラコンピューター】とか書いてありました」
「何だって⁉︎」
「えーまたー」
そんな思わぬ名前が出て来た事で【アマラコンピューター】に因縁があるヤマトと結梨が反応して、彼等から事情を聞いていたチームDATも予想外の名前が出て来た事に驚いていた。
「その【アマラコンピューター】とやら何か知ってるのかしら? 出来れば情報提供をお願いしたいのだけど」
「隊長、話してもいいですか?……分かりました、ダメなら止めて下さい。【アマラコンピューター】は俺が元いた世界*2のヤタガラスの研究者達に作られた物で、アマラ深界とか言う魔界の奥底から情報を引き出す装置だったらしいです。更に研究者達が開発していた人工悪魔【神造魔人】のデータを始めとする研究記録が保存されていたみたいで、どうもそれを次の周回以降に託す目的で三つ程が『方舟』として未来に送られたと聞いています」
「まあ最近たまに話題になる過去周回からのタイムカプセル的な漂流物の一種だな。……ただアマラコンピューターは使い方によっては中々面倒な事も出来るらしく、一つがそこの結梨ちゃんがいた世界に漂着して京都ヤタガラスの手に渡り中のデータが非人道的な実験に使われたらしい。更にその『方舟』の次元移動能力によってそのクソな京都ヤタガラスがこの世界に来て、こっちの同じくクソな京都ヤタガラス残党と手を組んで神造魔人の量産とかの事件を起こしたりな」
「結梨もそのデータから作られた神造魔人技術が使われた人造人間の一人だしねー。…………アレ? これ言っちゃダメだった?」
「初めて聞いたんだけど結梨ちゃん⁉︎」
そこでうっかり結梨が自分の出生を話して第三生徒会メンバーが驚くと言った事態も起きたが、以前に結梨を狙っていた大元の京都ヤタガラス残党自体が既に滅びている事を説明された事とか、何より生徒会メンバーが結梨の出生“程度”を知ったぐらいで態度を変えない
……まあ良くも悪くも結梨的には“既に決着を付けた事だった”ので割り切っており、説明に必要ならとあっさりと口を滑らしてしまったのだが、とりあえず次からはちゃんと事情を知ってる人に相談しろと楓には苦言を呈されていたが。
「とにかく、アマラコンピューター付きの『方舟』には神造魔人やマガツヒ関係の研究データが入っていて、使い方によっては次元移動やボルテクス界の創造すらも可能な面倒極まりない物品なので、個人的には見つけ次第粉々にぶっ壊しておいた方が良いと思います。多分人工悪魔のヒュージが作られたり、連中がマガツヒを使って来たのもそのデータが使われてるんじゃ?」
「せっかく過去の技術者が残したデータだから会社としては有効活用したいんだけどね。まあ良い印象が全くないブツだから気持ちは分かるけど、技術データなんて扱う人間次第なんだから……」
「いえ、そう言う訳ではなく【アマラコンピューター】を狙ってるヤツが居るんですよ。……俺がいた世界で日本全土をボルテクス界に沈めた黒幕の一人、今もこの世界に来て暗躍してるレベル99の【魔人王 コンス・ラー】とか言うやべーヤツが。下手に確保すると狙われますよ」
「結梨もヤマトと戦ったけど勝てそうにないぐらい強いヤツだったよ。何か“大切な人を取り戻す”為に動いてるらしいけど……」
優秀な技術なら入手した上で非人道的ではない使い方をすれば良いと言うグランギニョル社側だったが、ヤマトからすれば【アマラコンピューター】は確保しても魔人王とか言う特級の厄ネタ技術者がついて来そうなので、魔人王側の目的を阻止する為にも欲を出さずに破壊した方が良いという意見であったのだが。
また、DAT側からの報告で京都ヤタガラス残党討伐戦に現れた“らしい”【魔人王 コンス・ラー】だが、その後の帝都ヤタガラスによる調査や託宣などでも『まるで【魔人王 コンス・ラー】なんて初めから存在しなかったのでは』と言われるぐらいに以後の足取りが全く掴めないと言う報告もあって朋美社長夫人も少し思案する様子を見せる。
「実際に攻撃を受けたヤマトと結梨ちゃんがいて、尚且つその後の調査で発生したボルテクス界は京都ヤタガラス残党ではなく魔人王が原因とも目されている……とまで分かったのに、肝心の魔人王本人の行方は帝都ヤタガラスが調査してもさっぱり分からないと言う有り様だからな」
「一応古巣だから言っておくが帝都ヤタガラスは規模こそ小さくなっていても、人材の優秀さと日本国内に多数あるコネや伝手もあって調査能力は非常に高い。それこそ調べれば大体の危険勢力の情報は入手出来る程度には。……そんなヤタガラスでも行方を追えない時点で単なる高レベルって訳じゃない、かなり面倒な手合いだと我々は推測している」
「単純に強いだけじゃなくて盤外戦術も上手いタイプかしらね。流石にそんな相手に狙われてまでのリスク込みでも欲しいってデータでも無さそうだし、そもそも手に入れられるかも分からないから積極的な入手は考えない事にするわ。別に破壊しても構わないという事にしておきましょう」
『技術屋としては調べておきたいんですけどねー』
とにかく、アマラコンピューターや魔人王についても考慮してする必要はあるだろうが、それよりも潜航したヒュージ入り地下シェルターを見つけなければ話にならないという事で、現状集まった情報からグランギニョル社の方で独自に調査を行う事となった。
……ただグランギニョル社としても今現在は対ガイア再生機構関連で色々と動いており。ヒュージ側への調査に回せる人員が中々少ないので掲示板などで少しだけ警告を出しつつ目撃情報の捜索と地下シェルター異界が浮上するタイミングで反応をキャッチしての位置補足と言う消極的な調査しか出来ない状況だったが。
「ヘルヴォルからの情報と調査で悪魔課金からレベル90ぐらいのレイドボス的な悪魔を呼び出せる【インヴォークシステム】を現地勢力にばら撒いて悪魔召喚テロ、そこからマッチポンプ的にボスを倒して自分の傘下を現行世界に浸透させるやり口をやって来そうって所までは掴んでるのよね。どうも【ヤコブの梯子】とか言う組織が都内のアレな連中にシステム提供してるらしいから近くに大騒動が起きそう」
「都内に被害を出して秩序側を揺らがせつつ自分達が提供するシステムや傘下のパフォーマンスって感じだな。自分達を社会に浸透させるのが目的かね。……最もこの前レルムに出たレベルのボスなら複数体同時に現れたとしてもその辺のデビルバスターが『ヒャッハー! 経験値たっぷりのレイドボスだー! アイテム落とせー!』とか言いながら討伐出来るだろうが」
「この前のボスも雑魚いクセに倒したらレベル上がったって掲示板で話題になってたっすからね。二匹目のドジョウ狙いで東京に張ってる修羅勢とかもいるんで戦力は揃いそうっす」
「首都にレベル90越えの悪魔が現れるだけでも影響はあるだろうし、メインの目的は現地戦力の把握って可能性もあるから出来る限り被害を出さずに倒せたら良いんだけどね」
「……レベル90越えが都心部に現れるのに倒せるのが前提なんですね」
「まあこの前のデカジャデクンダも出来ない雑魚ボスなら被害ゼロとは行かんかもしれんが討伐は出来るだろう。そもそもマッチポンプ用の当て馬ボスで倒せる様に作ってるっぽいしな。……まあ裏で糸引いてる再生機構の出方とかもあるから油断は出来ないが」
「悪いけど、まず貴方達チームDATはこっちの“調査”に回ってもらうわ。少なくともシェルターが再浮上するにはまだ時間があるみたいだしね。……グランギニョル社としてはガイア再生機構に自社が好き勝手されるのを避けるのが第一だから」
こうしてチームDATはまずスポンサーであるグランギニョル社の命令もあって、近く【ガイア再生機構】が目論むと思われる首都へのテロ計画の調査と対応に赴く事となったのだった。
……まあヒュージや地下シェルター方舟も今の所はグランギニョル社の技術者達に調査を任せておいた方がいいし、何より首都を襲う巨大怪獣に対抗すると言う防衛チームムーブが捗りそうな依頼でもあるのでチームDAT全員がやる気まんまんなので特に文句は出なかった模様。
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さて、今話題になっている【ガイア再生機構】であるが、現行世界侵略を目的としているらしい漂流勢力の彼等はこれまでの周回から得られたデータを元にして効率的に侵略を行う為のマニュアルまでも作っているのだ。その中には『グランギニョル社の買収・吸収による現地傘下勢力の運営』などと言ったプランもあり、多くの世界で中々(再生機構基準)の技術力を持つ世界規模の企業であり、“条件”さえクリアすれば楽に取り込んで【G.E.H.E.N.A】とすれば丁度いい先兵と出来る扱い易い相手であるとされていた。
……まあ現行世界では欧州にある本社を始めとする主要な支社は暴れ回る魔人などの手によって壊滅状態なので買収などの手が取りにくい事、そして規模が大きく縮小しているので傘下に入れてもメリットが薄い事からこの世界では積極的に干渉されていないのだが。まあ必要になる可能性も考慮して監視用、必要なら【G.E.H.E.N.A】とする為に必要な【楓・J・ヌーベル】など社長一家の暗殺を含めた工作を行う人員も少数派遣されており……。
「……相変わらず【エデン】の連中は周回で得たマニュアル通りの行動。だからパターンも読みやすい」
| アビスフレイム | 火炎属性スキル | 敵単体に特大威力の火炎属性ダメージを与える。 このスキルによるダメージは魔法防御力に依存し、死亡時に踏みとどまるスキルを無視する。D2出典。 本来なら【魔王 アモン】専用のスキルだが習合による写せ身合体によって獲得した。 今回は食いしばり無効の情報汚染効果を魔術とマガツヒで強化して凡ゆる科学的・魔術的な情報を焼却する炎として使用。 |
その派遣されていた工作員は一人残らず鳥の仮面を付けた少女──同じくグランギニョル社を監視していた【魔人王 コンス・ラー】の手によって、“自分の目的に邪魔だから”と完全に蘇生不可能、及び一切の情報を残さないレベルで跡形もなく焼却されてしまっていたが。
「この“自称
「情報漏出防止結界は順調に作動中です。少なくとも私達の存在は漏れていないかと」
『伏兵の存在も確認出来ませんな』
『こちらもです』
まあ、魔人王としても再生機構と本格的に事を構えるのは厳しいので自分達の情報を隠蔽する事を最優先にしており、その為に魔術的な分野に長けた仲魔に情報の念入りな処理を行わせつつ、自らは配下の電霊などを駆使して科学的な情報隠蔽を行っていた。
「しかし、グランギニョル社を監視していただけのエターナル共を態々排除する意味はあったのですか? 連中ならどれだけ情報を消しても我々のがやったと気付きそうですが」
「エデンの技術力ならあの次元潜航した地下シェルターのヒュージが有する【アマラコンピューター】に直接的・技術的な干渉が出来るから、既に私が行った“仕込み”を妨害される可能性が高い。だから“仕込み”が機能し終えるまでに介入されない時間稼ぎが必要なだけ」
「グランギニョル社側には何もしないので?」
「グランギニョルの方は潜航した地下シェルターを探すぐらいは出来ても、潜航したアマラコンピューターやヒュージ自体への干渉を行える技術力はまだ無い。いずれ出来るようになるにしても“仕込み”が目的を達成する時間の方が圧倒的に早い。……ヒュージとコンピューターに危機感を煽るハッキングをして
勿論、魔人王も別にグランギニョル社を守る為にやったのではなく【アマラコンピューター】を有するヒュージ達から“必要なモノ”を入手する為の『仕込み』に対して下手な干渉をされない為の妨害行動であるのだが。
……魔人王組は【アマラコンピューター】の相互干渉からヒュージ達が住む地下シェルター異界の漂着にいち早く気が付き、誰にも気付かれない内にシェルター内に侵入して目的である【アマラコンピューター】の確保……自体は“ある事情”で無理だったので次善策の“仕込み”をしていたのだ。
「……それと個人的にあの三勢力は方針が生理的に受け付けなくて大嫌いなのでストレス発散も兼ねた嫌がらせもあるけど。インヴォークシステム配布のついでに私の正面戦闘用の仲魔を手配して少しだけ動き難くなったし」
「エデンの何時もの手ですね。インヴォークばら撒くついでに厄介な敵対勢力と現地民をぶつけ合わせるか情報を得る目とするのは」
「まあ
彼女にとって【魔人王 コンス・ラー】の姿と能力は表向きの直接戦闘、または現地勢力など外部との接触用に使う表向きの顔であって、暗躍や工作用には得意の偽装技術などを用いて全く別の姿形をとった“顔”を複数準備しており【魔人王 コンス・ラー】を追う限りは決して捉えられない様にされている。
……三大勢力全てと敵対状態であり幾度も交戦しながら、それでも尚活動を続けられている魔人王の潜伏・隠密技術は最高峰であり、盤外戦なら魔術に長けた主神クラスや電脳世界に住う異常進化AIなどとも渡り合えるレベルである。
「とはいえ、エデンにはヒュージに類するマシン悪魔の研究を行ってる一派もいた筈だから時間稼ぎの手は打っておく。……連中の次の手はどうせインヴォークによる首都テロとアピールだろうから、ちょっと得た情報を使い捨ての顔を使ってこの世界の秩序側に流す」
「大した情報は得られてませんが」
「問題ない……と言うかこの世界の現地勢力なら普通にインヴォーク製の雑魚ボスなら倒せるだろうし、裏で糸を引いてる再生機構にも対応してくる。それに少し乗って良い感じにぶつけ合わせてエデンのリソースを削げれば良しぐらいの妨害だから。……こうして監視役を潰しておけばそっちの調査に手を取られるから、あのヒュージ達に手が伸びるまで時間を稼げる。それと再生機構の情報をグランギニョルに回して、どうも向こうも対策しているみたいだから再生機構への妨害に使う」
撤収作業の片手間でイシスと話しながら今後の予定を詰めていく魔人王だったが、その方針は彼女自身がガイア再生機構含む三大勢力を嫌っている事もあって彼等への妨害が主体であった。
……それは連中がやってる事が嘗て“彼”と目指した理想に反するから受け入れられないからであり、どう考えても何処かと組んだ方が楽なのに彼女がその選択を取らないのも失った“彼”を追い求め続けているからなのだが、魔人王もイシスも敢えてそれを口に出す事は無かった。
「ですがそんな手に引っ掛かりますかね?」
「多少の嫌がらせと時間稼ぎになれば良い程度の策ではあるけれど、いつものエデンなら脅威がわかってるヒュージと謎の襲撃ならイレギュラーな方に優先してリソースを注ぐと思う。アイツら今まで現地民相手に圧倒的な戦力差と周回知識のアドバンテージで圧勝し続けて来て、その経験からの成功体験が染み付いているから簡単にこれまでやり続けて来たパターンを変える事は出来ないから多少の妨害にはなる」
「間違いから己を省みる事は出来ても、成功している間に反省するのは難しいと言う訳ですか」
「そう言う事。それに連中は『現地民が知らない世界の真実を自分達は知っている』『自分達は先に進んでいる』と
「少数の強者では勢力としての地力が違いすぎて連中には絶対に勝てない……がサマナーの考えでしたっけ。だから私達も逃げ回る事が最優先で本格的な衝突は可能な限り避けている」
「だからこそ『全体的にレベルとソウルが高い戦士が揃っている』この世界では連中もこれまでみたいな好き勝手は出来ないし、パターン化した成功体験が足を引っ張って暫くは動きが停滞する可能性は高いと見てる。……勿論そうでない者もいるだろうし、エデン辺りは現地勢力が強いなら“搦手パターン”の情報戦にシフトするだろうけど、少なくともどの勢力も暫くはこれまで程に好き勝手出来ない筈」
少なくとも現地民の大半をモブとでも思っている三大勢力の者は足元を掬われるだろうし、この世界の上積みなら自分達は打倒を諦めた各幹部クラスの首を一つ二つ取るぐらいは出来るだろうとも魔人王は予想していた。
……最も、それでこの世界が“余りにも勢力が巨大に過ぎる”三大勢力に勝てるかまでは分からないし、自分達もこの世界にとっては“敵対勢力”なので出来る限り良い感じに潰しあってくれればラッキー。自分達はその隙に暗躍出来れば良い程度に考えていたが。
「さて、まずはヒュージが持っている【アマラコンピューター】の一件を無事に済ませる。まあこのまま何事もなく時間が過ぎれば
「いつも通りの暗躍ですね。まあ今回は待っているだけで成果が転がり込んでくるから楽ではありそうですが」
そうして証拠隠滅と撤退準備を終えた魔人王は仲魔を帰還させてから【龍脈渡り】を使って、その場に何一つ自分の痕跡を残さず凡ゆる手段で追跡出来ない隠密性を保ったままで何処かに消えていったのだった。
あとがき・各種設定解説
グランギニョル社:新社員ゲット
・流石に学生を前線に立たせるのは気分が良くないのでグラン・エプレにはヘルヴォルと一緒に護衛任務の名目で学園に放り込みつつ、CHARMのテスターなど本当に必要で危険度が低い仕事を任せる予定。
・それはそれとして会社としてはボロボロなのにやる事が多いので、今回引き込めたチームDATには十分な報酬を渡した上で馬車馬の様にコキ使うつもりだったりする。
・ガイア再生機構への対策は基本的に情報収集と乗っ取られない様にするなど会社を守る為の守備的な対応がメインであり、戦力的に不可能な事もあって直接殴りに行くみたいな事はしないし、自社の利益と社員の生活が優先の会社的にも出来ない。
魔人王:暗躍中
・自分が確保した物と同型機であるアマラコンピューター同士の情報共有機能を使ってヒュージ入りシェルターの漂着位置を割り出して、見張ってるグランギニョル社員がヒュージと戦闘している内にシェルター内部に潜入していた。
・更にヒュージを含む誰にも気付かれずにチームDAT達が現着するよりも早くシェルターの中枢部へと到達するしていたが、そこにあるアマラコンピューターは“ある事情”で回収が困難だったので次善策の“仕込み”だけしてさっさと撤退した。
・突発的な事態だったせいでガバが多かった前回の京都ヤタガラス残党事件と違ってアマラコンピューターの実物を研究して色々と準備を整えていたので、今回は回収出来ない事態にもスマートに誰にも見つかることなく対応出来た模様。
・ちなみに魔人王の三大勢力への意見はあくまで彼女から見た(メタ的には作者の)見解であって、実際がどうかは分からないがとにかく慎重に油断なく三大勢力と現地勢力の情報を集めながら行動している感じで。
読了ありがとうございました。
これでアサルトリリィ編の全編は終了。今後はレイドバトルなどの幕間を幾つか挟んでから後編のVSヒュージ決着(それ以外にも暗躍者がいる)編に移っていこうと思います。……まずはドリフターリリィ達にこの世界の事を知って貰う為にレイドボス戦を見学させようか。