極力ないようには努めていますが、もしあれば原作と矛盾があれば指摘してください。
東京世田谷のビルが立ち並ぶ裏路地。
その中を一人の少年が走っていた。
見た目は小学生に間違われそうな身長だがこれでもれっきとした十三歳の中学二年生だ。
と、言っても学校何て小学生から行っておらず日々をケンカで生きていた少年だ。
「ハァハァハァハァ・・・・・・・」
――――目標を見失いました!
――――近くにいるはずだ!探せ!
後ろから聞こえてくる。
右手に握りしめていた木刀を更に強く握りしめる。
いったい自分が何をした?
ほんのちょっとムカつく奴ぶん殴ったらそれがたまたま国の重役でたまたまそいつが持っていたメモリーチップの中身を全部見ただけだろうに。
・・・・・・いや、もうこれはある意味のテロリストか。
等と考えながら走る。
心臓がはち切れそうだろうが、脳に酸素が不十分だろうが走る。
ようやく逃げ切れたと思い壁に背中を預けた瞬間・・・・・。
頭上にあった窓ガラスが割れてそこから少年と同い年くらいの赤い制服を着た白髪の少女が銃を少年に向けて撃ちまくる。
酸素の足りない脳がようやっと状況を処理して身体を動かす。
この間約コンマ0.01秒。
しかし残念なことに少女が撃った最後のたまが足に当たる。
痛みは生じるが血は出ていない。
問題なく行動できる。
少年はそう判断してチョーク粉を集めた袋を振り回しながら地面に叩きつける。
「うわっ!」と、声を上げながら少女があってにとられチョークの粉が晴れると少年の姿は消えていた。
『・・・・千束、どうした?』
千束と呼ばれた少女が耳に着けているインカムから渋い男の声が聞こえてくる。
「ごめん先生。逃げられちゃった」
『安心しろ。ミズキからは目標が視認出来てる。ミズキと合流してくれ』
「は~い」
千束が走り出して千束を待っているであろうミズキの車に向かう。
しかし不意に足が止まった。
千束の視線の先にあるのは自身の足元に落ちている梟を模したチャーム。
すぐさま千束は自分の胸に手を当てる。
『ちょっと~、早くしなさいよ!』
「ごめんごめん!今行くからちょっと待って~」
再び千束が走り出す。
路地裏から出て直ぐにミズキが運転する車に乗り込む。
「・・・・・・・で、なーに、見てたの?」
「・・・・・ううん。何でもない」
車の扉を閉めてからミズキが千束をバックミラー越しに見ながら話しかける。
千束は車の窓から外を眺めながら少年の正体について考える。
しかし、いくら考えてもその結論は出なかった。
翌日、結局少年には上手く逃げられてしまい任務は失敗となった。
しかし、言い訳をするならば、少年はよくも悪くも周りの物を上手く使っていくので千束が少年を追いかければ必ずと言っていい程罠にかかってしまう。
そのおかげで昨晩の千束はチョークの粉まみれのゴミまみれ。
帰りに一緒だったミズキの話しによれば「ありゃ、近付きたくないくらい臭かったわね。例えるなら下水ね、下水」、との事だ。
「普通、こんなぷりちーな女の子に向けてゴミ被せたりする~?」
東京にある喫茶店「喫茶リコリコ」のカウンターでそこの従業員である錦木千束が店の制服である着物を着て突っ伏していた。
バンバンとカウンターを叩きながらリコリコ店長が入れたコーヒーを飲む。
「まぁ、そう言うな千束。向こうも必死だったんだ」
店の奥から色黒のメガネを掛けた男、ミカが姿を表す。
「先生はどっちの味方なのさー・・・」
先生と呼ばれたその男が飲み終ったコーヒーのカップを持ち再び店の奥に入る。
それを横目に見ながら従業員の筈なのに酒を飲み酔っぱらっている中原ミズキは昨日逃げられた少年の顔を思い出していた。
「にしても、あの子可愛かったわね~。もうちょっと年が近かったら絶対狙ってたわ私」
「え~?可愛かった~?」
「そうそう。もうちょい成長したらイケメンになるわね、間違いない」
酔っぱらいながら少年の将来を想像してよだれをたらしている。
それを見ていた千束が「こりゃ、絶対相手見付からないわ~」と呟いていた時、店の入り口の鈴がチリンチリンとなる。
千束が直ぐに立ち上がり、笑顔で入り口を振り向く。
「いらっしゃいませ!喫茶リコリコにようこ・・・そ?」
「ちょっとどうしたのよ千束。言いよどんだりし・・・て?」
「どうした二人とも。いったい誰が来たんだ?」
二人の声を聞いてカウンターに戻ってきたミカが入り口を見る。
三人の視線の先、そこに立っていたのはひょっとこのお面を顔に身に付け、身体をぼろぼろのマントで覆い、フードを顔を隠した背丈が140センチメートル程の不審者であった。
「え、え~と・・・・・」
千束がどうすればいいのか迷いミカを見る。
ミカもそれに気付いたのか不審者に声をかける。
「いらっしゃい。ここに座ってくれ」
ミカが指示してようやく不審者が入り口から動き、椅子に座る。
「な、何にしますか?」
笑顔をひきつらせながらも、千束は不審者に近付き注文を伺う。
不審者が千束を見てからズボンのポケットをごそごそと探り、しばらくして何かを握った手を出した。
その手を目の前のカウンターに置いて握っていたものを放す。
そこに置かれていたのは百円玉三枚、十円玉三枚、一円玉が四枚だった。
「なんでや!阪神関係無いやろ!」
「千束・・・・」
「ごめんごめん、何か言わないといけない気がして・・・」
小銭を見た千束がいきなり、叫びミカは呆れたようにため息を付く。
いっぽうのミズキは既に不審者の事はどうでも良いのか既にまた酒をチビチビと呑んでいる。
「で、ご注文は?」
「・・・・・・これで足りる甘い飲み物をくれ」
お面のしたから声が聞こえてくる。
声からして男なのは間違いないが、如何せん身なりが怪しすぎる。
「おまち」
ミカが直ぐにキッチンに戻りカルピスを入れて戻ってくる。
不審者はそれを見てゆっくりと手を動かし、カルピスが入ったグラスを手に取ると少しお面を上にずらしてストローを口に咥える。
チュー、とストローを啜ると不審者の口の中にカルピスが口に入っていく。
「ッ!うまい・・・・。マスター、これは何と言う飲み物だ?」
「え!?お客さんカルピスも知らないの!?」
不審者がミカに今飲んだ飲み物について訪ねると真っ先に千束が反応する。
「すまない。何分普段は公園の水しか飲んでいないもので。この飲み物は、カルピスと言うのか・・・」
今の発言には酔っていたミズキも酔いを覚ましたようで驚いたように不審者を見る。
「アンタ、そんなんでよくお金稼げたわね・・・」
「あぁ。自販機の下を探りに探ったからな」
店の中に微妙な空気が流れていると不審者が立ち上がる。
「美味しかった。礼を言う」
そのまま不審者が外に出ようとしたところでそれは起こった。
マントが椅子に引っ掛かり不審者の身体を覆っていたマントが剥がれる。
そこで、ようやく見ることが出来たのだ。
先ほどまでマントで隠れて見えなかった腰に携えられた長い木刀。
千束はそれに見覚えがあった。
「あ!その木刀!もしかして君!」
不審者が深いため息をついて顔のお面に手を掛ける。
さっとお面を顔から外して三人の方に振り返る。
昨日は暗闇で見えなかった少年の顔は今ははっきりと見える。
死んだ魚のような目。
綺麗なほどに、しかしちょっと飛んだアホ毛が特徴は黒い髪。
この少年は昨日取り逃さした筈の少年だった。
「依頼だぜ、喫茶リコリコ。この俺、風切零がな!」