無間の剣製   作:全智一皆

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第四話「悪魔の世界」

 

 

■  ■

 悪魔という存在に襲撃され、またも塔城さんに助けられて入院する事になってから、もう数週間という時間が経過していた。

 

 自分の時間感覚も可怪しくなってしまったのかと考えもしたが、どうやらそんな事は無いらしい。

 

 ただ単に、俺が眠っている時間が多かったというだけだった。何とも恥ずかしい限りだ。

 

 まぁ、それは兎も角として。

 

 現在、俺は駒王学園と呼ばれる学園に在る部活動の一つ『オカルト研究部』の部室に訪れていた。

 

「改めて、架競天治くん。君の力について、説明してくれるかしら?」

 

 オカルト研究部の部長「リアス・グレモリー」は、凛とした態度で俺へと問を投げる。

 

 悪魔を殺した力。悪魔に対して、何処からともなく剣を“出現”させ、それを投擲するように俺は攻撃した…らしい。

 

 正直言って、俺にはそのような記憶など皆無だ。その時は、自分の意識なんて保ってもいられなかったのだから。

 

 だが、その力がなんであるのかは前々から把握している。

 

 生まれた時から…否、この世界に生まれ落ちる前から、俺はこの力を知っている。理解している。

 

 それを知っていながら、力の代償を予め理解していながら、力に溺れて何度も死にかけた馬鹿な男である俺は、本人である衛宮士郎程ではないが、説明出来る。

 

「結論から述べておくと、これは貴方達が言う神器、もしくは神滅具には当てはまらない。」

 

 この力は、『無限の剣製』は決して神器でも神滅具でもない。

 

 俺から告げられたその言葉に、皆が目を見開く程度の驚きを見せた。

 

「…神器ではない、ね。なら、貴方のその力は一体何なのかしら?」

 

 彼女の目に、警戒の意が顕になっている。

 

 それは、自分達が知らない未知の力への恐怖か。それとも、俺個人に対する敵意の表れか。

 

 どちらにせよ、それは仕方ない事だ。俺から言える事は何もない。

 

「投影魔術。物体を目視し、構造を理解した物を、現物より劣った性能で…つまり、レプリカとして作製する力だ。」

 

 投影魔術。魔術の中で、最も効率の悪い魔術とされている魔術。

 

 “本物”を模倣したレプリカを作り出す魔術であるそれは、非常の効率が悪い魔術であり、しっかりと材料を揃えてレプリカを作った方が効率が良いとさえ言われている。

 

 だが、衛宮士郎は―――英霊エミヤは、その限りではない。

 

「俺が使う投影魔術は、剣というカテゴリーに特化している。剣を投影するならば、殆どリスク無しでレプリカを作り出す事が出来る…が、俺はこの力を完全に扱えない。殆どリスク無しでレプリカを作り出せると言ったが、それは俺ではなく、俺が憧れた人の話だ。」

 

 俺は、ただ力を魂に刻み込めただけの凡人だ。

 

 決して、衛宮士郎のような精神性を持っているという訳でもない。彼のような、極端な自己犠牲精神の持ち主という訳ではないのだ。

 

 他人の起源。他人の力。持っているモノは全て他人のモノ。決して、俺自身の力などではない。

 

 上手く扱える訳も無い。代償無しで使える訳が無い。

 偽物の偽物なぞ、醜く悍ましいばかりだ。

 

「…なら、あの悪魔にしてみせた剣は、偶然という事かしら?」

 

「あぁ。普段の俺なら、あんな事は出来なかった。…もし、信じられないのであれば、ここで証明するが。」

 

 俺が力を扱えない事を。偽物の贋物である事を。

 

 愚者に降り掛かる代償の雨。全身を蝕む炎の刑。

 

 一度の投影で死に様を晒す事になるかもしれない破滅の技。聖剣を投影する訳でも聖槍を投影する訳でもなく、ただの投影で死にかける為体。

 

「…なら、お願いするわ。貴方を信用するには、まだ足りないから。」

 

「分かった…煩くなるだろうが、どうか我慢してくれ。」

 

 腰を降ろしていたソファから立ち上がり、少し身を下げて俺は片手を水平へと上げる。

 

「―――I am the bone(我が肉体は) of my sword(歪に狂う)

 

 我が身は剣に非ず。

 

 是の身は、ただの鉄屑だ。血潮も心も、綻びばかりの硝子に過ぎず。

 

 得るのは欠陥ばかりの模造品。失うのはこの愚かな命。

 力に目が眩み、憧憬に溺死した憐れな愚者の価値なき石ころ。

 

 この体は、ただの鉄屑にしかなり得なかった。

 

「――――――――――――?」

 

 激痛が、何時まで経っても走ってこなかった。

 

 あの頭痛が、あの地獄のような苦痛が、どれだけ待っても全身に襲い掛かって来なかった。

 

 体には何の痛みもなく。

 

 ただ、掌に―――

 一本の白い雌剣が握られているだけだった。

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