破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
ハーメルンでは番外の形にしました
※https://syosetu.org/novel/307753/356.html
ミスで番外の6を忘れていました
変則として一日ダブル投稿
「お前は本当に情けないヤツだな」
「お前が前世で報われなかったのは、お前の才能と容姿とか、そんなモノのせいじゃない」
「お前の、お前自身の腐った心のせいなんだ」
「お前は誰を大切に想ったり、大切にしたことがあるのか?」
「誰を好きになって、その人のために一生懸命になったことは?」
「ないだろう?」
「そんないじけて腐ったヤツを、誰が好きになるもんか」
「いくら力があっても」
「すごい特典が、チートがあっても――」
「それでなびくほど、ヒトはバカじゃない」
「だから、もう消えろ」
あ、そうか。
なるほど。
そうだったのか
だから僕は――
俺は――
……。
~~~~~~~~~~~
・ ・ ・
……。
ズボッ、と。
腕を伸ばせば、月が見えた。
土の中にいたらしい
――月? 幻覚か?
テラは一瞬混乱する。
何かの罠と疑ったけれど……。
――まさか、
どうもそうらしい。
――考えるのは後だな。
ちょっと周りを探してみる。
すると、
「ああ」
思わず、声が出た。
わりと近くの大木。
そこに、死体がよりかかっていた。
完全に白骨化している。
顔も、性別も年齢もわからない。
――ありがたい、と思うべきか。
そこから――
迷うことなく、死体の衣服と持ち物をはぎとる。
汚いつば広のとんがり帽子。
汚い革のシャツ。
汚いマント。
汚い革の
加えて、
――ありがたい。
錆びた小剣。
錆びた鉄製の
他には、汚い革の財布にわずかな小銭。
――これだけか。まあ、金があったら……。
こんな風になってはいない。
さて行こうかと思ったテラだが、
「……
そもそも、
――風が吹けば生き返る。
偶然か。
小さく冷たい風が吹いた。
骸骨は、何も変わらない。
「まあ、そうだろうな」
テラは骸骨を手早く埋葬して、片手で拝む。
――我ながら、似合わない。
死者を悼む気持ちなどない。
あくまで形だけ。
「成仏するのも、化けて出るのも好きにしろよ」
言い捨てて――
今度こそ本当に歩き出す。
シュウシュウ、と。
動くたびに身に着けた衣服が音を出す。
ほんのわずか。
テラの体から発する黒いモノのせいだった。
服も。
マントも。
剣も。
少しずつ、変化していく。
テラは自分の手を見る。
微かに漂う、黒いモノ。
――奈落の底の、土産……になるのかな。
そして、
――これは、
あるいは、
――特典か、チートか?
考えるが、わからない。
あの場所で過ごすうちに、気づけば身についていた。
――それとも、体質なのか。
どうでもいいこと。
そんなことを考えつつ、歩いて……。
――……なんだ?
だんだんと騒がしい気配が強くなる。
いや。
無意識のうちに、そちらへ向かっていた。
――冗談じゃない……。
そう思ったのだが、
――向こうから、近づいてくるのか。
剣に手をやり、周囲を探る。
ぎゃあ、ぎゃあ
と。
夜鴉が騒ぎ出した。
そして、
GHAAAAAAAAA……!
テラの頭上を大きな翼が飛んでいく。
――ワイバーン……。
前足のない、空を飛ぶドラゴン種。
何者か。
どこかの誰かが――
そのワイバーンに乗って飛んでいった。
――そういえば、アレくらいのサイズだったな。
テラは記憶を掘り出して、思った。
凶悪で強靭で――
こいつらは――
筋力も低い。
鱗も
まともなブレスも吐けない。
脅威ではあるが、災害とは程遠い。
――こっちを見たな。
飛んでいく時。
ワイバーンの視線が、こちらに向いていた。
――と、すれば……。
こっちを無視して――
それとも、一笑に付して?
とにかく知らん顔で通り過ぎるのか。
――乗ってるヤツ次第か。
そして、殺気。
――来たな。
GHAAA!!
戻ってきたワイバーンが、その牙をテラに向ける。
これに、
――運が悪いな、俺も。今さらか。
テラは自嘲しながら、ジャンプ。
空中でワイバーンの頭を蹴って、
「あ」
ザクリ
つぶやいた
ザクリ
続いて、横に切断。
テラはそれをチラッと確認してから、
「よっと……」
ワイバーンの手綱を握った。
握ったのだが……。
GHHHAAAAA!!
初めての体験。
騎乗スキルという便利なものもない。
いきなり騎手を失ったワイバーンは、暴れ狂う。
「こりゃダメだ」
テラは思わず口に出して言った。
ボッ! ボッ!
混乱して、風のブレスを吐き出している。
圧縮した空気のブレス。
威力はあるが、性質上火は出さない。
――火事にならないのは、いいことか。面倒臭くない。
そして。
ワイバーンの首を切り落とした。
錆びた小剣。
それは、テラの発する黒いモノで変化している。
真っ黒……どす黒い刀身。
「やっぱり運が悪い……」
テラはつぶやき、ワイバーンを踏み台に跳ぶ。
近くに、2体のワイバーンが迫ってきていた。
いや。
2人のワイバーンライダー。
と、するのが正確か。
ザクリ、ザクリ
テラが地面に着地した時。
残った騎手もワイバーンも、死体となって落下していく。
いずれも、4から5分割になって。
「ふう」
特に疲れも、息の乱れもない。
緊張も高揚感もなかった。
――こっちは平和でいいな。楽だ。
そのまま、すぐに歩き出すが、
――そういえば、金がなかった。
今、手元には死体から奪った小銭しかない。
――
そう思って引き返す。
――ドラゴン種の素材……。爪だの鱗はそれなりの値がついたはず。
とはいえ、まあ。
人間に飼いならされるレベルのものだから、
――質は知れているが、心臓とか、部位によってはもう少し良い値が……。いや、首とか。
どの部位を持っていくか。
検討しながらワイバーンに近づいて、
「何か用でも?」
横の草むらへ顔を向けた。
「ひゃ!?」
悲鳴の後、
「へ、へへへ……」
変な笑い方をして、子どもがひとり顔を出した。
「み、見たぞ?」
「なにが」
「見た、見たんだよう! ワイバーンをスパスパ斬るのを!」
「ああ」
この少年――
さっき戦闘を目撃したらしい。
――殺気も、他に隠れてるヤツもなしか。じゃあ、いい。
「ま、待ってくれよ、にいちゃん!」
少年はテラに駆け寄り、
「あんた、すげえよ! その腕前をさ、か、貸してほしいんだよう」
「嫌だね」
テラは歩みを止めずに即答。
「ま、待ってくれよ! も、もちろんタダじゃないよ!?」
少年はテラの横を走りながら――
「メシだって、酒だって……!」
しかし、テラは無視。
ワイバーンの死体を切り裂き、角や鱗をはぎ取っていく。
「な、なあ、あんちゃん、頼むよぅ!」
「俺が――」
「え」
「味方をする保証がどこにある」
「そ、それはあいつらを……」
「あれは、仕掛けられたから身を守っただけだ」
「う……」
「それに――」
テラは一瞬動きを止め、
「お前のそれが罠じゃないという保証はあるのか? お前がさっきの、ワイバーンに乗ってた連中の仲間じゃないと何故言える」
「そんな……」
テラは冷たい言葉に、少年はうつむく。
一方で――
テラはふと、服や持ち物をはぎ取った死体を思い出す。
理由は、わからない。
そして、
「おい」
「え?」
「酒があると言ったよな?」