真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
「…………分かりました、その方針で良いと俺も思います。……はぁ、“予想”はしていたけど“想定以上”に厄介な手を打ってきたな。少しミスったか」
「その様子だと余り良い内容じゃなかったみたいね。グランギニョル社からの連絡は」
防衛チーム的会議ごっこが終わった後でそれぞれ行動に移ろうとしていたチームDATだったが、その直前にヘビクラ隊長の個人通話回線にグランギニョル社の【朋美・ヌーベル】社長夫人から連絡が入って来た。
……その連絡を受けたヘビクラ隊長の反応からして厄介な事になっていると察した他のメンバーも、先程までとは違って真剣な表情で会議用の机に座った。
「それでグランギニョル社からは何を?」
「ああ……まあ簡単に言うとだ、レルムレイドバトルの時に俺達チームDATが連れていた学生組が『この世界が何度もループしている』と言いふらしている“噂”が立ってるそうだ」
「「「「え?」」」」
その隊長の言葉を聞いたレイドバトル時の引率組メンバーは驚きの声を上げるが、すぐにそのまま“噂”がどう言う意味を持つか考え始めていた。
「そもそも周回に関しては合一神に並んで厄ネタだから話さない様にって言われてましたよね? 一応掲示板でも“過去周回”とは言わずに“前の世界”と誤魔化した言い方をしていた筈ですけど」
「学生組にもキチンと口止めはされて……そう言えば確認はしてなかったかしら? でもレイドバトルの時にもそう言った話はしていなかった筈よ。そもそもループ説自体が眉唾物だし」
「こっちもレイドバトル時にそういった話をしてた事は無かった筈っすけど。ループの話は下手に口外しない方が良いって事ぐらい……んん?」
「……いや、今思えば何故グランギニョル社は“学生組にループの話をしたんだ?” 事情を話すだけなら漂流者の事だけで十分だった筈だ」
「まさにケンジロウの言う通り。……それに関してはグランギニョル社側が『周回情報に関してはドリフターの大体が知っている事』であると誤認
珍しく面白くなさそうな表情を浮かべるヘビクラ隊長は考え込む考え込む他のメンバーに向けて、先程のグランギニョル社からの緊急情報の詳しい内容を話していく事にした。
「気付いたきっかけに関しては影異界から出て来たヒュージへの対処に関する交渉だったそうだが、そこで交渉に当たった社長夫人が向こうも漂流者について知ってるならと周回に関する情報まで漏らしたら一般的には知られていない情報だと初めて気付いたらしい。……幸い向こうが察してくれたのか与太話って事で流されたらしいが」
「あの朋美社長夫人は元々は霊能家系『河合家』出身のガチガチの武闘派でインフレ前からレベル50超えてたガチの超人だからな。実家の風水系術の適正が無かったから戦闘能力だけ磨いて家を飛び出して海外に向かい、そこでヌーベル家時期当主と出会って電撃結婚したとか言うフリーダムな人だぞ」
「詳しいですねミツヒロさん」
「河合家とは実家と遠戚で昔から多少の付き合いがあってな。俺がグランギニョル社の武装COMP開発に誘われたのもその縁がキッカケだ。……まあ本人は『私って裏方とか向いてないのよねぇ』と愚痴っていたが」
尚、そんな割と凄い人だった朋美社長夫人なのだが、グランギニョル社の欧州撤退の影響で夫である【ミシェル・ヌーベル】社長のやる事が一気に増えて日本支部運営やら壊滅寸前の海外支部維持の為の業務で二徹三徹当たり前な重労働になったので、それをサポートする為に現役引退して社長夫人として動く事に決めたのだ。
……だが、彼女は自身でも自覚はしているが戦闘面では天才でも事務や交渉事に関しては超絶敏腕社長である夫と比べればそこそこ優秀程度のレベルであり、特に情報を制限する必要があって手が足りない漂流者関係業務を捌くには負担が大きくそこに漬け込まれたらしい。
「そこで流石に何かがおかしいと独自に調査した漂流者に関する情報を再度精査した所、どうもグランギニョル社へは周回情報が当たり前のものだと誤認させられている情報工作が成されていた可能性が高く、やらかしたと判断して連絡して来たらしい」
「当たり前に知ってる事だと思い込んでると気付けないモノですからね。御厳とか御厳とか。実際あの話し合いの時にも俺達は気付けなかったし」
「あの場にいる全員が当たり前に受け入れていたから違和感なかったものね。……ただ、世界が何度も滅びと再生が繰り返されているとか普通の人やドリフが知ったら相当にメンタルに来るわね」
「良くも悪くもあの場にいた全員が『例えループ説自体が本当だとしても戦い続ける』レベルのメンタル持ちだったから違和感なく進んでしまったからな。加えてその場のドリフター全員が周回については知ってた事もある」
「俺は前世の記憶を取り戻した直後は【アマラコンピューター】由来の情報と混ざって“この世界が周回してる”と認識してしまって、それが隊内でも共通認識になってたからな。その後もアマラコンピューター本体から情報得た所為で周回に関しては当たり前になってたか。結梨ちゃんもそこで知った訳でと」
また、ヘルヴォルやグラン・エプレも元の世界で“世界がループしている”と言う噂を聞いており、全員が周回について共通認識を持っていた事が今回の一件に繋がっていたのだが……ヘビクラ隊長が問題視しているのは『ヘルヴォルとグラン・エプレが元の世界でループの話を聞いていた』と言う点である。
「アマラコンピューター由来で知ったヤマトと結梨ちゃんは除くが、ヘルヴォルは前の世界でガイア再生機構について調べていた時点で周回についての噂を知り、グラン・エプレの方もシェルターについてグランギニョル社の跡地で資料を調べている時に周回について書かれていたレポートを見つけてたんだとか。……ちなみにこの世界のグランギニョル社が周回情報を当たり前だと思い込んだのは欧州や日本で彼等が管理している影異界からの漂流物にそれについて書かれていたレポートが“多数”見つかって、独自にドリフ関係を調べた時にもループの情報が発見出来たからだそうだ」
「えーっとつまり……」
「周回に関してはヤタガラス辺りの最前線組も基本伏せている筈なのに、そんな情報をグランギニョル社が掴まされている事自体がおかしいと」
「過去周回からの漂流物にしても都合よくループ関係の情報が出過ぎよね。それならループが一般的な情報だと誤認する事もあり得るか。……さっきの学生組に対する噂を含めて“恣意的な情報操作”って感じかしらね」
「そう言う事だ。まだ推測の段階ではあるが恐らくガイア再生機構の仕業だろうな」
そのアンヌ副隊長の推測に同意するヘビクラ隊長だったが、それと同時に“ガイア再生機構は想定以上に周回の仕様を『悪用』しているとも推測していた。
「学生ドリフ組が周回情報を知ってた事とか影異界からの漂流物にループ情報の痕跡があった辺りが都合が良過ぎるし、恐らくガイア再生機構がループ情報をそれとなくばら撒いている可能性が出て来た。……影異界は過去の世界から逃れたものの残滓であり、座標的には後の世界の同一座標に漂着するなら過去から未来へのメッセージとしても使える訳だが……」
「その“メッセージ”を改竄して自分達が有利になる情報を未来に送り付ける事も出来るっすよねそりゃ。バイオハザードの工作員による撹乱情報レポートみたいに」
「生きた人間ならともかく単なる資料であれば如何様にでも改竄出来るか。真実を確かめようにも過去周回からの産物ではそれも難しい」
「周回情報からネームドスカウトとかピンポイント暗殺ぐらいは予想していたが、恐らく周回の仕様を知り尽くしてる連中はゲーム周回プレイでの効率プレイ的な“攻略法”どころかマンチレベルの悪どい“裏技”を幾つも持ってるんだろうな。改めて考えるとループについては詳しく知らない俺でも悪用法は幾つか思い付く」
例えば『ヒュージを開発したのはアメリカのアンブレラ社だ』とかの情報を次の周回のグランギニョル社に届けられればアメリカへの隔意を誘発して行動を制限されるだろうし、過去周回からのメッセージとして今の時代より進んだ技術を送ったりとかで行動を誘導するなどもあり得る。
……そう考えれば多くの世界でグランギニョル社がヒュージやCHARMを開発してるのも恣意的なものを感じさせるし、何より“こうして疑念を抱かせる”だけでも十分に面倒だとヘビクラ隊長は難しい顔で米神に指を置きながら考えていた。
「では、グランギニョル社への情報操作や学生組への噂を行った敵の目的は一体……」
「“グランギニョル社が周回について触れ回ってる”……って知られたら、その辺りの情報を隠して侵略者に対抗しようとする勢力からは不評を買うだろう。漫画好き達最前線組とか帝都ヤタガラス含むガチの上役達とかな。単なる噂の筈なのに“グランギニョル社お抱えの部隊が周回情報を漏らした”と言う部分だけ明確だし」
「なるほど、そう言う自分達の敵となるであろう秩序側の勢力と、同じく敵になりそうな現地の大企業や組織をぶつけ合わせて戦力を削るのが狙いって事か。少なくとも敵対関係、それこそ仲が悪くなるだけでも両者のリソースが無駄に削れるわね」
「スパロボZとかであった情報操作で味方勢力同士の同士討ちを狙う敵キャラって感じっすね。それで漫画好き辺りが『ケジメ付けろ』とか言って文句言って来たらどうするっす?」
「そうなったら予備に確保してある宝石セットを詫び石して執りなすしかないな。……まあ向こうも当然情報工作だって事は気付くだろうし、そうすれば下手に接触するよりもスルーした方が良いと判断する筈だ。謝罪とかするだけでも情報操作に使われかねないからこちらから接触するのも無しだ」
実際、謝罪した事実をネタにして『アソコとアソコは仲が悪い』と言った追加の噂でも流されるのは目に見えており、ならば下手に騒ぎ立てるよりもスルーして噂の火消しに専念するのが一番の対抗策だろう考えていた。
「噂の対象になったヘルヴォルとグラン・エプレに関しても聖華学園への入学時期を繰り上げて『暫くほとぼりが冷めるまでは学園で大人しくしている様に』と厳命したみたいだな。とにかく今は火消しと防御に専念してこれ以上グランギニョル社が揺らぐ事がない様にするのが最優先だそうだ」
「レイドバトルでオークションとかして目立ち過ぎたのが悪かったかなぁ。宝石バブルになりそうだからヘイト向かない様にその場で売ったけど逆効果だったか。実態はMP回復に使ったマッカ分を取り戻しただけでそこまで稼げてはいないんだけど」
「行動が裏目に出るのは良くある事だからしょうがないっすよ。対抗してこっちも情報操作とかしないんすか?」
「ヤマトが目立ったのは事実だがどの道レイドバトルで救助活動する女学生とか噂になって、それを利用して情報操作されてただろうから今回はこっちの見積もりが甘かっただけだ。それと情報操作で対抗に関しては却下。……今は火の車とはいえ紛いなりにも世界的に企業だったグランギニョル社相手に『周回に関する認識を誤認させる』なんて情報工作が出来る相手に情報戦で勝てる訳がない。十中八九グランギニョル社はマークされて攻略法とか確立されてるだろうし」
まあ、ヘビクラ隊長としては周回に関する誤認は大分運や間の悪さと言った要因も絡んでいるとは思うが、恐らくガイア再生機構はそれも織り込み済みで上手くいけば良し、失敗しても嫌がらせ程度にはなって行動を制限出来る。
……と言った感じの手段を含む対グランギニョル社用の攻略法を今までの周回知識を使って多数用意しているだろうと推測しており、それこそ下手な対抗策など逆用されるだけだろうとまで彼とグランギニョル社の社長辺りは考えていた。
「ヘルヴォルの話やドリフからの情報を総合するとグランギニョル社はガイア再生機構に取り込まれたり、逆に再生機構相手の敵対組織になったりする複数のルートがある。……それ故に再生機構側からも注視しておく相手だと思われてるんだろう。ルートに応じた敵味方が変わる以上はそこの動向次第で打つ手を変える必要があり、それなら自分達に有利な行動を取らせる為のフラグを踏む“攻略法”は用意してあると推測出来る」
「二週目以降のゲームプレイ時にシナリオのルート分岐が関わるフラグがあるなら当然気を付けるし、ルート分岐条件やフラグは調べてから挑む方が効率的だよな」
「実際そう考えれば周回知識を面倒な組織にリークするのは有効な手よね。上手く秩序側の勢力と不和を起こせれば良し、そうで無くても『世界が幾度となく滅びている』と言う情報を持ったまま戦える者は多くはないから戦力低下も見込めるか」
「それだけじゃなくて死にたくない、滅びたくないと考える者が逃げる為の方舟として【ガイア再生機構】【ブラックフィエンド】と言う形で“今の世界から逃げられる手段”を用意すれば人材が向こうからやって来るだろうな。世界中に周回情報を公開するとかならともかく、一部の組織にリークするだけならあっちへの損失はほぼ無い辺り厄介な手だ」
多分に推測が混じってはいるがこの件の様に【ガイア再生機構】のやり口として今までの周回で有用だと判断したローリスクな情報操作を複数行っており、更にそれを含めて現地勢力がどう動くかによって対応を変えてくるだろうと踏んでいた。
……再生機構の周回経験による現地勢力の“攻略法”はこちらの予想以上に厄介かつ多岐にわたっており、下手な対抗手段は既に経験済みかつ対抗策が用意されてしまっているのは想像に難くない。
「だからこそ今は噂の火消ししながら情報操作でこっち側が崩されない為、複数の筋から情報を手に入れて踊らされない様に守りに徹しつつ反撃の機会を窺うしかないんだよなぁ。グランギニョル社側もとにかく防御優先で下手に動くつもりはないそうだ。どのレベルまで工作が仕掛けられているかを確認しないと動くに動けんだろうし、下手に動けば対抗策をぶつけられて詰むだろうから」
「グランギニョル社は欧州支援を行っている大規模企業の一つだ。ここが取り込まれたり潰されたりするのは色々と不味いだろうしな。後は潜航したヒュージ入り地下シェルターなど先に片付けなければならない案件もある。……ヒュージに再生機構がどのぐらい関わってるのかは分からないが取り逃した不始末ではあるし」
「つまり今は再生機構に対してこちらから仕掛けるのは無理って事ですね」
「そういう事だな。動いても状況が悪くなる未来しか見えないから、今は準備をしつつ目の前の問題を一つずつ解決していくしかない」
消極的な方針ではあるが現状情報アドバンテージの差が大き過ぎて情報戦では勝ちの目が無いし、そもそも彼等チームDATはあくまでもデビルバスターチームでしかないから情報戦は専門外である。
勿論、戦力として敵を殴れるなら殴るがガイア再生機構相手だと現状何処を殴れば良いのか分からんから、とりあえずヘビクラ隊長の方針通りに動きつつ直接殴って来たら殴り返せる様にするぐらいしか出来ないのだ。
「それだけ周回情報を悪用してくるなら情報戦だけじゃなくて、直接攻めてくる時にもメタ張りとか積極的にして来ますか。気を付けないと」
「まあそれも有り得るんだがヤマトの場合はそこまで警戒しなくても良いだろう。流石にナホビノになった世界線とかダアト世界か現行世界ぐらいしかないだろう。……俺の場合は【ジャグラス・ジャグラー】が色々な世界で暴れてるっぽいからデータ取られてるだろうが」
「ヘルヴォルやグラン・エプレとも接触してますもんね。怪しい魔人とか目立つだろうし」
「ただ、この前戦った推定ガイア再生機構の手下の言動からして【ジャグラス・ジャグラー】には対策が取れてても【ヘビクラ・シンゴ】に関しては余り知らなさそうだったな。……おそらく俺は軽子坂高校の魔界落ちの時『邪神の手で魔人になって生き残る』か『人間のままで邪神に取り殺されるか腐れ縁の友人に殺される』のどれかになる可能性が高いから、人間のままでチームDAT作る世界は相当に少ないだろうな」
ちなみに高校時代の魔界落ち時には邪神にほぼ乗っ取られたヘビクラ隊長(高校時代)が暗躍しようとしている所を、“腐れ縁の友人”が上手い具合にインターセプトしつつ共に魔界を脱出する為に死に物狂いで色んなコミューンを巡り、何だかんだあって取り憑いてる邪神に気付いた友人が隊長を助けようとして一度は殺されていたりする。
そこで前世に覚醒復活してなんか魔界にあった聖剣を抜いて再戦、それで普通に倒されそうだから『強くなれないならもう邪神いらん!』てなって隊長が人間のままで邪神に抵抗、そこに友人の聖剣パワーでなんか助けられたと言う綱渡りも良いとこなルートを進んでいるので人間のままルートは少ないと推測していた。
「今思い返しても絶対裏ルートみたいな扱いだろうからな俺の人間生存√、後はアイツと相打ちとかも普通にありそうだが。とにかく魔人になった俺は単独行動しかしてなかったみたいであり、恐らく相当に好き勝手する感じになってるからその場合だとチームDATは設立されないだろう。そもそも怪しい魔人とかがチーム作ろうぜと言っても誰も来ないだろうからな」
「だとすると隊長が魔人になった世界では多分私はどっかで死んでるわね。あの夢結の姉を自称する不審者もそんな感じの事を言ってたし」
「チームDAT無しなら俺はモブで終わってそうだな。ここまでレベルを上げられたのも隊長の指揮下で防衛チームごっこをインフレ序盤からやっていたからだし」
「と言うかDAT作らなかったら普通にアリになってそうっすからね俺ら。ソロで活動してたらどっかで死んでそう」
「DATが作られなければモブBぐらいで終わっていた可能性は高いな。再生機構に対策が少ない可能性があるのは幸いと言えるのかね」
「隊長が怪しいのは人間の時も変わらないのでは?」
実際のところ彼等がキリギリスでもそこそこ上位の実力を得られたのは、ヘビクラ隊長に誘われてチームを結成して『防御チームが世界の滅びから逃げるのは解釈違い』と言う考えの下でインフレ初期から戦い続けていたからなので、DATが結成されなければ多分モブで終わっていただろうと予想していた。
そもそもキリギリスが出来ない世界ではここまで強くは無かっただろうから、案外単なるモブと判断していた人物までも強くなっている現行世界ではガイア再生機構も相応の動き難い可能性もあるかと隊長は思考していた。まあ希望的観測なので過信は出来ないが。
「まあその辺りは実際に戦ってみないと分かりませんがね。隊長はガイア再生機構っぽい不審者と戦ったんでしたか」
「ああ、この前のレイドバトル時にグランギニョル社からのレルム外、その比較的近くにある会社の施設の警備に回ってくれと言う依頼の時にな。……予定ではレイドバトルのどさくさ紛れに仕掛けてくる可能性がある“欧州系マフィア”への対策だったんだが」
「さっきも言ったがグランギニョル社は欧州で活動してるレジスタンスの支援をしていて、そのレジスタンスが敵の一つとしてマフィアとも幾度となく衝突してるからな。……その報復として日本にいるマフィア連中がグランギニョル社施設やその社員を襲撃する事が良くあるらしい。グランギニョルのリソースが削られてる理由の一つだな」
「ヘルヴォルやグラン・エプレをレイドバトルに参加させたのも、同時に襲撃を仕掛けて来そうなマフィア連中との戦いに巻き込みたくなかったからでもある。……マフィアとか言うゴミの処理を学生にやらせてもなぁ」
「それはそうですね」
そう言う事情でヘビクラ隊長とミツヒロはグランギニョル社の子会社である民間警備会社【グランギニョル・セキュリティ・サービス】日本支部のエージェントと共に警戒に当たっていた。
そこに案の定と言うかマフィアの鉄砲玉っぽい刺客が現れたのでとりあえず片端から始末していたのだが、外国マフィアにしてはヤケに装備が良かったり動きに妙な所が見られたので周囲を捜索した結果、こちらの戦闘を監視している者達を発見したのだ。
──────◇◇◇──────
レルム近くにある施設を警備しているグランギニョル社の戦力に、欧州でのテロ活動を妨害された逆恨みで武装した欧州マフィアが戦闘を仕掛けている最中、そこからやや離れた場所で三人の男がその抗争の様子を観察していた。
「……チッ、せっかくこっちで装備まで用意してやったのに使えない連中だな。所詮は現地のマフィアか」
「しっかしこんなやり方で良いのかねぇ。今回のミッションは『グランギニョル社の監視と戦力分析』だろう? 雑魚マフィアじゃ大体普通に瞬殺されてるから戦力評価にならなくね?」
「何でもグランギニョル社を監視してた工作班が消息を絶ったから急遽発動したミッションらしいからな。とりあえずあのゴミ共でも現行世界のグランギニョル戦力のステータスとか装備品が分かる最低限の調査にはなるし、安全マージン的にもこれで十分だろ」
\カカカッ/
| メシアン? | テンプルナイト? | LV65 | 耐性不明 |
\カカカッ/
| 悪魔人間? | ガイアーズ? | LV64 | 耐性不明 |
\カカカッ/
| 超人? | デビルバスター? | LV63 | 耐性不明 |
その三人はそれぞれがテンプルナイトの法衣を身に付けていたり、或いは無骨な鎧の様な装備であったり、果てはデモニカスーツの様な機械の鎧を身に付けていたりと、所属を示す外見がバラバラにも関わらず共に行動していると言う裏業界でも珍しい組み合わせであった。
……その正体は【ガイア再生機構】と呼ばれている所から派遣されたエージェントであり、“何故か”グランギニョル社を監視していた工作員が消息を絶った事を受けて恨みを持つ欧州マフィアを焚き付けて争わせる事で現行世界のグランギニョル社の詳細データを取る目的で行動していた。
「ほら、お前らもアナライズ出来たグランギニョルの戦力を記録していけよ。情報量次第で報酬のポイントが変わるんだからさぁ」
「めんどくせぇなぁ、グランギニョルなんて今までの周回で散々データ集めてマニュアルまで作ってるのに態々データを取り直す必要はないだろ」
「そういうミッションを受けるって決めたのはオメーだろうが。工作員が消息を絶って不測の事態が起き得るからって報酬の“ポイント”が良かったから」
「それはお前らも同じだろうが。そろそろポイントは貯めておかないと行けないから報酬が良いミッションに飛び付いたんだろー」
元の所属もアライメントも違う彼等が共にあるのは全員が
それぞれスカウトされる程の才覚をエデンの技術や育成ノウハウで鍛え上げた彼等は
「……ふぅん? じゃあ敵だな」
「「「なっ!?」」」
| バックアタック | システム | 先制時に10%程度の確率で背後からの攻撃になり命中率やクリティカル率が上昇する。 真3出典で事前に【ドロンパ】による透明化を行いながらの奇襲をした事で発動。 |
| ミナゴロシの愉悦 | 自動効果スキル | 自身のクリティカル率が大きく上昇する。真5仕様。 |
| 冥界波 | 物理属性スキル | 敵全体に大威力の物理属性ダメージ。真5仕様。 |
それ故に透明化からの背後からの不意打ちに気付く事が僅かに遅れ、そこに容赦なくトゲトゲしたデザインの人外の魔人【夢幻魔人 ジャグラス・ジャグラー】が愛剣である【
……尚、言うまでもないがこのジャグラスの正体は外見・種族・名前を偽装する
「デモニカ、アナライズ……【魔人 ジャグラス・ジャグラー】だと⁉︎ まさかお前が工作員を始末していたのか!」
「回復する【メ・ディアラハン*1】! よりにもよって注意マニュアルにも載っている自爆テロ野郎か!」
「お前らも仲魔を呼び出せ! コイツは“単独行動”でテロってくるから数で押すぞ!」
「(何言ってるんだコイツら。まあ完全に敵だと確定したし無駄に情報を渡す必要はないよな)おいおい、随分と焦ってるじゃないか? 何処かで俺に会ってたかぁ?」
ちなみにヘビクラ隊長は欧州マフィアの動きが組織的過ぎると言う事で何かの罠の可能性を考慮して周囲を捜索中に偶然戦闘を監視している男達を見つけ、話を聞く限り裏で糸を引いてる連中と判断して奇襲を仕掛けたのである。
だが、向こうの発言からして如何も単なるマフィアのパトロンでは無さそうであり、恐らく面倒なドリフター系……多分再生機構の手の者で過去周回の“ジャグラス・ジャグラー”と敵対してたと推測し、敢えて自分の素性を誤認させる様な言動を続行する事とした。
「(ヘルヴォルの話からするにガイア再生機構含む様々な組織にテロを仕掛けてたらしいから)まあ、お前らが俺を知ってても知らなくても、気に食わないゴミ共の気配がするからブチ殺すだけなんだがなぁ。その方が面白そうだ⭐︎」
「クソがッ! 聞きしに勝るイカレ野郎だな! 召喚【ドミニオン】!」
「チッ、楽なクエストだと思ったのにヨォ! 召喚【エリゴール】!」
「運が悪くはあるが、コイツを倒せば追加報酬も狙えるだろ。召喚【キウン】!」
\カカカッ/
| 天使 | ドミニオン | LV64 | 破魔・神経反射 打撃無効 呪殺・魔力・精神弱点*2 |
\カカカッ/
| 堕天使 | エリゴール | LV63 | 呪殺・精神無効 破魔・魔力耐性 貫通・電撃弱点*3 |
\カカカッ/
| 夜魔 | キウン | LV61 | 呪殺吸収 四属性・魔力・神経・精神耐性 破魔弱点*4 |
とりあえずヘビクラ隊長は『個人でキチガイじみた行動を取るテロリスト』っぽい言動で挑発してみたら、三人の男は嫌気がさした様な言動と同時にそれぞれ一体ずつ結構なレベルの仲魔を召喚した。
呼び出された仲魔はレベル自体はそこそこだがヘビクラ隊長のサマナーとしての経験と勘は『恐らく御霊合体とかでレベル以上に強化されている』と告げており、三人の男達と合わせて数の差で押し切る動きを見せていた事もあって彼は油断なく最大戦力で応戦する判断を下す。
「やるねぇ? 久しぶりに血が騒ぐぜ。【ノルン】【ガネーシャ】【ヤマタノオロチ】悪魔の力、お借りします!」
「なっ! “サマナー”だと!?」
ジャグラーの仮面の裏側で“ニヤリ”と笑いながらヘビクラ隊長は手にしたCOMP【ダークゼットライザー】より三体の悪魔を召喚すると、何故か三人の男達は驚きの声を上げてまるで“予定と違う”と言いたげな表情となって一瞬動きを止めた。
……人間ではなくなっている【ジャグラス・ジャグラー】はサマナーとして仲魔を得る事は出来ず基本的に単独行動であり、それを知っていた彼等は数の暴力で押し潰そうとしていたのだが、生憎ここに居るのはジャグラーの皮を被っただけの人間のサマナーである【ヘビクラ隊長】である。
「おや、隙だらけですね。【ラスタキャンディ*5】」
「まずは手堅く【ランダマイザ*6】」
「ソシテ薙ギ払ウ!【ティタノマキア*7】!」
「「「グワァァァァァッ!?」」」
そして歴戦のヘビクラ隊長の仲魔がその隙を見逃す事はなく、すぐさまノルンの全体バフとガネーシャの全体デバフが飛んだ後でヤマタノオロチがその巨体と八つの首による薙ぎ払いで敵全体を力任せに吹き飛ばす。
(さて、俺の斬撃とオロチの打撃に耐性があったのはデモニカはおそらく物理耐性、テンプルナイトとドミニオンは打撃のみ吸収・無効、ガイアっぽいヤツは俺の斬撃だけ効かなかったから斬撃無効ってとこか。ただレベルに比べてステータスが高くて装備も良いから思った以上に効きが悪い)「おいおいやる気があるのかぁ? 思ったよりも雑魚だったな、これじゃあ的当てにもならないぞ?」
「クソがぁ! 舐めてんじゃねぇぞイカレサイコ現地人風情が!」
「マニュアルと多少違っていても数で上回ってるのは変わらないだろ! 叩き潰してやる!」
「ああ全く楽なミッションだと思ったのに難易度上げやがって徘徊型のクソエネミーがよぉ!」
そんな敵の不自然な行動を見て『恐らく人間でなくなった自分の事しか知らんのかね』と考えながらも、レベル差の割に思ったよりもダメージが少ない敵の行動を警戒する目的で自身の行動を遅らせつつ、ついでにもう少し情報を得る目的でイカレ野郎っぽいムーブを続行しつつ挑発するヘビクラ隊長。
その挑発を受けた男達は奇襲からいい様にされている事、そして何より“選ばれた筈の自分達”を見下す様な態度が気に食わない事もあって、目の前のイカレサイコテロリスト(エターナル視点)のコスプレ野郎を叩き潰すべく今度は此方から攻撃を仕掛けるのであった。
あとがき・各種設定解説
チームDAT:情報工作相手だと出来る事が少ない
・ちなみにヤマト以外のDATメンバーは宝石12種9個セット合計108個をコンパクトに納める【DATシークレットケース】なる装備を、こっそり
・宝石に関しては軽子坂高校出身のヘビクラ隊長が知ってたのでDAT結成当初から全員分の宝石を地道に集めており、その為にDATスーツはミリタリー色が強い感じでポケットが沢山付いていて多量の宝石を持ち歩きやすい様に作られていた。
・ちなみに【ジャグラス・ジャグラー】と化している場合、“何処ぞの邪神”の端末みたいになって“周回知識”を得た上で元から持ってた“トリックスター”としての特性が強化されて“世界を面白くする為に”好き勝手し始める。
・ただし世界を面白くする基準はヘビクラ自身の嗜好が判断基準なので、とりあえず気に入らない組織にテロ活動したらエデンに自分のデータを渡さない様に念入りに自爆したり、果ては未来に面白そうな光属性を送ったりする善悪入り混じる行動を取る感じになる模様。
グランギニョル社:やる事が……やる事が多い……
・欧州系マフィアに逆恨みから社員の家族が狙われたりするので専用のマンションとか用意して警備したりもしているが、お陰で動かせる人員が減っている。
・欧州からの撤退時に戦闘力が低い事務員とかも多数連れているのだが、彼等の生活環境用意も必要だし上記みたいな事が多数重なっているので仕事量が増えているので人員不足は変わらずそこに付け込まれた感じ。
・加えて情報操作までされていると分かった以上はまず自分達が得た情報が本当かどうか、後はスパイとかいるんじゃないかとか確認しなければならないので積極的な行動に出られるリソースが存在しない。
・だから防御を固めて噂の火消しと直近の問題であるヒュージ入り地下シェルターに集中する方針であり、ガイア再生機構云々に対する直接的な行動には出れなくなっている……情報操作に気付いても妨害になる嫌らしい一手。
読了ありがとうございました。
グランギニョル社が過去周回について誤認してたのも全てエデンってヤツの仕業なんだ(責任転嫁)。そういう事になった。