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気が付けば、いつの間にか駒王学園の生徒になっていた。
だが、それで良いと思う。俺がこの力を扱える様になるには、グレモリー達との活動がきっと必要不可欠だ。
今の所、彼女達以外の目処はない。
彼女達以外の目処があるとするならば、そこに移るのも吝かではないが、しかし数ヶ月も過ごしていると何も思わない事はないというのが、現状だ。
どちらかと言えば、居心地は良い方だと思う。グレモリー、姫島、木場、塔城さん。皆、良い人だ。悪魔だけれど。
同じく剣に関する能力である事、俺が聖剣と呼ばれるモノを知っているという事もあって、木場とはよく特訓をする様になった。
特訓というより、八つ当たりの相手になっているという方が、正しいのかもしれないが。だが、それで良いと思う。俺が告げた事は、彼にとって最悪そのものだったろう。とても残酷で、惨い事だった筈だ。
それでも、俺と関わって仲良くなろうとしてくれる彼は優しいと思う。彼に限らず、皆が気軽に接してくれるだけで嬉しく思う。
特に、塔城さんには感謝している。彼女に助けられなければ、きっと俺はあのまま死んでいた。自分の愚かさと傲慢に身を焼かれたまま、朽ち果てていた。
命の恩人だ。彼女には頭が上がらない。本人は気にしなくて良いと言ってくれるが、それは難しそうだ。
駒王学園の生徒になってからそれなりの時間が過ぎた頃には、同級生や後輩と絡む様にもなった。
「天治先輩! 俺、遂に彼女が出来ました!」
そう言いながら、教室の扉を勢いよく開けた2年生の男子―――兵藤一誠が、まさしくその後輩だった。
「そうなのか。良かったな、兵藤。おめでとう」
「あざっす!」
素直に祝福すると、兵藤は照れ臭そうにしていた。まぁ、クラスメイトの反応は祝福というより驚愕といった感じだが。
兵藤は、この駒王学園でもかなりの有名人だ。良い方ではなく、悪い方で。
包み隠さずに言えば、エロという概念への羞恥心が皆無なエロ好きだ。堂々とそういった発言をするし、行動にも移す。かなりの問題児だと、支取は言っていた。
それを悪いとは言わないが、もう少し慎んだ方が良いとは俺も思う。周りの事も考えるべきだとも。
だが、それを差し引けば兵藤は良い後輩だ。明るく、優しい人間だ。
この駒王学園だと、かなり仲良くなった後輩だと思う。だから、兵藤に彼女が出来た事は素直に嬉しかった。
「いやー、先輩より先に彼女作っちゃいましたよ! でも大丈夫です、先輩にも必ず春が来ますから!」
「どうかな。今の所、そういった事には真剣じゃないからな」
「ダメっすよ先輩! 諦めるにはまだ早いですから!」
「いや、諦めてる訳じゃないんだが……」
どうやら勘違いが生まれている。どうしたものだろうか……と、頭を悩ませる。
さっきも言った様に、今の所はそういった欲がない。前世では何度か呟いた事があったのは覚えているが、今はそれよりもやるべき事がある。
それが終わったなら、そういう関係を望む様になるのだろうか。確証はない。
そうやって、どう誤解を解いたものかと悩んでいると、何故かクラスメイトからも激励を貰った。
「大丈夫だ、架競! お前には十分可能性がある!」
「そうよ! 架競くん、わりと駒王学園で人気な男子ランキング上位にくい込んでるんだからね!」
「いや、だからそういう事じゃない……」
「つーか兵藤、それ本当か!? 嘘ついてんじゃねぇのか、お前!?」
「嘘じゃねぇっすよ! ちゃんとメールも交換してますー!」
「いーや信じないね! お前みたいな超ド級の変態野郎に彼女が出来るなら、世界は破滅の一歩を辿るも同然だ!」
「流石にそれは酷くないっすか!?」
確かに酷い言われ様だ。それくらいで世界は破滅しないだろう。
まぁ、驚くのも無理はないのは事実だ。俺もかなり驚いているし。兵藤のダメな部分だけを知っている人間は、かなり多いだろう。
そんなだからこそ、驚いてしまうのだろう。ドンマイだ、兵藤。
「今日が初デートなんで! いつも以上にテンション上がってるんですよ!」
「失敗しちまえ!」
「負け犬の遠吠えがよく聞こえますねー!」
「君を殴る…!」
「うわっガチじゃん!? ててて、天治先輩! お助けー!」
「すまない、今から支取に書類を提出しなければならないんだ。頑張ってくれ」
「そんな殺生な!?」
「お前なら大丈夫だ。ファイト、兵藤」
そうして、俺は教室を出た。
兵藤が死んだと知らされたのは――――――それから間もない時だった。