オラリオに来たけど治安悪くない?   作:のん野のん太郎

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はじまります


第1話

「失礼そこの御仁」

 

 それは刀のように鋭く細い月が雲で隠されたちょうどその時であった。路地裏に通るカモを物色していた冒険者の一団に怯えも諂いも感じない、かなり幼い声がかかる。

 

「あぁん? ……ハッ丁度いい! その荷物置いていきな!」

 

 男たちは意表を突かれながらもようやく現れた獲物に舌なめずりをしながら剣を抜く。

 

「聞きたいことがあるだけなんですが……そうはいかないようですね……」

 

 薄暗闇で襲撃者は1.1M程度の背丈を超える1.5M程の長さの大太刀をゆらりと鞘を投げながら抜き、蒼銀の刀身に男は舌打ちを堪えて警告した。

 

「こっちは5人だ! 怪我したくなけりゃさっさと出すもん出しやがれ!」

 

 しかし襲撃者がそれに応えることはなく、静かに右足を後ろに引いて両の手で持った大太刀を身体に沿うように脱力して構えをとり、退けなくなった男たちは囲むように剣で襲撃者に襲いかかる。

 初撃は当然のように大太刀で流されるが、あらゆる角度からの攻撃は西洋剣特有の幅のある鍔の助けもあって受け流しを阻む。そして数度の衝突の後、流されることなく力比べとなった瞬間にその男は襲撃者の剣の軽さに悟る。

 

「弱ェ……! コイツ冒険者になったばっかだ!」

 

「はッ! なら余裕じゃねェか!」

 

 襲撃者の獲物の迫力から尻込みをしていた男たちだったが、それを機に慢心が見え始める。自分たちはベテランのレベル1を含むパーティで、相手は一般人に毛が生えた程度の力しか持たない。油断するのも仕方がないだろう。

 そして襲撃者が腰を落とし、次の瞬間──

 

「────甘ェ」

 

 ──ヒューマン一人だけを残して目をぐるりと上に向けて路地裏に倒れ伏した。

 その光景に男は腰が引けて座り込んでしまう。

 襲撃者は大太刀を一振りしてから鞘を拾い上げて慣れた手つきで納刀すると、目線を転がる男に向ける。

 

「その足りない脳で考えてから相手を選ぶべきですね」

 

「クソッ! なんなんだよ畜生!」

 

 いつの間にか現れていた月は微かな光で襲撃者の姿を露にし、唯一気絶出来なかった男の目に映る。

 襲撃者は汚れはあるが白と赤の桜が散りばめられた黒い着物に薄い灰色を基調とした白い花亀甲柄の帯を身に纏い、長旅故か穴がいくつか空いた三度笠からは黒髪が窺え、その風体は極東生まれであることを示していた。

 ただそれだけであればただの旅人なのだが、背負っている大太刀と腰に差してある打刀と脇差によってアンバランスな恐ろしさを醸し出している。

 少し脅える男に襲撃者は淡々と告げる。

 

「ゴジョウノ・輝夜という名に聞き覚えは?」

 

「はぁ? クソッ! アストレア・ファミリア様のお仲間志望かよ! なんだって俺に聞くんだよ!?」

 

「……そう」

 

 襲撃者はため息をついてパニックにより大声で喚き始めた男の側頭部を殴打して気絶させた。

 しかし男の声が聞こえたせいか、複数の気配と音が近づいてくる。

 襲撃者は小さく悪態をつきながらも、焦ることなくゆっくりと夜の闇に溶け込んで消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、あまりにも早いネタばらしをすると先程の襲撃者、つまり私の名前はゴジョウノ・葵羽。ここが流行ってた『ダンまち』世界であることを知っているだけの、一般七歳美幼女だ。今世の家で剣術暗殺術体術その他諸々を徹底的に仕込まれて双子の妹と共に千人斬りチャレンジをして成功したが、あくまでも一般美幼女だ。特異なのはノリノリで家に残った妹の方。

 正直ラノベに関しては完結してから一気に読みたい勢だった私はほぼ何も知らない。辛うじて知ってるのは紐の女神が出るってことくらい。

 キン

 まぁそれはさておき、中々締め付けが苦しい家を脱出するためにオラリオからお姉ちゃん(輝夜)を朝廷に連れ戻すって名目で今日着いたのだが……オラリオ治安終わってね? 

 キン

 さっきの奴らも殺す気で来てたし路地裏入って少し探してみれば普通に死体転がってるし、夜になったら大通りであっても安全じゃないとか世紀末がすぎる。

 巡回あるみたいだし、やっぱ終わってるわァ……

 せっかくだからお姉ちゃんと同じファミリアに入れたらなァと思ってお姉ちゃん探し中だったんだけども。

 キン

 

「あぁー居ねェ居ねェ……おっと、どこにも見当たりませんね……」

 

 キン

 何せこのオラリオ、他の街や国と比べても随分と広い。二、三時間しか探してないとはいえぶっちゃけ自力で見つけられる気がしない。

 ダンジョンも含めたらなんて思うと……はァ。

 キン

 昼になったらギルドとやらに行ってみるかァ。

 キキキン

 そうして来た道を振り返ると、かなりの数のアホが倒れ伏している。

 お察しの通り、コイツらは闇夜に乗じて幼女を襲おうとするへんたいふしんしゃさんだ。イエスロリータノータッチを守れない粛清対象。前世なら吊るし上げられて原型がわからなくなるほどボコられていただろう。

 前世といってもそういうネットミームだとか語彙くらいしか覚えてないんだけども。あと人格が少し大人びたくらいか? 

 何はともあれこのへんたいふしんしゃさんの数はいただけない。正直キリがないし倒れてるヤツの金品漁ってるヤツもいるしでマジ地獄。

 

 

 いい加減辟易してきた為ひとつ溜息をついてから屋根に登って屋根伝いに走って寝床を探索。狙い目は辿り着きづらいような高くなってる場所か、見つけづらい場所。

 くねくねと走り回っていると数分で孤島となっている大きめの建物を見つけた。中庭のある大豪邸で、ここまで堂々とした家かつ立地ならば悪の権化の拠点ということもあるまい。

 そこに狙いを定めて長めの助走をつけて鉤縄を使い、振り子の要領で大跳躍。腹を屋根の端に強かに打ち付けたが強靭に鍛えられた握力をもってなんとか屋根に登ることが出来た。謎に動きやすいこの着物をもってしても中々きつかった。

 

「いてて……しかし、ここまで辿り着くのが困難ならば安心して眠れるというもの。では失礼して……」

 

 笠を外し大太刀を下ろしてそれを枕にして横になると、すぐに睡魔に襲われる。流石に七歳のこの体に夜更かしは早すぎたようだ。

 そうして私は横になってものの数分で眠りに落ちた。

 

 

 

 

「侵入者かい?」

 

「ああ。結界に一人だがひっかかった。先に偵察を向かわせている」

 

「わかった。念には念を、だ。ガレスを連れていこう」

 

 フィンとノアール、リヴェリアはそれぞれの獲物を持ち、報告にあった場所へ向かう。

 城のような尖った屋根が多い黄昏の館だが、数箇所あるなだらかな屋根にその少女は眠っていた。

 黒髪のおかっぱに端正な顔立ちで極東の装いをしていて非常にキュートだが、腰に差してある打刀と脇差や頭の下にある大太刀がそれを台無しにしている。

 

「小人族ではない、ただのヒューマンの少女だね」

 

「ただの少女が意味もなくここにいることはないだろう。警戒すべきだろう」

 

「それもそうだね。ひとまずガレスが起こしてくれるかな」

 

「うむ。いいだろう」

 

 偵察に出ていた二人とフィン、リヴェリアの五人は少し離れた場所で構え、ガレスは警戒しながらゆっくりと近づいていき、肩を揺らそうと手を伸ばす。

 そしてガレスの手が少女に触れるかどうかのところで。

 

 パチッ

 

 少女の目が開いてすぐさま両手で屋根に指をめり込ませ、ブレイクダンスのように足を回転させながらガレスに蹴りを繰り出す。

 だがガレスも楽々と腕でその攻撃を防ぐ。

 目を爛々とさせた少女はめり込ませた手を駆使して跳び上がり、捻った体を戻す勢いでガレスを蹴り上がって黒塗りの小刀を投げる。そのまま距離を取って着地した瞬間、フィンが少女の認識出来ないほどの速さで当て身を行って気絶させた。

 

「……うむ、なんとも物騒な小娘だったのう?」

 

「闇派閥の襲撃者とは思えないけど、只者ではなさそうだ」

 

「動きを見るに恩恵を受けていないようだが、このまま放りだす訳にもいかないだろう?」

 

 リヴェリアが言うように少女の服は些か以上に汚れが目立ち、顔も同様。極東の着物もこれでは美しさが半減だ。

 最近加入した少女(アイズ)とあまり変わらないであろう歳の少女がこの有り様では助けたくなる、という私情もあり、それはフィンやガレスも同様だった。

 

「そうだね。ひとまず武器だけ取り上げて冒険者の団員にしばらく面倒を見てもらおうか」

 

「任せてくれ」

 

 そうして少女はロキ・ファミリアの本拠地に連れ込まれたのであった。

 

 

 

 

 ちなみに少女からは大太刀、打刀、脇差、そして二十本の黒塗りの小刀、鉤縄、吹き矢、下駄から仕込み刀が取り上げられた。




ロリが背丈以上の剣振り回すのも、体術とか剣術がめっちゃ強いのも好きだったのでとりあえず全部ぶっ込んだ。
気が向けば続きます
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