オラリオに来たけど治安悪くない?   作:のん野のん太郎

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待たせたな。キャラ崩壊タグをつけるか悩んでるところだぜ


第19話

『死の七日間』の初日、『掃討作戦』が『大抗争』に変わった翌日。

 大勢の冒険者が死に、その何倍もの市民が息を引き取ったオラリオは、闇派閥の主力が引き上げたとはいえ未だに混乱は収まらず、市民のパニックと人手不足で都市のあらゆる機能が麻痺していた。

 闇派閥が囲んでいる事を知らない民衆は門に詰め掛けて冒険者の手を割かせ、そこを狙ったように市壁を押さえた闇派閥が襲撃を仕掛ける。民衆は怪我を負い、大切な人や家を失い、不満と悲しみ、怒り、不安を募らせてふとした弾みで暴動を起こしかねない。

 完全に包囲されている為港町(メレン)への避難を進めることは出来ず、食糧も都市内に運びこめない為食糧調達を強いられるこの状況。

 それに加えて負傷者の看護、瓦礫の撤去、闇派閥への警戒と対応。片付けなければならない事が山積している中で日毎に物資は減り、冒険者達は弱っていく。

 誰も口には出せないが、極限状態の負荷(ストレス)がかかった民衆は明確な足枷となり、冒険者の動きを著しく制限していた。

 

 そんな暗雲立ち込めるオラリオで、あらゆるファミリアは闇派閥の対応に奔走している。

 最終防衛地点の中央広場を拠点とし、そことギルドを中心に広がるように警備。

 現れる闇派閥を伝達し、すぐさま戦力を派遣していた。

 

「都市の北東、『工業区』に襲撃っす! 中央広場に入りきらない、街の人のキャンプが襲われて……!」

 

 そしてフィンが予想していた散発的な『嫌がらせ』の知らせ。

 

「『工業区』なら問題ない。既にリヴェリアを向かわせている」

 

「なにっ? しかしあやつも傷が癒えきっておらんだろう。打たれ弱いエルフには酷ではないか?」

 

 未だに傷はあれど、身体を動かさずにはいられないといったようなガレスは腕をグルグルと回し、首をゴキゴキと鳴らす。

 

「それも、問題ない。葵羽がいないから、ある意味『面倒』を押し付けているといえるかもしれないが」

 

「せやなぁ。母親(ママ)はいつだって、『子守り』には苦労するもんや」

 

「む? ならば葵羽は何処にいる?」

 

「……葵羽には廃墟の調査を頼んでいる。誰にも見つからないように動き、闇派閥の潜伏場所の調査。今動ける団員の中で単独で動けて対応力がずば抜けているのは彼女だからね」

 

 フィンの言葉にロキは少し顔を暗くし、ガレスは驚いたように目を大きく開いた。

 

「闇派閥に発見された場合はどうする?」

 

「相手の戦力次第だが、発煙弾(煙玉)を投げた上で交戦だ。潜伏場所が()()()()()()()()()()()意味が無い」

 

 発煙弾など持っていない葵羽が使用するのは大規模の特大煙玉であり、良くも悪くも目立つが応援要請はひと目でわかるだろう。

 

「……発煙弾(煙玉)を上げられない場合もあるだろう」

 

「行先と定時連絡は徹底させている。異常があればバーラとヨナがすぐに動く」

 

「そうか……」

 

 

 

 

 

 

 普段とは違う、闇に溶け込むような装束は音を立てにくい布で出来た脚絆に音を吸収する靴。打刀の『黒染』を背負い、腰に脇差の『新月』、袖に数本の短刀という装備で、いつもの大太刀は目立つ上にしゃがめば地面に突っかかる為お留守番だ。

 葵羽はそれを身にまとって警備の手が届かない廃墟区を駆ける。

 そして半壊した民家の中に潜む、数人の闇派閥と『自爆装置』を発見した。

 

(これで9箇所目。規模はそこそこかな)

 

 今いる場所を頭に叩き込み、一切の音を立てずに報告しに戻る。現在はまだ日が頭上に上っている為目立った格好をしているが、屋根を伝って走る葵羽は常に煙突や傾斜に隠れながらスルスルと、凄まじい速度で移動していって居場所を記した紙を短刀に突き刺してバーラ達の足元に投擲。

 目の端に映りこんだ程度では気づかない程の隠密をしていた。

 そして葵羽は次に行きますと言って探索を再開し、次帰ってきたら休憩に入れという声に了解の合図を向ける。

 

「全く気づかなかったよ。葵羽は凄いね!」

 

「……あぁ、だが無茶をさせすぎている気もするねぇ…………さて、せっかく葵羽が持ってきてくれた情報だ。ちゃっちゃと片付けに行くよ!」

 

「了解!」

 

 そうして【ロキ・ファミリア】の冒険者は最低限の人数で被害を出さずに闇派閥の拠点を潰していく。

 一箇所に固まらずに広がる闇派閥は一つの拠点は小さく、距離が離れているがその分やたらと数が多い。

 

 

 

 

 

 

(見つけた、デカい拠点……!)

 

 そして見つけた、小隊規模の拠点。葵羽はこれを潰せば大きく前進すると口角を上げ、音を出さないように気をつけながら腰を上げる。

 タッとほんの小さな、風が吹くよりも小さな音で駆ける葵羽に、声がかかった。

 

「相も変わらず背後が甘い。付近の雑音を減らしたことは褒めてやるが、動き過ぎだ……あぁ、だが丁度いい。聞きたいことがある」

 

 葵羽が聞き覚えのある声に振り返れば、想像していた顔。ガレスとリヴェリアを一瞬で倒した過去の英雄(敵の切り札)

 

「……アルフィアさん、ですね。闇派閥の邪魔をする私を止めに来たんですか?」

 

「どうでもいい。私をあの役立たずの愚物共と同様に語るな」

 

「仲間じゃないんですか。じゃあどうして……」

 

 葵羽が話しながら手をゆっくりと、自然な動きを心がけて特大煙玉を手に取って握り潰して炸裂させようとした瞬間。

 

「気づかないとでも思ったか」

 

「いッ……!?」

 

 葵羽は手を捻られて煙玉を取り上げられ、アルフィアがひょいと投げるとしばらくした後に遥か遠くで白い煙が広がった。

 そしてそれを見て援軍が遅れることを悟った葵羽はすぐさま捻られた方向に身体を回転させながらアルフィアの肘関節を壊すように膝蹴りを繰り出す。

 葵羽の身体を回転する勢いに乗せられた躊躇の無い一撃は狙いを違うこと無く人体の弱点、肘関節に吸い寄せられていく。

 

「──甘い」

 

 が、アルフィアが肘を少し曲げるだけで膝が大きく弾かれ、掴まれた手を上に振り上げられる事で最初に腕が伸び、それに引っ張られるように背骨の関節一つ一つが離れていくような錯覚と共に10M程打ち上げられる。

 そして葵羽はグルグルと回る視界の中で何とか着地を成功させ、打刀を抜いてアルフィアを見据えた──が、アルフィアは見当たらない。

 

「な」

 

「そういきり立つな。一つ、聞きたいことがあってな」

 

 背後に立ってそう言い放つアルフィアに葵羽は目を細めつつも、背後に立たれ、詰んでいる状況とアルフィアの放つ雰囲気にひとまず動きを止めた。

 

「……作戦なんて知りませんよ。【ロキ・ファミリア】のであっても。知ってても言いませんし」

 

「いや、そんな事は邪神(エレボス)共が考えることだ」

 

「では何を……?」

 

 どうすれば逃げられるか、なんてことは考えても意味の無い状況。圧倒的な【ステイタス】差は葵羽の技量を、必殺の一撃をただの幼児の駄々に変えていた。

 

「──お前の剣の才能について、どう思っている?」

 

 アルフィアから葵羽に向けられた質問は、完全に予想外のものであった。葵羽は一瞬何を言われたのか理解出来ず、一呼吸置いてようやく質問の内容を理解した。

 

「……何故そんなことを聞くんですか?」

 

「いいから答えろ。二度目は無いぞ」

 

 アルフィアのヒヤリと冷えた白く美しい手が葵羽の首に軽く添えられる。

 それに背筋をピンと伸ばしてヒュッと息を吸う葵羽だったが、口を開いた。

 

「……私には(これ)しか無いので、よく分からないです。気がつけば刀を振っていて、刀が私の進む道標で。だからその……才能なんてものはただのオマケみたいなもので、空を斬るのに役立つのなら使うだけ、じゃダメですか……?」

 

 一度口を開いて出てくるのは、葵羽にしては珍しい、たどたどしい年相応の言葉だった。途切れ途切れの、要領を得ない言葉。

 だがその発言の中に潜んでいる刀への執着と狂気はアルフィアの興味を引いた。

 

「空を斬るとはどういう意味だ?」

 

「え、と。刀を振っていたら、本当にたまに、それこそ一ヶ月に一回くらい、『神』がかった一撃が出るんです。それはどんな斬撃よりも強く鋭く、繊細で柔らかい。そんな斬撃なら空さえ斬るだろうと思ったので、その、私が勝手にそう言ってます」

 

 アルフィアからは見えない為それを語る葵羽の顔はどのようであったかは誰も知りえなかったが、その時思い浮かべたのは黒蜥蜴人の最後の一撃。スキルのない状態で繰り出した飛ぶ斬撃だった。

 誰にも理解されない、気が狂っていると言われる程の火種があり、アルフィアの質問によって言語化されていって葵羽も自身の求める『強さ』への理解が深まっていく。

 そんな葵羽だが、才に愛されていたアルフィアならば少しだけ理解出来る。

 純粋な強さを求めるだけでは足りず、強さの位階を上げようとするその気持ちが。

 その動機は王道でも正道でも無いどこまでも純粋な渇望であり、その利己的な願望は勇者ではないが、英雄的であった。

 

「成程、いい事を聞かせてもらった」

 

 葵羽はスっと首から離れていく手の感触に戸惑いながらゆっくりと振り返ると、アルフィアがほんの少し、凝視してようやく気づく程一寸だけ口角が上がっていた。

 

「え、笑った……?」

 

 冷たい雰囲気と仏頂面を崩すことが無かったアルフィアに葵羽がついそう零して瞬きをすると、アルフィアはその間にいつもの仏頂面になっていた。そしてアルフィアはどこからか刀を持ち出し、それを鞘から抜いて葵羽に向ける。

 

「気が乗った、稽古をつけてやろう。時間は援軍が到着するまで、だ。多少の加減はするが、死んでくれるなよ?」

 

「え? ちょっ……!?」

 

 一方的に告げられる宣言と急襲に葵羽は目を大きく開くが、アルフィアは抜いた刀をそのまま振りかぶる。そうして放たれた一撃はあくまで葵羽がギリギリ捉えられる速さで、葵羽はそれに応えるように打刀『黒染』を構えて迎え撃った。加減しているとはいえ速度と力はアルフィアに分があり、以前とはまるで違っている剣筋に戸惑いながらも対応していく。だがその見覚えのある剣筋は非常に戦いづらく、葵羽は凌ぐことで精一杯といった様子。

 刀を逸らして反撃に移ろうとしても、逸らした勢いを利用して視界の外から回し蹴りが飛来し、正面から斬り合えば速度と力負けする。弱点は見えても差し込むには小さすぎる隙。

 葵羽は先日とは違う獲物と違う太刀筋で斬りかかってくるアルフィアに四苦八苦していたが、数度打ち合ってようやく気づく。

 

「……私の模倣ですか」

 

「ああ、ただの曲芸だ」

 

 そう言いながらアルフィアは再び刀を振るう。

 自ら曲芸と卑下していてもその太刀筋は先日の葵羽の太刀筋と完全に一致しており、猿真似と言う次元ではない、オラリオ随一の剣技。

 葵羽は刀を右切り上げでアルフィアの袈裟斬りを逸らすが、自身を凌駕する力の籠った一撃は耳に障る音と共に切り上げの勢いを完全に奪う。

 そして葵羽はアルフィアへと大きく踏み込み、顔の横で一瞬の溜めを作り刺突を繰り出すが、アルフィアは戻す刀を『黒染』に沿わせて慣れた手つきで受け流し、葵羽の腹に蹴りを叩き込む。アルフィアの膝が腹に直撃する寸前に、葵羽は分かっていたかのように脇差を半ばまで抜いて刀の腹で防ぐと後方に飛ばされた。

 

 葵羽は頭から落ちる身体を翻して危なげなく着地して深い笑みを浮かべた後、鋭い目でアルフィアを睥睨。

 そして今度は葵羽がアルフィアに突貫し、黒い刃を揺らめかせる。

 突撃とその刃、そのどちらも葵羽の全力には及ばない速さ。

 アルフィアは当然迎え撃つが、葵羽の刀はそれをするりと潜り抜け、アルフィアを浅く斬りつけた。

 

「──!」

 

 アルフィアが驚く気配を受け、感情の起伏がほとんど無いと思っていた葵羽はくすりと笑いつつ、再びアルフィアに肉薄する。

 それを見たアルフィアも小さく笑みを浮かべると今度は葵羽の刀を捉えて弾き、返す刀で葵羽を襲うが葵羽は身体を逸らして刀を躱し、片手で地面(屋根)を掴んで背に力を込めて全力のサマーソルト。

 アルフィアの顎へと向かう踵は腕によって防がれ、ダメージこそ無いが腕をかち上げることに成功した。

 葵羽はそれを認めると再びアルフィアへと斬撃を放つが、アルフィアも意趣返しとばかりに身体を逸らして刀を躱してサマーソルト。

 葵羽は頭を横に傾けることで躱すが、その威力ゆえ前へと進めない。

 そして再び刀と刀が重なった。

 

 

 刀が重なる度にアルフィアは葵羽の剣技を学び、葵羽はアルフィア(葵羽自身)の不足を自覚して吸収し、成長する。

 以前のようなただの模擬戦とは違い、戦闘時間と比例して技量が伸びていった。

 

 技量が目に見えて伸びる感覚にいつしか葵羽は笑顔をこぼしており、対するアルフィアもいつも顰めている眉と口が穏やかなものとなっている──が、夢の時間の終わりはやってくる。

 

 大勢の足音と共に、葵羽を呼ぶ声が聞こえてきたのだ。

 その声にアルフィアが気づくと葵羽を大きく弾く。

 

「潮時だ。柄にも無いことをしたが、それなりに楽しめたぞ」

 

「えっ……は、はい! ありがとうございました!」

 

 葵羽がそう言うとアルフィアは忽然と消えた。実際には葵羽に捉えられない速さで去ったのだが。

 

 そして葵羽はヨナやバーラに回収されて布団に簀巻きになり、大規模な闇派閥の拠点は最小限の被害で壊滅させられた。




ギルド側が得たもの
葵羽(レベル3)の成長。葵羽単体で見ればかなりの強化だけど、一つの勢力として見ればそんなに。

アルフィアが得たもの
葵羽の剣技(オラリオさいきょー)。これによってザルドの剣技がリストラされ、攻略難度が100から120くらいに変わった。

ぶっちゃけアルフィアが得たものの方が大きい。剣技のみなら葵羽が常に一歩先を行くけど、ステイタスを考えれば……ね。

葵羽の二つ名は?

  • 刀姫
  • 大和桔梗
  • 剣聖
  • その他(案があれば活動報告にて待つ)
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