オラリオに来たけど治安悪くない?   作:のん野のん太郎

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中々に強引な展開……これが主人公ぱわーか……


第8話

 朝から『黄昏の館』の中は上を下への大騒ぎであった。それもそのはず、前日に【ランクアップ】について吹き込まれた暴走気味の新人(アイズ)が消えたのだ。

 彼女の場所は考えるまでもなくダンジョンだろうが、普段探索を共にする葵羽は一緒じゃないし、無茶をしていると断言さえできる。

 そこで団長フィンが宣言し、ノアール、リヴェリアをリーダーに二つのパーティで探索することが決定される。そして葵羽は比較的攻略速度が遅いリヴェリア班に加わり、真っ先にダンジョンへと入っていった。

 

「葵羽!! もう一度確認だ。現時点での最高到達階層は12階層だな?」

 

「はい! 13階層に行きたがってましたので中層入りも考えていいかと!」

 

 リヴェリアの班はLv3冒険者一人とLv2冒険者が三人、Lv1の葵羽という五人パーティは最低限の装備で迷宮を駆け抜ける。

 その最中も葵羽がフィン達の前でした攻略状況の確認。

 そして12階層まででアイズが発見されなかった為、リヴェリアは葵羽に撤退を命じる。万が一が無いとはいえ、葵羽に中層以降の高速攻略は荷が重いと判断したのだ。

 

「葵羽は12階層まではソロ攻略可能か!?」

 

「余裕です!」

 

「ならばこれを持ってフィン達に報告を頼む。中層以降は広大で一パーティでは時間がかかる。袋のエリクサーは遠慮せず使っても構わん」

 

 そう言ってリヴェリアはエリクサーが入った袋を葵羽に渡す。

 

「いいか? これはアイズを助ける為に非常に重要なことだ。お前が最も心配してることも理解しているが、どうか呑み込んでくれ」

 

「でも……いえ、わかりました! どうかアイズを頼みます!」

 

「ああ、当然だ!」

 

 話しているうちに13階層への入口へ辿り着き、葵羽のみが体を翻してフィンの元へと走り出す。遭遇したオークなどは新調した刀と脇差を存分に振るい、速攻で灰に帰す。

 順調に迷宮内を駆け抜けるその途中、広間で。

 

「おや、『人形姫』目当てだったが……デモンストレーションには丁度いい子がいるね?」

 

 黒衣を被った人物が二人、白い(もや)の向こうから現れた。その中の一人が女性のように長い濃紫色の髪に整いすぎた顔立ちを晒しながら軽薄な雰囲気で声を上げた。

 

「おい他神様(タナトス)、話が違ェじゃねぇか? 『人形姫』の下見なら請け負ったが、コイツは聞いてねぇぞ」

 

 そしてフードを目深に被った片割れが不機嫌そうに舌打ちしながら返す。

 

「いやいや、考えてみれば何が起こるか分からないだろう? だから、一度彼女で試してみようと思ってね。多少警備が厳しくなるだろうが、陽動もあれば何ら問題ない」

 

「変態野郎め。ガキばっかり狙いやがって」

 

「いやいや、そんな下心ないって。下見は大事だろう? オレはぶっつけ本番も好きだが、周到に準備するのも大好きなんだ」

 

 自分を完全に放り出して話し始める謎の人物にえも言われぬ気味の悪さを感じた葵羽は言い放つ。

 

「誰ですか。今急いでるんですが!?」

 

「そうか、それはすまない。それなら急がないとね?」

 

 タナトスはあっけらかんとそう言うと、片腕を頭上にあげる。岩盤で塞がれた天井を衝きながら、その濃紫の瞳を細め、笑った。

 

「じゃあ早速」

 

 次の瞬間、(タナトス)から、抑え込まれていた『神威』が解放された。可視化されるほどの黒紫のうねり(死神の『色』)が、細い光の柱となって迷宮の天井に突立つ。

 直後、迷宮の大地が呻くように、唸るように、怒るように鳴動する。そして逃げることは許さないとばかりに広間(ルーム)の出入口全てが崩落し、退路を塞いだ。

 絶えず襲ってくる地震を手を広げて存分に味わっていた男神は頭上を仰ぎ、満足気に笑って一言。

 

「あぁ──()()()()()()。これは、いいね」

 

 葵羽がその視線を追って天井を見上げた直後。

 ビキリッ、と迷宮の天井に亀裂が生まれ、雨のように破片を降らせながら天井が弾けて『それ』が召喚された。

 

 同時刻。ギルドの地下神殿で老神(ろうじん)が、白亜の巨塔で美神が、武具の店が立つ大通りで鍛治神が。とにかくオラリオ中のあらゆる神が死神の『神威』に立ち止まった。

 

 黒い鱗をギラつかせ、四つの赤い瞳が軌跡を描きながら地面に降り立つ。

 二足歩行する蜥蜴、竜の成り損ないが天然武器を手にゆらりと蠢く。

『蜥蜴人』特有の赤い鱗は漆黒かつ強靭な鱗で覆われ、二本ある角は大きく捻じ曲がっていた。中層に現れる怪物の筈だが、明確に強化された『亜種』。体躯は小さいが、圧縮された力が宿っている。

 口からは呼吸する度に青い炎が吐かれ、手に持つ剣と盾も従来の粗悪品では無い禍々しい空気を纏う業物。

 それが二匹、葵羽を睥睨していた。

 

「ではお先に失礼」

 

 悪神(タナトス)はそう言い残して白い靄へと消えていく。元凶を引き留めようと‪手を伸ばすとその瞬間、それらから目を離した葵羽は漆黒の尻尾()で広間の壁まで吹き飛ばされた。

 

「が、っ〜〜〜〜〜……!?」

 

 背中を強かに打ち付けて息が止まる。腹をヤスリのような鱗で抉られながら吹き飛ばされ、胃液と共に血を吐き出す。肺が酸素を求めて気管を開けども入ってくるのは血液のみであり、空気が不足した状態で咳き込む。

 葵羽の視界は明滅し、貧血で倒れたときのように平衡感覚が無くなっていた。

 

 

 ──不味い。これはとにかく不味い。とにかく息が……! 

 

「ゲホッゲ……ゴボッ!?」

 

 そして我武者羅に袋から取りだしたエリクサーを口に突っ込む。

 すると湧き上がってくる血が止まり、腹の傷が癒え、咳き込む事で何とか回復に成功した。

 

「ガフッ……グッウゥウウ……ゲホッ……アァ……死ぬ、かと……思った……」

 

 葵羽が血に染った着物から視線を上げると、蜥蜴人(リザードマン)が復活した葵羽に気づき、再び剣を構えていた。

 そして凄まじい速度で肉薄し、剣を振り下ろす。

 

「やっ、ばいっ……!」

 

 回復途中の体に鞭打ち、なんとか体を投げ出すことで躱す。そして抜けた血は戻らないが、今ある傷が完治して起き上がる。

 顔を上げると左から突撃、右からは火炎放射。

 そこで葵羽は全力で左に跳び、斬りかかってくる蜥蜴人を迎撃する。

 広がる青白い熱は蜥蜴人が盾となって葵羽に直接届きはしなかった。だが周囲の温度が急激に上昇し、一呼吸するだけで喉が焼けるように痛む。

 そんな超高温の焔を一身に浴びている蜥蜴人は意に介す事無く、鱗を赤熱させながらも攻撃は止まらない。

 そんな目を開けるのも厳しい状況の中、葵羽は辛うじて蜥蜴人の剣を受け流すことで耐え忍ぶ。アイズよりも速い剣は瞬きすら許さず、一瞬の気の緩みさえ咎める苛烈さだ。

 唯一の救いは力任せ(ステイタス任せ)の一撃であり、絶望的なのは敏捷任せ(ステイタス任せ)の猛攻だった。流すのは容易だが、離脱することは非常に難しい。

 

「ぐっ……ハッ……けホッ……!」

 

 そして長い、あまりにも永いブレスがようやく止まる。

 

「スゥ〜〜〜……はぁっはぁっはぁっはぁ……」

 

 受け流しながらではあるが、ようやく満足に空気を吸えるようになって、息を整える。

 時折混ぜ込まれる尻尾攻撃にも慣れたが、硬く粗い鱗によって触れる度に刀がみるみる劣化していく。

 

「なんなんだコイツ……クソっ!」

 

 手元には寿命を大幅に減らした刀。長期戦を許さないような極悪な鱗により、短期決戦をしなければジリ貧になるのは明白だった。

 受け流し直後に短刀を取り出し、目に投擲しつつ後退。当たればラッキーと思って投げたが、蜥蜴人は頭を振って大層な角で短刀を弾く。

 だが距離は取れた。眼前の蜥蜴人の奥をチラと見るとバッチリと目が合うが、喉の鱗を真っ赤に染めて四肢を地面に着いて何もする様子は無い。冷却時間(クールタイム)といったところだろう。

 ならば今は頭の端に留めておく程度でいいと断じ、地面を抉りながら突っ込んでくる蜥蜴人を視界の中央に収めた。

 すかさず脇差を抜き、目前に迫る曲刀を左へ流して刀を喉元へ突き立てればガリリという音を立てて漆黒の鱗を大きく傷つける。が、出血は無い。

 そして鱗と共に刀の先端が大きく毀れる。それが示すことは──

 

「技量、不足っ!」

 

 居合であれば大抵の物は断ち斬ることが出来るのだ。ならばどんな状況で、どんな材質であれ、斬れる筈だ。

 だが脇差で流し、刀で斬る。これを三度繰り返せども、その域へは至ることが出来ない。

 そして技量の到達よりも早く、刀の限界が訪れる。

 

 ──パキン

 

 毀れに毀れ、細くなった刀はついに耐えきれず、枝を折るように簡単に折れ、彼方へと飛んで行った。

 舌打ちはするが葵羽に動揺は少なく、折れた刀を投げ、取り出した短刀を再び眼球目掛けて投擲。

 すると折れた刀がいい目眩しとなったのか、片目に短刀がズブリと突き刺さり、蜥蜴人が絶叫をあげる。

 悶えてよろけ、怒り、威嚇する蜥蜴人。

 そんな明確な隙を得た葵羽は脇差を納刀し、大太刀の鞘を放り投げながら抜刀。

 咆哮を上げながら剣を構える蜥蜴人は、誰が見ても怒髪衝天。迫力と体の大きさが先程の三割増しに感じられた。

 葵羽はそこから腰を落として居合に似た構えを取り、蒼銀の光をチラつかせながら蜥蜴人へと舌を出して挑発する。

 その挑発は種族の壁を越え、蜥蜴人へと確実に()()()

 眼を光らせる蜥蜴人は咆哮を置き去りにするかのような速さで地を駆け、血を撒き散らせてやると剣を振る。

 

「『一閃』」

 

 葵羽はまず五条の居合、『一閃』を以て剣を弾き飛ばす。

 

「『花天(かてん)』」

 

 次に葵羽の編み出した技。斬撃の交点を一箇所にして高速で三度斬るだけのシンプルな技だ。*1

 葵羽の体がブレると同時に凄まじい速度で三度、刀が三本存在しているように見える速さで振るう。

 空気を斬り裂く笛の音が鳴ると同時に蜥蜴人の胴が弾け飛び、上半身が後方へと打ち上げられながら灰と魔石になる。

 

()()──」

 

 葵羽は直感した。あと少し、あと一歩で一つの壁を、超えられる。今の『花天』も今までにない完成度で、何かがカチリとハマったように感じた。あと一つ、キッカケがあれば自分の剣は次の段階へ進める。そう葵羽は確信した。

 しかし直後、再び襲いかかる熱波。

 

「ぐっ……!? ガッアァアアアアアア!!!」

 

 気を緩めたら、これだ。初めての直撃に着物は端から徐々に燃え、恩恵を受けた肉体のみが辛うじて耐えている。

 全身が痛みで悲鳴を上げる中で、取りこぼした大太刀を見れば熱風と共に今は後方に転がっていた。

 焼けた目を閉じれば傷ついた眼球が沁みて涙が溢れる。腰を落とせば裾が焼け飛んで行く。脇差へと手を添えれば装飾が剥がれ落ちる。

 痛みで頭がおかしくなりそうだが、なぜだか頭は冴えていた。目を閉じても蜥蜴人の場所は分かるし、痛みで手が震えることも無い。

 葵羽は閉じていた口を小さく開き、一つ息を吐いて刀を振るう。

 

 アイズとの模擬戦で放たれたそれとは一線を画す、『一閃』でも無い居合の斬撃は炎を割り、そのまま吸い込まれるように蜥蜴人の喉を裂いた。

 溺れているような絶叫を上げ、のたうち回る蜥蜴人。図らずも初撃を受けた直後の葵羽のような有様だ。

 葵羽はボロボロになった体を引き摺りながらトドメの短刀を投げる。片目を閉じて涙を流しながら、何とか一本だけ。

 放たれた短刀は狙いを違う事無く口の中に侵入し、血がドバドバと溢れていく。そして終に、蜥蜴人は己の血で溺死した。

 

「勝っちっ……」

 

 そして灰となる蜥蜴人を見届けた葵羽はニコリと笑った後力尽き、パタリと倒れた。

*1
*の形で斬る




今のところ黒髪ロングの大人BODYが頭抜けてます
みんなロリが好きだと思ってました(偏見)
また刀ダメにしてるよこの子。黒モンスターはデカいのばっかりだけど、小さいモンスター(小さくて高性能)が好きなので蜥蜴人にしました。一人だとしょぼそうだから二匹に。
ちなみに黒蜥蜴人はリドよりは大分弱いです。
そしてお察しかもしれませんが、アイズの【ランクアップ】イベントは飛びます。

葵羽たんの将来(作者は髪型エアプです)

  • 黒髪パッツン合法ロリ
  • 黒髪ロング合法ロリ
  • 黒髪パッツンでアイズと同じくらいの体型
  • 黒髪ロングでアイズと同じくらいの体型
  • 黒髪パッツンで大人BODY
  • 黒髪ロングで大人BODY
  • ポニテ(体型は今度アンケート)
  • それ以外の髪型(髪型のアンケートを実施)
  • 任せる(なんでもいい)
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