真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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混沌の奇禍事変:エピローグ

 後に『混沌の奇禍事変』と呼ばれる事となる大規模な日本国内の内乱、そんな中で多くの未成年異能者を生徒としている「聖華学園」もそこを手中に収めたい新世塾や所属している生徒のデータを取りたいG.E.H.E.N.A.などに狙われて襲撃を受けていた。

 その中で異常な力を持つ魔人に襲撃されるなどで甚大な被害を受けて危機に陥った場面もあったが、その魔人達が色々あって撤退した事と他の襲撃者達も退魔生徒会など戦う力を持った有志の生徒達、そしてDAT隊を始めとする現地のデビルバスター達の奮戦によって陥落する事は無く未だに存続していた。

 

「はぁぁぁぁぁっ!!!」

『キイイイイィィィィィッ!?』

 

バルザック(ルナティックトランサー)味方単体を「凶暴」状態にする覚醒魔法。P1出典。

凶暴状態では攻撃力と命中率が上昇し、指示を聞かずに武器攻撃のみを行う。

大虎凶暴(ヤケクソ)状態の時にアタックのダメージが二倍になる自動効果スキル。P3R仕様。

本来はヤケクソ状態でのみ発動するスキルだが白井夢結の場合は類似している凶暴状態で効果を発揮する。

大剣の心得両手剣の通常攻撃の威力が二倍になる自動効果スキル。P3出典。

白井夢結のCHARM【ブリューナク】はブレードモード時に武器種を大剣として扱う。

物理貫通★物理属性で攻撃時、耐性・無効・吸収・反射を無視する武装COMP機能。SH2出典。

デュプリケータⅢアタック後40%の確率で2回ヒットする武装COMP機能。SH2出典。

通常攻撃(アタック)MPなどを消費せずに普通の物理攻撃を行う。

上述のスキルによって威力は数倍化して相性を無視する二回攻撃となる。

 

 そんな中、聖華学園の近くで第三生徒会副議長である【白井夢結】が髪を白く、眼を赤く染めた凶暴化(ルナトラ)状態で手に持ったCHARMを勢いよく振るい学園を襲撃して来たG.E.H.E.N.A.が送り込んで来た戦力の内の一体【ヒュージ“パラオルビオ”】を瞬時に十字に斬り裂いて破壊していた。

 それに続く形で他の第三生徒会メンバーやヘルヴォル、グラン・エプレの者達も各々のCHARMを振るってヒュージ達を掃討していた。彼女達はG.E.H.E.N.A.が率いるヒュージ軍団が学園を襲撃をして来た情報を聞いて、ヒュージとは戦い慣れている自分達が応戦すると決めて出撃し、現地のデビバスや他の生徒と共に防衛戦を行なっていたのだ。

 ……そして現在、ヒュージを率いていたG.E.H.E.N.A.の戦闘員をDAT隊が撃破し、他の新世塾などの襲撃者も防衛に回った生徒達や学園を守りに来てくれていた黒の騎士団などの手によって撃破された為、彼女達は残ったヒュージの掃討を行っていたのである。

 

「……ふぅ、これでこの辺りにいるヒュージは倒せたかしら。バルザックも解除されたし」

「大丈夫ですかお姉様! 今回復を!」

「二水さん、周辺の警戒と確認をお願いしますわ。特に学園側を」

「分かりました。【虚空の眼界(鷹の目)*1】!」

 

 そうして最後のヒュージを夢結が斬り捨てた辺りで周囲に敵が居なくなったのか髪と眼は元に戻り、凶暴化の反動からか負傷すら意に解さずに暴れていたせいで傷ついていた彼女を見て慌てて【一柳梨璃】が駆け寄って回復魔法を掛ける。

 他の者達も周辺を警戒しながら回復アイテムを使ったり、付近で起きている戦闘の様子や先程“何か異常な威力の攻撃が行われた”学園の状況を把握する為に連絡を飛ばしたり遠隔視のスキルを使うなどして戦闘後も油断なく動いていた。

 

「ええっと、周辺の戦闘は大体終結しているみたいですね。ヒュージを率いていた襲撃者はDAT隊が既に倒した様ですし、他のパワードスーツもヒフミさんや黒の騎士団含むデビルバスター達に倒されているみたいです。それと学園の方は校舎の結界の大半が破壊されていますが既に戦闘は起こってないみたいです」

「こちらも連絡が取れましたわ。学園の方は甚大な被害こそ出たものの人的被害は軽微で襲撃者も既に撤退している様ですわね。……とは言え怪我人は多数いる様なので救助に向かうべきでしょうか」

「んー、学園の方に人手が必要なら行った方がいいんじゃないか? 部外者を入れると色々面倒だから生徒会メンバーが行った方が良さげだと思うぞ。……さっき無茶した夢結とか休ませた方が良さそうだし」

「別に戦闘を続ける事自体には問題ないわよ梅。昔と違って凶暴状態でも味方は襲わないし物理吸収・反射の敵を攻撃しない識別は出来るし戦闘終了するか100秒(10ターン)もあれば解除されるぐらいには鍛えたもの*2。……美鈴お姉様(DAT隊副隊長)と、不本意だけど覚醒魔法に長けたあの男(DAT隊隊長)の指導があったから」

 

 昔の夢結はペルソナの制御が未熟だった影響なのか【バルザック】による凶暴化によって戦闘能力を大きく上昇させる代わりに見境なく戦い続けてしまう悪癖があり、以前の【ヘルズエンジェル】との戦いで仕方なく凶暴化した時にそれが原因で生徒会メンバーを負傷させてしまうなどの失敗もあって暫く学園を休学するぐらいには調子を崩していたのだ。

 そして今回生徒の捕獲目的だったのか状態異常スキルを連発してしてくるヒュージに対して覚醒魔法による状態異常防護を生かして突破口を開いた夢結にその辺りの事情を知っていたので心配して声をかけた梅だったが、以前までと違って凶暴化状態を制御出来自信を持っていた彼女を見て杞憂だと判断した。

 

「それでも夢結の凶暴化(ルナトラ)状態は目の前の敵を倒す事を最優先して行動するしますから、突破力は高くても逃走などに手が打ちづらくなるなど戦いの幅が狭まるデメリットがありますわね。味方のフォローなしでは使わない方が良いでしょう」

「分かってるわ、アイテムも使えなければ逃亡も出来ない状態を味方がいない場所で使う気は無いわよ。……それにバルザック状態だとなんか叫んでしまって喉が痛いし」

「それならお姉様ラムネ飲みますか? 冷たくて美味しいし飲むと行動回数が増える気がするんですよ*3

「何処から出したのさ梨璃。それと行動回数が増えるのは気のせいだと思うけど*4

 

 何処からともなく冷えたラムネ瓶を取り出す梨璃に疑問符を浮かべる面々だったが、実際のところは学園の近くにラムネ瓶を売っている自販機があるというだけであったりする。

 ……と、回復と警戒ついでにそんな会話をしている彼女達の元へG.E.H.E.N.A.の先兵を撃破したDAT隊とそのリーダー格を撃破したヤマトがやって来ていた。どうやら敵を倒した事と先程の学園での異常な気配を察知して護衛対象である彼女達の無事を確認しに来た様だ。

 

「良かった、夢結達は無事だったみたいね」

「美鈴お姉さま! はい、全員無事です」

「学園の“異常な気配”も消えてるか。……結梨ちゃんは大丈夫だったか?」

「うん大丈夫だよ。最近変なスキルを覚えた所為で立ち回りに気を付けなくちゃいけないのが大変だったけど、バフデバフの反転が強制だからめんどい。……所で変な女の匂いがヤマトからするね。まさかプレスターンしたのか私以外の(ゲスト)と……!」

「いやちょっと敵と一時共闘したがな……後そんな言葉を何処で覚えてきたんだ」

「キリギリスの掲示板」

 

 そんな寸劇をヤマトと結梨が繰り広げたりもしていたが、とりあえずDAT隊は自分達がグランギニョル社からの依頼で聖華学園を守りに来た事とその過程でG.E.H.E.N.A.の襲撃者を撃破した事、そしてヤマトが推定G.E.H.E.N.A.のリーダー格である【西村乃恵美】を倒したことなどを伝えて簡潔に情報共有を行った。

 

「乃恵美さ……彼女を倒したんですか?」

「ああ、全身が機械化していたサイボーグだったが少なくとも蘇生や食いしばりが不可能なレベルで肉体は破壊した筈だ。……ただ少しあっさりと倒され過ぎた様な気もするから疑問点はあるが」

「そうですか……」

 

 ……G.E.H.E.N.A.の現リーダー格であった乃恵美は嘗ての世界で一葉を始めとするヘルヴォルに非人道的な実験を行ってきた張本人であり、同時に彼女達がG.E.H.E.N.A.の非道に気付いていなかった時期には“先生”の様な立ち位置でヘルヴォルの面倒を見ていた事もあった人物でもあったのだ。

 現在では善良な仮面の裏で自分達を実験動物にしてきた最大の敵と認識してしてはいるのだが、それはそれとして自分達が関わらない場所であっさりと倒された事に関しては複雑な感情をヘルヴォルのメンバーは抱く事になった。

 

「ふむ、まあG.E.H.E.N.A.関係の事に関してはこの騒ぎが終わった後で詳しく調べておくべきだろうな。推定リーダー格が倒されたとは言え組織自体は生き残ってるし。まあ今は目の前の騒動を解決するする事を優先するべきだがな。とりあえず俺達DAT隊は他のデビバスと協力してまだ学園周辺で暴れてる連中を潰しに行くが」

「分かりました、では私達第三生徒会は学園内の救助活動を手伝いに行きますわ。学園周辺の敵対者はだいぶ減っている様ですし、あちらも人手が必要な様なので。……ヘルヴォルとグラン・エプレはDAT隊と協力して学園近辺の防衛をお願いしても?」

「分かりました、任せて下さい」

「私達は生徒会メンバー程学園での作業には慣れてませんし、まだ外にも戦力は必要だからね」

 

 そうして第三生徒会メンバーは被害を受けた聖華学園へと向かい、それ以外の者達は引き続き学園近郊での戦いを続けて各々がこの事態の収集に向けて動いていき……その後、暴れていた極道達やその他の秘神や魔丞が尽くデビルバスター達に討ち取られた事もあって事態は終息していき、一時は危機に陥った聖華学園周辺も一先ずの平穏を迎えるのであった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そこは無数の近未来的な機械が配置されている施設、その一室にて複数の人間が稼働音を鳴らす機材と何かの膨大なデータを映し出すモニターを見ながら、何処か狂気的な雰囲気を漂わせつつ忙しない動きで何らかの作業を行い続けていた。

 ……彼等の正体は全員G.E.H.E.N.A.に所属している研究者達であり、その施設はG.E.H.E.N.A.がこの世界に来た際に用意した現地での研究施設であり、今は極道の暴走によって行われた騒ぎに乗じて聖華学園に送り込んだ襲撃部隊の様子をモニターしている所であった。

 

「実験対象全ての完全撃破、及び機能停止を確認。食いしばり系スキルと再起動も使い果たした様です。中継ドローンによる戦闘データ回収、及び契約術師機による“イマージュ転写”機構も作動中」

「格実験対象のイマージュをポッド内のヒュージに転写開始……2番、6番、11番のイマージュがロストしました。転写作業を失敗した対象の躯体も稼働停止、封印処置を施しつつデータは保管します」

 

 そんな彼等が作業をする室内には解析に使われている機材以外にもまるで『棺』の様な長方形のポッドが13機配置されており、上面の透明な強化プラスチック製の窓からは内部に何か“人型のモノ”が入っていた。

 その正体は生態素材を使った特注の人間型ヒュージ(マシン悪魔)であり、その躯体には“人間のイマージュ”を転写して転写下の人間と同じ記憶と人格を持つヒュージとなる様になる機能が与えられていた。

 

「3番、8番、13番ポッドも転写途中でロスト。過度なサイボーグ化の影響なのかイマージュの損耗が激しい様ですね。或いは今の東京にマガツヒが溢れているからなのか……」

「人間からマシン悪魔であるヒュージにイマージュを写す以上は齟齬があると思ってはいたが予想以上に定着しませんね。人間にヒュージ技術で作られた機械や悪魔パーツを組み込む方法は確立出来た筈なのですが」

「ある種の転生術式がベースだからそれらとは違うのだろうが、いきなり肉体が人間ではなく機械に置換されて己のイマージュを保てる人間は少ないと言う事なのだろうか」

「だから今回の実験対象ヒュージ志願制であり己の肉体の大半をヒュージのパーツに置換しても自我を保っていた者達を選んだのだが。過度な実験で耐用年数にも限界が来ていたからな」

 

 そう、G.E.H.E.N.A.は今回の事件で学園に襲撃を行った構成員を実験対象として『戦場で死亡した人間のイマージュを転写して拠点に用意したヒュージに転生させる』実験を行っていた。つまり襲撃の主目的はどちらかと言えば学園からの生徒の誘拐よりもその攻防で死亡した者の人格転写実験の方であったのだ。

 まあ襲撃を掛けて対象の生徒を誘拐できれば良し、そうでなくても襲撃者には度重なる実験の果てにもう余命僅かな者を選んでいて、戦闘の果てに死亡した後もこうして人格転写で生き延びる可能性がある上に実験データも取れると言う、“彼等にとっては”今回の襲撃計画はどう転んでも無駄のない作戦ではあったのだ。

 ……とは言え、今回ヒュージを率いて学園を襲撃した部隊はG.E.H.E.N.A.のリーダー格であった西村乃恵美を含めて徴用した現地勢力ではなくこれまでの周回で共に活動して来た同僚である研究員達であり、残っている研究員達は仲間である筈だった彼等をごく当たり前に実験材料として“運用”していると言う見方によっては余りにも悍ましい光景ではあったが。

 

「しかし、西村リーダーまでもこんな必ず死ぬ実験の材料にするとは……今まで通りに現地のモブ辺りを適当に使って実験するんじゃダメだったんですか?」

「そうですよ、確かに改造手術によってリーダーの寿命は残り僅かでしたが、あのぐらいならエターナル化含めて寿命延長の処置は幾らでもできた筈……」

「今回の実験に関しては志願制でありイマージュ転写を行うには己自身の意志が重要故に研究員達が実験に参加すると事前に説明した筈だが? 我らが成すべきは“世界を救う技術”を作り上げる事であり、その為であれば己も身を犠牲にする事も厭わない彼等の意思に応える為にも今回の実験で可能な限りのデータを得なばならないだろう」

 

 それもあって最近G.E.H.E.N.A.に加入した元はエデンの別勢力に所属していた研究員達が、現地人は見下していても“エデンの仲間”にはある程度同胞意識を持っている事もあって苦言を呈したが、それに対してG.E.H.E.N.A.の古参研究員達は当たり前の様に長い付き合いの同僚を実験材料にする理由を並べ立てて新人を説得する。

 それを聞いて自分でやると決めたなら仕方ないけどエデンに選ばれたにも関わらず命を捨てる様な事をするなんてと、とりあえず不満はあれど納得はして実験を進める新人研究者達……だったが、そんな様子を見るG.E.H.E.N.A.の研究員達が何処か冷めた目をしている事には気付かなかった。

 

「……一番ポッド──乃恵美リーダー以外のイマージュ転写実験は失敗。予想よりも成功率が低いですね、何が原因でしょか」

「やはりマシン悪魔への人間のイマージュ転写は難易度が高いのか。……或いはテオゴニアの神世界にイマージュごと飲まれたか。連中のコミューンには取り込まれない対策はしていたが」

「戦場で死んだ者のイマージュを遠方のこの拠点に移す作業なので成功率は下がるのでしょうね。研究室で念入りな準備を整えた場合にはそれなりの成功率で成功してましたし」

「単純にイマージュの強さが問題なのでは? 乃恵美リーダー以外は度重なる改造によって自我が希薄になる兆候がありましたから」

「イマージュ転写で正確に人格と記憶を連続性持たせて引き継がせる術式だったから複雑になってるからな。戦闘で倒された者のイマージュを転写するとなると安定性がな」

「とにかく残った一番ポッドの作業に集中するぞ。成功例と失敗例のデータが揃えば遠隔イマージュ転写技術の成功確率も向上する筈だ」

 

 そうしている間にもイマージュ転写実験へ進んでいったがその殆どが転生途中でイマージュがロストするか、そもそも死亡後のイマージュが拠点まで戻って来ないといった事態となり残ったのは乃恵美が転生予定の“一番ポッド”に配置された人型ヒュージのみとなっていた。

 その結果を受けても新人を除くG.E.H.E.N.A.の研究員達は淡々と作業を続けて行き、乃恵美のイマージュ転写実験も同じく粛々と進んでいき……幾分かの時間が経った後、計器には『イマージュ転写完了』の文字が表示されてから一番と付けられたポッドがゆっくりと開いていき、中から外見は裸の女性にしか見えない人影が起き上がって外に出て来た。

 

「ここは……そう、ヒュージへのイマージュ転写実験は成功したのね」

「お身体の調子はどうですか乃恵美元リーダー。ああこちらの衣服をどうぞ」

「あらありがとう。それにしても元って……ああ、ヒュージ化して人間でなくなったのならG.E.H.E.N.A.のリーダーに据えたままだと不都合が多いから、転写した時点でリーダーを降りるって自分で言ってたわね」

「記憶や人格の連続性はしっかりとある様ですね」

 

 その西村乃恵美のイマージュを転写されて記憶と人格を引き継いだ存在──言わば【マシン悪魔 ヒュージ“西村乃恵美”】と言える彼女は渡された服に袖を通しつつ、イマージュ転写による記憶の整合性を確認する意味も含めて人間だった時期の事を思い返していく。

 それに合わせて研究員達も彼女のデータを取りつつ精神診断に長けた者が幾つかの質問を行い、その返答と反応から記憶や人格に異常があるかどうかを調べる作業に入った。

 

「お身体の調子はどうですか?」

「身体が人間でなくなったのは分かってるけど違和感は特にないわね。この身体に備わっている機能を使う事も出来ると感覚で分かるわ。これも悪魔化したのが原因かしらね」

「そうですね、悪魔は生まれながらに自分の情報を把握してますから。それを応用して転写した人格が肉体の機能を問題なく運用出来るプログラムを人間だった貴女が主体となって組み込みましたから」

「確かにそうだったわね。……肉体の方は以前の周回で妙な発展……と言うか暴走を遂げた生態融合型ヒュージのデータをベースに、今までの研究データを含めて制御できる形に落とし込んだ技術で作られているから外見は人間と変わらないと」

「その身体には幾つかの世界で回収出来た『神造魔人』の解析データを反映させていますからね。例の異常増殖暴走ヒュージも“あの魔人王”がばら撒いている神造魔人のデータを組み込んだモノでしたから、それを含めて各種データを統合して人間由来のイマージュで制御出来る様にした躯体です」

「魔人王式は“人間主体で制御出来る”代物だったから、それを応用して転写イマージュで悪魔因子を制御出来る様にしたんだったか。……確か私の躯体は回収された神造魔人の分霊をベースに培養・作成したモノだったから、これで少しはあの合一神にも対抗出来るかしらね」

 

 ちなみにG.E.H.E.N.A.内に於いては制御の難しさとコストパフォーマンスの悪さから見切りを付けていた生態素材使用型ヒュージ技術だったが、今回のイマージュ転写実験における相性の良さから彼女の躯体は使用されている。

 ……最も使用されているのは嘗て『グラン・エプレ』がいた周回で生まれて生物・無機物問わず食いながら増殖した“生態型ヒュージ最大の成功例にして失敗例”より回収していたナノマシン複合生体組織であり、同じく回収していた運用データを元に改造・培養したと言うかなりの厄ネタなのだが、それが自らの肉体となっていると知って尚平然としていられる乃恵美はやはり何処か頭のネジが外れているのかも知れない。

 

「それで学園襲撃の方はどうなったのかしら、私の予想では現地のDBや学生に負けて全滅してるだろうけど。それと転写実験の結果も」

「ご想像の通り襲撃班は例のグランギニョルに雇われたデビルバスター達によって殲滅されました。ヒュージのみを学園に向かわせる事は出来ましたがそちらもグランギニョルのCHARMユーザー達が撃破していますね。それと転写実験が成功したのは貴女だけです」

「そう……やっぱりこの世界は今までとは違うわね。少数の才能ある強者がいる事自体は珍しくなかったけど、この現行周回は戦力の“平均値”が高い。合一神が現地勢力に任せれば大丈夫だろうと判断するぐらい……いや、アレはあの合一神がテオゴニアの連中と比べてまともな人間らしい思考を保っていたからか」

「その様ですね。少数の“英雄”だけなら私達含めた三大勢力は対処法を心得ていますが、平均値がここまで高い世界となると勝手が違うのかもしれませんね。これまでどれだけの滅亡フラグをへし折って来たのやら……」

 

 そうして今回の襲撃作戦の回想など取り留めのない話をしながらも研究員達は乃恵美のイマージュ転写に関するデータを取り続けており、まともに理性的な受け答えが出来ている事や転写前の記憶を問題なく思い出せている事なども踏まえて人格の転写は一先ず成功したと判断した。

 

「それでG.E.H.E.N.A.としての今後の予定は? 確か実力の高いこの世界の人間を使って実験を続けていく予定だったけど今回の一件で取り込める勢力はだいぶ減るだろうし、(エデン)の動向次第だけど私達はそろそろ“切り捨てられる立場”になるんじゃないかしら。今まで散々好き放題やって来たし」

「上の考えは完全には分かりませんが現地人のスカウトを含めて大規模な人員の入れ替えを行おうとしている様ですし、或いは結構な方針転換があるかもしれませんな。……なるほど、であれば私達は切り捨てた方が良いパターンもあり得ますか」

「自分で言うのもアレだけど私達は大分扱いにくい勢力って思われてるだろうしねぇ。……まあ、G.E.H.E.N.A.が潰されて私達が始末されるのは仕方ないにしても出来れば研究データだけは残したい所ではあるけど」

「まあ、前々から引き継ぎの準備は出来ていますから、後は現行世界が我々G.E.H.E.N.A.を討つに値するかどうかなりますか「ちょっと待てよ!」‥?」

 

 そんな風にごく自然な調子で『自分達の組織が切り捨てられる』可能性を話し合っていた2人に割り込む形で先程苦言を呈していた新人研究員達が声を上げた。それを見て男性研究員の方は『そう言えば新人には詳しい説明をしていませんでしたか。失敗しました』と思って改めて説明しようと思ったが、彼等は先程までの“選ばれたエデンの人間がいる組織“とは思えない異常な空気感に当てられたのか勢いよく捲し立てる。

 

「此処が切り捨てられる側なんて俺は聞いてねぇぞ! せっかくエデンに選ばれて組織でも上位の研究機関だったって言うG.E.H.E.N.A.に派遣されたって言うのによ! 大体なんでお前達は平然としていられるんだ! 俺達は滅びゆく世界から生き残る価値があるとして選ばれた天才なんだぞ! 切り捨てられるべきは現地のモブ達だけで……ヒィ!」

 

 そんな事を捲し立てていた男だったが突然自らの顔のすぐ側にメタリックな色をした槍の様な触手が突き立った事に驚いて口を閉ざす……その触手は新人をまるで嫌いな虫でも見るかの様な目で見ていた乃恵美が腕部を変形させたモノである。

 

「……あのさぁ、別に私達が切り捨てられる事なんてそこまで驚く事じゃないでしょう? だって“今まで何百回も滅びゆく世界を切り捨てて見殺しにして来たんだから”、同じ事を自分達にやられても文句は言えないでしょう。……散々他人を切り捨てて来た人間がいずれは切り捨てられるのは当たり前の事、だってそんな人でなしな連中が切り捨てられそうになっても誰も助けてくれないものねぇ。だから切り捨てられる側になったら惨めにくたばるぐらいの末路しかないのよ私達(三大勢力)は」

「……な……あ、あぁ……」

 

 そう言う乃恵美の目は先程までとは打って変わって底知れない奈落の様に澱んでおり、それを見てしまった新人研究員の男は余りの異常さに何も言えずに口籠もってしまう。

 ……研究者としてはそれなりに優秀だったのでベアトリーチェに紹介されて派遣されて来た彼等は知らなかったのだが、G.E.H.E.N.A.は滅びゆく世界から選ばれながらどうにか次の世界だけでも救おうとして集まった者達が由来の勢力であり、そんな人間達が何度も世界を救おうとして失敗し続けた果てに狂い歪み果てて非人道的な行動も辞さない最悪の研究組織と化したモノ。エデンと呼ばれる勢力の中でも()()()()()()()()派閥である。

 

「まあまあ落ち着いてください乃恵美さん。彼等も悪気はなかったと思いますし、最近忙しくて新人への“説明”を怠っていた此方にも非がありますから」

「……そうね、やっぱりヒュージになった事で少し感情の制御とか難しくなってるかも。カッとなりやすいと言うか」

「悪魔化による影響でしょうかね。流石に貴女に暴れられてこの拠点が崩壊するのは避けたいので、申し訳ないんですけど暫くは隔離室で大人しくしながらデータを取られてください。……ああ、君達は此方へ。大丈夫ですよ、私達も無意味に斬り捨てられる事を是とする訳では無いですし、人員や研究資料を逃す事も考えていますから」

「あ、ああ。分かった……」

 

 そう言われて乃恵美は触手を元の人間の腕に戻して雰囲気も表面上はまともなモノに取り繕い、それを見た精神診断担当の研究員は隔離実験室の準備をさせつつ今後の方針について詳しく“説明”するべく新人を別室に連れて行った。

 そんな精神診断担当──G.E.H.E.N.A.の現リーダーにして数多の世界で“精神的に追い込まれた者の覚醒実験”を行う為に様々な悲劇を演出してきた、精神属性スキルなどでは無い“技術的な精神干渉”の達人による“説得”に連れて行かれた新人を見送った乃恵美の視線には既に負の感情はなく、むしろ若干の哀れみが含まれていた。

 

(私がリーダーやってた時期も実質的なまとめ役は彼だったからね。そもそもG.E.H.E.N.A.と言う組織を纏められてるのも……さて、この世界は確かに今までと違うけれども、せめて“G.E.H.E.N.A.ぐらいは容易く滅ぼせて三大勢力を退ける”ぐらいは成せなければ期待は出来ないわね。私達を滅ぼせるならそれで良いし、でないのならばいつも通り研究を進めるだけよ)

 

 そうして乃恵美は他の研究者達の先導に素直に従って隔離研究室へと向かって行き、そこで自らの新たな肉体の性質を把握する為の実験を行う事となる。

 ……数多の世界を救おうとして叶えられずその滅びを見すぎたせいで狂い果てた研究者達の集団たるG.E.H.E.N.A.嘗ての“今度こそ世界を救う”と言う理念は党に歪み果てた彼等はそれでも狂気のままに“世界を救う研究”を続けていくしかないのだった。

*1
現在いるフロアのすべての敵パーティの認識LVを3にする。現在のフロアのすべてのトラップを発見する。NINE出典。

*2
P1におけるバルザックの正式な仕様。考察サイト参照。

*3
アサルトリリィLast Bulletにおいてラムネは行動回数(AP)回復アイテム。

*4
尚、此処はメガテン世界なので当然ながらラムネにそんな効果は無い。




あとがき・各種設定解説

白井夢結:昔は暴走モードで今は制御可能な別フォームがある子
・今回出したスキルはアサルトリリィ原作のルナティックトランサー状態を再現したもので、この世界ではアイテムとスキルが使える通常戦闘モードと瞬間火力特化のルナトラモードの使い分けが出来る。
・尚、彼女は過去周回でも何らかの暴走スキル持ちだったが制御出来ずに某月して味方を攻撃したり死ぬまで暴れるなどで、高確率で死ぬかメンタルが再起不能になっているケースが多い。
・現行世界でも昔はそうだったが今はペルソナ使いである副隊長と覚醒魔法に長けた隊長の指導によってある程度は克服しており、暴発などはせずに自らの意思で短時間であれば暴走モードを制御する事が出来る。
・咲朱勢力からすればまだ死んでおらず暴走も制御出来ている夢結がいる現行世界は大チャンスなのだが、下手に合一神にしようとすると暴走する可能性があるので機を見計らって慎重に動く方針であり、だからこそヤマトとは交戦せずにあっさりと引いた。

G.E.H.E.N.A.:狂ったタチの悪い研究組織
・西村乃恵美が死亡後にヒュージになるアサルトリリィの原作再現で、原作だとG.E.H.E.N.A.は肉体と魂の分離やヒュージとの精神融合技術を持っていて彼女も自殺後にヒュージとなってヘルヴォル編のラスボスになってる。
・元は善性のドリフターの様にエデンに属しながらも世界を救う為に頑張っていた者達だったが、どれだけ努力しても何百と滅んでいく世界を見ている内に狂ってしまった組織。
・どれだけ助けても滅んでゆき愚かにも自滅を繰り返す人間を見て世界を信じる気持ちが無くなって、その世界の人間を研究材料にして“いつの日か世界を救う”事に固執して非道な研究を続けるに至った連中。
・ただし、精神診断担当含めて古参研究員の技術レベルは本物だし生み出される発明品の性能も高く、必要なら自分達が切り捨てられる事も辞さないがリスクを考慮した立ち回りも出来る判断力もある。
・……まあ、どれだけ努力しても世界が必ず幾度となく滅びる様を見せつけられ続けて正気でいられる方が異常ではあると思うし、三大勢力は大なり小なりそういう部分があると思う。


読了ありがとうございました。
主に真5V復讐の女神編攻略とかで遅れました後とりあえず極道革命編は終わりです。次からは多分また暫く掛かりますが幕間挟んでG.E.H.E.N.A.との決着編になるかな。
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