真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
ごく普通の表通りにある間食時である午後3時頃と言う事もあってそれなりに人がいる普通の喫茶店、そこのオープンテラスの席の一つに1組の男女が適当な飲み物とケーキを注文しながら座っていた。
……男の方はそこそこの普通な外見だが女性の方はガチな美少女なので側から見ればカップルに見えない事もない二人だったが、実際には当人達にそんな事を聞いた場合は特に男の方からすれば全力で否定する様な関係であった。
「うーん、じゃあ私はブルーベリーチーズケーキとメロンクリームソーダで」
「随分と高いモノを頼むんだな、まあ好きにすれば良いが。……俺はコーヒーとモンブランで」
「せっかく貴方に奢って貰えるんだから高い物を頼んだ方が良いでしょー?」
「お前に奢る気など毛頭ないが? 自分で頼んだ分は自分で支払え」
「えーせめて割り勘にしてよー」
そんな二人、デビルバスターチームDAT隊に所属している
……嘗ては殺し合って現在でも敵対関係にある二人がこうして喫茶店にいるのは、まず琴陽が『G.E.H.E.N.A.についての情報を教える』と言った時点でヤマトは一般人を巻き込まない為にも人通りがない場所に行こうとしたのだが琴陽側がそれを拒否。『どう考えても一般人が居なくなった時点で仲間と一緒に私をボコる構えじゃん』と言われて実際に彼自身もそのつもりだったので、色々話し合った末にお互いに戦闘行為を行えない場所として表のごく普通の喫茶店で話をする事になったという訳だ。
「金ぐらい普通に持ってるだろ? まさか“ここ”に来てずっと無一文で活動してたって訳でもあるまい」
「いやまあ現地で波風立てずに活動する事の一貫で必要な分の資金稼ぎぐらいはやってるけど、そもそも女の子をお店に連れ込んで支払いしてくれない男とか甲斐性なしだと思う」
「女の子とか(笑) そもそも長い間世界を渡ってる時点でお前そんな歳じゃないだろ。悪魔人間だからか外見は取り繕えているが」
「それを言ったら戦争でしょうが(おこ) そもそも実際の活動時間はそんなに長くないし!」
そんな何処か気の抜ける会話をしている二人ではあったが、実の所は完全に気を許している訳ではなく最低限相手の行動を警戒しており、特にヤマト側は万が一にも一般人に被害が出ない様に警戒しつつ他のDAT隊メンバーであるトモヤとケンジロウをやや遠くのビルの屋上に待機させて何時でも狙撃出来る様にしているなど警戒していた。
その辺りは琴陽も気が付いているが頭部や心臓を撃ち抜かれたぐらいなら【不屈の闘志*1】などで食いしばれる程度には人間をやめてるので、そうなった場合でも生き残った上で撤退出来る準備は整えており、そもそも今日は戦闘を行う気がない事もあって過度に警戒する事なく運ばれてきたケーキを食べながら話を続ける事にした。
「……さて、それで【G.E.H.E.N.A.】についての情報を聞かせてくれるんだったな。聞くだけ聞いてやるから話せ」
「意外とあっさり聞く気になってくれたね。貴方は私の事を信用できないって思ってたけど」
「信用は一切していないし多分何か裏の目的もあるんだろうなとは思うが聞くだけならただだしな。情報自体は上に持ち帰って利用できるか虚偽が混ざってないかとかは俺より頭の良い人達に判断して貰う」
「へぇ、あの時は何でもかんでも一人でやってたのにね」
「ここに来てから失敗ばかりだったのでな。俺も少しは成長するさ。……とりあえず俺より強くて頭の良い人達に任せておけば良し! 俺はちょっとした戦力になるぐらいしか出来んからなこの世界では!」
「なんか大分キャラが違うなぁ。……まあ良いや、こっちとしても情報をどう使われても損はないしね。それでG.E.H.E.N.A.についてだけど連中は【エデン】……表向きの名前は“ガイア再生機構”とか名乗ってる所の派閥の一つで、主に過去周回のグランギニョル社からの離反者なんかで構成されてる研究組織。その目的は『世界を救う為の戦力を創り出す事』らしいわよ」
ヤマトの少し予想外の反応に肩透かしを喰らうものの、琴陽は【G.E.H.E.N.A.】と言う組織に付いての情報を、非常に不機嫌そうな目付きになりながらもまず手始めに組織の概要から語っていった。
……その内容は過去のグランギニョル社からの離反者がエデンにスカウトされたのがG.E.H.E.N.A.の始まりで主に
「……それでG.E.H.E.N.A.はグランギニョル社が乗ってれる様な世界であれば乗っ取るか大規模な引き抜きを行なって現地の【G.E.H.E.N.A】を作ってから“研究”を行ってるんだけど、今の様にそれが出来ないなら現地の適当な組織に援助と言う形で戦力を供給しつつ配下として良い様に動かしながら研究してるんだよね。まあどっちでもやる事は研究材料を確保してのアレな人体実験だけど」
「襲撃して来た連中を返り討ちにする時に毎回改造人間やヒュージがいたからな。まあ予想通りの行動ではあるが、グランギニョル社を狙ってるのは乗っ取りか人材確保の為か?」
「それもあるけどあくまでオマケって感じなんだよねこれまでのパターンだと。……グランギニョル社を襲撃し続けてる連中の主な目的一つ研究結果を使ってのデータ収集、作り上げたヒュージや改造人間とグランギニョルのCHARMユーザーを戦わせてそのデータを取ってるんだ。そうやって自分達は表に出て来ずに現地勢力同士を争わせてデータだけ取って自分達の研究を進めるのが連中の目的なのさ」
つまり現地の“研究成果”を使って戦い合わせてデータ収集を行うのがG.E.H.E.N.A.の目的であり、グランギニョル社のCHARMユーザーを狙わせているのは単なる戦いを起こす為の理由付けで今の戦いを続けている状況こそが彼等の望む所。人材を誘拐できればそれはそれで実験材料が増えるから損はないと言う感じの行動方針だったのだ。
なので実はこれまでの配下にした組織の拠点にもデータ収集用の超小型ヒュージなどが設置されていたり、改造を施した人間には密かに戦闘データを自分達の所に回す様にしていたりと今までのグランギニョルと木端組織の戦いはG.E.H.E.N.A.の思う通りに進んでいたのである。
「連中は基本データ収集と自分達の安全確保が優先だからね。グランギニョルを乗っ取るのを含めて現地で作った配下組織を表に立たせて自分達は裏で研究、決して欲を欠いて直接前には出て来ずに研究成果を表に出してる配下に提供しながらデータだけは取っていって、潮時って見たらさっさと斬り捨てて今の世界から一抜けたする感じだよ」
「成る程、大体“隊長が予想した通り”のやり口だな。こうまであっさり傘下の組織を使い捨てるなら『そもそも使い捨てで問題ない』目的で動いてるんだろうと言ってたし、既に監視装置らしきモノは見付けてたから予想した通りではあるな」
ここまで露骨に使い潰している上にヘルヴォルから人体実験含めてのG.E.H.E.N.A.の行動を聞いていた事もあって『自分達とその辺の雑魚組織を戦わせる事自体が目的なのでは?』とはDAT隊とグランギニョル社も勘付いており、そのあり得る可能性の一つとして“研究の為のデータ収集目的”と言う可能性は推測していた。
「……ただ、研究の為に実戦データを集めるなら態々警戒されてるグランギニョル社を狙うのは少し違和感があるとも言われてたな。過去周回でグランギニョルのデータが揃ってたから与し易いと考えたのかもしれんが、早期に対応されて傘下組織を潰されてる辺りG.E.H.E.N.A.側にとっても他にやり方はあるんじゃないかとも」
「それに関してはちょっと私達を高く見積もりすぎかな。三大勢力と言っても下っ端とかは現地民見下してる阿呆が多いからねぇ、成功体験積みすぎで現地人ならどうにでもなると考えて痛い目に遭うのは割とあるよ。今は反省したからマシになったけどダアト世界の私達も貴方に隙を突かれてボコボコにされたし。……最もG.E.H.E.N.A.が態々グランギニョル社を狙うのには別の目的もあるんだけど」
「別の目的?」
「まあ簡単に言えば“比較実験”かな。……過去周回でグランギニョル社を掌握した時にそこにいたCHARMユーザー達は大体G.E.H.E.N.A.に実験材料にされて殺されてるから、その時に得たデータを次週以降の同一存在に応用・比較しながら効率的に実験を行おうって言うクソみたいなやり口だよ。……私が知ってる限りでも【生徒会】や【ヘルヴォル】【グラン・エプレ】とかは“何度も”連中の手に掛かって実験材料として惨たらしく死んでるから」
つまりG.E.H.E.N.A.にとってグランギニョル社とそこに所属するCHARMユーザーは“都合の良い実験材料”であり、乗っ取った場合には普通に実験に使って敵対した場合でも現行周回での戦闘データを取って過去データとの比較を行う彼らにとっては実に効率的に研究を進める材料という訳である。
また、同一存在であれば周回毎の行動パターンは決まっている上に可変型武装COMPである【CHARM】自体も技術レベルが低い時には適正が必要な事もあり、基本的にどの周回でも武装COMPが作られていればCHARMユーザーと呼ばれる少女達は大体CHARMを作ったグランギニョル社に集まりがちなので、警戒されていてもグランギニョルを狙うのが一番効率的であり時には敢えて武装COMPの情報を流して技術開発を促す様な行動もしている様だ。
「理由は知らないけど連中が目論んでる“研究”にはCHARMユーザーである彼女達が適してるみたいでね、悪魔人間化を含む人体改造とか過酷な実践訓練、後は敢えて精神的に追い込む様な環境を作り上げての経過観察実験とかもやってたね。……周回を繰り返すなら“実験材料”は何度使い潰しても問題ない、寧ろ得たデータを次に活かす為にも徹底的にやらねば……なんてクソみたいな事も言ってたわね」
「これは確実に滅ぼさないと駄目だな(ガシャットスナギツネ顔)……それはそれとして周回前提で同一存在にちょっかい掛けるとかお前らも似た様なもんだが、こっちはより悪用法がえげつないな」
「……ヤツらと同類扱いは敢えて否定はしませんけどね。と言うか周回前提で暗躍とか漂流者勢力の大半に当てはまる事ですけど、こうして情報とか提供してあげてるんだからもう少し手心を加えてくれても良いんですよ?」
G.E.H.E.N.A.と同列扱いされて否定も出来ない事もあり不機嫌になった琴陽は誤魔化す様に運ばれて来たブルーベリーチーズケーキを食べるが、第三生徒会メンバーの様な“気を使う対象”ではない事もあってヤマトは割と容赦なく言葉を続けていく。
「前も言ったが周回知識や経験を利用する事自体が問題じゃなくて、それを使って非人道的な外道行為をするのが問題なんだよ。それと態々こうしてG.E.H.E.N.A.関係の情報を提供しているのにも何か訳があるんだろ、例えば情報を提供して俺達と連中を潰し合わせるのが目的とか。……お前が連中を憎んでるのは確かみたいだが」
「先に言っておくとG.E.H.E.N.A.の情報を貴方に渡そうてしてるのは私個人の意思であって咲朱達は関係ないわ。情報を渡すなら自分達に損がない範囲なら好きにしていいとは言われてるけど。……それと私は昔G.E.H.E.N.A.の実験材料の一人だったからね。だから連中の事は死ぬ程嫌いなのでアイツらが不利になる事は積極的にしていく方針です」
「……ふぅん、まあG.E.H.E.N.A.を憎悪している悪魔人間だからやっぱりそっち方面か」
「そういう事、私の【スラオシャ】の力も元々はヤツらの実験によって植え付けられたモノよ。私が元いた世界では【私立ルドビコ女学院】と言うメシア教の息がかかったミッション系学校を乗っ取って実験用の箱庭にしてたわね。アイツらは世界によってはグランギニョル社以外の現地組織を乗っ取るパターンもあるから、今回もどっちかと言えばそうだし」
忌々しげな表情を隠そうともしない琴陽曰く、その私立ルドビコ女学院では表向きはミッション系女学院だったが裏ではメシア教に使える戦士()やら聖女()やらの育成を行なっており、それだけならメシアン育成場所程度の扱いでまだマシだったのだがG.E.H.E.N.A.が介入しだした事で学校の方針が更に酷くなったのだと言う。
例えば戦いで負傷した者を本人の許可なく天使人間に改造するぐらいは序の口、改造した生徒を死地に送り込んで極限状況での戦闘データを取ったり死亡した生徒を戦闘マシーンの様な改造人間として蘇生させてその妹と戦わせて精神面の揺らぎなどから来る“覚醒”のデータを取るだの、まさに実験動物を放り込んだ箱庭の設定を変えるが如くな所業を繰り返していたそうだ。
「最終的には反旗を翻した生徒達をそれが分かっていたかの様に念入りに準備した上で迎え撃って、最後の戦闘時のデータを取った後に用済みと言わんばかりに始末したわ。……まあ同じ様な周回で何度も繰り返して来たんだからそりゃあ効率がいいわよね。反抗も窮地に追い込まれた時のデータが欲しかった為に敢えてさせてたみたいだし、寧ろ情報を小出しにしてそれを誘導してたりするわ」
「G.E.H.E.N.A.の名前を態々出したのはそれが理由か? ……後、人間は窮地に陥ったぐらいで都合よく覚醒出来る生物では無いと思うんだがな。『閣下なら出来たぞ』は単なる暴論なんよ」
「連中にとっては少数だが例にある『窮地での覚醒による戦闘能力の上昇』のデータを集めて汎用化するのが目的とか言ってたけど、どう考えても迷走してるとしか思えないしね。……それで私もその【ルドビコ女学院】にいて反乱軍に加わって殺されかけたんだけど、そこで偶然G.E.H.E.N.A.への偵察を行なっていた咲朱に救われたの。私が【新しき神話】に加わって彼女の勢力に協力してるのはその恩もあるわね」
「……G.E.H.E.N.A.を嫌っているのはそういう事か。こうしてお前が連中の情報を流しているのも嫌がらせの為……に加えて
「察しが良いね。……さっきも言ったけど連中が夢結ちゃん達を手に掛けたのは一度や二度じゃないから。私達と連中は漂流する世界が被った時には真っ先に警戒して敵対してるのよ」
つまりは蓄積したデータが多いと言う理由でG.E.H.E.N.A.はグランギニョル社に所縁のあるCHARMユーザーの同位体を実験対象とする事が多いのだが、その中には結構な割合でCHARMを手にする事がある【白井夢結】も含まれているので以前の周回で先んじて彼女を実験材料にされた時にガチ目の殺し合いになって以来咲朱達とG.E.H.E.N.A.は敵対関係になっていると言う訳である。
ただし、琴陽達は少数の弱小組織であり対してG.E.H.E.N.A.は研究がメインとは言え大規模な組織故に真っ向から戦えば不利であり、高い技術力を使って自分達への対抗策まで用意された事もあって彼女達は漂流が被っても真っ向からの戦いは出来るだけ避けて、今の様に現地の反G.E.H.E.N.A.勢力に情報を流すなどで妨害しつつ自分達の目的(白井夢結の引き込み)を行う事を主体にしているのだが。
……尚、ヘルヴォルなどとG.E.H.E.N.A.との関係に関する情報に詳しいのも同じ世界に漂流した際に妨害する手段の一つとして情報を渡すなど対抗勢力に助成していたからであり、当然ながらその“末路”も幾つか見ている。
「だからこうして俺達に情報を流している訳か。G.E.H.E.N.A.と俺達が潰し合うのはそっちに取ってもメリットしかないし、夢結ちゃんに向く脅威が減るなら願ったり叶ったりと。……なら直接お前達がG.E.H.E.N.A.を討てば良いだろうに、そんで対消滅すれば夢結ちゃんを狙う脅威がなくなるぞ」
「うわぁ辛辣(苦笑)私達は弱小派閥な上に人手も足りないから真っ向から戦っても勝てないし、連中は敵対関係ではあるけど優先すべき目的は別にあるから利用できるものは利用するよ。……後は夢結ちゃんに関して何だけどあの子の場合はG.E.H.E.N.A.をどうにかしても危険があると言うか、そんな感じだから咲朱もあそこまで拗れたと言うか……」
「どう言う事だ?」
「簡単に言うと『白井夢結は多くの世界で死亡している』のよね。一番多いパターンは幼少期にペルソナか悪魔人間の力が暴走して死ぬケースで、私達が漂流した時点で死亡してる事が多いのよ。他にはお姉様になった【川添美鈴】と共に戦って死ぬとかのケースで、事故で彼女を手に掛けたショックで後追い自殺するとかなんか百合拗らせて心中するとかバリエーション多いわ。……だからこそ咲朱は夢結ちゃんを生かすには
実際の所は自分がナホビノになった事の全能感とか【新しき神話】の目的に合わせればその方が夢結の立場が良くなるなどの理由もあるが、咲朱がひたすらに夢結をナホビノにしようとする訳は嘗て妹だった彼女を失って、更には幾度も周回しても彼女が生きている世界は見つけられなかったから手段が過剰になった面もあるのだ。
以前の接触で
「ふーん、まあ事情は分かったがそれで夢結ちゃんを死なせた遠因になった前科があるからな。そもそも今の夢結ちゃんは人間として真っ当に生きてるんだから、それを勝手な都合で歪めるなど許される筈がない。……ああそれとも『どうせ平和になんてならないから今の内に人間辞めさせた方が良い』なんて暴論を言う気かねぇ?」
「……そう言っても今までの全ての世界が最終的に滅びてるんだけど。だから私は今の世界では無くてもうあんな悲劇が起きない様な『神世界』を目指している。それの何が悪いの?」
「いやお前達みたいなクソな方法で作った神世界(笑)とか、十中八九そこでも同じ様な悲劇が繰り返されると思うぞ。……外道な手段で作った世界が真っ当になるなんてそんなナイーブな考えは捨てろ。今の世界を造り変えるか或いは全く別の新しい場所に世界を造るか、どっちにしても外道な手段で創り出した世界には外道が蔓延るモノだと思うがな。創って治める者が“そう”なのだから」
「……神世界について少しは察してたのね。……別に私だって『神世界』が何もかも上手くいく理想の世界になるとまでは盲信してないよ。でも今の滅びを繰り返す世界よりはマシになると思って新しき神話に入ってる。……外道だとしても清廉潔白で何も変えられない無能よりはいいでしょ。特に為政者は」
ちなみに神世界云々に関して実の所ヤマトは正確に把握している訳ではないのだが、嘗て『創世』を成した者として世界に不満がある者なら“
……どちらにしても嘗て創世を行なってしまった所為で世界を滅ぼしてしまった事もあり、彼自身の意思としてもう二度と『創世』には頼らず今の世界で生き足掻きながら戦い続けると決めており、それ故に『神世界』に望みを託している琴陽に対しては厳しい意見になっている。
「だからと言ってクソみたいな手段で災禍を引き起こして良い理由にはならんぞ。……まあこれ以上言ってもどうしようもなさそうだが。それでG.E.H.E.N.A.について話せる情報はこれで全部なのか? 夢結ちゃんの事まで話してくれるとは思わなかったが」
「彼女の事については『平和に暮らしている間はおいそれと手出しする気は無い』と言う意思表示と取って欲しいわね。咲朱としても平和に暮らしている彼女を無理矢理ナホビノにしようとしても失敗するってことは分かってるし、何より弱小勢力の私達では警備が厳重過ぎる聖華学園でやらかすのは不可能だから」
「平和に暮らしてなかったら仕掛けるって風にも聞こえるな。実際世界がポストアポカリプスになったとか聖華学園が窮地になったらどさくさ紛れとかになったら絶対に動くだろうが」
「そんな状況になったらこっちで“保護”した方がマシだと思うけど、この辺りの話は平行線だからこれ以上は無意味よね。貴方が今を生きる人達の為に戦い続けてるのは前の世界と変わらないみたいだから。……それとG.E.H.E.N.A.に関する情報は“コレ”で最後よ」
少しだけ残念そうな雰囲気を出した琴陽だったが、すぐに雰囲気を取り繕ってから懐から取り出した“UBSメモリ”の様な記録媒体を机の上に置いてヤマトに差し出した。
「コレは?」
「
「ッ! ……随分と太っ腹だな、ケーキをさっきから2個もお代わりしているからか。よく調べられたな」
「それを言ったら戦争でしょうが(2回目) 悪魔人間パゥアーで体型は維持できるから良いんですー。……情報に関しては対G.E.H.E.N.A.に関してだけはそれなり以上に優れてるからね。特にこの世界では連中も上手く現地協力者()を作れなかったせいか大分焦ってるみたいだったからね、下手に動きすぎてたから上手く尻尾を掴めたという訳」
尚、G.E.H.E.N.A.は今この世界に残っている反体制勢力がG.E.H.E.N.A.程度では掌握出来ない者達である事や、或いは弱小の勢力であっても既に“別の者達”の傘下になってしまっている事もあって現地勢力の引き込みは余り上手くいっていなかったのだ。
そこに加えて没落している筈なのに想定よりも遥かに戦力が多い(主にDAT隊の所為)グランギニョル社との戦いで味方にした組織を次々と削られた事もあって、どうにか挽回しようとグランギニョル社を警戒しながら動き続けた事により同じくG.E.H.E.N.A.を調べていた琴陽達への警戒が薄れてこうして情報を掴まれたという訳である。
「まあ中身が信用できるかどうかはそっちで判断してくれれば良いわよ。連中もこの世界の現状では迂闊には動けないだろうから、そう簡単には拠点を変えられないだろうしね。……ただし連中は自分達の研究が第一だから必要ならさっさと撤退するのに躊躇いがないから」
「本拠地を連中ごと潰すなら出来るだけ早くした方が良いと。まあ俺の一存で方針が決められる訳じゃないから情報だけ上に回して沙汰を待つしかないんだが。そもそも俺自身情報源をそんなに信用していないし」
「信用ないわねー、知ってたけど。……まあ動くなら早くした方が良いわよ。なんかこの国のヤクザが意味不明な事をしそうな情報が入ってるし」
「……お前がそう言うって事はあの“与太話”にしか思えない情報はマジなのか」
そう言いつつ頭を抱えるヤマトだったが、それもその筈で先日『ヤクザとかの連合が何かを企んでいる。その際に大規模な騒乱が起きる可能性がある』などと言う情報がDAT隊とグランギニョル社に入ってきて、追加調査や事実確認をグランギニョル社員が残業して調べたらどうも真実らしい事が分かってしまった。
加えてその具体的な内容が控えめに言って頭が沸いてるとしか思えない事だったので、彼等は『ただでさえG.E.H.E.N.A.と暗闘してて人手が足りないってのに更に仕事を増やすなやボケェ!?』と言いながら残業しつつ起こり得る騒乱への対応策や準備も行なってもいるのでG.E.H.E.N.A.の拠点情報が分かっても直ぐには動き難い状況である。
「まーそっちも掴んでるかー。私達ですら少し探った程度でわかった情報だしねー。ヤクザが国軍になるとかギャグにしか聞こえないけど、大分やばい規模のテロとか起きるかもねー」
「……随分と詳しいな、お前達は関わっているのか?」
「この件について“私や咲朱達は何もしてない”よ。何せ私達は弱小“派閥”だからこんな大それた事はとてもとても」
「その物言い……要するに『お前達』は絡んでいるんだろうが。どの面下げて……」
余りにも露骨な言い回しに顔を顰めるヤマトだったが、同時にそれならば何故『自分達が所属する勢力が関わってる計画を態々敵に漏らすのか』と疑問に思い……その回答は直ぐに示された。
「残念だけどヤクザさんのお祭りで弱小派閥である私達は“殆ど何も出来ない”んだよね、色々と面倒な事になるし。……でもそんな“お祭り”だともしかしたら【聖華学園】にも被害が出てしまうかもしれないのよね。それは夢結ちゃんを引き込みたい私達としても宜しくないから、出来れば貴方達には頑張って“聖華学園を守って欲しい”なーなんて」
「……それが今回の接触の主目的か。本当に図々しいヤツだな」
要するに琴陽がヤマトに情報提供を行ったのは対G.E.H.E.N.A.を目的とかして彼等をぶつける事の他、自分達が所属している新しき神話勢力の一部が関わっている為に干渉が難しいヤクザ達の騒乱で、聖華学園にいる白井夢結の安全の確保をヤマト達に行わせる事も含まれていたのだ。
……騒ぎのドサクサに紛れて夢結を確保する事も考えてはいたのだが、色々なしがらみに加えてこれまでのパターンだと聖華学園が襲撃された時には高確率で夢結が死亡するケースが多く、此処が今の時間軸まで生きている希少な世界である事も含めて安全策を取った形である。
「だってあの子ポンコツな上に歩く死亡フラグみたいな感じだから直ぐ死ぬし。まあ美鈴が死んでて梨璃ちゃんが側にいる
「お前らの勧誘が死亡原因の一つだろうが。……それとあの子達を守る事に関してはお前に言われるまでもない」
「まあ貴方なら“そう言ってくれると信じていた”からね。なら此処で情報を話そうが話すまいが変わらないから話しておこうと思ったんだし。……それにG.E.H.E.N.A.連中も狙ってくる可能性もあるからね。あの子達が一番データ取られてるし、多分態々自分達の名前を出したのもヘルヴォル辺りを釣り上げる餌巻きだろうから」
そんな事を笑顔で言う琴陽に対して顔を顰めるヤマト……嘗て『ダアト』と呼ばれた世界で殆ど一人で戦っていたヤマトとアオビトにとって琴陽は最も長く共に戦った戦友と言えた存在であり、同時に最大の裏切り者でもある。
琴陽の側としても偽りの関係で仲良くしながらいつも通りに現地民の協力者として扱おうとしたら、なんかいきなりめっちゃ強くなってボコボコにされたと言う事もありお互いがお互いに本人達にもよく分からないぐらいには色々と複雑な感情を抱いていたりする。
「まあヤクザやらG.E.H.E.N.A.とかの相手の時は上手く互いの利害が一致するなら手伝ってあげるから、出来る範囲で」
「確約はないのか、まあ俺がどう動く事になるかは俺自身にも分からんからな。そもそも今は敵同士だし。……後、お代わりした分だけ料金は払えよ」
「ケチー」
そうして話を終えて目的を達成した琴陽は律儀に自分が食べたケーキ分の代金を机に置いてそのまま立ち去ってしまった……それを待機していたトモヤとケンジロウが追跡したのだが、どうやら初めから逃走手段を用意してしていたらしく彼女は人混みに紛れたあたりで突然姿を消してしまった模様。
……そんなどうにも複雑な感情を抱いてしまう『敵』から渡された情報であるUBSメモリを見ながら、ヤマトは今後どうするべきかを考えた所で『とりあえず情報だけ隊長達に投げて方針を決めてもらうしかないな』と自分だけで考えて行動しても碌な事にはならないと言う経験則から思い直してケーキの料金を支払いに行くのだった。
あとがき・各種設定解説
ヤマト:側から見るとデート中に彼女が途中で怒って帰った感じになった
・琴陽との会話中は普段と大分態度が違うが、コレはどちらかと言うとリリィ組や仕事中のDAT隊と話す時には防衛隊員ムーブもといある程度外面を取り繕っているからでこっちの方が素に近い。
・それでも琴陽との関係は複雑でありダアト時代では最も共に戦った戦友で多分異性としては一番仲が良かったが、最後に裏切ったと言うか初めから敵だったので当時はメンタルにダメージがあってそれが『人のみの世界』を創世する理由の一つにもなってた。
・当時のメンタルで彼女と再遭遇していれば即座に殺し合いになっていた可能性が高いが、分離と合体を得た複雑な転生をした影響でダアト時代の事は客観的に見れているので今回の様な会話になった。
・ちなみに彼は嘗てのダアト世界で創世……超大規模ボルテクス界による無意識への干渉によって悪魔が人界に出てこれない世界を作ったのだが、それが原因なのかその世界はペルソナバッドエンド詰め合わせみたいな末路になったので創世アンチになったのはその反動である事も大きい。
・とは言え彼は転生を得ていて主体はあくまで『この世界のヤマト』なのでお陰でダアト時代の事は前世扱いである程度客観的に見れていて、トラウマも少なく創世や新世界を作るのに拒否感が強い程度で収まっているから今回の対話でも声を荒らげる事はなかった。
琴陽:ヤマトの事は敵ではあるが信用している
・G.E.H.E.N.A.の実験体にされていた事もあってエデンは大嫌いだが同時に自分達含む三大勢力自体もそこまで信奉しておらず、既に所属していた咲朱に救われた事と詰んでいる今の世界や他の勢力と比べれば一番マシと考えてテオゴニアに従っている。
・咲朱に関しては救われた恩義もあって友誼も感じているから協力しているが、夢結の確保時に合一神化を強行しがちな事には逆効果と考えておりまずは自陣に引き込んでから説得していく方針の方が良いと提案しているが焦りもあって中々掣肘出来ていない。
・とりあえず世界がポストアポカリプスになって追い詰められたか聖華学園が世界から逃げた辺りを狙って接触、その追い詰められた状況なら引き込みの提案も受け入れられやすいだろうと提案してるのだが、その状況になると夢結が高確率でスカウト前に死ぬのが悩みどころ。
・そんなこんなで色々と焦りが出てる咲朱を説得して上手く夢結を確保出来る策を考えつつ、他の派閥から余り目を付けられない様に立ち回りまで考えながら自分達の方針を提案したりLに一般常識を教えたりなど色々とやる事が多い苦労人。
・ヤマトの事は昔仲良くなったけど裏切り前提な上で容赦なくボコられたので話聞いてもらえないかなとは思ってたが、実際には普通に話を聞いてくれたのでやっぱり転生したのかと思いつつ出来れば仲間になってくれないかなと考えている程度には気に入っている。
・ただダアトではナホビノになってからも人間を助ける為に全力であって今の世界でも(なんか特オタ尊み厨になってるけど)変わらないので、今の世界を諦めてる自分には靡かないだろうなとも分かっている模様。
読了ありがとうございました。
なんというか喧嘩別れした元カレ元カノみたいな関係になった二人。少なくともナホトラマン(前世)にとって裏切りが発覚する前は一番気を許していた相手だった模様。