破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

357 / 357
今回のは独立した別の作品とする予定でしたが、
ハーメルンでは番外の形にしました

https://syosetu.org/novel/307753/356.html
 ミスで番外の6を忘れていました
 変則として一日ダブル投稿


番外:夜鴉は暁に飛んだ-1 (かえ)ってきた少年

 

 

「お前は本当に情けないヤツだな」

 

「お前が前世で報われなかったのは、お前の才能と容姿とか、そんなモノのせいじゃない」

 

「お前の、お前自身の腐った心のせいなんだ」

 

「お前は誰を大切に想ったり、大切にしたことがあるのか?」

 

「誰を好きになって、その人のために一生懸命になったことは?」

 

「ないだろう?」

 

「そんないじけて腐ったヤツを、誰が好きになるもんか」

 

「いくら力があっても」

 

「すごい特典が、チートがあっても――」

 

「それでなびくほど、ヒトはバカじゃない」

 

「だから、もう消えろ」

 

 

 あ、そうか。

 

 なるほど。

 そうだったのか

 だから僕は――

 

 俺は――

 

 ……。

 

 ~~~~~~~~~~~

 

 

 ・  ・  ・

 

 

 ……。

 

 ズボッ、と。

 腕を伸ばせば、月が見えた。

 土の中にいたらしい

 

 ――月? 幻覚か?

 

 テラは一瞬混乱する。

 何かの罠と疑ったけれど……。

 

 ――まさか、()()()()()のか???

 

 どうもそうらしい。

 

 ――考えるのは後だな。

 

 ちょっと周りを探してみる。

 すると、

 

「ああ」

 

 思わず、声が出た。

 

 わりと近くの大木。

 そこに、死体がよりかかっていた。

 完全に白骨化している。

 顔も、性別も年齢もわからない。

 

 ――ありがたい、と思うべきか。

 

 そこから――

 迷うことなく、死体の衣服と持ち物をはぎとる。

 

 汚いつば広のとんがり帽子。

 汚い革のシャツ。

 汚いマント。

 汚い革の(くつ)

 

 加えて、

 

 ――ありがたい。

 

 錆びた小剣。

 錆びた鉄製の(さや)

 

 他には、汚い革の財布にわずかな小銭。

 

 ――これだけか。まあ、金があったら……。

 

 こんな風になってはいない。

 

 さて行こうかと思ったテラだが、

 

「……()()()なら、どうするか」

 

 ()()()なら、死体など放置して当然。

 そもそも、

 

 ――風が吹けば生き返る。

 

 偶然か。

 小さく冷たい風が吹いた。

 

 骸骨は、何も変わらない。

 

「まあ、そうだろうな」

 

 テラは骸骨を手早く埋葬して、片手で拝む。

 

 ――我ながら、似合わない。

 

 死者を悼む気持ちなどない。

 あくまで形だけ。

 

「成仏するのも、化けて出るのも好きにしろよ」

 

 言い捨てて――

 今度こそ本当に歩き出す。

 

 シュウシュウ、と。

 動くたびに身に着けた衣服が音を出す。

 

 ほんのわずか。

 テラの体から発する黒いモノのせいだった。 

 

 服も。

 マントも。

 剣も。

 (くつ)も。

 (さや)も剣も。

 

 少しずつ、変化していく。

 

 テラは自分の手を見る。

 微かに漂う、黒いモノ。

 

 ――奈落の底の、土産……になるのかな。

 

 そして、

 

 ――これは、()()()になるのか。

 

 あるいは、

 

 ――特典か、チートか?

 

 考えるが、わからない。

 

 あの場所で過ごすうちに、気づけば身についていた。

 

 ――それとも、体質なのか。

 

 どうでもいいこと。

 そんなことを考えつつ、歩いて……。

 

 ――……なんだ?

 

 だんだんと騒がしい気配が強くなる。

 いや。

 無意識のうちに、そちらへ向かっていた。

 

 ――冗談じゃない……。

 

 そう思ったのだが、

 

 ――向こうから、近づいてくるのか。

 

 剣に手をやり、周囲を探る。

 

 ぎゃあ、ぎゃあ

 

 と。

 夜鴉が騒ぎ出した。

 

 そして、

 

 GHAAAAAAAAA……!

 

 テラの頭上を大きな翼が飛んでいく。

 

 ――ワイバーン……。

 

 前足のない、空を飛ぶドラゴン種。

 何者か。

 どこかの誰かが――

 そのワイバーンに乗って飛んでいった。

 

 ――そういえば、アレくらいのサイズだったな。

 

 テラは記憶を掘り出して、思った。

 

 ナラカ(あそこ)のワイバーンはもっと巨大で――

 凶悪で強靭で――

 (おぞ)ましい姿をしている。

 

 こいつらは――

 幼体(こども)だ。

 筋力も低い。

 鱗も()()()()として脆弱。

 まともなブレスも吐けない。

 脅威ではあるが、災害とは程遠い。

 

 ――こっちを見たな。

 

 飛んでいく時。

 ワイバーンの視線が、こちらに向いていた。

 

 ――と、すれば……。

 

 こっちを無視して――

 それとも、一笑に付して?

 とにかく知らん顔で通り過ぎるのか。

 

 ――乗ってるヤツ次第か。

 

 そして、殺気。

 

 ――来たな。

 

 GHAAA!!

 

 戻ってきたワイバーンが、その牙をテラに向ける。

 

 これに、

 

 ――運が悪いな、俺も。今さらか。

 

 テラは自嘲しながら、ジャンプ。

 

 空中でワイバーンの頭を蹴って、

 

「あ」

 

 ザクリ

 

 つぶやいた乗り手(ライダー)を真っ二つに斬った。

 

 ザクリ

 

 続いて、横に切断。

 

 乗り手(ライダー)は肉塊となり、落下していく。

 

 テラはそれをチラッと確認してから、

 

「よっと……」

 

 ワイバーンの手綱を握った。

 

 握ったのだが……。

 

 GHHHAAAAA!!

 

 初めての体験。

 騎乗スキルという便利なものもない。

 

 いきなり騎手を失ったワイバーンは、暴れ狂う。

 

「こりゃダメだ」

 

 テラは思わず口に出して言った。

 

 ボッ! ボッ!

 

 混乱して、風のブレスを吐き出している。

 

 圧縮した空気のブレス。

 威力はあるが、性質上火は出さない。

 

 ――火事にならないのは、いいことか。面倒臭くない。

 

 そして。

 ワイバーンの首を切り落とした。

 

 錆びた小剣。

 それは、テラの発する黒いモノで変化している。

 真っ黒……どす黒い刀身。

 

「やっぱり運が悪い……」

 

 テラはつぶやき、ワイバーンを踏み台に跳ぶ。

 

 近くに、2体のワイバーンが迫ってきていた。

 いや。

 2人のワイバーンライダー。

 と、するのが正確か。

 

 ザクリ、ザクリ

 

 テラが地面に着地した時。

 

 残った騎手もワイバーンも、死体となって落下していく。

 いずれも、4から5分割になって。

 

「ふう」

 

 特に疲れも、息の乱れもない。

 緊張も高揚感もなかった。

 

 ――こっちは平和でいいな。楽だ。

 

 そのまま、すぐに歩き出すが、

 

 ――そういえば、金がなかった。

 

 今、手元には死体から奪った小銭しかない。

 

 ――手元不如意(カネがない)、ってのは困る……。

 

 そう思って引き返す。

 

 ――ドラゴン種の素材……。爪だの鱗はそれなりの値がついたはず。

 

 とはいえ、まあ。

 人間に飼いならされるレベルのものだから、

 

 ――質は知れているが、心臓とか、部位によってはもう少し良い値が……。いや、首とか。

 

 どの部位を持っていくか。

 検討しながらワイバーンに近づいて、

 

「何か用でも?」

 

 横の草むらへ顔を向けた。

 

「ひゃ!?」

 

 悲鳴の後、

 

「へ、へへへ……」

 

 変な笑い方をして、子どもがひとり顔を出した。

 

「み、見たぞ?」

 

「なにが」

 

「見た、見たんだよう! ワイバーンをスパスパ斬るのを!」

 

「ああ」

 

 この少年――

 さっき戦闘を目撃したらしい。

 

 ――殺気も、他に隠れてるヤツもなしか。じゃあ、いい。

 

「ま、待ってくれよ、にいちゃん!」

 

 少年はテラに駆け寄り、

 

「あんた、すげえよ! その腕前をさ、か、貸してほしいんだよう」

 

「嫌だね」

 

 テラは歩みを止めずに即答。

 

「ま、待ってくれよ! も、もちろんタダじゃないよ!?」

 

 少年はテラの横を走りながら――

 

「メシだって、酒だって……!」

 

 しかし、テラは無視。

 ワイバーンの死体を切り裂き、角や鱗をはぎ取っていく。

 

「な、なあ、あんちゃん、頼むよぅ!」

 

「俺が――」

 

「え」

 

「味方をする保証がどこにある」

 

「そ、それはあいつらを……」

 

「あれは、仕掛けられたから身を守っただけだ」

 

「う……」

 

「それに――」

 

 テラは一瞬動きを止め、

 

「お前のそれが罠じゃないという保証はあるのか? お前がさっきの、ワイバーンに乗ってた連中の仲間じゃないと何故言える」

 

「そんな……」

 

 テラは冷たい言葉に、少年はうつむく。

 

 一方で――

 テラはふと、服や持ち物をはぎ取った死体を思い出す。

 理由は、わからない。

 

 そして、

 

「おい」

 

「え?」

 

「酒があると言ったよな?」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

没落令嬢の悪党賛歌(作者:もちもち物質@布団)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

成金貴族の令嬢ヴァイオリアは、婚約者でもある王子の暗殺未遂容疑を掛けられてしまう。更に屋敷は燃え、家族の行方は知れず、更に王子からは婚約破棄を言い渡されて全てを失った。▼その結果、色々ぶっ飛んだ没落令嬢が爆誕。倫理と道徳とお上品さを置き去りに、自分を陥れた貴族達に復讐することを決意。数々の犯罪行為に手を染めながら、明るく楽しくぶっ飛びつつ、裏社会を突き進んで…


総合評価:888/評価:8.68/完結:172話/更新日時:2026年05月25日(月) 21:04 小説情報

謎の一般通過強者面したい転生者と特異点幼女の勘違い戦線(作者:蓋然性生存戦略)(オリジナル現代/戦記)

黒燈ヤヨイは、転生者である。▼よく分からないが前世は地球が滅んでしまったから死んだらしい。▼そのお詫びに、謎の一般通過強者面ができるようになる素質を貰って転生した。▼そう、謎の一般通過強者面である。▼そんな彼女は15歳を迎えた年のある日、麻薬カルテルの被害者である少女、クロマと出会う。▼それがきっかけとなり、彼女の自己満足ロールプレイとそれに振り回される陰謀…


総合評価:918/評価:8.72/完結:10話/更新日時:2026年04月08日(水) 11:04 小説情報

TS転生人外ロリ、厭世魔法少女の使い魔になる(作者:蓋然性生存戦略)(オリジナルSF/冒険・バトル)

とりあえず地球が爆散して転生することになった人間が一人。▼元凶を名乗る自称神様モドキに願いを聞き届けてもらい、TS転生人外ロリになった彼は、転生直後に浮かれた気分だったためにボコられ、とある魔法少女の使い魔にされてしまう。▼最初は死にたくないがための投降だったが、次第に魔法少女《エンドロール》の私生活の彩りの無さに対し、お世話魂に火がついた。▼これは、厭世家…


総合評価:4250/評価:8.74/完結:12話/更新日時:2026年05月15日(金) 14:40 小説情報

遭遇者達の集い(作者:鮫肌猫)(オリジナル現代/ホラー)

『フェイルセーフ』へようこそ!此処はこの世ならざる怪異に遭遇した、或いは遭遇している人間やそれに類する方々の為の掲示板です。綺羅星の如く輝く皆様の可能性を是非この掲示板へと書き込んで下さい!▼


総合評価:12938/評価:8.91/連載:67話/更新日時:2026年05月22日(金) 17:15 小説情報

進化したら人外系お姉さんになる雑魚モンスの俺、飼い主♀の性癖を破壊する(作者:霧夢龍人)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

なお、しっかりと飼い主♀に襲われる模様。▼カクヨム、なろうでも連載してます▼R18版投稿しました↓↓↓▼https://syosetu.org/novel/410361/#


総合評価:10367/評価:8.43/連載:102話/更新日時:2026年05月29日(金) 11:05 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>