音楽はいいね。リリンが生み出した文化の極みだよ。

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第壱話 台風、襲来

 未曾有の大災害「セカンドインパクト」の発生によって、人類は地球の総人口の半数を失った。世界中が復興を急ぐ中、日本臨時政府は壊滅した下北の再建を断念。次期首都と称し、対「使徒」迎撃要塞都市・第3新下北市の建設を推し進める。同市の地下に広がる巨大なジオフロント。その中に、特務機関STARRYのライブハウスは存在した。

 結束バンドの3人目のメンバー――サードチルドレンとして召集を受けた喜多シンジは、そこでゲンドウと3年ぶりの対面を果たしていた。

 

「シンジ、ギターボーカルをやれ」

「無理だよごとうさん! そんなこと、出来るわけないよ!」

 

 喜多シンジの叫びを前に、後藤ゲンドウはサングラスを怪しく光らせた。

 

「やるなら早くしろ。でなければ、帰れ」

「ひどいよ……せっかく来たのに、そんなのってないよ! ギターなんて、この木の棒、飾りかと思ってたくらいなのに! こんなの弾けるわけないよぉっ!」

 

 喜多シンジの言葉を聞いて、何を思うのか。サングラスで隠された後藤ゲンドウの表情を窺い知ることは出来ない。

 

「……リョウ、予備が使えなくなった。いけるな」

「はい」

 

 草をかじりながら、綾波リョウは短く答える。しかし次の瞬間、彼女は膝をつき、次いでその場に崩れ落ちてしまった。

 

「うっ、うぅっ……!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「しばらく草しか食べてなかったから、力が出ない……」

「なんてこと……!」

 

 綾波リョウを抱き起こしながら、喜多シンジはきつく目を閉じた。

 

「逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……」

 

 再び瞼を開いた時、その目には強い覚悟が宿っていた。

 

「やります。僕がギタボやります」

 

 

♪ざ〜ん〜こ〜くな天使のよう〜に〜

 

 しょ〜う〜ね〜んよ、星座になぁ〜れ〜〜〜〜♪

 

 

 これまでのキタァンゲリオン:

 迫り来るライブの脅威を前に、STARRY本部から逃げ出した喜多シンジ。自己嫌悪にまみれた彼は心を閉ざし、闇の中に逃避する。そんな彼を救ったのは、ギタ男の幻想だった。奇跡の復活を遂げ、再びギタァを握る喜多シンジ。

「あんた逃げたギタァ?」

 ドイツから来日したセカンドチルドレン、伊知地・アスカ・ニジカレーを仲間に加え、結束バンドは再び動き出す。ユニゾン訓練の成果を発揮し、オーディションを無事突破するシンジたち。そんな中、彼らにはさらなるライブの脅威が迫っていた。

 

 

第壱話   

台   

風、襲来

 

 

 遂に迎えたライブ当日。特務機関STARRY本部は、絶望感に包まれていた。

 

「雨雲レーダーに高エネルギー反応。パターン青、台風です!」

「目標、依然として第3新下北市に向かっています! てるてる坊主では歯が立ちません!」

「なんてことだ、化け物め!」

 

 スタッフたちは騒然とする中、ライブの時間は刻一刻と迫る。台風の影響で客の入りは想定の半分以下。そんな状況でも、とうとうライブは始まろうとしていた。

 

「は、はじめまして! 結束バンドです!」

 

 さらに強くなる雨。会場に立ち込める、重苦しい空気。ぎこちないMCは滑り倒し、最悪の雰囲気の中演奏が始まる。オーディションの時のクオリティは嘘のように鳴りを潜め、上手くいかない焦りがさらに演奏をかき乱す。

 

「ギタァの防御システムは!?」

「シグナル、作動しません!」

「フィールド、無展開!」

「……ダメか!」

「40%……30%……! 観客率低下、止まりません!」

「バンド内に亀裂発生!」

「気力がもう、もたない……!」

 

 興味を失ったように立ち去るもの。スマホを弄り出すもの。目の前に突きつけられる現実が、彼らにさらなる絶望を与える。

 

「リズム破綻、損害不明!」

「演奏維持に問題発生!」

「シンクログラフ反転。パルスが逆流しています!」

「シンジくんはっ!?」

「音程安定なし。精神状態不明!」

「観客、完全に沈黙!」

「くっ、ここまでね……!」

 

 想定を超えた惨状を前に、ついに星歌ミサトは作戦中止を決断した。

 

「演奏中止! メンバー保護を最優先、バンドを強制退場させて!」

「ダメです! 完全に制御不能です!」

「なんですって!?」

 

 絶望するスタッフ。重い雰囲気に飲まれたままのMC。誰もが諦めかけた、その時。

 

 ギュゥーーーーン………ギュン…ギュンギュンギュンギュギュギュン!

 

 ――弦の音が、高らかに響く。

 

「ギタァ再起動――弾き始めました!」

「そんなっ、まだMC中よ!? 動けるはずありません!」

「まさか……!」

「……暴走っ!?」

 

 驚くスタッフたち。対して、廣井コウゾウは静かに呟いた。

 

「――勝ったな」

 

 ギャギャギャギャギャギギャギャギャ!

 

 キレのいいストローク。猫背から繰り出される高速ピッキング。唐突に始まったギターソロは即座に会場の雰囲気を、メンバーの精神を一変させる。

 

「ギタァ、A.T.フィールドを展開! 位相空間を中和していきます!」

「いえ、侵食しているんだわ……!」

「あの雰囲気を意図も簡単に……これがギタァの、本当の力……!」

 

 のちにファンは語る。その夜の演奏は、観客を大いに熱狂させた……と。

 

 

                

                

             つづく

 


 

  

予告

  

 

\ チャーチャラチャーチャラチャラチャチャーチャラーチャー♪ /

 

 台風ライブの成功は始まりに過ぎなかった。謀略の果て、文化祭に挑む喜多シンジたち。一方、追い詰められた後藤ゲンドウは勝率0.00001%の「ボトルネック作戦」を発動する。死線を彷徨う彼らが、絶望のMCの果てに見たものとは――。

 次回、新世紀キタァンゲリオン。

 

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          第拾話

 

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