ボーボボ達は渋谷を訪れていた。駅前の本屋で呪われし箱の封印を解こうとしたが、元電脳6闘騎士総長 詩人が現れ、文字の世界に引きずり込まれてしまう。SDGsを謳うも再翻訳されて窮地に陥るボーボボ達。地の文に翻弄されつつもグッドルッキングガイ先生に助言をもらうことで反撃の糸口を掴み、ビュティのプリンを食べた犯人を暴くことに成功する。5W1Hにより首領パッチと天の助は血みどろの死闘を演じ、遂にボーボボと詩人はエイプリルフール3周年目を迎えるのであった。

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ボボボーボ・ボーボボ 奥義:875 逆襲の詩人! 過去と領域、時々ビィ?

 

 

 

 

 気づけばボーボボたちは一面文字尽くしの世界に立っていた。

 

「こ、これは一体!!?」

「ボーボボ!! これ前にも食らったことがあるよ!! 視界が全部文字に見えちゃう攻撃だよ!!」

 

 互いが互いを文字としか認識できなくなるゴシック真拳超奥義『幻想文字視界(げんそうもじしかい)』。

 ビュティの脳裏に過る詩人の攻撃に『気を付けて!!』と叫ぶが、

 

「フ……以前のボクと同じだと思ったら大間違いさ。君たちとの敗北を経てボクが会得したゴシック真拳究極奥義『聖文字領域(ゴシックワールド)』の恐ろしさはこれからさ!」

「ゴ、『聖文字領域(ゴシックワールド)』!!? なんか凄そうな攻撃……ヤバいよ、みんな!」

 

 慄くビュティの背後から、バイクの排気音が聞こえる。

 振り返れば特攻服に身を包んだ(と思しき)首領パッチと天の助が、竹刀片手にバイクに乗っていた。

 

「フン……舐められたもんだな。そんな技オレ達には通用しないぜ」

「なぜならオレ達は……」

「「漢字が読めねーからな!!!」」

「過去を学ばねーーー!!?? 113話読み返してこい!!!」

 

 ビュティの制止の甲斐もなく、二人は詩人へ特攻を仕掛けた。

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「ぎゃあああ!!!?」」

「えっ!? あんなところにバナナの皮なんてなかったのに……」

 

「こんなものじゃすまないよ」

 

 勝ち誇る詩人の声が響くや否や、スリップし続けた首領パッチと天の助のバイクから漏れたガソリンが着火し、大爆発を巻き起こす。

 あえなく大爆発に巻き込まれた二人。

 その身体はバラバラに四散し、原型など見る影もなくなってしまっていた。

 

「首領パッチ君!! 天の助君!!?」

「ふ」「ぅ」「、」「危」「な」「か」「っ」「た」「ぜ」

「首」「の」「皮」「一」「枚」「繋」「が」「っ」「た」「っ」「て」「ト」「コ」「か」「…」「…」

「今どういう状態になってんだコレー!!?」

 

 ビュティの目には二人の状態が見えないが、そこら中に『首領パッチ』と『天の助』が散らばっている。

 

「ゴミを散らかすなァー!!!」

「あっ、待てこのヤロー!!?」

「ボーボボテメー!!?」

「今の時代はSDGsだ」

 

 ボーボボが仕向けたルンバに二人が吸い込まれていく一方、クツクツと喉を鳴らす笑い声が聞こえてくる。

 

「この程度でやられてもらっちゃ困るよ。まだまだ序の口なんだからね」

 

 直後、詩人は文字を奔らせる。

 文字だらけの世界に起こされる文字は『火炎』『吹雪』『雷撃』の三字であった。

 

「クッ、何か来る!?」

「気をつけろボーボボ! こいつ……只者じゃない!」

 

 ヘッポコ丸とソフトンも聖文字領域の異常性を空気で感じ取ったのか、各々攻撃に備えて身構える。

 だが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぐああっ!!?」

「なん……だとっ……!?」

「へっくん! ソフトンさん!?」

 

 崩れ落ちる二人にビュティが急いで駆け寄る。

 傷ついたヘッポコ丸を抱き上げるが、やはり無抵抗のまま攻撃を受けたのがイケなかったようであり相当の痛手を負った様子だ。

 

「へっくん大丈夫!?」

「ど、どうしてだ……まるで体が言うことを聞かなかった……!?」

「まるであいつに行動を操られているような……」

 

 膝をつくソフトンは詩人を見遣る。

 ギガが治めていたサイバー都市では直接相まみえることのなかった相手だが、真拳使いとしての練度はかなりのものだ。

 

(いや、オレを超えていると言っても過言ではない。それにこの『感触』……)

 

「そうか……読めたぞ、お前の究極奥義の真髄が!」

「おっと。ネタバラシにはまだ早いよ」

「ぐああっ!!!」

 

「ソフトン!!? おのれ、よくもー!!!」

 

 謎の攻撃により血反吐を吐いたソフトンを見て、ついにボーボボの怒りが頂点を迎えた。

 猛進する彼が放り投げたのは一台のルンバ……から飛び散る、首領パッチと天の助の文字だった。

 

「くらえ!!! 鼻毛真拳奥義『SDGs手裏剣』!!!」

「オレが主人公じゃー!!!」

「ところてんを食らえェー!!!」

「SDGsとまったく関係ないこと言いながら出てきたー!!? 気持ち悪!!!」

 

「フン」

 

 飛び散りながら詩人に迫る二人。

 だが、鼻を鳴らした詩人がその場から動くことはなかった。ただ、次の瞬間には飛散した首領パッチと天の助が一点に凝縮されるや否や、目にも止まらぬ速度でボーボボの下へ吹き飛んだのである。

 

「「ぎゃあああ、止まらねえー!!?」」

「なに!!?」

「『()()()()()()()』と……」

「「「ぐあああああっ!!?」」」

 

 ボーボボが受け止める間もなく首領パッチと天の助が凝縮したボールは大爆発を巻き起こす。一帯に舞い上がる小さな『黒煙』と『火炎』の文字が、今の爆発の凄絶さを表している。

 見ていることしかできなかったビュティは、ただただ安否を確認するように悲痛な声を上げるしかできない。

 

「皆!!?」

「───……くっ」

「ボーボボ!!!」

 

 黒煙が晴れれば、そこにはボーボボが膝を折る姿があった。

 信じられない光景にビュティは絶句する。

 

 あのボーボボが?

 たった一撃で?

 どんな強力な攻撃だって、ハジケでいなしてきた彼が?

 

「そんな……!?」

「フハハハハ!! どうだい、これがボクの『聖文字領域(ゴシックワールド)』さ!! そろそろ君たちお得意のおふざけが通用しなくなって、嫌でもこの世界の恐ろしさが薄々分かり始めた頃合いだろう?」

「い、一体どういうことなの?」

 

 恐る恐るといった様子でビュティが問いかければ、気分が高揚した詩人が嬉々として語り始める。

 

「この『聖文字領域(ゴシックワールド)』はボクの精神を解放した世界。すなわち文字こそが至上であり絶対の世界なのさ!! 君たちがどんなふざけた真似をしでかそうとボクがそれを文字で上塗りにする……つまり、現実を書き換えるのさ!!」

「ウソ!!? そんなの反則だよ!!?」

「反則? フ……そもそも戦うなんて考えが傲慢さ。なにせボクは───この世界の神なんだからね!!!」

 

 詩人の一声が世界を一変させる。

 あちらこちらに乱舞する文字。どれもこれもがボーボボたちを死に至らしめんとする残酷で凶悪な文字ばかり。

 

「下がれ、ビュティ!! 俺に秘策がある!!」

「ホント?! ボーボ……」

 

「文字を消すには消しゴムじゃー!!! 行け、天の助ェーーー!!!」

「えーーー、オレーーー!!?」

 

「限りなく消しゴムじゃない奴が生贄になったーーー!!?」

 

「フン」

 

 ボーボボの暴挙を一笑に付す詩人はゴシック真拳奥義『囲監閉獄』で天の助を閉じ込める。

 だが、

 

「うおおおお!! オレを捕らえようったって無駄だ!!」

「あっ、凄い! 体が押し出されてところてんみたいになって檻から抜け出した!」

 

「チッ、雑魚の癖に……」

 

「こうなったらこのままぶっ飛ばしてやる!! くらえ、プルプル真拳奥義『ところてんミサイル』!!」

 

 真っすぐ突き進む天の助の棒状の肉体は詩人を捉えて離さない。

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぶへェ!!?」

「えっ!? 今何が起こったの!?」

 

 訳も分からぬままに反撃された天の助は地べたの上を転がる。

 

「お、オレはもうダメかもしれん……」

「天の助ぇー!!」

「あ、後は、任せた……ボーボボ……」

「天の助……甘えるなァー!!!」

「ぎゃあああ!!? 本当に死んじゃうー!!?」

 

「ま、待ってよボーボボ! 天の助くんがおかしいよ!」

「なんだと!?」

「あぱひゅー……あぱひゅー……」

 

 天の助を殴るボーボボをとっさにビュティが止めたが、やはり天の助は死に体のままだった。

 普段ならどれだけ肉体が爆発四散しようと次のページには蘇っている不死性を持つ彼が、今日ばかりは陸に打ち上げられた魚のように弱弱しい。

 

 そこで確信する。

 

「そうだよ、やっぱりここがあいつの世界だから! いつも通り戦ってちゃ、あいつの思うままに結果を書き換えられちゃう!」

「だから言っただろう? ボクはこの世界の『神』だ。君たちがいくら足掻いたところでボクの勝利は揺るがない」

「神だと……!!?」

「フ……そうさ。この文字の世界を『物語』だと例えて、君たちはそこの『登場人物』。文字が書き替えられたり置き替えられたりすれば、自ずと結果は別の道を歩んでいくという訳さ」

 

 詩人はほくそ笑む。

 

「ボクが文字を起こすだけで『登場人物』は血反吐を吐く。爆発する。成す術なくボクに倒される! ボクが文章の主語を置き換えるだけで、結果の主体すらも置き換わるんだよ! いくら君たちの攻撃がボクに届こうが、『地の文』に干渉してしまえばボクの運命は思いのままなんだよ!!」

「馬鹿な、そんなはずは……!!?」

「フ……だが、ボクがこの奥義に到達する天啓は君たち……いいや、正確に言えば()の協力がなければ不可能だった」

「なんだって!!?」

 

 まるで裏切り者が居るかのような口振りに、一同に激震が奔る。

 

「貴様……俺の仲間を侮辱するのは許さんぞッ!!!」

「さて、どうかな? 自分の胸に聞いてみるといいさ」

 

 一度広がった疑惑の波紋は留まることを知らない。

 

「そんな、私たちの中に裏切り者が……!!?」

「ちくしょう!! 一体誰だ⁉」

「大変だねアンタら」

「クソッ、そんなの屁理屈だ!! 俺は皆を信じるぞ!!」

「そうだ。奴が口八丁で俺達の意思を分断させる気かもしれん」

 

「───そうだろう、ところ天の助?」

「ウッソ~ン??????」

 

「そんな……ひどいよ、天の助くん!!」

「テメー!! 俺たちを売りやがって!!」

「見損なったぜ、天の助……俺たちとの友情はそんなもんだったのかよ……!」

「安心しろ、せめて安らかな最期を手向けてやる」

 

「待って待って待って皆待って!!!」

 

 啜っていた珈琲を垂らす天の助が涙ながらにボーボボへ訴える。

 

「俺裏切ってないから!! ホントだから、信じて!!?」

「……と、被告人は訴えていますが、検察側証拠VTRをどうぞ」

「え?」

 

 VTR再生。

 

【ボボボーボ・ボーボボ 奥義114:2つの死闘(ダブル・ウォー)】より

 

 

『クッソーーー!!! こんな魚雷なんかに───奥義『竜怒嵐凱(りゅうどらんがい)』!!!』

 

 しかし

 詩人の攻撃は全く

 効きませんでした

 

 それもそのはず

 なぜならば彼女は

 

 ナポレオンだったからです。

 

 あっぱれ! ナポレオン

 ビバ! ナポレオン

 

『お前か!! その変な文書いてたの』

 

……

………

 

『以上の事から検察側は被告に対し死刑を求刑します』

 

「あれ!!? なんで過去のVTRから語り掛けてるの!!?」

「天の助えええええ!!!」

「待って!!! べ、弁護士ー!!! 弁護士ー!!!」

 

 天の助が縋った先には腰をフリフリしながら踊る禿げ頭の弁護士が垂れ幕を掲げていた。

 そこには『無罪』の二文字が書かれており、天の助の瞳にはキラキラとした輝きが宿る。

 

「べ、弁護士……!」

「やっぱ死刑」

「何言ってやがんだこの野郎ー!!?」

「倍プッシュ」

「倍プッシュ!? 死刑倍プッシュって何!?」

「やっぱりテメーのせいじゃねえかァーーー!!!」

「ぎゃあああすみませーん!!!?」

 

 無慈悲にも突き放された天の助の脳天に裁判長ボーボボのハンドベルが直撃する。

 

「くそ!! 奴が自分を神だと言うんなら、こちらも神を出して対抗するしかない!!」

「なに!? まさかそんな奥義があるのか……!?」

「うおおおお!! 鼻毛真拳㊙奥義ぃぃい……!!」

 

 煌々とボーボボのアフロが光り輝く。

 そして、

 

 

 

「『原作者(さわいせんせい)召喚』!!!」

 

 

 

「そっちの神呼んじゃうのー!!?」

 

 パカッ。

 

「澤〇の奴なら、最近漫画描いてないよ」

「澤〇先生ェーーーーー!!!!!」

 

(今日一の慟哭……)

 

 アフロの中から出てきた親父に悲しい現実を告げられ、ボーボボたちは阿鼻叫喚と化す。

 

「どうすんだよ!!? 『ほんのり!どんぱっち』100巻の夢は!!?」

「俺が主役のスピンオフ『世紀末食品伝説 ところ☆天の助』はどうなっちまうんだ!!?」

「澤〇先生絶対そんな約束してないよ!!?」

 

「フ……なんだ、こけおどしだったかい。それならこっちから行かせてもらうよ!」

 

「ちぃ!! こうなればあの奥義を使うしかない!!」

「あれを使うのか、ボーボボ!!」

「ここまで追い詰められてしまっては仕方ない……やるか!!」

「「「うおおおお!!!」」」

 

「な、何が起こるの……!?」

 

 今度は三人の体が光り輝き、ビュティからは文字にしか見えない体に変化が訪れた。

 

「코털 진권 비밀에 불가능은 없다! 이 보보보보 보보보가 당신을 쓰러뜨려 준다!」

「Би энэ бүтээлийн гол дүр болох Мастер Патч байна!」

「กินโทโคโรเตน」

「変な翻訳かけてきた!!? 何語!?」

 

 ボーボボ以外は最早形容し難い文字になっており解読不能であった。

 しかし、詩人から余裕の笑みは消えない。

 

「今更そんな子供だましでどうとなるとでも!? 読めないのであれば再翻訳してやればいいだけのこと!!」

 

 詩人が手を翳せば、みるみるうちに外国語に変換されていたボーボボたちの姿が変わる。

 

「なんだ⁉ くそー、コモ陣権秘密『江南スタイル』が割れるなんて… …一生不覚!*1

「嫌だ! 恥ずかしいところを見られちゃう! もう結婚できない! 責任をとるなんて!*2

「ところてんを食べよう*3

「若干変な感じに翻訳されてる!!!! しかも一人関係ないこと言ってる!!!」

 

「フン」

 

「「「ぎゃあああ!!!」」」

 

 奮戦の甲斐なく三人は詩人の猛攻撃をくらう。

 攻撃を受けすぎるあまり、『首ボの天ーチ』と絡まり合っている彼らは、とても無事とは言い難い姿であった。

 

「これでもダメか……やはり先生の力を借りなくては……!」

「でも魚雷先生はここに居ないよ!?」

「いいや、居る!! 魚雷先生でも澤〇先生でもない、もう一人の先生が……!!」

 

 一縷の望みに縋るようなボーボボの声に、ビュティは固唾を飲んだ。

 

(ボーボボがそこまで頼りにする先生っていったい誰なの……!?)

 

 こうしている間にもボーボボのアフロの輝きは増していく。

 今までも数々の奇跡(ハジケ)を生み出してきたパンドラの箱……そこより現れる『先生』であるならば、この状況を打開できるかもしれない!

 

(いったいどんな凄い『先生』が……!!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハーイ、グッドルッキングガイ五条悟先生でーす♪」

 

 

 

「特級呪術師出てきちゃったァーーー!!!!?」

 

 でもスゲー! と驚愕を隠せないビュティ。なにせあの最強の呪術師・五条悟なのだ。それ以上の説明など最早不要だ。

 

「五条先生、ご教授お願い致します!!」

「おっけおっけー。獄門疆から出してくれたお礼に特別奮発大特価セールスだよ?」

「あらすじの呪われし箱って獄門疆のことだったの!!?」

「す、すげー!! 五条先生、俺にサインください!! 『ところ天の助くんへ』って!」

「ゴメンゴメン。また今度書いてあげるから」

「……あれ? 首領パッチ君は?」

 

 サインをせがむ天の助の一方で、こういう時は一緒になって騒ぎそうな首領パッチの姿が見られない。

 怪訝に思ったビュティが周りを見渡せば、なにやら目隠しをした首領パッチが恨めしそうにこちら側を見つめ、徐に目隠しを外して叫ぶ。

 

「オレんが先だ!! オレんが先だ!!!」

 

「何に張り合ってるの!!?」

 

 後発に目隠しキャラを奪われた(?)とお怒りの首領パッチは無視され、五条のレッスンは始まる。

 

「領域に対する最も有効な手段、こっちも領域を展開する。同時に領域が展開された時、より洗練された術がその場を制するんだ」

「はっ!? そういうことか!! ありがとうございます、先生!!」

「じゃあ、あとは頑張ってねー☆」

「あ、待って! サイーン!」

 

「クッ……何を理解したつもりだか知らないが、その男に何ができるって言うんだい?」

 

「いいや、先生はお前を攻略する為の重要な事実を教えてくれた!」

「なんだと!?」

「これがその答えだ!! 鼻毛真拳㊙奥義『聖鼻毛領域(ボーボボ・ワールド)!!!!」

「なっ───」

 

 刹那、文字しか存在しなかった世界の半分が見覚えのある長閑な草原の光景へと塗り替えられ、同時にボーボボ達の姿も元に戻った。

 

「こ、これは⁉」

「聖鼻毛領域は精神を解放させる世界!!!! おふざけを超越したこの世界で中和すれば、貴様の聖文字領域とやらも通用しない!!!!」

「ボクの聖文字領域が!!? そんな馬鹿な!!!」

「ここからが本番だぜ、詩人。貴様のふざけた駄文なんぞ、ここで絶版にしてやる」

「ちぃ、少し対抗できたからと調子に乗って!」

 

 ここからは正真正銘の真っ向勝負。

 領域を展開する者同士、より濃密な世界で相手を呑み込んだ側の方が勝利するという訳だ。

 

「純粋な力比べがお望みなら受けて立ってあげるよ!!! ゴシック真拳奥義『六語槍(ムゴソウ)』!!!」

「そっちが槍ならこっちも槍だ!!!」

 

「え? なんでオレ掴まれてるん?」

 

「くらえ、鼻毛真拳奥義『馬鹿スピア』!!!」

「ボーボボテてめー!!!?」

 

 猛スピードで飛来する『ヤリ』の文字に対し、ボーボボも馬鹿スピア(首領パッチ)を投擲し対抗する。

 

「ぐおお!? こんなとこで死んでたまるかー!!?」

 

 しかし、首領パッチが死に物狂いで六語槍を受け止め、大事には至らなかった。

 

「チッ! 本当に領域が中和されているのか!? ボクの地の文の影響力が下がってる!」

「ゲヒャヒャ!! 受け止めちまったらこっちのもんだ!! またトゲアタックぶち込んで首領パッチエキス注入してやるぜぇ!!」

「えっ!? あの恐ろしいエキスをまた!?」

「そう何度もくらうと思うか!! 今度こそ真のゴシック真拳奥義『文字化』をくらうがいい!!」

「ぎゃあああ!!!」

「首領パッチ君!!」

 

 空中で身動きが取れなかった首領パッチは、詩人の『文字化』を食らってしまった。

 みるみるうちに文字へと変形していく首領パッチの体はいつしか、

 

───シャカパチに変わってしまっていた。

 

「……チッ、いいカード出てこねえ。ッソが!」

「……ちょっと、シャカパチやめてください。マナー違反ですよ」

「あぁ!? 誰がシャカパチしたって!? 上等だ、表出なァ!!」

「おぉ!? いいぜ、やってやるよ!! シャカパチ野郎にゃ決闘者を名乗る資格がねえってことを思い知らせてやらぁ!!」

 

「なんで天の助君もそっちも混ざってるの!!?」

 

「邪魔だーーーっ!!!」

「「城之内くーん!!!」」

 

 猛進するボーボボの鼻毛にシャカパチと天の助は蹴散らされる。

 

「ルールを守って楽しく決闘♡」

「何も守られてなかったよ!!? 全てが盤外で決されてたし!!!」

「詩人!!! 今のでテメーの技は見切った。もう恐れるものはない!!!」

「な、なにィ!?」

 

 『文字化』を目の当たりにしても尚、臆する様子もなく突っ込んでくるボーボボに詩人は気圧された。

 しかし、すぐさま彼は平静を取り戻す。

 

「フ、そっちから来るなら好都合だ!! 今度こそボクの間合いで決めさせてもらう!!」

「もう忘れたか!? 領域同士が競合した場合、より洗練された領域の方が場を支配する!! すなわち、オレの領域が貴様を上回れば問題はない!!」

「なんだと!? なら来るがいいさ!! 文字になって後悔したって、もう遅いぞぉーーー!!!」

「うおおおおっ!!!」

 

 

「ボ、ボーボボー!」

 

 

 領域の衝突が眩い閃光を発しながら膨らんでいく。

 突っ込んでいくボーボボの背を見つめていたビュティも、これには堪らず目を背ける。ようやく目が開けられる頃には、そこに暴力的な光は消えていた。

 

「ボ、ボーボボ……ボーボボ、どこ!!?」

「まさかボーボボさんも……!?」

 

 煙が晴れる頃、そこに立っていたのは詩人であった。

 ボーボボの体は───影も形もない。

 勝者は、火を見るよりも明らかであった。

 

「……フ、フフフ、フハハハハハハハハ!! どうだ、これがボクの『聖文字領域』だ!! ボクこそが絶対の世「ヨッコラショ」ぇぇええええええゑゑゑゑゑ!!!!?」

 

「変な絵文字出てきたーッ!!?」

 

「これが俺が編み出した貴様を倒す策だ!! 覚悟しろ!!」

「いや、えっ、それどうなってんの!!?」

「そうだぜ。泣いて許しを乞いな!」

「こうなった俺たちを止めることはもうできないぜ!」

 

「なんでちゃっかり二人も絵文字になってんの!!!?」

 

 ボーボボ達は確かに『文字化』をくらってしまったが、彼らは絵文字になることで難を逃れていたのであった。

 

「詩人!!! テメーの能力は絵文字になった俺達には通用しない!!!」

「くっ……だが、絵文字も文字であることには変わりない!!! 地の文で君達を蹂躙するだけだ!!!」

 

 何かされる前にトドメを刺そうと、詩人はゴシック真拳最大奥義(あらよっと)『バブリー♡怨霊ミッドナイト』を繰り出した。

 

「なんか勝手に変な技に変えられた!!!?」

 

 高度経済成長に浮かれる夜の街にビュティのツッコミが響く。

 そう、今の日本は世界が羨む日本なのだ。あちこちで高価な品に身を包んだセレブが夜を飲み明かしている。

 そんな新宿の裏側の井戸で、死に装束を着た天の助はぬのハンカチを噛み締めていた。

 

「恨めしや……恨めしや……」

「おい」

「?」

 

 一束の札束が音を立てて天の助の前に落とされた。

 

「……こんなとこで泣いてないで、一緒に夜の街に繰り出そうぜ」

「でも……私、幽霊だし……」

「関係ないさ。この町の夜は誰にでも平等なんだからな」

「! ……うん!」

いう「さあ行こう! 僕たちの楽園へ!」アハハハハ

 

 しかし、首領パッチと天の助が向かったクラブは、ボーボボの土地転がしによって更地にされ、二人は帰らぬ人となるのだった。>

 

「地の文で二人が殺された!!?」

「クソ! 勝手にふざけた地の文を作るんじゃない!」

 

 怒り心頭の詩人は次々に凶悪な文字の羅列を浮き上がらせる。

 文字より解き放たれるエネルギーは猛烈な勢いでボーボボ達を襲い、跡形もなく消し飛ばした<ものの、彼らには通用しなかったのです。なぜなら彼らは人為変態を遂げ、野菜の力をその身に宿していたからです。

 

「ウォーターメロン!! ウォーターメローン!!」

「人参食えよ!! オラ、人参食えよ!!」

「ひいいいい、スイカと人参の食い合わせは悪いよ~!!」

 

「とても勝てそうにねーラインアップだー!!?」

 

「くらえ!! スイカの浅漬けじゃー!!」

「βカロチン摂れよ!! カロチンカロチン!!」

「いやあああ!! 人参摂り過ぎちゃうー!! 致死量摂っちゃうー!! *4

 

「ぐああああ!!!?」

 

「思いのほか効いてる、なんで!!?」

 

 

 あれよあれよと詩人はスイカで脳天をかち割られ、脇腹を人参で串刺しにされてしまう。

 必死に抵抗しようとはするものの、耳のすぐ傍で囁かれる『ところてんって美味しいよね』『三杯酢はいかが?』『あらやだ奥さんいただいてもいいかしら?』『ポン酢もあるわよ』という雑音が思考を邪魔する。

 

「馬鹿な……このボクが吞まれている、だと……!!?」

「からしはねーのかぁー!!!」

「ぐぼぁ!!」

 

 とうとう絵文字のようなボーボボの拳が詩人の頬を捉えた。

 

「がはっ……!!!?」

「レモンならあるぜ!!」

「いらね」

「ボクが負ける……二度もこんな奴らに……!!?」

 

 地に這い蹲る詩人は信じられない現実を直視したかのように茫然自失としていた。

 ここまでのダメージの蓄積もあったのか、世界の半分を占めていた文字の有象無象も消え失せる。

 聖文字領域が消え、ボーボボ達も無事元の姿へと戻った。

 

「詩人。テメーの生み出す文章には決定的に足りないものがある」

「な、なんだと!?」

「それが分からん限り、いくら文字の世界に引きずり込んだところで俺達は倒せん!!」

「ボクに足りないものだと……!? フ、そんなものがあるなら教えてほしいね!!」

「いいだろう。ならば鼻毛真拳奥義『聖鼻毛回転盤(ボーボボルーレット)・バージョンノベライズ』を見せてやる!!!」

「ボ、聖鼻毛回転盤・バージョンノベライズだと……!?」

 

 驚き詩人の視線の先で、奇妙な空欄が浮かび上がる。

 

「この奥義はルーレットで『いつ』『どこで』『誰が』『何を』『なぜ』『どのように』したのかランダムで現れた単語が組み合わさって、創り上げられた文章を現実にする!!」

「な、なんだと!? ボクの聖文字領域と同じことをそんなチャチなもので……!?」

「文字を力に変えるのはテメーだけの特権じゃねー!!! 行くぞ、ルーレットスタート!!!!」

 

 空欄ではスロットのように単語がリール回転する。

 

「いいぞー、やっちまえボーボボ!!!」

「ヨッ! 日本一!」

「よし!!! 記念すべき一発目の文章はこれだー!!!!」

 

『今』

『ここで』

『首領パッチが』

『天の助を』

『なんとなく』

『血で血を洗う屍山血河の殺し合いに巻き込んだ』

 

((あれれー? いきなり穏やかじゃなくなったぞー?))

 

「あっ、体が言うことを聞かねぇー!!!?」

「ボーボボ、後で覚えてやがれー!!!!」

 

 奥義の効力を実演するように殺し合う二人を余所に、ボーボボは手をパンパンと叩く。

 

「さて、馬鹿の掃除が済んだな」

「そんな軽く済ませていいことじゃないよ!?」

「これでよく分かったろう、俺と貴様の文章の違いが」

「な……何がだ……?」

(その反応は正しいです……)

 

 ビュティも若干詩人に同情し始めていた。

 しかし、聖鼻毛回転盤は始まったばかりだ。

 

「ちゃっちゃと次行くぜー!!! おらー!!!」

「くっ!? 次は一体何が来るんだ!!?」

「二つ目の文章はこれだー!!!」

 

『ブリッジした後』

『デパートで』

『詩人が』

『バニシング井上を』

『一目ぼれしたので』

『告白した』

 

「バニシング井上って誰!!!?」

 

「一目ぼれです……付き合ってください!」

 

「もう告白してるー!!?」

 

 ブリッジの体勢で詩人はバニシング井上に手を差し出していた。

 だが、次の瞬間に響いたのは乾いた音だった。それは明確な拒絶の音。痺れるような感触を覚える手を引っ込めながら詩人が面を上げれば、

 

「アタイ、生涯かけて誓った人が居るから……」

「そ、そんな……」

「行きましょ、ね? ボボ美さん」

「ま、待ってくれ! もうちょっとだけ話を───」

 

「他人の彼女に手を出すんじゃねーーー!!!!」

 

「ぐばぁ!!!?」

 

 詩人を殴り飛ばしたボーボボが、野球ユニフォームに身を包んだ首領パッチの手を引いて行く。

 

「つまりどういうことなの?」

「分からん」

 

 傍から眺めていたビュティとヘッポコ丸は理解を放棄していた。

 

「ぐはっ!!! し、しまった……つい奴の空気に乗せられて……!!!」

「まだまだこんなもんじゃ済まないぜ!!!」

「つ、次は一体何が来るんだ……!!?」

「三つ目の文章はこれだー!!!」

 

『昨日』

『家で』

『天の助が』

『ビュティのプリンを』

『お腹が空いたので』

『食べた』

 

「……」

「お前かー!!!」

「ぎゃー、なんで俺ー!!?」

「……」

 

「三つ目の文章はこれだー!!!」

「今のなかったことにした!!?」

 

 ビュティは天の助にパイルドライバーを掛けている為、代理でヘッポコ丸がツッコんだ。

 

「うおおおお、来い!!! 傑作よーーー!!!」

「ぐうううう!?」

 

『10秒後』

『詩人が』

『ワイキキビーチで』

『ボブを』

『久しぶりに会ったので』

『雪合戦に誘った』

 

「ワイキキビーチなのに!!?」

 

「やぁ、ボブ。久しぶりだな、雪合戦でもどうだい」

「オーケーオーケー。レッツ、スノーボールファイト」

 

 ボブ(ボーボボ)と共に雪玉を詩人は作る。

 

「よーし、そろそろ始めようぜー」

「オケェーイ」

 

 ボブが親指を立てれば、頭のアフロが開く。

 そこからは巨大な拳銃が顔を覗かせており、次の瞬間には撃鉄が起こされた。引き金に手を掛けていたのは田楽マン。躊躇わず彼は引き金を引いた。

 

「努力!!! 未来!!! あビューティホースター!!! 努力!!! 未来!!! あビューティホースター!!!」

「ぐああああ!!!?」

「ただの銃撃現場だコレ!!!? しかもチェンソーじゃないし」

 

 不意を衝かれた詩人は次々に放たれる弾丸をくらう。

 戦場では弾丸が飛び交う。悲鳴と銃声が轟く最中、天の助と首領パッチは食育の授業を行っていた。

 

「ボクはとこピーだトコ(裏声)。みんなと友達になりたいトコよー(裏声)」

「皆には3か月後にとこピーを殺して食べてもらう! 先生はな! 皆に命の大切さを知って欲しいんだ!」

「悪魔に命を説く資格はねェー!!!」

「「「ぎゃあああ!!?」」」

 

「いやアンタが一番の悪魔だー!!!?」

 

 天の助と首領パッチ諸共詩人は鼻毛の乱打に打ち据えられる。

 

「ぐはっ!!! はぁ……はぁ……!!! まさかここまでやるとは……!!!」

「間髪入れず畳みかける!!! ラストはこれだー!!!」

「ラスト……!!? いったい何が来るんだ……!!?」

 

『今』

『全員が』

『ここで』

『詩人を』

『倒す為に』

『カルカルゲームを開催する』

 

「カルカルゲームって何だー!!!?」

 

「カルー!」

「カルカルー!」

「カルー!」

 

「もう始まってる!!!?」

 

 いつの間にかカラカルの着ぐるみを着ていたボーボボ・首領パッチ・天の助の三人は、にゃんにゃんポーズを繰り返しながら詩人の周りを駆けまわる。

 

「カラカルー!」

「カルカルカラカルー!」

「へっくん! カルー! カルカルー!」

「えっ!? 俺も参加しなきゃいけないのか!?」

「カルー! 後にカル付く言葉カルー!」

 

 とりあえず語尾に『カル』が付けばいいらしい。

 

「えっ……じゃ、じゃあ……ジャッカル」

 

 

 

 

 

「……チッ」

 

 

 

 

 

「カルー! ジャッカルー!」

「なんだったんだ今の舌打ち!!!? 俺が悪かったのか!!!?」

「カラカルジャッカルー!」

「カルー! ビュティもカルー!」

「私も!!?」

 

 考えること5秒。

 

「カル……ラスカル?」

 

 ボーボボのアフロが開く。

 そこには銭湯の番台の田楽マンに履歴書を渡すアライグマが居た。

 

「あー、うちアライグマ雇ってないんだよね」

「ガーン!!!」

 

「ラスカルー!」

「ラスカルー! ラスカルラスカルー!」

「あの子ラスカルだったの!!!? 雇ってあげなよ、かわいそうだよ!!!!」

「カラカルジャッカルラスカルー!」

「次ソフトンの番! ソフトンの番、カルー!」

「俺か」

「えっ、お兄ちゃんもやるの!!?」

 

 やめてあげてよそんな無茶ぶり! とビュティは叫ぶか、ソフトンは律儀に顎に手を当てカルカルゲームに参戦しようとする意思を見せる。

 

「カル……カル……」

「カルー! カルカルー!」

「カラカル! ジャッカル! ラスカルー!」

「カルカルー! カルカルー!」

「カル……カル……カル……~~~くっ!!!」

 

 

 

───バビロン真拳奥義『開闢のマダガスカル』!!!

 

 

 

「ぐああああ!!!?」

「カラカルとジャッカルとラスカルがリンチにしてるー!!!?」

 

 カルカルゲームで召喚された動物こそソフトンの奥義の布石だったのだ。野生を生きる猛獣たちの爪と拳は詩人を徹底的にまで痛めつけ、さっさと野生へと帰っていった。

 

「で、でたらめだ……!!!? カラカルもジャッカルもラスカルもマダガスカルには生息していない……!!!」

「そーなの!!!?」

「そろそろ分かってきただろう、俺とお前の生み出す文章の違いが」

「ぐぅ、何が違うというんだ……!!? ボクとお前の奥義は本質的に同じ!!! だというのに、この差は……!!?」

 

 依然、詩人はボーボボの問いの答えを出せぬままに居た。

 その姿に辟易したようにボーボボは溜め息を吐いた。

 

「いい加減タイムリミットだぜ、詩人」

「ま、待て!!?」

「解答欄が空白のテメーには、この俺が懇切丁寧に赤ペンを入れてやる!!!」

 

 待ったをかける詩人に構わず、ボーボボは最後の攻撃を仕掛けるべく駆け出した。

 

「詩人!! テメーが生み出す文章に足りないものはぁ……!!!」

「ぐ、うぅ……なんだこのプレッシャーは!!? クソッ、『無双盾(むそうたて)』!!!!」

「聞いてワクワクするカッコいい必殺技? ……違う!!!」

「ぐばぁ!!!?」

 

 硬く握られたボーボボの拳が詩人の盾を砕き、その先にあった頬を撃ち抜く。

 

「目玉が飛び出るような大迫力の描写? ……違う!!!」

「がっ、ぎっ、ぐっ!!!?」

 

 息を吐く暇も与えぬ連撃に次ぐ連撃は留まるところを知らない。

 

「ユーモア溢れる登場人物? 涙を誘う感動的なエピソード? 選びに選び抜かれた言の葉の数々? ───違う、違う、違う!!!!」

「ぐああああ!!!?」

 

 鋭く振り上げられたアッパーが詩人の顎にクリーンヒットする。

 浮かび上がる詩人。彼は宙に舞う僅かな時間の中、辛うじて保っていた意識の全てを目の前の男に注ぐ。

 

「な、ならば……ボクには何が足りないんだ……?」

「だからテメーは三流作家だ、詩人」

 

 ピッ、とボーボボが指を差す。

 まるで突き放すように指差した先には他でもない、詩人が宙を泳いでいた。

 

 

「どれだけテメーの中じゃ面白い文章だろうと、そこに読者に寄り添う気持ちがなければ文章に込められた作者の想いは伝わらん!!!」

「読者に……寄り添う、だと……?」

「そうだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ボーボボの言葉に、ビュティはハッとしたように目を見開いた。

 

「ボーボボ……!

 

 

 

───それだけはこの作品で言っちゃダメだよ!!!!!!?」

 

 

 

 遥か彼方までビュティのツッコミが木霊した。

 

「おぉ、今日のビュティのツッコミはよく響くわい」

「明日は雨かのう?」

「今のうちに干しといたペイズリーをしまっとかんとなぁ」

 

「馬鹿馬鹿しい……読者に寄り添うなんて、そんな無駄な労力を割いて何になる!? 読者はボクの生み出した文字の羅列を甘受していればいいんだぁーーー!!!」

「詩人ぉーーーーー!!!!」

 

「ああーーー!!!? 儂のペイズリーーー!!!?」

 

 靡くペイズリーを引き裂かれ嘆く首領パッチを余所に、ボーボボは激昂する詩人に今日一の咆哮を浴びせかける。

 するや、ボーボボの体が極彩色の閃光を迸らせ始めた。直視するのも憚れる神々しい光の乱反射は、最早太陽の輝きすらも陰に追いやる猛烈な勢いで辺りを照らし上げる。

 凄まじい光の圧だった。否、単なる視覚的な圧力ではない。

 それは物理的な圧力を伴い、暴力的なまでの風を巻き起こす。

 

「これ以上貴様の醜態を晒さんよう幕引きにしてやるぜ、詩人。最後にオレのとっておきをお見舞いしてやる!!!!」

「な、なんだと!? 今まで以上の奥義が残っていたのか!!?」

「この奥義を目の当たりにしたが最後!!!! 貴様は骨も残らん!!!!」

「うっ……!!? そ、それがどうした!!? 最後に勝つのはこのボクだーーー!!!」

 

 一瞬気圧されながらも己を奮い立たせるように詩人は残された全ての力を奥義に注ぎ込む。

 ゴゴゴゴ……と大地が震え、天が啼く。

 詩人より放たれる奥義の余波は、それだけで首領パッチのリンボーダンスを失敗させるに至った。

 

「があああ、ゴシック真拳最終奥義!!! 『終章世現映(しゅうしょうよげんのうつし)』!!!」

「うおおおおお、鼻毛真拳最終奥義!!! え~っと……あの、その、あれだよ、あれ。なんかドバーっと出て……うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

(最後の最後で全部絵にぶん投げたーーー!!!!?)

 

 

 

 ボーボボの最終奥義は詩人の最終奥義を打ち破り、遂に決定打を叩き込んでみせた。

 宙を舞い、そして地に伏せて動くなった強敵を見遣りながら、彼はこう吐き捨てた。

 

「俺は文章の枠に囚われるような男じゃねー。出直してくることだな」

「ボーボボ、それ言っちゃおしまいだよ」

 

 かくして詩人を打ち破った一向は、マルハーゲ帝国の野望を打ち破る旅に戻る。

 奴らを根絶しない限り、世界中の毛に平穏は訪れないのだから……。

 

 

 

次回予告

 

 

 

「やめて! ボーの翼神竜の特殊能力で、スタンフォード・ザ・ブランディングを焼き払われたら、闇のゲームでモンスターと繋がってる天之内の精神まで焼き払われちゃう! お願い、死なないで天之内! あんたが今ここで倒れたら、はんぺんやヘッポコ丸との約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えればボーボボに勝てるんだから!」

「さーて、次回のボボボーボ・ボーボボは~? 『ボーボボ はじめての全身脱毛!』『ビュティ 関東野菜連合会長就任 ~極道社会統一~』『首領パッチ 豁サ莠。』の3本立てだよ! みんな見てねー!」

「続かないよ!!!? てか最後の文字化け何!!!?」

 

 

 

完。

 

*1
原文:なんだと!? クソッ、鼻毛真拳奥義『江南スタイル』が破れるなんて……一生の不覚!

*2
原文:やだ! 恥ずかしいとこ見られちゃう! もうお嫁にいけないわ! 責任とってよね!

*3
原文:ところてんを食べよう

*4
人参の致死量はだいたい300本



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