彼岸花と天邪鬼   作:暁桃源郷

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Sword orBullet

「依頼?」

 

先ず反応したのはこの店の管理人であるミカ。

零は再びカウンターに座り直して木刀を後ろの座敷の席に投げ捨てる。

それを見てミカが千束を見て頷く。

そして、千束が店の外に歩いていき店の入り口にかけていた「open」の板をひっくり返し、「close」に変える。

チラッと目を細めて辺りを見渡して再び店に入る。

 

「先生、私ちょっと着替えてくるね」

「わかった」

 

零が店の奥に歩いていく千束を見ながら一つ息をついてボロボロのズボンのポケットから何かを取り出してカウンターの上に置く。

ミカとミズキがカウンターを覗き込むとカウンターにあったのはいくつな銃の空薬莢だった。

 

「なにこれ?空薬莢?」

「ライフルの弾か?」

「あぁ。しかも俺が見たことのあるライフルの弾と何か違うんだよ。だからアンタ等にはこのライフルを使っている集団を見つけて壊滅する手助けをしてもらいてぇ」

 

手を握りガンッ!、とカウンターを叩く零を見ながらミカは今の零の言葉への疑問を口にする。

 

「どうして集団だと分かる?個人かもしれないだろ?」

「いや、集団だ。俺を襲ってきた奴らも同じ武器を使ってたし」

「何故襲われている?」

「こっちが聞きたいくらいだよ」

 

まったく分からない。

集団の正体も、目的も、一切謎のまま。

そんな中零は何を思ったのか立ち上がって再び木刀を拾い上げ入り口のノブを握る。

しかし零は扉を開けることはなく、木刀を扉に思い切り突き刺した。

 

「ガッ!」

「よっこらせ」

 

そのまま扉を開けた零が小さな悲鳴を上げた誰かを掴み店の中へと投げ入れる。

零よりも少し年上の男だった。

どこかの高校の制服だろうか?

白い制服だ。

 

「危ない後ろ!」

「え?」

 

ミズキの叫び声に後ろを振り向けばもう一人、先ほど零が投げた男と同じ制服を着た男が銃を零に向けて立っている。

 

「ヤッベ!」

「伏せて!」

「ッ!?」

 

赤い制服を着た千束が店の奥から走り込み外の男に照準を合わせる。

零が伏せたのと同時にパンッと言う音と零の尻に強烈な痛みが生じる。

 

「イッテェェェェェェェェ!!!!」

「あ、ごめん」

「何処狙ってんだ下手くそ!」

 

涙目になりながら零は店の外を見る。

さっきの銃声に警戒したのか、さっきまで零に銃口を向けていた男がいなくなっている。

とりあえず安堵のため息を出してゆっくりと扉を閉める。

 

「すまないマスター。ドアに穴を開けてしまった」

「構わない。問題は・・・・」

 

ミカは零が投げ入れた白い制服を着た男に視線を落とす。

千束がうつ伏せに倒れた男を仰向けに倒し直して銃を奪う。

その銃からマガジンを抜き取り床に捨てる。

 

「この制服って、リリベルじゃん!まだ私の命を狙ってたのか!」

「いや、どうもそうじゃなさそうだ」

「え?」

 

ミカがカウンターから出て零を見る。

 

「狙われているのは君だ。零」

「あ?」

「ミズキ、テレビを着けてくれ」

「はいはい」

 

ミズキが隣にあったテレビのリモコンを手に取りテレビの電源をつける。

やっていたのは朝ドラだった。

「え~と・・・」と呟きながらミズキは順番にチャンネルを変えていく。

 

『朝のニュースをお伝えします』

 

「これね」

 

『昨夜未明、警視庁に爆破予告が送りつけられました。これを受けて警視庁は東京都墨田区錦糸町を完全に封鎖し、爆弾の捜索と住民の避難を同時平行で送っているもようです。それでは次のニュースです。――――』

 

テレビが切られてテレビから全員が視線をテレビから放す。

 

「なるほどねぇ~。二人しかいないからおかしく思ったけど、コイツは尖兵だったわけか」

「で、どうすんの?アイツ等にこいつの居場所がバレたってことはアイツ等ここ囲んでくるんじゃない?」

 

ミズキの言葉に見せないがシーンと静まり返る。

しかし、その静寂を破ったのは先ほどからリリベル隊員の武装を漁っている千束だった。

 

「まぁ、もし攻めてくるなら私が返り討ちにしてやんよ!」

「アンタ自分の立場分かってる?」

「だーいじょうぶだって!」

 

武装を漁り終った千束が立ち上がって自分の銃をカチャッ、と鳴らす。

そのまま扉を開き勢いよく外に出ていく。

扉を閉じてから店の外では幾つもの銃声が聞こえてくる。

 

「・・・・・・何なんだアイツ」

 

不意に零の口からそんな言葉が零れる。

結局のところ、この喫茶リコリコにしてみれば零なんて赤の他人にしか過ぎない。

こうなった原因も零であり店から放り出してしまえばいいのだ。

なのに誰も零に向かって出ていけ等言わない。

それだけでなく、命を張って戦っている。

 

「・・・・・・・マスター、野暮用を思い出した。今すぐ出たいのだが構わないか?」

「・・・・好きにしろ」

「分かった。好きにする」

 

外では既にリコリコの前にいた大半のリリベルが戦闘不能で倒れている。

しかし、それでも残存勢力は百人以上。

千束がいくら強いと言っても全員を相手できるわけがない。

千束が一方の部隊に気を取られていれば別の部隊がリコリコに侵入しようと扉に手をかける。

 

「しまっ」

 

次の瞬間扉が吹き飛んでリコリコに入ろうと並んでいたリリベルが巻き込まれて倒れていく。

 

「よお。無関係の人間襲ってんじゃねぇぞスズラン

ども」

 

木刀を右手に持ち糸が切れたかのように走り出す。

それと同時にリリベルの隊員たちは一斉に零に銃弾の雨を浴びせるが零の動きが速すぎるのか一向に当たらない。

 

「何故当たらない!?」

「知りてぇか?」

「!?」

 

弾が当たらないことへの不満を漏らしたリリベルの隊員の頭を掴み、奥のリリベルの集団へと投げ込む。

投げ込まれた一帯のリリベルが吹き飛ぶ。

 

「教えてやるよ」

 

更に走り、木刀を振る。

 

「簡単だよ。走ればいい。敵の弾よりも早く」

 

吹き飛んだリリベルの下を走り更に奥のリリベルの隊員を蹴り飛ばす。

 

「テメェの背中に追い縋る死神より早く」

「わーお。弾を走って躱すって君本当に人間?」

「それは俺のセリフだわ」

「お?」

 

後ろからバンバン撃ってくるリリベルの隊員たちの弾を涼しい顔で避ける千束を見ながらついでに零も木刀を千束に向けて投げる。

しかしそれも避けてしまい千束の後ろにいたリリベルの隊員の顔に当たり倒れる。

 

「反射神経だけで避けるお前の方がよっぽど人間離れしてやがるぜ」

 

二人が笑い合う。

しかし、未だ動けるリリベルの隊員が弾を撃ちまくるが、なぜか二人には当たらない。

 

「千束ー!そっちのアンタ、零だっけ?アンタも、来なさい!」

 

ミズキが店から顔を出し二人に聞こえるように叫ぶり

 

「あ!?敵がいんのになに言ってやがんだアンタ!?」

「指令部から指令がきた!一時攻撃中止!」

「はぁ!?」

 

 

 

と、言うことで零と千束はミズキに呼ばれ一時休戦となり、零と千束はリコリコの中の座敷に座っていた。

 

「君と話をしたいと言う人物から電話があった。出てくれるね?」

 

零は頷いてミカが持っていた電話を手に取る。

ゆっくりとしかし着実に耳に電話を当てていく。

そして、一度深呼吸して言葉を紡ぐ。

 

「も、もしもし・・・・」

『・・・・・風切零だな?』

 

女の声だ。

 

「そうだけど・・・、アンタ誰?」

『リコリスの司令を務めている楠木だ』

「リコリス?」

 

聞きなれない単語が出てきたことに零は首を傾げる。

リコリスは確か彼岸花の別名だったような気がする。

リリベルといいリコリスいい生きてきて今まで聞いたこともない組織がごまんと現れて改めて自分が後戻り不可能なところまで来た事を自覚させられる。

 

『戸惑っていることだろう。だが今それを説明する時間もつもりもない。後で千束にでも聞いてくれ』

「じゃあ何の用で電話をしてきたんだよ?」

『交渉だ』

「交渉?」

 

零がいぶかしみながらミカを見る。

しかしながらミカはそのままキッチンに戻っていく。

マスター、絶対何か隠してるな、と思いながら再び楠木の話に集中する。

 

『我々リコリスは君をリコリスの特別隊員として使いたいと思っている』

「特別隊員?」

 

特別隊員と言う言葉に千束もミズキも目の色を変える。

キッチンから戻ってきたミカがカルピスの入ったグラスを零の前に置き零は一度会釈する。

 

「特別隊員ってあれでしょ!?優秀なリリベルがリコリスに配属された時の別称!?」

「えぇ!?じゃあ零リコリスになるの!?」

 

後ろで騒いでいる二人を尻目に零はミカを見る。

 

「お前がそうとう優秀だと楠木が見込んだんだろう」

『・・・・・・・何やら騒がしいようだが?』

「千束が騒いでる」

「ちょ!?」

『そうか』

「おいおいおい!何でそれで楠木さんも納得しちゃうの!?」

「日頃の行いじゃない?」

「ミズキィ!」

 

零がため息をつきカルピスを一回口に含む。

 

「・・・・・で、断った場合は?」

『再びリリベルと対峙しなければならなくなる』

「そりゃ、また面倒なことで」

 

零が顔を上げてミカ、ミズキ、千束を順に一瞥し、そして考えた。

果たしてこの三人を巻き込んでも良いのか、と。

 

「俺が特別隊員になれば、ここの皆はリリベルに襲われないんだな?」

『あぁ、約束しよう』

「・・・・・・・・・だが、断る」

『・・・・・・・・』

「「えぇ!?」」

 

零の返答に驚いたのは楠木ではなく、先ほどまでで口喧嘩をしていた千束とミズキだった。

 

「ちょ!なんで断っちゃうのよ!?特例中の特例よ!今の今まで特別隊員なんて出てなくて、もう伝説になりかけてるんだから!なれる可能性なんて「ミズキが結婚出来る確率くらいしかないからね」千束ォ!」

「・・・・・俺は自由な国の自由な使途よ。何人たりとも俺を縛らせたりはしねぇよ。悪ィな」

『そうか。残念だ。では、戦いを続けよう』

「あぁ、待った待った」

 

話が終りかけて零は焦って待ったを掛ける。

 

『・・・・・交渉は終った。これ以上君と話すことはない』

「そりゃ、そっちの交渉だろうが。こっちの交渉はまだだぜ」

『・・・・・・話してみろ』

「特別隊員になるつもりはねぇが、協力ならしてやるよ」

『協力だと?』

「簡単だよ。そちらさんが俺に依頼して俺がそれをこなす。信用出来ねぇなら一人監視をつけてもいい。これならそっちは俺を手駒にできるし俺も自由に活動できる」

 

しばらくの無音の後に再び音が出る。

このしばらくが零には何分にも何時間にも感じ取れた。

失敗すれば再びここ一帯は戦場になり、確実に死ぬ。

 

『・・・・・・・・・・いいだろう。交渉を飲もう』

「感謝する」

『千束に代われ』

 

零は耳から受話器を放すとミズキに頬をつねられている千束を見る。

千束も零に気付いたのか自分の顔を指差す。

零が頷くと千束が足早に歩き零から受話器を受けとる。

 

「はいはーい。千束でーす」

『相変わらず生意気だな』

「楠木さんこそ、素人に特別隊員になれとか酷じゃないですか?確かに零は強いけど」

『錦木千束。お前を風切零の監視の任務に付かせる。異論は認めん』

「ちょ!?」

 

千束が何かをいいかけたところで電話がきれる。

ツーツー、虚しい音を鳴らす受話器を電話に叩きつけて千束は「はぁぁぁぁぁぁぁ」、と長いため息を漏らす。

 

「本当に楠木さんは人の話を最後まで聞かないんだから」

「お前もだよお前も・・・・」

「ミズキ、何か言った?」

「なーんにも」

 

ミズキの呟きが聞こえたのか顔は笑っているが目が笑っていない千束がミズキにゆっくりとすり寄っていく。

零はそれを見ながら思ってしまったのだ。

もしかしてヤベェ所に厄介になってしまったのではないか、と。

 

「あ、てことは零はここで働く事になるよね?だって私の側に居なきゃいけないんだし!」

「え?」

「先生!零の制服!」

「分かった。用意しておこう」

「え?」

「ちょっとちょっと。まさかアンタ等同じ部屋で寝るわけじゃないわよね?」

「フッ、悪いなミズキ。任務とは言えミズキより先に大人の階段登っちゃうみたいだよ」

「アァァァァァ!十二歳のガキに先超されたァァァァ!!!なんで私には男が寄って来ないのよぉぉぉ!!!」

「いやいや、理由は明白じゃん!」

「ンだとぉ!」

 

喫茶リコリコの中の一分もない千束中心の激動を見て零はやはり選択を間違ったかもしれないと薄々感じ始めていた。

誰もリコリコで働く等とは言っていないのに働く方向で進んでしまっているこの状況。

 

「やっぱ俺、ダメかもしんねぇ・・・・」

「零!」

「あ?」

 

千束に名前を呼ばれて零がぶっきらぼうに振り返る。

 

「喫茶リコリコにようこそ!これからよろしくね、にししし~」

 

もうどうにでもなれ。

千束の屈託のない笑みを見て零は心の何処かでそう思った。




最近知ったんだけどpixivの三大奇書かなんかのケテル扱いされてる奴。
自分の友達の友達が書いたらしい。
世間は狭いね
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