陰の実力者ってこれでいいのか? 作:ソフトクリーム
私は、人間としては珍しい腐敗者になってしまい、それにより迫害されていたところをシャドウガーデンという集団に助けられた。助けられた先では、私が置かれていた状況を説明していただき、自分もシャドウガーデンに所属することを決意した。仮に入らなかったとしても、腐敗者の末路は決して碌なものではないため、入らない理由など無かった。
シャドウガーデンとは、我々の主であるシャドウが世界を庭のように過ごせるようにするための集団だ。そのためにはあらゆる力が必要となる。戦闘・商業・産業・経営などを前提に、それぞれ得意なことを見つけ、苦手な物を組織で補い合っていく。そしてシャドウ様を楽しませるために日々精進している。メンバー全員腐敗者の経験があり、同じ境遇であったことと、今までの人生では決して得られることの無かった力が手に入ったため、仲間意識は非常に強い。
腐敗する前は、失明だったり、身体の一部が無くなっている・機能しない者も大勢いたが、七陰の解呪力(シャドウ様が編み出したと七陰は言っていた)は、それを治してくれたのだ。目が見えない者は、目が見えるようになり、耳が聞こえない者は耳が聞こえるように、手や足が無くなっていた者は、手や足が生えて無くなる前と同じように動かすことができるように、消えない火傷や刃物で刺された痕は消えるなど、完全に治ったのだ。
喧嘩することもあるが、それが尾を引くことはなく、ガーデン内では笑顔が絶えることはない。むしろ腐敗前よりもとても楽しい。とても幸せだ。
私はシャドウガーデンのナンバーズの幹部となっている。ナンバーズとは七陰の部下だ。上からシャドウ様、七陰、ナンバーズ(幹部)、ナンバーズとなっている。今ではメンバーは全員で600人を超えている。
ガーデンの拠点はある大きなゴーストタウンだ。そこはとてつもなく強い竜を倒すか説得して通らなければならない。ただ通るだけなら不可能ではないが、その都市には強い毒がかけられており、竜に取り除いてもらわないと死んでしまう。先に来た七陰が竜を説得してすぐに毒を解除して明け渡してくれた。
ちなみに、以前竜にどのように説得されたのかを聞くと、竜は震えて何も言わなかった。肩を叩かれる。後ろを振り向くと、そこにはにっこりしたアルファ様がいた。
ただただ怖かった
腐敗者として追われる時以上の恐怖と不安しかなかった
それから竜にその質問をすることは無かった
竜とは前よりも仲良くしたいと思った
ガーデンの庭には、大きな像が建てられている。黒衣のスライムスーツを着たシャドウ様の像だ。朝になると、シャドウガーデンのほとんどが(任務中でいない場合や、イータ様のような研究者は時々こない)像の前に跪き、目を閉じて、両手を祈るように繋ぐ。
イータ様の話だと、この祈りの力を魔力に変換して、設備の動力源になっているらしい。なんでも感情の振れ幅を利用し生まれたエネルギーを回収すれば、石炭や風力・水力などに頼りすぎることのない、私達がシャドウガーデンである限り、決して尽きることの無い永遠のエネルギーを得ることができるとか。実際どのように作られているのか、一度説明をしていたが、ほとんどの者が最初から何を言っているのか分からなかった。
かろうじてアルファ様・ベータ様・ガンマ様・イプシロン様・ゼータ様、イータ様の部下の研究者はうんうんと唸りながらも理解はしたらしい。自分では実現出来る気がしないとも言っていた。
像だけでなく、動くシャドウ様人形も作り上げた。元々はベータ様のシャドウ様人形を等身大にしていたのを、イータ様が自立できるように肉体を調整し、イプシロン様が聴き手に心地よい響きを持たせるために声の波長や強弱を調整した。
それを見たアルファ様とゼータ様が同時にシャドウ様人形の運用を思いついたらしい。2人は先に自分が思いついたと揉め、かなり場がピリピリしていたとベータ様が教えてくれた。デルタ様が「順番何てどうでもいいのです」というと、七陰の6人が良くないと叫びながらデルタ様を睨んだらしい。
デルタ様はアルファ様におやつを抜きにされて落ち込んでいた
シャドウ様像は、話しかければ答えてくれる、向こうから話しかけてくる、手を触れ合う、抱きしめ合う、一緒にご飯を食べる、一緒にお風呂に入ることもあれば、一緒の布団に入ることも、夜の時間を楽しむこともできる。
ただ、これは誰でも出来るわけではない。七陰の七人は使えるが、ナンバーズ(幹部)とナンバーズは成果を出さないと使えないのだ。しかも一度使うと、ある期間を過ぎるまでは使えない。七陰の話だと中毒性が高すぎて任務どころではなくなるからだそうだ。
アルファ様に聞いた時は、これを作る時はとても大変だったようだ。六人の意見がぶつかり合い、誰も譲り合うことがなく、作っては直すの繰り返しだったらしい。だが同時にとても楽しかったとも言っていた。大好きな人のことを皆で話し合う時間は何よりも楽しいとアルファ様は言っていた。
どんな感じの会話だったかと聞くと、こんな感じだったらしい。
「ちょっとイプシロン! シャドウ様の身体はこんなものじゃないでしょ!? こことか、筋肉がとても綺麗で逞しいのよ! これじゃ黄金比が成立しないじゃない! 馬鹿なの?」
「そういうベータこそ、何この主様の声? 萎えるわ。あのお方の声の波長や強弱に全く分かっていないじゃない! その耳は飾りなのかしら? あぁ、ごめんなさい。必要な養分がある一か所に余計に付いているものね? それに、馬鹿は馬鹿だと気付かないものねぇ~? ごめんなさぁいー」
「ちょっとイータ! なんで主様の性格がこんなにサイコパスなのよ! 主様の性格はこんなのじゃないわ!」
「うるさいガンマ…。ガンマのは…ただのダメ男…。聞く側…養うだけ…。マスター…こんな感じ…。私と…一番…気があうから…つまり…これでいい。私が…マスターの…最愛の…理解者」
「この雌猫! とっととくたばるのです! ボスの戦い方はそんな卑怯な手を使わないのです! 真正面から敵を薙ぎ払うのです! デルタは見たのです! 大きな力で全てを消し飛ばしたのです!」
「うるさい馬鹿犬。主の洗練された戦い方を見ないでどこを見ている? その目は飾りかな? あの剣で舞うように戦う姿は、他の何にも替えることの出来ない唯一のものだよ。分かったかな、わんちゃん?」
ああだこうだ がやがや わーわー
がしゃがしゃ どっかーん バリバリ
グサッグサッ バコッバコッ パリンパリン
アルファ様は特に6人と言い争っていないようだ。ゼータ様が、「アルファ…なんか高みの見物してるんだよね…なんか気に食わないなー。しかも抜け駆けしやがって…」と1人ボソッと呟いていたのを聞いてしまったが、私は何も聞こえなかったので、何も問題ない。
私は七陰の皆さんがそんな楽しそうに会話をしているところは見たことがありません。そもそも七陰の全員が揃っているところに私がいることなど、本当に数少ない。あるとしたら、初めてシャドウガーデンに所属して挨拶するときくらいです。
任務を続けているとある教団の話になりました。ディアボロス教団。魔人ディアボロスの復活を目論む集団で、もし復活したなら巨大な力を手に入れることが出来るらしい。永遠の命ができるかもしれないそうだ。
腐敗者を排除するのは、腐敗者達が英雄の血族である可能性が高いため、自分達の目論みを邪魔される恐れがあるからだ。
それは好都合な話だった。奴らを追えば、更に腐敗者を保護して人員を強化できるし、助けることもできる。そして何より巨大な力をつけてしまえば、シャドウガーデンの目的も達成しやすくなる。
シャドウ様を永遠にすることができる。
シャドウ様を永遠にすることは七陰も、ナンバーズ(幹部)も、ナンバーズ全会一致で賛成した。
ただ見逃せない問題もあった
それはその教団の被害者になる者達だ。腐敗者はもちろん、人を攻撃したことのない、ごくごく一般的な生活を送っている者達が生贄になるのは我々も望んでいない。だから、生贄はこちらで選ぶことにした。
アルファ様は、部下の育成とシャドウガーデンにとって有益な動きを考えるため、生贄候補は他の七陰6人に全面的に任せた。
ベータ様は、小説家として新聞社と深く関わりがあった。新聞社には、報道されていないだけで、隠された悪事が沢山ある。そこから生贄を見繕ったのを5人に伝えた。
デルタ様は、縄張りに入ってきた動物を眷属にした。命令違反は躊躇いなく生贄にした。従順なら餌を適度に与えた。餌はゼータ様から貰ったものを使った。
ガンマ様は金融に深く関わりがあるため、悪さをした生贄の雀の涙ほど残している財産を徹底的に奪う。賭場などで汚い金を綺麗な金にして上手い具合に活用している時もあった。
イプシロン様は、心から音楽を楽しまない人達が金儲けなどで音楽を利用しようとする者達を自身の演奏で夢中にさせて、審査をして通った者を生贄にした。審査を通らなかった者には何もしなかった。
ゼータ様は、盗賊を徹底的に捕獲して、他で悪事をしている奴を襲わせた。死ぬならそれでいいし、死なないで仕事をしてくれるなら自警団にさしだして懸賞金を貰う。そして懸賞金を貰った後に、そいつらを逃がしてまた懸賞金がかかるならそれで捕獲してと繰り返す。懸賞金が出ないなら、適当にその辺に放置して、襲った奴がいるならそいつを生贄にした。襲った奴が刑務所から出るたびに生贄を作り、もうそれが襲われることがないならそれの臓器を売った。死体でも猛獣の餌になるため、縄張りに放り投げて、それを食している猛獣を生贄にした。時々量が多いからデルタ様に渡していた。
イータ様は、シャドウガーデン全体の連絡手段を用意した。いくら、沢山の生贄を用意しても、状況次第では表にシャドウガーデンの存在を知られる可能性があるため、それを防ぐために用意した連絡手段である手のひらサイズの四角い板が作られた。この四角い板にある波長と強弱を使い分けることで、それぞれの板を通して会話をすることができるようだ。作られた板は沢山あり、それぞれ、別の強弱と波長が設定されている。これを利用し、自分と相手との魔力を通じて声を通す道具のようだ。あらかじめ設定されているため、イプシロン様のような魔力の扱いに長けていなくても、使える代物である。ただ、それなりに魔力の扱いが出来る人ではないと使えないため、使用者は限られるものの、魔力を通して使えば、距離があっても使える画期的な発明だった。
我々の望む部分は教団の補助をしつつ、望まない部分は邪魔をした。望む部分の生贄を良い感じに用意するのは少し大変だった。失敗しても、アルファ様の指示により全て巻き返せた。
そうして組織の力をつけていくと、ある事件が起きる。なんと教団がシャドウ様の実姉に手を出したのだ。シャドウガーデンとしては、実姉はどうでもいいのだが、シャドウ様が落ち込むのはなんとしてもどうにかしなければならない。シャドウ様に世界を自分の庭にしてもらうのだから、ここは私達が頑張らないといけない場面だ。
シャドウ様のお手を煩わせることなく、ガーデンの戦闘組が殲滅することに。教団が動いたお陰で、潰したい部分のほとんどが表れてくれた。確実に潰すため、なんと七陰全員が戦闘に参加するらしい。
アルファ様とガンマ様の指示により、各員配置について戦闘開始。殲滅が終わった祝勝会では、七陰の七人についての話になった。とても強かったらしい。私はナンバーズ全体の補助に回っていたため、詳しいことは知らなかったが、それぞれの七陰についていったナンバーズが教えてくれた。
「誰を敵に回したのか分かっているのかしら? 悪いけどあなた達はここで潰れてちょうだい。その方が世界のためよ」
「弱きになっちゃだめよ。私はただついていくだけじゃない。一撃で倒す!」
「喜ぶのです! お前達は選ばれたのです!くたばれなのです!」
「借金返してもらいます!」
「初めてあんな熱い気持ちを込めて演奏してくれた主様のお役に立てるように証明するの!」
「主の邪魔をするやつはぶっつぶす」
「お前達…被検体…人権…ない」
ナンバーズはうっとりとした様子で、七陰のことを話していた。みんなキャーキャーと黄色い歓声を上げている。私もキャーキャー叫び、誰のセリフに心打たれたか論議もした。
とても楽しかった。
こうして今もシャドウ様のお役に立てるように皆日々精進しています
これから任務だ
この続きはまたいつか書こう
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