オラリオに来たけど治安悪くない?   作:のん野のん太郎

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第16話

 人気のない路地裏深くに建っている、うらぶれた廃教会。

 神を崇めるために築かれたその二階建ての建物は崩れかけていると言っていい。ところどころ石材が砕け剥がれ落ちた外観からは気が遠くなるような年月と、人々の記憶から忘れ去られた哀愁が漂っていた。

 そんな廃教会の中に闇派閥や商人がいると突き止めた【ガネーシャ・ファミリア】が突入するも、既に中は死屍累々といった様相であり、アーディによる降伏勧告はそのまま消えていった。

 

「次から次へと、雑音が絶えない……やはり今も昔も、オラリオはオラリオのままか」

 

【ガネーシャ・ファミリア】の上級冒険者が誰一人と気づかなかった、得体の知れない者の声。

 そして露になったのはフードで顔を隠し、灰色のうねった長髪が隙間から伸びている。胸の大きな膨らみは女性である事を示しており、フードから垣間見える漆黒のロングドレスと手袋はそこいらの浮浪者とは訳が違う高貴さを放っていた。

 アーディは何者か、冒険者かどうか疑問に思い、シャクティはどこから、いつからそこに居たかと戦慄する。

 

「……これをやったのは、お前の仕業か?」

 

「他に誰がいる?」

 

 シャクティは警戒を隠すことなく威圧的に問いかけるが、件の人物は一切怯むことなく、突き放すように返した。

 

「どうして、こんなことを……?」

 

「私の癇に障った。それだけのことだ」

 

 アーディに対しても変わらず冷たく言い放ち、徐々に上がっていく緊張感をものともせずに問答は進んでいく。

 

「この塵芥どもは不要な域まで妖精の森を荒らし、大聖樹を蹂躙した挙句──ここを汚した。故に報いを与えた」

 

「この、教会のこと……?」

 

「ああ、妹の愛した場所だ」

 

 得体が知れないが闇派閥を壊滅させた実力は間違いなく、会話が通じるのは僥倖だが警戒は緩める訳にはいかない。

 

「た、たすけっ……ぉ、お赦しをっ……!」

 

 倒れ伏した闇派閥の一人が呻き声を上げながら女に懇願し始めた。その直後、謎の女の周りの空気が歪んだ、そう錯覚する程の圧力が一瞬放たれ、すぐさま収まる。

 

「二度と雑音を生まない骸に変えてやろうと思ったが……薄汚い血でここが汚れては意味がない。後はお前達が片付けろ」

 

 そう言って何食わぬ顔でアーディとシャクティの脇を通って去ろうとするが、当然そのまま逃がす訳には行かない。

 

「逃がすと思っているのか、女?」

 

「捕えられると思っているのか、小娘?」

 

 シャクティは槍を突き出し謎の女を牽制するも、相変わらずの不遜とも言える態度で返す。

 

「全隊、かかれ!」

 

 シャクティは埒が明かないと号令をかけて突撃すると、謎の女が一言。

 

五月蝿い(ゴスペル)──」

 

 直後、【ガネーシャ・ファミリア】にゴライアスに振り回(シェイク)されたような、平衡感覚をズタズタにする全方位からの攻撃が襲う。

 幸いにも威力は低く団員達は目立った傷を負わずに済んだ。だが全員が目を歪ませて膝を着き、謎の女の姿はとうに見失っている。

 

「……追うな。今はこの場所を押さえる。既に制圧された後だが、な……」

 

 その後闇派閥と商人の拘束を済ませ、『悪人共の違法市(ダーク・マーケット)』の品の捜索を終え、かなりの量の『大聖樹の枝』を回収する。

 そして捕らえた闇派閥の中に幹部、Lv3、Lv4の要注意人物一覧(ブラックリスト)の連中が交ざっており、謎の女が第二級冒険者を簡単にあしらえる実力者である事が判明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダンジョン15階層、上層と比べて広く天井も高い通路。

 そこで葵羽とアイズはミノタウロスの群れを蹂躙していた。

 レベル3になった事も加わり、葵羽は赤黒い刀身の打刀『黒染(くろぞめ)』を跳ねるようにきらめかせ、ミノタウロスの首を狩っていく。

 アイズも新調した『デス・ペレート』による鋭い突きを以てミノタウロスに致命傷を刻み込む。

 葵羽は言わずもがな、葵羽と模擬戦を重ねたアイズも技量を大幅に成長させており、それに加えて【ステイタス】も超えているのであれば負ける道理はなかった。

 そうして十体近くのミノタウロスも一分と持たずに灰となり、中層に静寂をもたらす。

 波のように押し寄せるアルミラージは黒い脇差『新月』を使って飛ぶ斬撃ですり潰し、目も眩むほどの刺突で削り取る。

 挟み込んでくるヘルハウンドは二手に別れて相手をし、片や飛ぶ斬撃で、片や壁を走って瞬く間に距離を詰めて首を落とす。

 コウモリは……いや、もう十分だろう。

 簡単に纏めると、中層の怪物相手では葵羽達の相手足り得なかった。

 

「……足りない」

 

「でもこれ以上は門限どころか日を跨ぐからね」

 

「……わかってる」

 

「でもアイズの気持ちもわかるよ? こんなんじゃ強くなれる気がしないもんね」

 

「うん」

 

【ロキ・ファミリア】全体の決定として、遠征等一部例外を除いてダンジョン探索は日帰り、というものがあった(葵羽やアイズには別途門限が定められている)。

 これは闇派閥を壊滅するまでは消えないルールであり、破った者は一週間ダンジョン探索禁止に加えて勉強漬けという恐ろしい罰が定められていた。

 とはいえ今の【ロキ・ファミリア】は治安維持にほとんどの人員を割いており、葵羽やアイズはその年齢故にダンジョン探索に赴くことが出来ている。

 フィンやリヴェリア達はダンジョン探索すらして欲しくないのが本音だが、『黄昏の館』に閉じ込めておくのも難しく、闇派閥と関わらせない為の苦肉の策だった。

 とはいえ早朝にダンジョンへ向かったとしても適正レベル2の中層までしか進むことは出来ず、貪欲に強さを追い求める彼女達にとっては全力を出せない、燻った日々を過ごす事となる。

 

「どうすれば修行になるのかなぁ……」

 

「……模擬戦、とか?」

 

 葵羽の呟きにアイズが首を傾げながら返し、葵羽はやっぱりそうなる? と軽く笑い、アイズも強くなる為、と笑う。

 

「じゃあ明日は模擬戦にしよっか」

 

「うん、なんでもありで」

 

「勝負つかないじゃん」

 

「何も無しなら、私が勝てない」

 

「えー?」

 

 葵羽達がダンジョンから出てギルドに向かうと、その途中の街が壊れているのが目に付いた。

 

「何かあったのかな?」

 

「闇派閥、だろうね」

 

「手伝えることもあるだろうし、行こっか」

 

「……うん」

 

 早歩きで道を進んでいくと、怪我人を一箇所にまとめて回復にあたる医療系ファミリアと散らばった瓦礫や傾いた建物を片付ける冒険者の姿があった。

 その中に──

 

「ラウル! 何か手伝えることはありますか?」

 

「あっ、葵羽さん、アイズさん、お疲れ様っす! それなら道にある大きな瓦礫を一旦片付けて欲しいっす!」

 

「任せてください」

 

「うん、やるよ」

 

 葵羽とアイズは身の丈以上の瓦礫を二人で持ち上げて運んでいく。そんな幼女が巨大な瓦礫を運ぶちぐはぐな様子に物珍しさを感じて眺める者もいたが、それでも壊れて失った家を見て顔を暗くする。

 そんな雰囲気から葵羽とアイズも、徐々に口数が少なくなって黙々と作業を続けていた最中。

 

「む、葵羽か?」

 

「あ、お姉ちゃん!」

 

 闇派閥の再襲撃を警戒する【アストレア・ファミリア】と遭遇した。

 

「葵羽と『戦姫』は手伝いか」

 

「うん、あとアイズ、だよ?」

 

「──ああ、すまないアイズ。妹が世話になっているな」

 

「……初めまして」

 

 そういえばアイズと姉は初対面だったと葵羽は輝夜とアイズの様子を見れば、輝夜は()()()()()右手を差し出し、アイズはいつもの人見知りを発動させてゆっくりと右手を掴む。

 

「一度話したいと──」

 

「輝夜ー! ギルドが状況を聞きたいって!」

 

「──すまない、話はまた後日しよう。今行く!」

 

「うん、またね」

 

 輝夜は弾かれたように顔を向けると、手早く言葉を交わして去っていき、アイズはぺこりと頭を下げる。

 それから葵羽達は大きな瓦礫を率先して片付けていき、ギルドへの報告を終えて帰ってきたガレスと共に本拠地へと帰還した。




高評価感謝です

葵羽たんの将来(作者は髪型エアプです)

  • 黒髪パッツン合法ロリ
  • 黒髪ロング合法ロリ
  • 黒髪パッツンでアイズと同じくらいの体型
  • 黒髪ロングでアイズと同じくらいの体型
  • 黒髪パッツンで大人BODY
  • 黒髪ロングで大人BODY
  • ポニテ(体型は今度アンケート)
  • それ以外の髪型(髪型のアンケートを実施)
  • 任せる(なんでもいい)
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