主神・[二階堂ふみ]を戴く人・神・魔が息づく古都
春は桜、夏は緑、秋は紅葉、冬は銀世界といった様々な景色を魅せる為に観光資源が潤沢である。
他の国には無い風味豊かな食事、彩り豊かな織物、職人の作るカラクリ細工…文化を重んじ礼節を踏まえる彼等は日々を逞しく生きている。
〜【桜魔皇国】・戌の刻〜
「久方ぶりに来ました!桜魔ァァァァ!!!!」
「テンション高いな…一夏は…しかし、まるで京都に来ているみたいだ…」
「此処が日ノ本の古の古都"京"なのか!"雅"で良い場所ではないか!!」
ー((("京"?…"京"って何だ?此処は【桜魔】なんだぞ?……"雅"?うちの主神様見たら消し飛ぶぞ?)))
と住人達からはツッコミが飛んできそうだ。
千冬達は、お祭りがあるとは知っていたが、ここまで活気に湧いているとは思ってなかった。
「…ん?お客さんかな?〜"外の人"の匂いがするぞ〜」
「!!ッッッ〜〜〜!!!!」
「「「…だ、誰?…」」」
「お〜!ちーちゃんの背後を取った!この子強いね〜」
何時の間にか千冬の背後に現れたのは、鴉天狗の少女[山神カルタ]。束は、仮にも人類最強の背後を取ったという事実に興味深そうにしている。
少し興味を引くような言葉を言ったのは気になるが、その少女の頭を扇子が叩いた。
「これ…"異邦人"達がびっくりしておるではないか…[カルタ]よ…」
「いきなり叩くのは非道いですよー[フミ]様〜」
鴉天狗を叩いたのは、巫女服に身を包んだ狼の女性[二階堂フミ]其の姿を見見た住人達は一斉に傅く。彼女は【桜魔皇国】の主神…故にこの対応にも手馴れたものである。
「…主ら、"暗月の騎士"の身内と学友じゃろ?あの者なら決闘祭りの音頭の為に会場に行きおったぞ?…ほれ[カルタ]案内をしてやらぬか!」
「え〜……何で"私"が…( ー̀εー́ )……」
「…彼奴と"逢い引き"できるように取り計らうぞ?どうじゃ?」
「よーし!この"山神カルタ"に任せなさい!」
やけに現金な鴉天狗ではあるが、素直に会場へと案内をしてくれていた。
その会場に入ると容姿が様々な異種族が男女関係なく、決闘の準備をしていた。中には、"龍"や"鬼"とも取れる特徴を持った者達もいた。
そして…来賓用の応援席に通された千冬達は、衆目の視線を集めていることに気付いた。先程こちらに辿り着くまでにかなりの視線に晒されるが其れは[山神カルタ]に向けられたものがほとんどである。だが、メディア対応の回数がかなり多い代表候補生達とはいえ、クーリェは織斑千冬の後ろに隠れロランも乱音も箒も視線に怯んでしまう。然し、束と千冬は気付いた。こちらを見つめる多くの視線が、興味だけでなく、闘争心や奇異の目で見つめていることに……
「おぉ"カルタ"様だ…」
「あの"異邦人"達は誰だ?」
「何でも"暗月の騎士"の姉とご学友達だそうだ…」
そんな視線が初めてであった代表候補生達は萎縮すると同時に目の前の戦士達に憧れを抱いていた。
そんな最中[カルタ]の元に1人の龍人がやって来た。
「カルタ?その子達は誰じゃ?」
「あ…"ドーラ"……さん…」
現れたのは、紅蓮の天角、赫灼の龍翼、マグマの様な色味の鱗を纏い、脈打つ焔を迸らせた、
[真龍]の一体…通称"ドーラ"と呼ばれる存在だ。
「ドーラさんは…出ないんですか?」
「なんじゃ急に………出ぬよ…ワシはな?…」
[レインボーアース]に存在する[ウルガ火山]を統括する[竜]達の大ボス足る彼女はおいそれと姿を晒さない。晒す時は、[宝]に手を出す愚か者を燃やす時か、[家族]に手を出す痴れ者を溶かす時だけだ。
「あ!紹介するね♪この方は[真龍・ドーラ]さん…[龍]何だけど…私達とは…バチバチに仲が悪いです…( ・᷄ὢ・᷅ )」
「主らが勝手に突っかかって、勝手に全滅しただけじゃ!そもそも、主らが喧嘩を打ってきたのがきっかけじゃからワシは其れを買っただけじゃ!!」
[龍]らしいと言えばらしいのだが、目の前の鴉天狗より明らかに格上の龍に挑んでよく生きてたなとカルタの方を驚愕の目で見つめる。
「よく来たな!!戦士達よ!!!!」
拡声器は無いにも関わらず凄まじい声量が闘技場の中心より響き渡り、そしてその中心に何かが降ってきた。だが、魔術を行使していたのか、衝撃は出ず、音も立てず静かに、降り立ったその影を見て、会場の熱気は最高潮だった。
その影とは一夏であり今の格好は細身ながらも鍛え抜かれた筋肉質の身体を晒しズボンと靴を履き、セスタスを両手に填めていた。
「クハハハハ!!すげぇ歓声だな!!お前ら!!御託は抜きにして…殴りあおうぜぇぇぇぇ!!!」
「「「オォォォォ!!!!!」」」
その光景を見た千冬や束は懐かしむと同時に感嘆の息が漏れていた。
変わって、代表候補生達はその光景に圧倒されていた。アレが出来損ないと呼ばれていた者か??アレは、落ちこぼれや出来損ない等では断じて無い。御伽噺に出てくる"英雄"そのもの。あの世界に居るひと握りの強者でさえ、一蹴出来るほどの存在だと認めるしか無い。
「…(´;д;`)…一夏…本当に…強くなったなぁ…」
「……ちーちゃん…良かったね♪」
闘技場の中心で、男女関係無く集まった戦士達に揉みくちゃにされている、一夏は、この世界の皆から圧倒的に信頼されていると一目でわかってしまう。
ー大会は順調に進み、その中の1戦が凄まじい熱狂の渦に包まれていた。
その一戦は嘗て誰もが見ることのなかった
その光景に誰もが息を飲み、そして魅了されていた。
血湧き肉躍る殴り合いは、会場を熱狂の渦に包み込み凄まじい叫びとなり響き渡った。
「オルァァ!!!」
「ぜりゃぁぁぁ!!!」
一夏より小柄に見える"鬼"族の女王足る"竜胆尊"が拳を、腕を振るう度に暴風が吹き荒れる。ソレを躱しながら一夏は、細腕とは思えぬ程の一撃を放ち、女王を吹き飛ばした…が、それでも"鬼"は倒れない。
寧ろ、まだまだ打ってこいとばかりに距離を詰めていく。
"鬼"の一撃は重い。力を尊ぶ"鬼"達にとって、女王とは"強さ"の頂点。
その拳を受ければ無事では済まない為、時に躱し、時に受け流しながら…
「行け…一夏!」
「竜胆様!…"鬼"の本気魅せてくだせぇ!!!」
「やれぇ!顎を狙え!顎だァ!!!」
ー月の騎士と鬼の女王。英雄と英雄の闘いとは、いつの世も人を惹きつけるものだ。この[決闘祭り]はまだ見ぬ戦士達が己の力を見せる場でもあり、自身にとってのライバルを見つける絶好の機会でもある。故に、若き戦士達は羨み、そして渇望する。
ー(あぁ!…私は何故あの場に居ない!!)
ー(凄い…これが神話の闘い!…戦いたい!あの"英雄"達と!)
ー(…私だって…何時か、あの"英雄"とっ………!)
あと一撃でも直撃を貰えば負けかねない一夏。内功と連打により着実にダメージを負っている竜胆尊。どちらが敗けるかは天にも分からない。
小細工無しの純粋な力と力のぶつかり合いがここにある。
"英雄"の"神話"の再現となるであろう闘いが此処にある。
「ハハハハッッッ!!!誠に、愉しいでは無いか!"一夏"よっ!」
「全くもって!その通り!!」
ー(さっきから、拳速が上がってやがる!早めにいかんとマズイな……)
ー(何じゃ?何か企んどるのぉ……成功する前に押し切れば良いのじゃ!!)
セスタスとはいえ、"鬼"の膂力は振るうだけでも風を生む。女王ともなれば尚更である。故に、一夏はひたすらに打って打って打ちまくるのは当たり前だが、"鬼"は"掴み"にも警戒しなければならない。何せ、"掴まれる"と最後、その握力により砕け散ってしまう。
ー(早めにケリつけたいな!………南無三!)
ー(む?大振りの右…ならば!)
「なっ!しまった!!」
「……ふふっ♡…"掴んだぞ"?………"乱れ牡丹"……」
\\\バギュッッ///
一夏の右ストレートを掴んだ"竜胆尊"はその拳を優しく握り込み、そして、握力のままに、握り潰した。
「〜〜ガァァァァ!!!!!!…フーッッ…フーッッ…"捉えたぞ"!…」
ー(マズイ!!!…一刻も早く距離をッッ!!何じゃと!!)
「…確実にぶち込む為に…この瞬間にッッ!…全てをッッ!!」
「ほう!来るが良い!!"人の子"よ!!」
自分の右腕を躊躇なく差し出し、竜胆尊が己の間合いに踏み込んでくるのを待ち構えていた一夏の左拳が翡翠に輝き、螺旋の渦となってうねり始める。
其れは[岩石発破]と呼ばれる魔術を一夏が簡略化し、セスタスに付けた専用戦技[螺旋拳]と呼ばれる。
更に距離を取ろうとする"竜胆尊"の足を踏みつけ、回避を封じた状態で、その拳閃は放たれた。
一瞬の爆音の後に、煙が会場を覆い尽くす。
そして煙が晴れた時、見えた光景は、組み合う形で一夏の左拳が翡翠の残光と共に"竜胆尊"の鳩尾にくい込んでいる光景だった。
「ふ…ふふっ……見事じゃな…人の子よ……」
「……俺の……勝ちだ!」
膝をつき倒れたのは"鬼の女王"・"竜胆尊"であった。
それに対し一夏は翡翠に輝く左手を天に掲げニッと笑った。
『猛り咲くこの勝負!"人"と"鬼"!!己の力を最大に振るい…この勝負を制したのは……"暗月の騎士"!!!"織斑ぁぁ…一夏ぁぁぁ"!!!!!』
「「「ォォォォォ!!!!!」」」
ふらつく体に喝を入れ、闘技場を後にする一夏。
"竜胆の四股踏み"や"螺・旋・拳"により抉れきった闘技場は、修復が聞くとはいえ、本日は延期になるらしい。
当日の興奮冷めやらぬまま、闘技は明日へと持ち越しになった。
〜翌日〜
「「「「「「ドクターストップゥゥゥ????」」」」」」
「うん…主に
とある聖女、シスター・クレアなる人物に思い切り怒られて、出場を停止された一夏。握り潰されていた右手は、まるで
尚、一夏が出ないとはいえ祭りは続いており………
今回の目玉は、[相羽ういは]と[チャイカ・ヘルエスタ]というどんな上位種でも、名を聞くと顔を顰める強者2名の激突だとカルタは言っていた。
「また帰ってきたのかよ…あのオッサン…」
「何でも、筋肉に磨きがかかった!…とか言ってた…」
「まだ強くなる気かよ!?…」
一夏も知っているその男は誰なのか?と聞きたくなったが、それ以前に、件の山神カルタという鴉天狗が一夏に身体を預けるように持たれているのに非常に気になった。というか、それを気にしていない一夏もアレだが…ふと一夏の方を見ると、何やら羊皮紙の束とにらめっこしているではないか。
「一夏?何をしているのだ?」
「ん?…あぁ"のどか"から送られてきた書類…えぇと何何……[闘蛇]の繁殖期……百鬼組の鬼達に討伐依頼出すか…肉は丁度良いツマミになるだろうし…」
…何やら[闘蛇]と呼ばれる生物の繁殖期らしく、討伐を百鬼組?に任せるようだ。きちんと羊皮紙に目を通し案を探す…事務作業も出来るらしい。
「お次は……夜空メルかぁ…[吸血…していい?]……見なかったことにしよう!」
一夏はかつてであった夜空メル?という奴が苦手らしい。一夏曰く、自身の血は、特別に美味しいらしく前に1度瀕死ギリギリまで吸い尽くされたことがあるらしい。そして"篝火"で蘇るという事を知られてしまった…そこからの悲劇はお察し願う。
「で、次は……………
書類と格闘している一夏を尻目にカルタは、一夏の客人達を引連れて【桜魔皇国】を見て回ることにした。恋をしてるとはいえ、想い人の邪魔はしないのが彼女のスタンスらしい。
そしてその部屋には羊皮紙を捲る音と書き込む羽根ペンの規則正しいリズムが聞こえていた。
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……日暮れ……
決闘祭りが終わり…街の住人達は備え付けてある提灯を灯し松明を焚き、街を橙色の灯りが照らし出す。これより行われるは【桜魔皇国】で代々行われる[残響神楽]…今年は[龍巫女・天宮こころ]が神事を執り行う。
事務作業を終わらせ、館の外へ出ると同時に
[カーリア騎士]の鎧1式に身を包んだ一夏は、橙色の灯りが煌々と照らす街へと躍り出た。
〜[春風の依頼]〜
[ホロアース]に居る[春先のどか]が送って来る洒落た刺繍の施された手紙
繰り返す時間の中で幾度も見たその刺繍は受取人の安全と必勝を願っているらしい。
見た目は華奢な手紙だが内容は…血生臭い…
(※元ネタ・火山岩の手紙)