戦い、というには些か一方的なものだった。
巨大な女が大戦斧を壁や床を破壊しながら突き進み、その半分近い体躯の少女が攻撃を受けながら天井や壁すら駆使して逃げている。
辛うじて見える速度で迫る大戦斧をほぼ九十度に体を逸らして直撃を避け、短刀を僅かに大戦斧に掠らせて大きく弾かれる。
その結果、ダメージも僅かに後方へと吹き飛び、壁に着地してそのまま壁を駆けた。
そこからフリュネは瞬く間に距離を詰め、今度は大戦斧の腹を葵羽の走る壁に叩きつける。
すぐさま葵羽は壁に足をめり込ませて急停止をかけるが、フリュネも当然の如く対応して軌道修正し、そのまま葵羽を横殴りにする。
葵羽は回避することも出来ず、咄嗟に頭を守り、身体全体で攻撃を受け止めた。
先程までのような勢いではない、矢のような速さで壁と床を跳ねながら転がっていく。
「ゲゲゲ! ようやくマトモな当たりが出た! 無駄な足掻きなんてしてんじゃねぇよ!」
ようやく攻撃が直撃したフリュネは大口を開けて哄笑し、まさにスカッとしたような様子で遠くでボロ雑巾のようになった葵羽をズシンズシンと足音を立てながら近づいていく。
すると葵羽が再び立ち上がり、逃げていくでは無いか。
「あん? まだポーションを隠し持ってやがったのか……騙すなんざ卑怯なマネしやがって!」
フリュネは30M近く離れていた葵羽をものの数秒で追いつき、攻撃を再開する。
先程の攻撃で味をしめたフリュネは大戦斧の腹を連発するが、通常の攻撃よりも範囲は大きいが迫る速度は遅い。葵羽がそんな攻撃を何度も受けることはなく、攻撃を繰り出す直前に走る軌道や速度をフェイントを交えながら変化させていく。そうすると通常の攻撃とは違って対応しきれずに地面を砕き、その破片は容赦なく葵羽の肌を切り裂いていく。
「まぁたハエみてぇに……!」
フリュネは顔を歪めて大戦斧の刃と腹を状況に応じて変化させながら放っていく。
葵羽は大戦斧の刃での攻撃は流しきらず、僅かに衝撃を受けることで後方へ逃げる噴射剤にし、大戦斧の腹での攻撃は逃げ方に変化をつけて何とか躱す。
駆け引きも一流の域にあるフリュネをここまで凌げているのはただ葵羽の才によるものと言っていいだろう。それに、先述した回避の成功率を高める一つのタネがある。それは攻撃を毎度紙一重で避けながら、徐々にテンポを緩めていくことで攻撃の速度を無意識に緩めさせるという戦法。先頭に立ったペースメーカーがレースで徐々に速度を落とし、全体のペースを遅めるようなもの。そしてそれは目の前の獲物に夢中になっている相手程
しかし当然ながら利点だけでは無く、速度が緩まれば軌道を変化させることも容易になり、全てを躱しきる事が出来なくなる。
今も後出しジャンケンに負けて攻撃を受け、腕をクッションにして吹き飛んで右腕が砕けた。
「いい加減ウザってぇ! 特別に
すると葵羽が後出しをされない最適な速度を模索している途中でフリュネのイラつきが頂点に達し、初めてググッとタメを作る。
天井から壁、床へと走りながら降りる葵羽はそれを見て、思わず顔を青くした。
「まずっ──」
葵羽がされたくなかった事は、【ステイタス】を存分に使った攻撃。つまり存分にタメ、全力で殴られる事だ。
大戦斧を両手で構え、一秒にも満たないタメを作った直後、葵羽が見ているフリュネがブレる。
そして次の瞬間、目の前に大戦斧の模様が現れた。
あ、これ死ぬ──今更マトモな防御も間に合わない。手を胸の前で交差させるが、両腕を砕き、全身を粉々にするだろう。
「【
死が目前に迫った葵羽を暴風が吹き飛ばし、攻撃範囲から逃した。
「チッ……今度はお前か? アタイの邪魔をしてんじゃねぇよ!」
「なんで、そんなことするの?」
ハイライトの消えた目で、瞳の中に黒い炎を宿してアイズが問いかける。しかしフリュネはアイズの殺意が滾る視線をものともせず、裂けた口を大きく吊り上げて答えた。
「ゲゲゲ……アタイみたいな美人の邪魔を醜いテメェらがするのは許せねぇんだよ!」
そう言ってフリュネはアイズを攻撃する。アイズは葵羽の見様見真似で攻撃を受け流すが、完成度の低いソレは風の鎧の力を駆使してもダメージを受けていく。防御無しで当たりどころの悪かった初撃とは違い、全開の風の鎧と受け流しによってダメージは随分とマシではある。
精神力を存分に使った風による敏捷の底上げと威力の減衰。
しかし、ギアを上げつつあるフリュネには届かない。上からの大戦斧を剣で受けてしまえば地面に叩きつけられ、横薙ぎの攻撃は壁にめり込ませられる。ものの数合の間に受け流しを実践する余裕は無くなっていた。それでもなんとかフリュネに対応して受け止めるが、風の鎧によるクッションがあるとはいえ徐々に傷が増えていく。このままではマズイと思いながらも、一度受けたが最後、逃げる余裕すら無くなっていた。
そして笑いながら大戦斧を振り回すフリュネの背後から、気配を消した葵羽がフリュネの背に刺さった短刀を全力で蹴り、ズブリと押し込んだ。普通なら
「ぐあぁああああ!? テ、テメェら……絶対に許さねぇ!」
フリュネは悲鳴を上げてよろけるも、分厚い脂肪にダメージを与えたのみであり、フリュネに命の危険を感じさせるという結果に終わる。
そしてフリュネは額に血管を浮かべて修羅の形相で地面を強く踏み鳴らし、大声で吼えた。
「──────────!!!!」
ビリビリとダンジョンの壁を揺らす程の轟音に、アイズと葵羽は堪らず手で耳を塞ぐ。
そしてフリュネは大戦斧の腹でアイズを叩き潰して、葵羽を蹴り飛ばす。
紛れもない全力にアイズは為す術なく潰され、葵羽は後ろに跳ぶ暇すらなく消える。
その結果アイズは耐えきれずに地面のクレーターに埋まり、頭から夥しい量の血を流しながら倒れた。
そして葵羽も壁に叩きつけられ、腹がフリュネの靴先の形に凹んだまま変わらず、口から滝のようにドス黒い血を流している。
「──ハッ! アタイがその気になればこの程度だよ! なぁ人形姫?」
フリュネはそう言ってアイズにトドメの大戦斧を叩きつけようと腕を上げる。
放置しても息絶えるような傷だが、ストレス発散の一撃。
それが振り下ろされる直前──
「そこまでにして貰えないかな?」
普段の柔和な声とはかけ離れた、非常に攻撃的で怒りを孕んだ声がフリュネにかかった。
フリュネですら背筋を伸ばしてしまうような声に振り返ると、槍を持ち、顔が整った金髪の小人族。
傍にはフリュネにも見覚えのある顔が幾人も。つまり【ロキ・ファミリア】が誇る上級冒険者が少なく見ても10人。
足元にいた
「引いてくれるかな、【
「ゲゲゲゲゲ! 【
「少し口を慎め。今の君は【イシュタル・ファミリア】の戦闘娼婦の存在に生かされている状態だ。向かってくるならここに居る全員で、何の躊躇いも無く命を奪う。僕としては願ったり叶ったりだが……どうする」
治安の悪化したオラリオでは治安維持側のファミリアは多い。だが【イシュタル・ファミリア】の戦力はその中でも間違いなく上位だ。今【イシュタル・ファミリア】の団長を半殺しにでもすれば【ロキ・ファミリア】と【イシュタル・ファミリア】の関係が悪化して連携が取れず、防衛線が崩れてしまう可能性がある。
心情的には痛めつけてやりたいが、その現状を知るフィンは拳を握り締めながら提案した。
そして【ロキ・ファミリア】全員から溢れる怒気に、人からの感情に鈍いフリュネでさえ気づいた。
「ゲゲゲゲゲ……! 今回はこの位にしておいてやるよ! 手を抜いていたアタイに感謝しろよ!」
そう言ってフリュネは悪びれもせずに堂々とダンジョンの出口へと歩き去っていった。団員達はその背中を今にも襲いそうな程殺気立っていたが、それがフィンの号令で葵羽とアイズへの心配へと移る。
「すぐに【ディアンケヒト・ファミリア】に連れて行け! エリクサーを使ったとはいえ、完治したかどうかの判断は出来ない!」
「了解です団長!」
「すぐに!」
フィンが指示を出すと、アイズを抱えていた団員と葵羽を抱えていた団員は猛スピードで走り去って行き、それに複数人が同行した。
「団長! あの程度で済ませるなんて……!」
「わかっている。許すつもりは無いよ」
それ以降フリュネに対する恨みが【ロキ・ファミリア】内で大きく膨らみ、【イシュタル・ファミリア】との確執は間違いなく、決定的なものが生まれた。
そして後日【ロキ・ファミリア】は【イシュタル・ファミリア】団長による明確な敵対行為かつ殺傷事件に正式に抗議し、【イシュタル・ファミリア】は正式に謝罪して【ロキ・ファミリア】に特大の貸しを作ることとなる。
この時点でフリュネが団長なのかは不明
正直何事も無く収まった理由が思いつきませんでした。なので足りぬ作者の脳みそで考えた理由です。
朝投稿したからといって夜も投稿する訳では無い
葵羽たんの将来(作者は髪型エアプです)
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黒髪パッツン合法ロリ
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黒髪ロング合法ロリ
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黒髪パッツンでアイズと同じくらいの体型
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黒髪ロングでアイズと同じくらいの体型
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黒髪パッツンで大人BODY
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黒髪ロングで大人BODY
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ポニテ(体型は今度アンケート)
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それ以外の髪型(髪型のアンケートを実施)
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任せる(なんでもいい)