またしても何も知らない元スズカの同室ウマ娘 作:一般通過どうした急に
スペシャルと話した次の日からちょっとだけ日常が変わった。私の部屋にちょこちょこスペシャルが居るようになったのだ、まあその辺りは特段どうでも良かったりする。あの子の好きなようにすればいいさ。
だいたい来るのは昼時、授業が終わった後だったりする、カフェテリアで御飯食べるのが大体の流れなんだけど、本人は周りと会話しなきゃいけないような空気と。量を食べたくても食べられないジレンマでストレスになるっぽい
そんなわけで今日も昼時に私の部屋に来た
「…お邪魔します」
「あいよ」
そそくさと部屋に隠れるように入ってくるスペシャルに視線をよこさないまま返事をする。別に気にする必要もないのだが、本人が嫌らしい。特にスズカ絡みで、あいつどんだけ嫌われることしてんねん
「毎回思うんだけど。それだと足りなくない?」
黙々と口を動かしてるスペシャルに視線を向けつつ問いかける、ヒトミミの成人男性よりも遥かに食べるウマ娘にしては、かなり少ない。というか女子高生が食べるのより少ないかも?
「お腹は、空きます。けど…」
「沢山食べるのがウマ娘っぽくて嫌?」
「……はい」
うーん、精神的な問題だからねぇ。会長サマやタマモクロス先輩とかは元々食が細いタイプなんだけど。この子はそうじゃないだろうしなぁ
「でも倒れたりしたら私心配なんだけど」
そう言うとスペシャルはわかりやすく尻尾を垂らしてうなだれる
言われたくないだろうけど言わなきゃだめなんだよー、ごめんよスペシャル
「ごめん、なさい」
「あい、というわけで食え」
ドンってスペシャルの前にお重を叩きつける、何だよその顔は。私がスズカにどれだけ手を焼かされてると思ってるんだ。朝の走り込みで朝ご飯食いそびれてハラヘッターしてくるスズカの腹を満たしてきた私がお重ぐらい作れないとでも思ってるのか
「あの」
「良いから黙って食べろ後輩」
「ええと」
「さっきのごめんなさいは嘘?」
「違い、ます」
「でしょ?…しょうがないなぁ」
なんだかしどろもどろになってるのでじーっと見ながら頬を突っつくと視線を逸らすので強制拿捕。暴れても離さないからなスペシャルよ。膝上に乗せて腕回して逃げられないようにしつつ、口元に卵焼き持ってく。
「ほれ」
「頂きます…」
観念したように口を開けてパクっと食べてムグムグと口を動かす、こうやってるとただのウマ娘なんだけどなぁスペシャルよ。どうして普段はあんなに無愛想なんだお前は。ヒトミミは普通とか言ってたのになんだかヒトミミすら避けてるらしいじゃんよ
「もっと口開けて」
「ん」
ムグムグってして飲み込んだのを見計らってご飯を食べさせていく、なんというか餌付けしてる感覚に襲われるけど実際やってることはそういうことなんだから仕方ない。食べさせれば黙って食べる辺り本来素行は良いんだろうさ。そんなこんなで十数分ひたすら空いた口にご飯放り投げる作業を続ける。不味いとは言われてないので味は大丈夫だろう。
「ん」
次のやつ放り込もうとしたらもう空っぽになってた。すげえ食うなお前、一応念の為に4段作ってきたんだけど全部入っちゃった、本来の食欲がこれだとすると普段食べてたのは1割にも満たないかもしれないな。なんて思ってるとスペシャルの口は空いたままだった、なんだお前まだ食い足りないのか食いしん坊
「もう無いぞ」
「!?」
そういうとスペシャルはびっくりする、そりゃあんだけあったのに無くなるとは思わんよな。口拭きでゴシゴシとスペシャルの口元を綺麗にしてやる、こういうときは決まっておとなしいのでやりやすい。どっかの赤栗毛はイヤイヤしたのにこいつは偉いなぁ。
なんて思えば自然と手が頭に伸びていた。軽く触ると
「っ!?」
めっちゃびっくりされた、あー。ごめんよスペシャル、びっくりさせるつもりはなかったんだ。ただ手癖っていうのはなかなか直らないものでな。たまにドーベルにやってるんだが、それが出てしまったらしい
「あー……ごめん、後輩」
流石にびっくりしてたから仕方ないと思って手をどかそうとすると
「………」
「んー………?」
なんかスペシャルの方から恐る恐る、私の手に頭を触れさせてくる。そのたびにビクッビクッてなってるの見ると私が悪い事してるみたいで嫌なんだがスペシャルよ
「あー……後輩?」
後輩って呼んでも返事しない、それどころか尻尾でペシペシって体叩いてくる、もしかして呼び方が気に入らないのかもしれない?まあ後輩呼びだと誰のことか把握できないからだろうけど。
「……スペシャルウィーク?」
ベジベジ!!
そうじゃねえだろと言わんばかりにもっと強烈に叩いてくる、そんなに叩くんじゃないよスペシャル……んー
「じゃあ……スペシャル?」
ぺしぺし
どうやら正解に近づいたらしい、まああれは呼べないだろうから。別の呼び方なんだろうけど。スペシャルの次かぁ……うーん
「そうか、スペシャル後輩!」
合体させればいいじゃん、私天才か?
ガブっ!!
「いっっっって!?!?」
コイツ先輩の腕噛みやがったぞ!?!?!??!?お前結構野生児なのかスペシャル!?!?!?なんて脳がバグっていれば、噛んだところチロチロって舐めってくる。なんだこのコミュニケーション
ってなると一つしか無いじゃん
「……スペ?」
「……ん」
そう呼ぶと体の力を抜いたスペシャル…いやスペがもたれかかってくる。それってお前の親が呼んでた名前じゃないの?大事なんじゃなかったっけ?うーん分からん。別に私が特段なにかしたわけじゃないしなぁ。
ただスズカに拳骨入れつつ、なんか居づらそうだったから適当に時間が有る時に絡みに行ったり。一緒に飯食ったりしただけなんだけどな、全然大したことしてないし。それはスズカとか。同期の連中とか、後もう…二人か。二人だな、あのイギリスVSアメリカみたいなやつしてるの。そいつらにも同じことしてるんだがな
そんなこんなしてるとスヤスヤとスペが眠りにつく。寝てる顔は死ぬほど可愛いスペ、眉間のシワが取れてあどけない顔をしている、というか普通にしてれば正統派美少女だよなぁスペ。
「ゆっくりおやすみ」
────────
そんなこんなでその日は終わった、その後数十分どころか数時間寝ちゃったので仕方がなくスペを私の部屋の空いてるベッドに寝かしつける。寮長には事情を説明してある、まあ事情が事情だからしかたないっしょ。外泊でもないんだし
やることやって、明日の準備整えて。んでスペの頭軽く撫でてから自分のベッドにはいって眠りにつく────
「んにゅ………」
───はずだったんだけどなぁ
なんかいつの間にか背後から気配感じるなと思ったらスペが私のベッドの方に入って来てた、まじでいつ来たんだお前は。追い出すわけにもいかんから適当に放置しとく
「ん……ん…ぅ………」
そうしてるとスペのやつがめっちゃ抱きついて来る、なんなら頬ずりしてくる。どんだけスキンシップ過多なんだ……いや、違うか。今まで寂しかったんだろうか、緊張の糸が切れた反動なのかもしれない。そんなことを思いつつスペの方を向いておく
「………」
ぎゅって寝間着の裾握りしめて寝てたので此方から軽く抱き寄せるとなんかしがみつかれる。ウマ娘パワーでしがみつかれると流石に私も痛いんだがスペペペペペ
なんて思いつつも好きにさせてやる、寂しさから来るもんだろうし。ま、明日朝起きたら離れてるべ
─────翌朝
そんなことを思ってるときもありました、なんて言わんばかりにスペは引っ付いて離れないまま眠りについてる。何回か名前呼んだりほっぺた突っついても無反応。
このまま登校するわけにも行かないので寮長に電話しとくか
『やあ、おはようポニーちゃん、朝からラブコールかい?』
『おはようございます、フジキセキ寮長。残念ながらラブコールではありません。スペシャルウィークの件でご相談が』
フジキセキ寮長、なんというかこう。あんまり得意じゃない。ムーヴ的な意味で、ペース呑まれるからあまり会話はしたくないんだけどスペのためだから仕方ない
『ああ、彼女か。どうだった様子は?落ち着いてるかい?』
『落ち着き過ぎて今も夢の中ですよ』
『おや、それはいけない』
ハハハと笑うフジキセキ寮長に若干の気疲れを感じる、朝からテンション高いなぁ。なんて思っていると、挨拶も程々にというふうに寮長が切り出してくる
『その様子だと、ポニーちゃんは可愛い後輩の面倒を見るので手一杯、といったところかな?』
『ええ、まあ』
『分かった。私の方から伝えておくよ、彼女は少々事例として特殊さ。これぐらいは便宜をしてあげないとね』
『ありがとうございます』
『代わりになんだけど、後で私とも遊んでくれないかな?ポニーちゃん♪』
『気が向いたら、ですね』
『これは手厳しい…では、今日は一日かけて後輩の面倒を見ておやり』
『はい』
そう言って電話を切る、次の電話かけないと
『もしもし………朝から電話とは、珍しいなセルメント』
『ちょっと事情があるからね。エアグルーヴ』
電話をかけた先はエアグルーヴだ、私が登校しないとなると。あのバカどもが変なことを起こしかねんのだ。特にスズカ、スペも部屋に帰ってきてないからおそらく絶対めんどくさい状況になってるはず。軽くエアグルーヴに事情を話しつつ、服を引っ張ってくるスペをあやして安心させておく
『なるほど、後輩の面倒を見るために欠席か』
『申し訳ない』
『いや、寮長からも伝達済みな案件だ。仕方がないだろう、此方のことは任せておけ』
『ありがと、後で生徒会の仕事手伝うよ』
『悪いな』
『困ったときはお互い様ということで、一つ』
『了解した。ではな』
よーし、これでとりあえずは良いかな。
さて、スペと今日は一日のんびり過ごすかぁ
これ以上は続かない
つづ
-
ける
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けない