謹慎も明けて大太刀のみで上層を潜っていること数日。
葵羽は初めての後輩ができたことに心が浮ついていた。二人とも歳が五つ上とはいえ、冒険者歴で言えば一つ上なのは紛れもない事実であり、
入団当初はラウルとアナキティがアイズと違って素直で従順なこともあってリヴェリア教室は開講せず、【ロキ・ファミリア】にある教本を使って複数の団員に教えさせることになっていた。言わずもがな、そこに名乗りを上げたのが葵羽である。
リヴェリアが本当に大丈夫かと大変さを説明し、葵羽に再試験させるも満点、初回授業の流れを確認しても問題ない。断る理由が出てこずに晴れて着任となった。
「……という訳で君たちにダンジョンの、
「ゴジョウノ・葵羽です。よろしく……お願いします」
葵羽はタメ口を使いながら後輩と言うと意気込んでいたが、いざ年上を目の前にするとその大きさに怯み、敬語を使ってしまった。
【ロキ・ファミリア】の教育役ということでどんな
「こう見えても最速でレベル2に【ランクアップ】した実力者だ。事前にテストもしてあるから教育係としての腕は十分だよ」
「は、はいっす! よ、よろしくお願いします!」
「ええ、宜しくね」
「どうしたアイズ? 葵羽を取られて悔しいのか?」
「……違う、ダンジョンに行く時間が減ったから」
リヴェリアは朝早くからベンチに座るアイズに声をかける。
当初は葵羽がやりたいのであればと送り出したアイズは、端的に言うと拗ねていた。私の方が先に仲良くなったのに、というやつだ。
リヴェリアはアイズにとって同年代の、そう思える親友が出来た事を喜ばしく思い、つい笑みを浮かべていた。
葵羽は時間を調整してダンジョン探索前後の朝早く、若しくは夕食後に講義を行っている、その事はリヴェリアも知っていたし、それをアイズが知らない訳が無い。
「そうだったか」
アイズが顔を上げるとニヤケているリヴェリアの顔が目に映る。
からかわれている、そう感じたアイズは頬を膨らませた。
「リヴェリア、きらい」
「そう怒るなアイズ。約束の時間までしばらくあるだろう? 初めてレベルアップした感想はどうだ?」
「あんまり、わからない。だけど──」
「そうだろうな。だが魔法ばかりに──」
「なので、今日はラウルとアキのダンジョン探索に途中まで同行します」
「よ、よろしくお願いします!」
「宜しくね? アイズ」
「……わかった」
普段は二人で歩くバベルへ向かう道は、アイズにとって普段以上の長さに感じた。
別に放置されている訳でもないし、普段と変わらない会話をしている。ただ、たまに後ろから声がかかるだけで、どこかモヤっとする。
「アイズさんも葵羽さんと同時期に入団されたんすよね?」
「……うん、私がちょっと先」
「それで二人とも【ランクアップ】済みニャ。改めて聞くと規格外のパーティーだニャ?」
「褒めても何も出ませんよ? 今はマシになったとはいえ、最初は大変でしたよ。ね、アイズ?」
「しらない」
「ごめんごめん、意地悪な言い方だったね」
仲良く会話する二人の幼女を前に、ラウルとアナキティは並んで歩きながら微笑ましく眺める。
「こうして見ると私達よりも強いなんて信じられないニャ」
「そうっすねぇ……おふたりとも見てる分には可愛いもんっすよね」
「え? ラウルってばそういう趣味ニャ?」
「いやいや、そんなわけないっすよ!?」
「え、ラウルって私達が……?」
「その、ごめん」
「違うっすよ!? なんで振られた感じになってるんすか!?」
女性三人に男性一人、男性一人が揶揄われるのは自然な流れであり、ラウルの打てば響くような反応はそれを加速させていたのだった。
「バベルに着きましたね。では帰りはおふたりでお願いします」
「はいっす! ありがとうございましたっす!」
「また後でニャ」
バベルに着いてダンジョンに入り、葵羽達はラウル達とひとまず別れる。
「葵羽、先に行くよ」
「あっ、アイズ!? もう、どうしたんだろう? ではまた!」
さっさと走っていくアイズに葵羽は戸惑いつつ、ラウル達に手を上げてから追いかける。
そしてアイズが右へ行った曲がり角を曲がろうとしたその時、アイズが吹っ飛んで壁にめり込んだ。
「アイズ!?」
葵羽から悲鳴が上がる。
そしてドシンドシンという足音と共に、人とも思えない巨大なナニカの影が現れた。
倍近くある身長に、手足の短いずんぐりむっくりとしたオークのような体型。おかっぱ頭の大きな顔はカエルのようなギョロリとした目に爬虫類のように大きく裂けた口。
「ゲゲゲゲゲ、美人だなんだと話題に挙がってるから見に来てみれば大した事ない。アタイに遠く及ばないブスに、弱っちくて虫みたいじゃないか!」
耳に障るような笑い声がダンジョン内に響くが、今はそんなことを気にしている場合では無い。アイズの様子は……致命傷ではなさそうだが小さくないダメージを負い、気絶している。
すぐさま尋常な事態ではないことを察した葵羽は小さく見えるラウル達に大声で叫んだ。
「フィン達を呼んできて!」
ラウル達はたじろいだ様子を見せながらも、すぐさま翻してダンジョン入口へと走り去っていった。
「なんだいこの汚い声は? ああ、この人形姫とパーティー組んでるっていう。ゲゲゲゲゲ! やっぱりブスの仲間はブス、最速記録だか知らないけど、ブスはブスらしく美しいアタイに道を譲ればいいんだ……よ!」
言葉も途中に葵羽を殴りつけるバケモノ。
凄まじい速度で顔面に向かって迫り来る拳を葵羽は紙一重で躱す。
明らかに速すぎる攻撃を葵羽が避けられたのは、半分が運であった。
「な、なんですか貴女! なんで私達を!」
「あぁん? アタイを知らないなんてバカな奴だ! アタイはフリュネってんだ。感謝しろよ? 美しいアタイがブスのお前達を可愛がってやるんだからなぁ!」
葵羽は何とか立とうとするアイズから離れようと飛び退くも、その巨体では考えられない程の速さで並ばれる。
「何逃げてんだぁ? せっかくアタイが可愛がってやるっつってんだろぉ?」
「──!」
葵羽は咄嗟に投げる短刀も振り払われ、容赦なく蹴りを腹に喰らう。体をくの字に曲げながらダンジョンの床を転がりながらもその勢いのまま飛び起きた。後ろに跳んだこともあって軽傷。軽く息を吐いてフリュネを見据えた。
葵羽の手持ちは大太刀と短刀のみであり、速さ故に実質使えるものは短刀のみ。力の差は
牽制用にと短刀を振って斬撃を飛ばすと、初見のフリュネは顔面と手足に小さく傷を作る。
フリュネの顔面に傷を作ってしまう。
「テメェ……ブスがアタイの美貌を傷つけてんじゃねぇよ!」
ゲゲゲと
葵羽はコレが本当に同じ人に類する種族なのかとドン引きしつつ、図らずも怒りをコチラに向けることに成功したのを察する。しかし手加減無しの狂戦士になるのは完全に想定外。
ここから加減されることはないだろう。
「──ふざけんのも大概に、っ!」
「ふざけてんのはテメェだろうがァ!」
フリュネは直撃すれば即死は必須の大戦斧を躊躇なく振り下ろす。葵羽の体とそう違わない大きさのソレは躱しても床を大きく砕いて葵羽の体勢を崩し、そこに再び蹴りが入る。
今度こそ
葵羽は顔を歪めながら、無理やり勢いを殺さずに跳ね起きてポーションを飲み、ポーション瓶を投げ捨てる。
そして再び短刀を両手に構え、突撃。
フリュネは先程同様大戦斧を叩きつけ、葵羽は体格差を利用して今度はフリュネの股を潜り抜け、背中に短刀を突き立てる。
「ぐあぁああああ!? テメェ……本当に容赦シねぇ……ぶっ殺してやる!」
背中にへばりつく葵羽に手を伸ばしながら叫ぶフリュネだが、手の短さ故に届かない。すると葵羽の想定通り、フリュネは背中を壁に叩きつける。
「ここからが勝負どころ、か」
短刀を背中に置いてきた葵羽は裾の短刀を取り出す。再びこの手は使えないだろう。
予想外の命の危機に止まらない汗を床に落としながら、葵羽は思考を加速させていった。
フリュネの口調はわからんし、見れば見る程怖ぇし……
感想欄での指摘があったので補足を
アナキティの喋り方は当初、語尾にニャが付いたものだったそう。
原作時点では矯正したようですが、その口調時代をラウルも知っているようなので今は猫人の口調にしてます。
葵羽たんの将来(作者は髪型エアプです)
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黒髪パッツン合法ロリ
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黒髪ロング合法ロリ
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黒髪パッツンでアイズと同じくらいの体型
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黒髪ロングでアイズと同じくらいの体型
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黒髪パッツンで大人BODY
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黒髪ロングで大人BODY
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ポニテ(体型は今度アンケート)
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それ以外の髪型(髪型のアンケートを実施)
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任せる(なんでもいい)