空の欠片   作:koba艦長

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はい、どうもkobaです。
傭兵も人間ですから、休むときが必要です。
そんなわけで、11話、お楽しみ下さい。



第11話 一時の休息

 2019年 5月16日 スリランカ セイロン島上空

 

 機体にダメージは無い。体に「疲れ」というダメージはあるが……。

 

『なぁ、リーパー。あの「ウォード」と「アドミネル」ってインドで何するか分かるか?』

 

「いや、分からんが。」

 

『やっぱルーキーには教えてもらってないのか。』

 

 いや、教えろよ。俺等だって兵士なんだから。

 

『あの艦はドック入りするんだぜ。インドで。』

 

「えっ!まじでか!?ウォードもアドミネルも今回が初任務だろ。」

 

『今回の任務はプロトタイプの性能実験みたいなもんだ。確か、アドミネルをベースにして新型の空母を造るらしい。』

 

「へ~、そうなのか。どんな空母になるんだ?」

 

『そこは分からん。なにせ、軍事機密らしいからな。』

 

『たしか、「究極の空母」とか言ってたな。』

 

 なんだか、すんごい空母が開発されるらしい。もしかすると、このテロ事件の国連の「切り札」となるものなんじゃないのか?

 新型空母のことを考えていた俺だが、もうセイロン島上空。目的地のガル飛行場までもう少しだ。

 

『こちらガルコントロール。貴隊の所属確認を行う。』

 

『こちらアローズ社第一航空師団、司令グッドフェロー。着陸許可を願う。』

 

『こちらコントロール。アローズ社全機着陸を許可する。第一、第二滑走路を使用せよ。』

 

『ボーンアロー隊、ボーンランサー隊から着陸せよ。それ以外は待機せよ。』

 

『了解した。着陸する。』

 

 夜間の着陸はハードルが高いが、総飛行時間100時間は飛んでいる俺にとっては、難なく着陸できる。

 指定された場所に移動し、整備員が掛けてくれたタラップを降りる。約13時間ぶりの地面の感触。ああ……俺は今日も生きて帰って来たんだな……。

 

「よぉ、アローズのパイロット。セイロン島は初めてかい?」

 

 愛想の良さそうな整備員が来てくれた。

 

「ああ、そうだ、紅茶の産地なんだろ?」

 

「いや、それだけじゃない。海鮮物も旨いぞ。まぁ、確かに紅茶が一番の産地だがな。紅茶が飲みたけりゃ、居住区のバーに行くといい。旨いのが飲めるぜ。」

 

「ほう、そうか!俺紅茶好物なんだ。だけど、今日は夜おそいから、明日飲みに行くぜ。」

 

「だな、今日はゆっくり眠るといい。さっき一戦交えたらしいからな。」

 

「ああ、ちょっと疲れたぜ。んじゃ、ありがとな、仲間んとこいってくる。」

 

 あの整備員はいい人だった。しかし、30分前の戦闘がもう知れ渡っているのか。あの部隊はイユーリ、ヴェルナー社航空部隊で確定だろう。恐らくこれから国連は経済制裁の強化、調査団の増量などが行われ、国連での審議により、最終的には新政府の樹立、他国との併合などになるだろう。

 いかんいかん、深く考えすぎた。まったく、ただでさえ身体が疲れてるというのに。

 

 その後ヴァイパー達と合流し、部屋へ案内してもらう。アローズ社のエース航空部隊と言えど眠気には勝てないらしく、ボーンアロー隊の口数が減る。

 

「ここの4つの部屋があんたらボーンアローの部屋だ。ゆっくり休んでね~。」

 

 げ、またオメガの部屋の隣じゃないか。流石に今日はロックなんざ聴かずに寝ると思うが。

 余談だが、日本にいた時は、毎日10時になるとロックを半強制的に聴かされた。

 

「全員、今日はゆっくり休んでくれ。明日のミーティングは11時からだ。遅れるなよ。それでは、解散。」

 

 疲れているところを知られたくないヴァイパーのようだが、声のトーンと表情から、誰が見ても疲れていると分かるような状態だ。

 

 部屋の準備が終わった後、寝床にすばやく着く。集中力と精神力に多くの体力を費やしたため、不眠症の症状が稀に現れる俺でも、着いた数秒後に強烈な眠気が襲ってきた。逆らう必要は無い。寝てしまおう。

 

 

 

同時刻 ビスケー湾上空 E-777

 

「官僚、ご報告があります。お目覚めになって下さい。」

 

「……なんだ?こんな時間に?」

 

 体の半分がまだ眠っているようだ。こうなったら、このまま報告してしまおう。

 

「イユーリ、ヴェルナーがまた戦闘を行いました。」

 

「なに!?本当か!?どこで?」

 

 やっぱり、これで目覚めた。

 

「インド洋西部。移動中の国連軍第2、第5混合艦隊が襲撃されました。幸いこちらに被害は無かったそうです。」

 

「……奴等は新型空母のことについて知っていたのか?」

 

「いえ、それは無いと考えてよいでしょう。艦隊殲滅にしては、敵戦力はかなり少ないものだったようです。しかし、敵がカタパルト搭載の大型潜水艦を保有していたという報告があります。ですが、その艦も国連軍、アローズ社航空部隊の手により轟沈しました。逃がしてしまっていたら、脅威になっていたでしょう。」

 

「奴等…….潜水空母まで保有していたのか…….まぁ、あんなもん造ってしまう連中だからな、有り得なくは無い。……恐らく帰還中だったのだろう。「アレ」に補給物資を渡し、本国に戻る最中、国連艦隊に鉢合わせてしまった。と言ったところだろう。にしても、被害が出なかったのはよかった、艦隊はボンベイに着いたのか?」

 

「ええ、2時間前に。明日から改造を始めるようです。いつ全面衝突が起きてもおかしくありませんからね。」

 

「よし、ようやく新型空母が制作できるな。これで奴等に、一泡吹かせられそうだ。」

 

「新型空母には、全ての国連軍艦隊の旗艦となっていただきます。艦長にはミッシェル提督が。」

 

「ミッシェルなら、喜んで引き受けるだろう。さて、私はまた寝るよ。着いたら起してくれ。急がしくなるだろうからね。」

 

「ええ、着いたら、また起します。それでは、お休みなさいませ。」

 

 

 

2019年 5月17日 セイロン島 ガル飛行場

 

 久しぶりに爆睡してしまった。やはり、眠るのはいい。体の疲れはとってくれる。

 今何時だ?―7時54分―あー、少し寝坊してしまった。食堂に行こう。

 

 混んでいるか?と思ったが、それほど人はいない。アローズ社員が数十人ほどである。

 朝食を受け取り、席を選ぶ。

 

「おーい、リーパー、ここ来いよー。」

 

 いきなり自分の名前を呼ばれて、動揺したが、声の主はブロンコだった。

 

「なんだ、もう起きていたのか。」

 

「こっちのセリフだ。あんなデカイいびき掻いて寝るもんだから、会議に遅れるんじゃないかと心配したぜ。まぁ、それまで寝てたら、俺等全員で起しに行ってたがな。」

 

は?まじかよ!!

 

「は?俺そんなデカイいびき掻いてたのかよ!」

 

「ああ、やばかったぞ。戦闘機のジェット音みたいに。」

 

「いや、それは言い過ぎだろ……流石に。でも……そんないびき掻いてたのかよ……俺。」

 

「まぁ、自分では気づいてないだろうな。」

 

 全く気付いていない。確かに気持ち良く寝ていたようだが、俺がそんなデカイいびきを掻く程度の能力があったとはちょっとショックだ。

 

「で、ヴァイパーとオメガは?」

 

「寝てるよ。まだ。でもそろそろ起きるだろ。」

 

「だよな。なぁ、飯食い終わったら、紅茶飲みに行こうぜ。居住区のBARの紅茶旨いらしいんだよ。」

 

「ほう、そうなのか、いいぜ。飲みいこう。」

 

 朝食を食べ終わった後は、BARに行き、ブロンコとお互いの「過去」について話す。

 聞けば、ブロンコは幼いころに内戦によって両親が死亡し、傭兵に志願する前まで、祖父母に育てられていたそうだ。そして、報酬は、その祖父母に送っているらしい。クールな奴と思っていたが、案外すごくいい奴だった。

 ブロンコならば、俺の「過去」を話せるかもしれない。いや、ブロンコが言ってくれたのだから、今度は俺が言わなければいけないのだが。

 ならば、彼に話そう、俺の過去を。

 俺とブロンコは同じような境遇なので、ブロンコも俺の気持ちが分かるようだ、何度もうなずいてくれている。

 

「そっか……お前の父親と爺さんも「ユリシーズ内戦」で死んだんか。」

 

 ユリシーズ内戦―1999年の衝突から、今日まで中東、アフリカ、南米、ヨーロッパなどで勃発している内戦である。イユーリ自治区の設立や、国連の難民受け入れ政策などにより、近年では、かなり小規模な内戦になっている。だが、ゼロではない。俺の父親、祖父はこの内戦で死亡した。

 

「なんだ、同じ奴がいたのか。この部隊で俺のほかに、あの内戦で「大切な人」を失った奴が。なんか、体が軽くなったような気がするぜ。」

 

「俺もだよ。知らなかったな、ブロンコが俺と似た境遇だって。なんか、いいな。辛いことをお互いに話すって。」

 

「ああ、いいことだよ。……おーい、マスター、もう一杯」

 

「あっ、俺も。」

 

 本当に体が軽くなった気がする。旨い紅茶を飲みながら、友人と過去の話や、他愛ない話をする―久しく忘れていた。こんな機会が大切なのだと。思い出させてくれて、ありがとうな。ブロンコ。

 

 その後もブロンコと他愛ない話をしていると、偶然、ヴァイパーとオメガが入って来た。ますます賑やかになり、あっという間に集合20分前になった。

 

「皆、集合20分前だ、行こうぜ。マスター、お勘定。」

 

「で……誰払う?」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「よし、割り勘だな。」

 

 

 

20分後 ガル飛行場 ブリーフィング、ルーム

 

「全員集まったな。これからの行動について報告する、よく聞いてくれ。我々アローズ第一航空師団は3日後、カザフスタン、シル地域へと向かう。シル地域にてアローズ第六航空師団と合流。第六航空師団との共同作戦を行う。」

 

 パイロット達がざわめき始める。3日後とは早すぎる。しかも第六航空師団と合流し、共同作戦を行うということは、大きな仕事のようだ。

 

「作戦内容は到着後伝える。カザフスタンには現在、イユーリ、ヴェルナーの本格的な他国侵攻を防ぐため、第六航空師団を含む国連航空部隊が配備されている、第一航空部隊もこれに参加する。覚悟を持っていくぞ。出発までの間は機体の点検、整備をこまめに行え。

以上、解散!!」

 

「まさかカザフスタンに行くことになるなんてな、思っても無かったぜ。」

 

「第六か、ジャンクとラッシャーがいるな。」

 

「誰だ?知り合いか?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「ラッシャーとは、一か月前に会ったが、ジャンクとは五カ月も会って無いな。」

 

「だな、ようやく会えるぜ。」

 

 アローズ社第六航空師団―アローズ社唯一のヘリ部隊で、実力が高い。だが、酒好きや、不良パイロットもいると聞いたが……。

 

「リーパーとは初対面になるな。着いたら紹介してやるぜ。」

 

「おお、頼むな。」

 

 第六航空師団はちょっと興味がある。機体もそうだが、どちらかと言うと、パイロットに興味がある。

 

「よし、ハンガー(格納庫)行くぞ。」

 

「ああ、民間機の整備員が戦闘機の整備ができるとは思えんしな。」

 

 そう、この飛行場の整備員は民間機の整備しかしたことがないのである。ので、俺等が整備の手伝いをしなければならない。

 

 外に出ると、とにかく暑い。赤道付近の島なので、太陽の光が痛い。

 

「あー、アヂー、外アヂーよぉ。」

 

「ホントに、暑いな。」

 

「だな、ミッドウェーよりも暑い。あ、アレが俺等のハンガーだ。」

 

 ハンガーの整備室はクーラーが効いて快適だ。全身強い日光に照らされた皮膚が、冷気に包まれていく。

 

「ああ、アローズのパイロット方、整備を手伝ってくれ。」

 

 あっ、やっぱな、戦闘機の整備に向いてないよ、この人達。

 とりあえず、整備員に指導後、自分の機体を整備する。訓練校でだいたいの整備方法も習ってきたので、簡単な整備ならお手の物だ。

 

 ……そう言えば、このF-18Eに乗ってもう一年になるな。

 

 

 

 整備を念入りにしていると、もう日が暮れている。

 

「おーい、リーパー、飯食いに行くぞー。」

 

「おーす、分かったー。」

 

 こんなに念入りに整備するのは、訓練校以来だ。それにしても、この汗だくの服を取り換えたいのだが……

 

 

 

 同時刻 インド ボンベイ港 ドッグ

 

「おーし、お前ら、このデカイクジラ空母をいまから、化けデカクジラ空母に改造するぞ!!!国連のお偉いさんは完成予定より1ヶ月早く完成してほしいらしい。そうしたら、報酬上乗せだぞ、やってやろうぜ。よし、日勤班は、自室に戻って睡眠を取ってくれ。明日から期待してるぞ。夜勤班は、早速作業開始だ、Aチームは飛行甲板の追加、Bチームは電磁カタパルトの設置、Cチームはエレベーターの改造、Dチームは兵装の交換、改造を行え。以上だ。手際よく、スピーディーにやれよ以上!!!持ち場に移動しろ!!!」

 

 この空母を2ヶ月で改造しろって?無茶言うぜ。だが、報酬アップときたら黙っちゃいられねぇ、2ヶ月で完成させてみせる。この「キャリバー級空母」をな。

 

 

 

 

 

 

 

 




お楽しみいただけましたか?
感想、評価等をいつでも待っています。
次回、新キャラの出番です......
それでは、またお会いしましょう。ではでは~
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