真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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予期せぬ遭遇者

「…………これで三つ目かね。クズ共を潰すのは嫌いじゃないが気分が良くなるモノでもないんだよなぁ」

 

 愛剣【蛇心剣】を肩に担いだヘビクラ隊長は目の前に倒れ伏す多数のカタギでは無さそうな男達を見ながら何処か辟易した様な雰囲気で呟いた……今日、彼等DAT隊はグランギニョル社からの依頼を受けてグランギニョル社の社員(対人荒事担当)と共に、そこ所属している武装COMP(CHARM)使いを狙って来た組織を襲撃して壊滅させる依頼を請け負っていた。

 此処の組織は日本に避難して来た海外系マフィアの残党を中心てした寄せ集めの組織であり、最初ののはぐれメシアン拠点襲撃とその後にあったガイア系っぽいカルトとの抗争と合わせてこれで“三度目”となるグランギニョルの武装COMP使いを狙って来た敵対組織との抗争でもあった。

 

「以前のはぐれメシアン、ガイア系っぽいカルト、そんで此処はマフィアっぽい連中だったな。もう滅んだが」

「俺らが滅ぼしたんだがな。……此処も食い詰め者たちの寄せ集めみたいな連中だったな。お陰で楽には倒せたが……」

「此処にも例のヒュージと改造人間が現れたからねぇ。流石に複数体の改造人間がいるとウチとしてもそれなりの数を揃えてタコ殴りにしないと事故る可能性も出て来るわ」

 

 此処の海外マフィアにも例の【ヒュージ“グンタイアリ”】や強力なスキルを使う改造悪魔人間がおり、今回は強敵の改造人間をDAT隊が相手をしながら他の雑魚マフィアやヒュージをグランギニョル社員達で倒すと言う形で勝利したが、最初のはぐれメシアンと比べれば総戦力は低いもののヒュージや改造人間の数は増えていたので油断ならない相手であった。

 ……そんな寄せ集め組織が持つには余りにも強力過ぎる戦力と捕獲した者から得られた証言、そして拠点内に残されていた資料の情報から此処の寄せ集めマフィアも【G.E.H.E.N.A】の支援を受けてそこからの指示でグランギニョル社を狙っていたらしい事が分かりヘビクラ隊長はアンヌやミツヒロ達隊員、そしてグランギニョル側の代表として今回は同行していた【高島八雲】と意見を交換する。

 

「やっぱり此処もG.E.H.E.N.A.の息が掛かっていた組織になっていたみたいね。日本にやって来たものの色々あって潰れかけの海外マフィアだった此処に色々と援助する代わりにG.E.H.E.N.A.の尖兵として働いてたと……以前の二つと同じか」

「供給されてる戦力は徐々に強化されているみたいですね。今回に至っては改造人間が3人も出て来ましたし」

「今回のはスペックははぐれメシアンの時に戦ったカマエルと比べれば低かったけど見慣れないスキルを使って来たからね。……まあ長期戦になるとレベルが下がる弱点まで同じだったから持久戦に持ち込めば勝てたけど」

「確かグランギニョル社に潜り込んでいたスパイは排除出来たんだったな。確かに2回目と3回目の今回は最初のメシアン連中と違って狙いすまして迎撃の準備をしている様子はなかったが」

「スパイ自体は雲隠れしてしまいましたが……」

 

 グランギニョル社ははぐれメシアンとの抗争の際に社内への情報操作と内定を駆使して、最近引き入れた漂流者の中に情報を流している者がいると突き止めていたが追及する段になった時には既にスパイは行方をくらましていたのだ。

 その後も散発的にCHARMユーザーが狙われたりもしたが情報漏れが無くなったせいかだいぶ場当たり的なものになっていたので、逆に返り討ちにして今回の様に逆撃に出る事も出来てはいる。

 

「ただ、こうしてG.E.H.E.N.A.の参加になった組織は潰せていてもG.E.H.E.N.A.自体には届いていない……と言うか、この【G.E.H.E.N.A】と言う連中がどういうモノなのか、そもそもなんでグランギニョル社のCHARM使い狙いをやって来るかの目的とかがイマイチ掴めてないからな」

「確か別の世界でグランギニョル社が乗っ取られた時の名前がG.E.H.E.N.A.ではあるんだが、此処では何故かそれと同じ名前を名乗ってグランギニョル社に喧嘩を売ってる連中って事になってるんだよな」

「やっぱりグランギニョル社の乗っ取りを考えているとか?」

「その可能性はなくはないがやり方がおかしい。……会社乗っ取るなら買収仕掛けるとか社長や社長夫人を暗殺するとかして来る筈だしな。末端のCHARM使いに襲撃を掛けても嫌がらせにはなるがそれだけだ」

「社長や朋美さんもG.E.H.E.N.A.が何を狙っているのかイマイチ掴みきれないと言っていました」

 

 元々グランギニョル側もヘルヴォルから聞いた話や情報操作、特許申請による妨害などから自社が乗っ取られる事や暗殺を警戒していたが、同時に既に警戒されている上に欧州拠点を失って弱体化している自分達を態々乗っ取るのはリスクとリターンが釣り合ってないと予想していた。

 そんな状況で連続した襲撃事件にG.E.H.E.N.A.の名前が出たのです過去周回と同じ様に自社の乗っ取りの可能性は真っ先に思いついたのだが、やって来る事が傘下組織を使った散発的な襲撃を続けるだけなのでそういう目的とは違う狙いがありそうだとも考えていたのだ。

 

「コイツら含めてグランギニョルのCHARMユーザーを捕獲して引き渡せば更なる援助を行うって言われてるみたいだし、やっぱり実験材料目当ての誘拐目的での襲撃じゃないかしら。前の世界でもG.E.H.E.N.A.はグランギニョル社を乗っ取った後に非人道的な実験を行っていたみたいだから」

「改造されてる悪魔人間やマシン悪魔(ヒュージ)もいるからG.E.H.E.N.A.って組織がその手の実験や研究を行う組織ってのは確かだとは思うが」

「実験材料確保にしたってもう少し効率的な方法はあるだろう、例えばコイツらみたいな何処ぞの組織の敗残兵をエンジョイするかわりに人材を供出させるだけでも十分だろうからな。更に追加の人材を集めさせる為に誘拐させるならグランギニョル社の様な企業じゃなくてフリーの異能者辺りを狙った方が効率はいいだろ」

「まあ“巨大な組織”である企業に喧嘩を売るのはリスクが高いですからね。それでも態々グランギニョル社のCHARMユーザーを狙っているという事は何か目的があると見るべきですか……」

 

 グランギニョル側としても此方を狙って襲撃してくるG.E.H.E.N.A.の息が掛かった連中に対処するのは当然として、どうにか敵の狙いを突き止める為に色々と調べてはいるのだが、こうして協力組織を見つけて潰す事は出来てもG.E.H.E.N.A.を名乗る組織自体の行方が中々掴めないのが現状なのだ。

 単なるCHARMユーザーを狙った襲撃や自社に対する乗っ取りを仕掛けてくるだけなら対応出来る準備はしていたのだが、如何にもG.E.H.E.N.A.側の目的が不明瞭な部分が見えているのでグランギニョル側もかなり慎重になっている。

 

「ヘルヴォルとG.E.H.E.N.A.には因縁があるって話だけどそっちは?」

「彼女達には事情を話した上で襲撃を警戒する意味も込めて聖華学園で大人しくする様に言ってあります、因縁のあるヘルヴォルや楓お嬢様が狙われる可能性もありますから安全性が高い学園にいて貰った方が良いとの考えでクエレプレも学園側に回しています。……他の年若いCHARMユーザー達も支社の警備に回して襲撃には私達年長組で対応する予定です」

「まあこういう“仕事”は大人がやるべきだよな。クズを殺しても得とか特にないし」

 

 そういう“大人の事情”以外にも協力組織を強襲している隙をついて学生組やグランギニョル日本支部の方が狙われる可能性のあると考えているので、そちらにも防衛用の戦力を割く必要があると言うのも理由なのだが。

 ただでさえ人材不足な所に色々な組織から攻撃を受けているのでグランギニョル側としてもかなりキツい状況であり、DAT隊がフル出撃した上で襲撃を掛けてくる組織自体が敗残兵や寄せ集めの様なレベルだから辛うじてどうにかなっている状況である。

 

「……とはいえ、幾らそこらにいる寄せ集めを支援して手駒となる組織を作れるにしても限度はある。こうして片端から潰していけばG.E.H.E.N.A.側も動かせる手札は無くなっていく……筈なんだが、だからこそ支援した組織をこうもあっさり使い捨てる様な動きをしてるのが解せない部分もある」

「支援した組織を使い潰していくと噂になれば手駒に出来る者も居なくなる道理だな。藁にもすがる敗残兵達でも馬鹿ではないのだから潰されると分かって協力する事は少ないだろうし、こうして支援した配下の組織を擁立するにしても相応のリソースは食うから無限に出来る訳ではない」

「こうして傘下組織を潰していけばいずれはG.E.H.E.N.A.自身で動かざるを得なくなる……筈ですから、それまでは敵の目的を探りつつ地道に防戦を続けていくしかないですか」

 

 実際、裏にいるG.E.H.E.N.A.の存在が分かってもその目的や動きが不明瞭な今の状況ではグランギニョル側はどうしても防戦一方になってしまい、G.E.H.E.N.A.側が配下にした組織に対しては取引として戦力の提供はしていても自分達の拠点の位置や目的などの情報を渡さない様にしている事もあって有効な手を打てずにいた。

 ……捕虜を“尋問”して聞き出した所、G.E.H.E.N.A.は資質のある傘下組織の人間を自分達の拠点に連れて行って強力な悪魔人間に改造して戻すという事もやっている様だが、その際に記憶処置でもされているのか改造された本人はG.E.H.E.N.A.の拠点や人員の情報を覚えておらず、改造負荷に影響か倒した際にロストしてしまうので当人から情報を得る事も難しくなっている。

 他に捕虜から聞き出した情報でも取引の為に接触して来たG.E.H.E.N.A.の人間も居た様だが、殆ど顔を隠して適当な偽名を名乗りアナライズ偽装などを行うある意味で当然の備えをしていたので有用な情報は得られなかった……のだが、最初のはぐれメシアンや次のガイア教徒モドキの捕虜から聞き出した情報によると1人だけ顔を見せていた“女性”がいたのだと言う。

 

「その女性は【西村乃恵美】と名乗っていたそうですね。……ヘルヴォルに対する人体実験を主導したG.E.H.E.N.A.の研究員と同じ名前だと彼女達からの証言がありましたが」

「うーん…… G.E.H.E.N.A.の名前が出て来たりグランギニョルで保護しているG.E.H.E.N.A.の人間の名前だけは出してきたりと少し作為的な感じはするかね」

「それに関しては私もそう思っているので、彼女達になるべく学園で大人しくしている様に言っています。そっちを狙って来る可能性もあるので」

「此処の捕虜から何か情報が引き出せると良いんだけど……望み薄かしらね」

 

 この様に現在のグランギニョル社とDAT隊は配下になった組織を使ってやや不可解な部分がある襲撃を繰り返して来るG.E.H.E.N.A.に対し、どうにか襲撃を返り討ちにしながら反撃に傘下組織を潰すと言う暗闘を行なっていた。

 ……とは言え、防戦は出来ていても肝心の【G.E.H.E.N.A】を名乗る組織そのものには未だに辿り着けておらず、その目的が不明瞭な事もあってグランギニョル側は何とも言い難い“嫌な空気”を感じていたのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 様々な未成年の異能者が生徒として日々暮らしながら社会で生きていく為の術を学ぶ超大型マンモス校【聖華学園】……そこからやや離れた場所に小ぢんまりとした素朴な雰囲気の料理店がある事を知る者は少ない。

 ……その料理店【ふじの食堂】はごく普通の高校生ぐらいに見える店主の女性【超人 石塚(いしづか)藤乃(ふじの) LV69】が経営していて、料理が美味しい事もあって一部の聖華学園生が偶に訪れていたり店主が異能者に理解がある事から生徒がバイトをしていたりする事もある。

 

「……はーい、お待たせしましたー。ご注文の【ファンタズムワンタン麺*1】と【テスタメントバンビーノ*2】と【ヘリオスフィア皿うどん*3】と【カリスマキノコ雑炊*4】と【レジスタブイヤベース*5】でーす」

「わーい、いただきまーす」

 

 そんなお店の中の一角でにこやかな笑顔を浮かべる店主と店主とバイトらしき大人しめな少女が持って来た料理の数々を見て目を輝かせながら料理を食べ始めていた【一柳結璃】がいた。

 勿論これだけの料理を彼女1人で食べるとかではなく、今日は色々な物資の調達の為に生徒会メンバーの【吉村・thi・梅】【安藤鶴紗】【白井夢結】【一柳梨璃】【二川二水】、ヘルヴォルの【相澤一葉】【飯島恋花】、グラン・エプレの【土岐紅巴】といった結構な大所帯が複数の席を使って同席しているいる。

 ……学園で大人しくしてる筈の彼女達が外の料理店にいるのは単に学内では手に入らない物質を買いに近くの店に行っていた帰りに昼食を食べる為であり、安全を配慮して護衛としてDAT隊からヤマトが派遣されていて今も他が女学生ばかりでちょっと肩身は狭そうながらも同席している。

 

「もっきゅもっきゅもっきゅ」

「あ、結璃ちゃん。口に食べカス付いてるよ」

「相変わらず面倒見良いですねぇ梨璃さん。……どうしたんですか紅巴さん」

「この世界にもあったんですね【ふじの食堂】……あ、いえ少し懐かしくなっただけで」

「此処の食堂は結構良い麺系料理が多くてオススメなのよ。それに食べるとバフが掛かる料理があるって最近学園でも話題になってるしね」

「どのくらい効果があるかはまだ検証しきれてないと言うか学生の小遣いでは難しいみたいですね。ただ千香瑠様がいる料理研究部ではバフ効果のある料理が作れないか研究してるとか」

「何か凄い名前の料理だけどバフとか掛かるのかー?」

「どういう意味の名前なんでしょうね」

「名前に関してはノリで決めてます⭐︎ それと最近学生さんに聞かれる事の多いバフ効果ですが、効果があると思い込めばあるんじゃないでしょうか。プラシーボ効果的な」

 

 それはそれとして女学生達の尊み度が高い絡みを見て最近ずっとクズ共の相手をしていたせいでちょっぴり荒んでいた心が癒される感じがするヤマトであったが、その辺りの事は護衛任務中の防衛チームムーブと彼女達に引かれない為にも態度や顔に出さない様にしていたりする。

 ……そんな風にヤマトがほっこりしている所で隣の席に居た夢結に話しかけられたので、内心を一切お首に出さない真面目な表情を瞬時に取り繕って受け答えを行う。

 

「ヤマトさん、今日は単なる買い物に付き合ってくれてありがとうございました。学内だけだと手に入らない物も多くて……」

「いや構わないよ。幾ら大きな学園でも校内で買える物には限度があるだろうし、セキュリティ的な問題で郵送にも手間が掛かるから直接買い出しに出た方が楽な時もあるだろう。……最近の情勢を考えれば護衛は必須だしね」

 

 実に所、現在グランギニョル社に襲撃を掛けている連中から得た情報にはターゲットであるCHARMユーザーの“リスト”があり、そこには第3生徒会やヘルヴォル、グラン・エプレのメンバーの名前もあったので、彼女達にはその事を伝えつつ出来る限り聖華学園内にいる様に言ったのだ。

 ……そして今回の様にどうしても外出する必要がある場合には今回の様に大人数で戦闘準備を整えた上で、更に護衛を派遣してレルムなどの治安の悪い場所には近づかず人通りの多い道を使って襲い難い表側の施設でなるべく短い時間で用事を済ませるなどの対応策を行なっている。

 

「本当はもう少し護衛の人数を増やす予定だったんだが隊長達には仕事*6が入ってな。……今はグランギニョルの方も人手が足りないから回せる戦力にも制限がある」

「それに関しては事情は知らされているので大丈夫ですし、貴重なアイテムを幾らか回して貰って助かってます。……こっちも特に楓さんは学園から出さない様にしていますし」

「まあ最近生徒会の仕事は多いから議長の楓にはカンヅメになって貰えば良いしな。『最近転入生や在校生の活動が活発で生徒会の仕事が終わりませんわー!』って言ってるから外に出れる予定はしばらく無さそうだぞ」

「それとミリアムさんにも少し無理をさせてしまっているから。定期的なグランギニョル社でのCHARM整備も出来ていないし」

 

 現在グランギニョル社が狙われている状況なので彼女達はグランギニョル日本支部にも出来るだけ近寄らない様に言われており、それにより武器であるCHARMの整備などに影響が出てしまっており今回の外出もヤマトが持ってきたCHARM用の各種パーツの受け取りが主な用事になっていた。

 そういう理由で現在聖華学園にいるCHARMユーザー達のCHARM整備は主にCOMP技師であるミリアムが担当しており、他のメンバーも心得がある者は手伝っているとは言え数が多いので中々大変な事になっている様だとは梅の言葉である。

 

「可変型武装COMPであるCHARMは強力な武器ではあるんだけど、現状だと整備生や運用性に難があるのは否めないのよね。特に私達のは実践テスト様の実験機と言う側面もあるからグランギニョル本社での定期整備が必要なんだけど」

「性能が高い代わりに整備性が低いのは試験機あるあるだからなー。特にCHARMは可変機構の所為で構造が複雑になってるから、現状だと本格的な整備体制が整ってる所で定期整備する事学園推奨されてるし。スペック上は長期間使用できる様にはなってるけどやっぱり装備は万全じゃないと」

「装備を使うのも大変なんだな(アクセサリーすら付けられないナホビノ感)」

 

 この様にグランギニョル社側としても襲撃を受ける所による影響が各所に及んでおり、まだ業務などに影響が出る程でもないが敵の調査や施設の防衛などに人員を割かれているので何処も人員不足となってしまっている。

 特にDAT隊は敵組織への襲撃の主力になったりグランギニョル社員の護衛に就いたりと大分忙しくなっており、今回の彼女達の護衛役にも個人戦闘力はDAT隊でも最強格だが調査任務はまだ苦手なヤマトを1人だけ回すと言う対応を取らざるを得ないぐらいだ。

 

「相手が相手ですから私達ヘルヴォルも何か力になれれば良いんですが……」

「一葉、そこは話し合って『私達は学園で楓さんの護衛』って決めたでしょ。連中には私達のデータが取られてるからタチ悪い対策とかされそうだし……と言うか前(の世界で)はソレされて逃げるしか出来なかったじゃない。対策無しでも戦力差はあったけど」

「まあ情報をくれただけでも十分だから気にしないで。それにこういう戦いには出来るだけ未成年学生は巻き込ませたくないし、そもそも戦力的にはまだ余裕がある方だから。先日もグランギニョルとDAT隊で問題なく依頼(敵組織襲撃)を完遂出来たし」

 

 実際、G.E.H.E.N.A.の手足となっている組織は元々それこそ極小規模な無名の集団であり、何か大層な事が出来るわけでも巨大な組織に吸収される程の価値がある訳でもない連中だったので改造強化やヒュージの供与があってもDAT隊とグランギニョル社員達で対処出来るレベルではあった。

 今回の一件で彼女達を聖華学園に退避させているのは出来るだけ子供達にアレな連中の相手をさせたくないと言う大人の事情以外にも襲って来る連中の実力はそこまででもないので単純な戦力的にはまだ余裕がある事、そして裏にいるG.E.H.E.N.A.の動きが分からないから“最も狙われては困る”彼女達を現在のこの世界でもトップクラスに安全な場所に置いておきたいからである。

 

「こう言ってはアレだが君達に護衛を回せる程の人員の数的な余裕はあまり無い上に連中(G.E.H.E.N.A)が何をして来るか分からないから、せめて向こうの目的が分かるまでは最も安全な場所で待機してて欲しいそうだ」

「護衛なんて必要ない……と言える程に私達は強くないですからね。分かりました」

「まー学園でも結構トラブルは起きてるけどな」

「それでも多分今の世間よりは大分安全じゃないかね。それに単独だとどんな高レベルでも事故るからな」

 

 例えばいきなりボルテクス界に放り込まれたりいきなり魔人王(LV99)とエンカウントしたりとか……そんな事を思ったヤマトは思った以上に美味しかった【ふじの食堂】の料理を楽しみつつ、その後もごく普通にJKと会話しながら昼食を終えた。

 

「ごちそうさまでしたー、美味しかったー」

「学園の食堂も美味しい料理が揃ってるんだけど偶には外食もいいよね」

「留守番で仕事している楓さんやミリアムさんには少し悪かったかしらね。何かお土産でも買っていこうかしら」

「それならこの【ラプラス鯛焼き*7】がオススメですよー」

「鯛焼きなら藍も喜びそうですね」

 

 そんな感じで学園待機組用のお土産を買ってから本当に穴場だったし機会が有ればもう一度来ようかなと思いつつ、その為には今の状況が何とかならないと無理だろうなぁとも考えながら彼女達は店を出て聖華学園に戻って行くのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

『……護衛対象が無事に聖華学園の敷地内に入った事を確認』

「これで依頼の荷物運びと護衛は完了したか。……いきなり場の空気が変わって人払いと異界展開からの奇襲でも仕掛けて来るかと思ったが」

 

 そうして聖華学園のCHARMユーザー達が無事に学園の敷地内に入った事を確認したヤマトは内心護衛任務が無事に終わった事を一息吐きつつ、年頃の少女が外出するのにここまで警戒しなければならない現状は改めてクソだなと思いながら()()()()()()()()()()()()D()A()T()()()()()()であるケンジロウとトモヤに任務完了の合図を送った。

 

「まあもしそれをやって来たら援軍登場からの返り討ちにする予定だったんだが。以前のポエマー集団(新しき神話)のアイツらにやられてるから当然対策は打っている訳で。異界に取り込まれた事を伝える連絡手段とか」

『いきなりターゲットだけを異界に閉じ込められるなぞ使い方によっては襲撃も誘拐もし放題だからな。まあその手の異界はあくまでGPを基準にして一定以下のレベルの者を弾くとかが殆どで細かく取り込む人間を調整するのは難しく、高レベルで異界に関する心得がある者なら侵入出来る様だが』

 

 実の所、グランギニョル社とDAT隊としてはG.E.H.E.N.A.の目的が『自分達ちょっかいを掛けて出来た隙に学生組を狙う』と言う可能性があると考えており、今回の外出に対しても先日の襲撃の後処理を隊長・副隊長・天才技術者に任せてでも相応の援軍や準備を整えていたりしていたのだ。

 ちなみに直接の護衛が彼1人だったのは護衛目的なら伏兵を用意して警戒しておいた方がいいと言う目的と『女学生に混ざって買い物はキツイな年齢的に』と他の2人が言ったからである……ヤマト的には幾ら尊みのある光景を見られても男1人は居心地が悪かったので内心ちょっと文句は言いたかったが。

 

「ケンジロウさんとか妹さん(二水ちゃん)もいるんだから別に良いだろうに。……とりあえず帰る前にちょっとコンビニでも寄って行くか、事務所のお菓子が切れてた筈だし……「いやぁ、思ったよりも庶民的なんですね。“この世界”の貴方は」ッ!?」

 

 そんな風にヤマトがとりあえずコンビニのある表通りに出た所で突然背後から“聞き覚えのある声”が聞こえて来ので即座に戦闘態勢を取りつつ振り返ると、そこには以前に訳の分からない事を言って喧嘩を売ってきたポエマー集団(新なる神話)の1人である【戸田(とだ)琴陽(ことひ)】が笑顔を浮かべながら立っていた。

 ……前世ではオンデュルルラギッタンディスカー!から殺し合った仲であり、今もヤマトの推しカプ(ゆゆりり)に挟まろうとする尊みのカケラも無い確定で敵の連中の一味が現れた事で一気に彼の気配が剣呑なモノとなっていく。

 

「……チッ、それなりに周りに気を張ってたつもりだったんだがな」

「私もそこそこに隠密活動には自信があるので。まあ敵意や殺気を向けたら一発アウトな程度のモノですけど」

『どうやら敵と認識出来なかったからエネミーサーチに引っ掛からなかった様だな。そういう術を使っていたんだろう』

 

 だが、今居る場所が場所が異界でもなくれ周りに一般人もいる表通りという事もあっていきなり戦闘を仕掛ける事は無かったが、それでも事前に打ち合わせた通りに会話をしながら懐に入れている通信機の『緊急事態発生』用ボタンを他のDAT隊メンバーに知らせつつ油断なく身構える。

 ……しかし、その様子を見た琴陽は苦笑しつつも何も持っていない両手を上げながらヒラつかせて『此処で戦う意志はない』と言わんばかりの行動を取った。

 

「当然の反応だと思いますけどコッチには今戦う意志はないですよ。今日は武装も殆どしてませんし、何よりこの世界では異界や悪魔出現状態での戦闘は違法行為だったと思いますけど」

「……だからこっちも変身やビームサーベル出すまではしてないだろうに」

 

 確かにその言葉通り琴陽は以前と違ってCHARMを持っている様子がなく、衣服も前のゴスロリ風味な高品質装備と違ってカジュアルなごく普通の女性が身に付けるようなデザインの服になっている様に見えた。

 ……ただし、アクセサリーとかで最低限の耐性はあるだろうから戦闘が出来ないとは思えず、一般人がいる所で彼女と戦闘を始めたら周りが酷い被害になるだろう事を予想した事もあってヤマトも迂闊には手出し出来ない状況だったが。

 

「だったら一体何が目的なんだ? 一応言っておくがポエム勧誘はお断りしてるんですが?」

「アレはポエムじゃなくて暗喩とか隠喩なんだけど、それはともかくってして今日声を掛けたのは別の目的があるんだよねー。……私が手に入れたG().()E().()H().()E().()N().()A().()()()()って聞きたくないかな? この世界で連中が何をしてるのかとか」

「……何が目的だ?」

「いやぁ、何が目的と言っても……強いて言うなら、私はアイツら(G.E.H.E.N.A)の事が大っ嫌いって事が理由ですかねぇ」

 

 そう言う琴陽の顔には変わらぬ笑顔が浮かんでいるが、同時にその目には確かな“憎悪”の色が見て取れた事に気が付いたヤマトはこのいきなりな闖入者をどうすればいいか頭を悩ませるのだった。

*1
味方の命中率をアップさせる。SH2のミール【はごろもワンタン麺】と同じもの(名前が違うだけ)

*2
味方の命中率をアップさせる。SH2のミール【命中のバンビーノ】と同じもの(名前が違うだけ)

*3
リスキーエネミーの出現率を上げ、戦闘開始から3ターンの間、リスキーエネミーから受けるダメージを25%減少。SH2のミール【金剛皿うどん】と同じもの(名前が違うだけ)

*4
ダンジョンで一定距離歩くごとに味方のHPを回復。SH2のミール【まごころキノコ雑炊】と同じもの(名前が違うだけ)

*5
ダンジョンで一定距離歩くごとに味方のMPを回復。SH2のミール【おいのりブイヤベース】と同じもの(名前が違うだけ)

*6
話前半部分の敵組織襲撃の後処理。

*7
マップスキルの効果時間(移動距離)を2倍に延長する。ーSH2のミール【もちもち鯛焼き】と同じもの(名前が違うだけ)




あとがき・各種設定解説

ふじの食堂:ごく普通(?)の料理屋
・聖華学園の近くにあるらしい小さな料理店でメニューは和洋色々な料理が出されており、バフ効果があるらしい料理もあると言う話で最近学生とかデビルバスターが来店する事が少し増えた穴場的なお店。
・店主の石塚藤乃は聖華学園のOBらしいヤケに高レベルの異能者であり、何処か掴みどころのない雰囲気をしているが善良な人間ではあって学生異能者や少し訳アリの異能者をバイトとして雇って色々常識とかを教えながら働かせているとか。
・彼女本人は趣味でやってる店らしくそこまで売り上げを考えておらず臨時休業なども多い様だが、何処からかバフ効果がある料理の話を聞きつけるや早速メニューに追加してデビバス相手にオススメしたりするなどちゃっかりしてる所もある。
・尚、営業内容としてはごく普通の料理店でありバフ効果があると言う触れ込みがある料理が出て来る以外には特別な所はない店なのだが、実は店主の藤乃がグランギニョル社製のCHARMを購入・愛用しているお得意様だったりする。
・元ネタはアサルトリリィラストバレットの定期開催型ネタイベント『ふじの食堂』で、元ネタが元ネタなので割とネタに走っており料理の名前もSH2のミールのアサリの用語を組み合わせたネタである。


読了ありがとうございました。
JKの中で平然としていられるメンタル強度がある訳ではないが、そこは使命感と尊みパワーで表面を取り繕えるナホトラマン。
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