破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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 前回はミスで予期しない一日ダブル投稿となりました
 こっちのほうもよろしく


夜鴉は暁に飛んだ-2 用心棒スカウト

 

 

「冗談じゃないわよ!」

 

 いきなりの声と言葉と、敵意の視線――

 テラはただ、無言のままで立っている。

 

 相手は、村の少女らしい。

 オレンジの勝気そうな瞳。

 ブルネットの髪を揺らす。

 

「話は終わりだな」

 

「ちょ、待ってくれよ、あんちゃん!」

 

 立ち去ろうとするテラを、少年に引きとめる。

 

「バティ()ェ、このあんちゃん、腕は確かなんだ! ワイバーンを……」

 

「だからって、こんな得体の知れない……!」

 

「まともな判断だね」

 

 テラはするりと少年の横を通り抜ける。

 

「待った、待った」

 

 そこへ――

 初老の男が割って入り、テラの前に立つ。

 

「コヒィ、お前が連れて来ただな?」

 

「おうよっ」

 

 男の言葉を受け、少年はうなずく。

 

「わかった。ここは、信じてみようじゃないか」

 

「おじいちゃん!?」

 

 少女が抗議の叫びをあげた。

 しかし男は、

 

「お前は黙っていろ」

 

 厳しい声でそれを押さえる。

 

「コヒィは賢い子だ。何よりも勘が他の何倍も働く」

 

「そ、それは」

 

「コヒィが信じて連れて来たんだ。この際、賭けてみようじゃないか」

 

 村長はこう言った後、

 

「私はここ――コヌシ村で村長をやっている、フルトという者です」

 

 丁寧な態度で挨拶をして、

 

「失礼ながら、お名前は?」

 

「つづき・てらお。呼びにくければテラでいい」

 

「では、テラさん。まずは話を聞いてもらえますか」

 

「いいよ」

 

「では……」

 

 村長フルトの話を要約すると――

 

 ・最近あちこちの村をワイバーンライダーが襲っている。

 ・それがこの村に近づいているとわかった。

 ・国の軍や騎士などはあてにできない。

 ・どうするか相談していたが、有効策がない

 

 村長の説明後、

 

「……で。一人で様子を探っていた俺が、あんちゃんを見つけたんだよ」

 

 コヒィ少年は補足するように言った。

 

「ワイバーンを乗り手ごと、バッサリやっちまったんだ。あんちゃんがいりゃ100万の味方がいるも同然だ」

 

「そうかな」

 

 そう言うテラに、

 

「ああ、そうだよ」

 

 コヒィは大きくうなずいた。

 

 ――こんな役を振られるとはね。変な気分だ……。

 

 テラは、内心でちょっと苦笑した。

 

 

 それから、少し後――

 

 

 夜空に星が見えた。

 村の中心にある、高めの家屋。

 テラはその屋根に座り、ジッとしっている。

 

 ――やっぱり、幻じゃないか。

 

 手袋のはまった手と、腰の小剣。

 それを確かめながらテラは息を吐く。

 

 ――けどなぁ。

 

 一種後。

 その時には、周辺は地獄同様の景色。

 テラ自身も素っ裸かもしれない。

 

 心の内では、そんな心構えができている。

 

「ひと助け? いや、用心棒? なんだかね……」

 

 小さくつぶやき、また息を吐く。

 

 ふと――

 テラは記憶を掘り起こして、振り返ってみる。

 自分は、転生者。

 ()()()()()()だった、と思う。

 

 『恥の多い人生を送ってきた』

 

 そんな言葉がテラの内に浮かんだ。

 

 ――どこで読んだんだっけ。何かの詩? いや、映画のセリフ?

 

 少しだけ考える。

 

 ――まあ、どっちでも……。何でもいいか。けど……。

 

 まさに、自分のことだ。

 

 と。

 静かに思った。

 

 ――転生。今の俺は、何度目になるんだろう。

 

 1度目は、地球――日本。

 2度目は、この世界――異世界。

 

 ――死んでから、生き返る。でも、別人になったわけでもない。じゃあ、輪廻転生のソレとは、違うのかな。

 

「転生というより、転移とか再生か」

 

 つぶやいてから――

 テラは少しだけ唇の端を震わせた。

 笑ったのだ。

 

 自嘲。

 

 ――考えるまでもなく……。

 

 くだらないヤツだったな。

 いや……。

 今でも、そうか。

 何だ、じゃ何も変わっていないのか。

 

 テラは、バカバカしい気分になる。

 

 ――俺って、地球(あっち)で何してたっけ……。

 

 勉強は大してできなかった。

 他人よりはいくらか上? だったかもしれないが。

 

 ――エリートには程遠い……。

 

 高校は、一応進学校だった。

 

 ――大したレベルじゃないけどな。そこでも、中を上がったり下がったりで。

 

 大学は、

 

 ――行く前に、死んだか。

 

 友達らしい友達はずっといなかった。

 幼稚園の時ですら怪しい。

 

 当然。

 恋人などできもしなかった。

 

 ――スラングで言うなら、非リアの陰キャか。

 

 だから、生きることはつまらなかった。

 苦痛でもあった。

 

 ――と、思う……。

 

 ほんの少し前まで過ごしていた場所。

 ナラカ。

 

 そこで過ごした時間は、わからない。

 

 ――わからないが、記憶があいまいになるのに十分だ……。いや、少し違うかも。

 

 記憶はある。

 でも、それは記憶というよりも記録に近い。

 

 ――どう思ったとか、どう感じるとか。わからなくなってるよな。

 

 殴られた時。

 罵倒された時。

 否定された時。

 

 どう思ったのかは、わからない。

 

 ――多分こうだったろうって、想像はできるけど。

 

 自分の感情という意識はゼロに近い。

 

 ――ただ、()()()()()ってだけだ

 

 薄っぺらい。

 

 ――もしかすると、転生とか何とかってことも、妄想や思い込み、勘違いかもなあ?

 

 そんな思考をしていたが、

 

「……」

 

 ピクリ、と。

 テラは反応した。

 

「煙と()()()は高いところが好きってね」

 

 下から、さっきの少女が挑発するように言ってきた。

 

「何か用事?」

 

「ええ。ちょっと話があるんだけど」

 

「そうかい。……で?」

 

「あ、あんた……。降りてくるとかないわけ!?」

 

「気を使ってるんだけど」

 

「はぁっ!?」

 

「近づいてほしくないって態度だからね、あんた」

 

「む……」

 

 少女は一瞬黙ったが、

 

「ふん!」

 

 いきなり小石を投げつけた。

 

「何だよ、これは」

 

 石をキャッチして、テラは少女を見おろした。

 

「出てけというなら、村長さんに言ってほしいね」

 

「腕試しよ!」

 

 言いながら、は2回目3回目と石を投げる。

 テラは2回目をよけ、3回目をキャッチした。

 

「や、やるじゃない」

 

「ケンカ相手なら他を探してほしいんだけど」

 

「ムカつく言いかたね……」

 

「どう言っても、あんたはそう言うと思うけどな」

 

「それがムカつくってのよ!」

 

 少女は叫び、4回目の投石。

 テラはそれをキャッチした石を投げ、

 

「あ」

 

 撃ち落された小石に、少女は一瞬絶句。

 

 そこへ――

 

「ナディ姉ェ、何やってんだよ?」

 

 コヒィが小さな籠を手にやって来る。

 

「べ、別に!?」

 

「どうせケンカ売るとかそんなんだろ」

 

「うるさい!」

 

「血の気が多いんだよなー」

 

 コヒィは呆れたように横を通って、

 

「あんちゃん、夜食持ってきたから食いなよ」

 

「そうかい」

 

 応えながら、テラは屋根を飛び降りた。

 重さを感じさせない、羽毛みたいな動き。

 

「何か、すげえな!?」

 

 コヒィは驚いたが、

 

「ほいよ」

 

 手にした夜食を、テラに差し出す。

 

 籠の中身は、パンに干し肉と菜っ葉をはさんだもの。

 菜っ葉は漬物に似ている。

 

「ありがとう」

 

 ()()()()ではない。

 それはすぐにわかったが、

 

「お前も食べたら?」

 

 テラは夜食を半分ちぎり、片方をに手渡す。

 

「ひでえな、あんちゃん。疑ってるのかよ」

 

 コヒィは苦笑して受け取ったものをガツガツ食べた。

 

「まともな暮らしをしてこなかったんで」

 

 そこで――

 テラはようやく食事を口にした。

 

「どうだい? 粗末なもんだけど干し肉と漬物は自慢なんだ」

 

「ああ。美味いよ」

 

「そう見えなかったけどなあ。顔、ぜんぜん変わらないし」

 

「別に嘘じゃない」

 

 確かに、そうだった。

 表情には全く出なかったけれど、

 

 ――美味い。久しぶりだよな。ああ、まともな食事ってのはこういうものなんだ。

 

 感動。

 喜び。

 そこはわからない。

 

 しかし――

 テラは確かに美味いと、心の底から思った。

 

 

 

 

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