ホロライブ・ザ・リング   作:坩堝の騎士王

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〜先の戦闘を終えてここから先はネロの使命の一端……


そして始まる大波乱の幕開け……


〜彼方より来るもの〜

 

〜アリーナ〜

 

ネロは地面に胡座をかきながら、セシリアの奮闘ぶりを見る。

かなりの集中力を要するのか其の表情は苦しげではあったが、彼女が研ぎあげた牙のお披露目を阻害するのは申し訳ないために遠くで傍観することにしたのだ。そこに迫る足音……

 

「はぁー……はぁー…ようやく抜け出せたぞ貴様ァ…」

 

『ほぉう…あの氷塊から抜け出したか…わざと密度の低い凍らせ方をしたからな…あれくらいなら抜け出せるか』

 

その足音の方向に目を向けると、[フェルン・フリーレン]から抜け出したラウラが息を切らせながら立っていた……のだが、[シュヴァルツァ・レーゲン]の各部位には氷が張り付いており、右足に至ってはそのまま削り出してきましたと言わんばかりの氷塊が付着していた。

 

「貴様……真面目に戦う気は無いのか!!」

 

『真面目…ねぇ……真面目だが?…あぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…』

 

やっぱりあの世界の常識に呑まれてるネロ。一般にまで魔法体系が入り込み存在全てに神秘が深く染み込んでる世界と、科学を盲信している世界とでは致命的にまで反りが合わない事が有る。

 

その点、[レインボーアース]の天空都市エデンは魔法と化学の相互理解による躍進を題目にするだけはあると、思考の片隅に置きながら目の前でギャアギャア喚く奴をどうしようかと考える。

無論、自分は頭が足りないと遠回しに言われ、ラウラの顔は怒り心頭である。其れこそがネロの狙い……彼女(セシリア)の邪魔にならない様に自ら囮を引き受け、負担を減らす序に、ロラン達の仇討ちをする為でもある。

 

「このっ!」

 

ラウラが腕のブレードを振るったその瞬間に、

 

[カーリアの返報]!!』

 

ーガァン!!

[騎士盾]を振るい、攻撃を弾き相手の体幹を崩す……所詮、[パリィ]が炸裂した。タイミングと歴戦の勘、人類最古のセンサーである[目]を頼りにするその技は見事に決まると、相手に致命の攻撃を叩き込むことが出来る絶好の機会になる。

 

……先に言うが、コレは[試合]だ…故に致命の一撃を取る事が出来ない、

だからこそやることは1つ……

 

『(щ(・д・´щ)コイヤ)…その程度か?』

 

挑発である。丁寧な仕草と共に、煽り言葉も混ぜた其れは絶大な効果があったようだ。

ソレと同時にネロは後ろへステップを取り、セシリア達の方から離れて行く。ラウラはそれに気付かず頭に血が上っているのか、ネロ目掛けて直進していく。

周囲からは見えないが鎧兜の下の表情は、途轍も無い位ほくそ笑んでいるのが伺い知れる。

 

……戦況というものは、予期せぬ形で変化する…故にその対応力が求められる。

 

突如としてセシリア達の試合を見守っていた観客達から、悲鳴にも似た喧騒が起こる。そして血の匂いが漂ってきた瞬間、ネロはラウラの腹目掛けて、[騎士盾]の打撃を直撃させ其の魔術を発動させた。

 

ー[輝石の大礫]

 

「ッッッ……グッオェェェェ」

 

零レンジで放たれた礫の砲弾は、衝撃砲も引くレベルの衝撃と重撃を伴って三半規管の殆どに大ダメージを与える。ラウラはその一撃に耐えきれず、胃の中身をぶちまけてその場に蹲る。そしてネロはその身を翻し、セシリアの元へ走り去って行った。

 

……当然の如く、ラウラはその場に放置だ。

 

「貴様ァァァァァ!!!!」

 

ラウラの怒号は、まともに相手してくれなかった事、そして自分を見てもいないという怒りが入っていたが、そんな事はネロにとっては知った事では無い。

 

〜セシリアside〜

 

異変は唐突に訪れる。

 

「……ゴフッ!」

 

セシリアが突然の吐血。

セシリアが編み出した戦法は()()()()()()()()()()()に左右される。セシリアはこの日まで寝る間を惜しんで修練を続けた、其の結果が身を結んだと言えばいいが、()()()()()されており限界に達していた。その疲労が今、最悪のタイミングでセシリアに影響を及ぼす。

 

「(……そんなッッ…私はまだッッ)」

 

この状況で足掻こうとするセシリア……だが目からは血が滲み、耳や鼻からも血が滴る。これ以上の活動は死に瀕するとセシリアの()()が告げているのだ。

 

……其の状況を目の前の天才が見逃す訳が無い。

すぐ様、ワンオフアビリティである[零落白夜]を起動させセシリアに切り掛る。

今のセシリアは脳にかかった負荷と身体に蓄積した疲労のお陰でろくに動けない。

余裕でトドメを刺すことが出来るだろう。

 

「所詮、凡人がいくら足掻いた所で無駄なんだよぉぉぉ!!!」

 

「(何かっ…このピンチを脱する手は…!!有りましたわ!)」

 

 

セシリアはこの状況を公転させる策を探していた。まだ血のにじむ視界を駆使し探し続け()()()()

織斑秋也の背後に浮かぶソードビットを……

 

其のソードビットに手を伸ばす。

織斑秋也はその行為を無意味だと笑い飛ばすが、セシリアは其の儘そのビットに指令を出した。

 

〜((……剣ならばッッ…貴方の役目を果たしなさいっっ!!!))

 

刹那、エネルギーの全てを限界まで推進力に回したソードビットが背後から襲来。

其れに織斑秋也が気付くがもう遅い。

 

ードギャァァァンンンン!!

 

「……グッうぁぁぁぁ!!!」

 

ソードビットが、穿ったのは背部のウイングユニットの右側のみだった。

が、穿ったのがスラスター部分というのもあり、[白式]の機動力を低下させることに成功、更に破損したスラスターから火花が零れ誘爆。

背部で強烈な爆発が起こり、ウイングユニットの右部分は大きく破損し、黒煙を吹き上げる。

 

「クソがァァァ!!この凡人風情がァァァァ」

 

激昂し、頭に血の昇った織斑秋也が[零落白夜]を振り下ろそうとする。

シールドエネルギーが生命維持に回されエネルギーシールドが薄い今、その凶刃はセシリアの命を確実に絶つだろう。観客席から悲鳴が上がり[サラ・ウェルキン]は織斑秋也に罵倒にも似た何かを口走るがそんな言葉は聞こえもしない。

 

「(お父様、お母様…セシリアも今そちらに参りますわ……)」

 

覚悟を決めたかのように目を閉じるセシリアだが、

突如、その身を包む()()()()()()()()()()の気配に気付いた。

其れは錯覚だったのかもしれないし、或いはそう感じたのかもしれない。

それを予感したセシリアは閉じた目を開き目の前の織斑秋也をはっきりと、意思の宿った瞳で睨み付けた。

 

「ッッッッ!!!!」

 

一瞬気圧された織斑秋也……そんな事は無い凡人に臆するなどあってはならないとばかりに振り払うが、その一瞬に、背後から蒼光色の斬撃と共にネロが躍り出る。

 

『…[Stellar Stellar!]

 

星が尾を引く様に放たれたその斬撃は背中の無事だったウイングユニットを裂き更に、横に体制を変え放たれた二撃目が脇腹に直撃し、織斑秋也を悲鳴をあげる間もなく遠くに吹き飛ばした。

銀の残光を残すその斬撃は一撃目と二撃目が合わさり、さながら天球儀のようにも見えたのだ。

 

「……綺麗……」

 

観客席の誰かがボソッと呟いた。

 

この場において死力を尽くし、今にも意識を失いそうなセシリアに、神は微笑んだ。

 

『…無事か?…』

 

「大丈夫ですわ…ですが…もはやエネルギーがありません…やれるだけの事はやり切りました。…不躾ながら、貴方に託しても…宜しいでしょうか?」

 

余裕そうに此方を見下す織斑秋也の隣に、漸く復帰したラウラが立つ。

ネロはその2人とセシリアを交互に見ながら、こう言った。

 

『…任された!寸分の狂いも無い勝利を土産にしてやろう…』

 

……その言葉は、この場に居る者たちからすれば、勝てるから大丈夫だと宣言した様なものだ。当然、それを真っ向から言われた二人は頭に血が上ったのか、罵倒や罵声をネロに向かって浴びせる。

それに対しネロは……

 

『…所詮は獣か……人の言葉も解さんとは……』

 

興味もなくしたかのように吐き捨てたネロに対し、二人の怒りは頂点を越え…各々の得物を手に向かって来た。

ネロはそのままセシリアの元から離れながら、ある魔術の準備を始めた。

……そして一定の距離が取れた事で其の魔術を発動させた。

 

ー『詠唱破棄、みこめっと…』

 

タクトモードの[羽根ペン]を指揮棒の様に振るった瞬間、

直径はちょっとした大岩程度だが燃え盛る星が降って来た。

其れは2人の前に轟音と熱波を散らしながら着弾。

余りの暑さに顔を背けてしまった2人は、ネロの取った構えに気づくのが遅れてしまった。

 

……ネロが捻りを加えて、跳躍…ほんの暫く、滞空した途端……

 

【彗星乱舞】

 

青白い線を描き、まるで踊るかのように跳躍と旋回、そして斬撃を加えて行く。

ーその戦技は、【彗星乱舞】星の姫足る[星街すいせい]が持つダンスを織り交ぜた乱舞…

 

踊る様な優雅なステップとは裏腹に、吹き荒ぶは斬撃の嵐。

[星]の魔力を纏った其の斬撃は防御を貫通する程の力だが、抑え目にしていた為2人の機体を切り刻み、身体の各所に殴打の跡を残すに留まった。

 

 

ービーーーーー

 

【勝者:ネロ・フェネクス:セシリア・オルコットペア】

 

……ワァァァァァァ!!!!!!

 

「か…勝ちましたわ!!」

 

『ほれ見ろ!、寸分の狂いも無い勝利を約束すると言っただろ?』

 

セシリアと勝利の喜びを分かち合うネロを睨みつける2人だが突如として2人以外の時間が止まる。

地面から滲み出てきた影は人の形を取り、倒れ伏したラウラに問い掛ける。

 

『力、欲しくなぁい?…』

 

「……っっ…貴様はっ……誰…だ…」

 

ネロが気付いたら即座に切り掛る程に禍々しい気配を放つソレは優しくひそひそとラウラに悪魔の取引をもちかける。

 

ソレはラウラに耳打ちでとある事を伝え、更にISに細工を施し終えると其れの存在は水に溶けるインクのように消える。と同時に、観客達から悲鳴が迸る。

 

『ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

始めにラウラの状態に気付いたのはネロだったが、目の前に迫った触手に思い切り弾き飛ばされる。

 

「なっ…ネロ様!!……何なんですの……っっ?!」

 

セシリアは目の前の惨状に絶句する。

そこに居たのはドロドロに溶けたISに取り込まれながら、腕を6本に増殖させ大型の獣の様な体躯、…顔が異形に変異しかけたラウラだったモノ…。

 

知るものは今や居ないが、ソレは邪神の様なナニカ…………其れがセシリアに噛み付こうと飛びかかった瞬間……

 

(しょう)!!!!』

 

ネロが吹き飛ばされた方角から飛んで来た鬼火が、崩れかかったバケモノを弾き飛ばす。

 

『?!?!?!?!…*○・*€+÷×><°!!!』

 

瓦礫をおしのけながら、ネロが出て来る。その手に煌びやかに光を零す羽根を携えて……

実況席では堰を切ったような大騒ぎを呈していた。

 

『なっ!なっ!なっ……何ですかぁアレ!?』

 

『解らんっっ!!山田君!!避難警報だ!!!』

 

『はっ……はいっっ!!!』

 

……ゥゥゥウウウウウウウゥゥゥゥゥゥ……

 

緊急避難の報せが鳴り響くが、生徒や来賓の方達はドイツの代表候補生がおぞましいを越えたナニカに成り果てた異様さにただただ動けずにいた。

 

そしてアリーナでは、6本腕の異形と化したラウラがアリーナに残った三人…正確には、ネロ・フェネクスのみを睨みつける。

 

『グルルルル……ギョォァァァァ……』

 

『セシリア……動くなよ…護れなくなる…』

 

「はっ!はい……」

 

羽根を消したネロは両手で剣の柄を握る仕草をする。足元の方陣から湧き出た星雲と澄んだ純氷が剣の形をとる。そしてその氷剣の柄を握り締めた瞬間……氷が砕け彗輝石の大剣が姿を現した。

 

ー[星月夜の大剣]ー

 

シンプルながらもこの世のものでは無い美しさが溢れ出す大剣を振り回して構え……臨戦態勢を整える。

会場は凄まじくビリビリと張り詰めた空気に圧倒されかけていた。

 

 

 

……続く!……

 

 

 





ー[星月夜の大剣]ー

……エーテルの塊たる、隕鉄を鍛えながら夜と星の魔力を注ぎ込み、完成させた星空と雪化粧の配合が美しい大剣。
…斬撃は冷気を伴い、魔力を込めれば斬撃が流星のように尾を引き炸裂するだろう…
[星の王]は二振りの大剣を携え創造の神の婿となった。

虹が陽を運び、月が夜を産む……
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