10円セールの音声作品を聞いていた時に閃く謎アイデアを推敲せずに書き散らしました。タイトルがだいたい全部です。
よくわからないがこの世界は恋愛系のゲームらしい。
己の部屋の前で起きたとんでもない出来事を考えるとそう言う結論になる。
今朝、よく話すお隣さんの部屋に虚空から人間が出現した。『可憐』という言葉の良く似合う煌びやかなお嬢さんだった。
そんな彼女はお隣さんの胸ぐらを掴みながら夫婦漫才を始めたのだ。声が大き過ぎて、ベランダでコーヒー飲んでいた己にとても良く聞こえてしまうほどに。
「あなた! このような電子の世界のにうつつを抜かしておりまして! 恥ずかしいとは思いませんの⁉︎」
「待て待て待て! たかが個人の趣味なんだから好きに勝手にして良いだろう! 誰にも迷惑はかけていない!」
「私にかかっていましてよ! あなた現実感を損なうから〜とかいう理由で通知切ってますわね! そのせいでご両親からの連絡が私に来たのですわ! プラチナ帯への召喚戦で勝ち確まで押し込めていたこの私に!」
「……保留とかしなかったの?」
「頭からすっぽ抜けていましたよそんなことは! 集中ガンギマリの時の人間に真っ当な人間性が残っているとお思いで⁉︎」
「す、すまん」
「ごちゃごちゃはもう良いですわ。とにかく現実に帰還いたしましょう」
「……てか、なんで俺の繋いでるサーバー分かったの?」
「………………さっさと帰りますわよー」
「なんか怖いんだけど」
お隣さんとはベランダでよく話す。『喫煙者に厳しい世界』という言葉を良く言っていた人で、のんびりコーヒーを飲む己の横でスパスパとタバコや葉巻を吸いまくる人だった。
あんなに吸いまくって健康は大丈夫なのか? と若干不安であったが、この世界の住人でないというのなら健康被害は関係なく味だけを楽しむことができていたのだろう。
正直びっくり仰天な話ではある。だが別に己に関係のある話でもないのでどうでも良いか、と思って家を出ると、お隣さん家の扉が開きっぱなしだった。
「異世界人(仮)のマイルーム……気になるな」
扉を閉める時に少しくらい覗いても良いだろうか? という迷いと共に扉に触れたとき、頭の中に何やら『おかしなもの』が流れ始めた。
イメージ的には、改造ツールなどにありそうな文字だけUIだ。解像度変更などのいくつかのメニューがあり、外部から入れられたであろう名称で用途が区分けされているコードがあったりする。
そしてそれは、頭の中でなんとなく動かせば使えてしまうものだった。
「……好感度MAXなんてものがあるのか。人の人への感情をこうも簡単に変更できるとは、少し恐ろしくはあるな」
とはいえ『実行』するきはなく『メニューを閉じる』を探そうとしたそのとき。
『コードを実行します』
という音声が頭の中で響いてきてしまった。
これは、おそらく己が心のどこかで好感度MAXというものに心を惹かれていた結果であろう。人間関係というのを得手としていない己にとってこのチートは魅力的なものに映ったのだから
と考えることで単純な操作ミスではないと思い込もうとする浅はかな己がいた。手違いで他人の心を踏み躙るとか許されざるに限りなしだ。
……その後、『チートコードの解除』をメニューから探すも見つからず、お隣さんがやってきた時に話を聞く事を心に決めたのだった。
そして、学校には遅刻した。
講義に遅刻してしまった己は、普通に怒られた。周囲からの視線も『珍しい事があるものだ』と見られる程度で好感度MAXという印象はない。
「お疲れ、寝坊でもしたの?」
「そんな所だ」
「へー」
友人の態度は普通だった。驚くほどに普通だった。
おそらくこれこそが好感度MAXのチートコードの力だろう。
同じ学部で大体同じ専門の俺と友人『
そして、こちらのことをよくよく観察している。
おそらくアレは『講義が同じで逃げられない苦手な相手』をなんとかしようという思いの現れだったのだ。高嶺には同じ学部の友人が少ないので、嫌いな相手すら利用しなければならないという事なのだろう。
そんな努力をを偽りの好感度で踏み躙ってしまったとは、恐ろしい。
チートの解除ができるまでは深く関わることをせず、解除を行なった後にしっかりと謝ろう。
そうこうしていると一限が終わり、3限までの少し空いた時間が生まれる。
いつもは高嶺とカフェテラスでのんびりしたり課題したりとだったが、今日はやめておくべきだろう。などと考えていると高嶺の方から話しかけてきた。
「ねぇ安永くん」
「……どうした?」
「私に何かした?」
ふわりと自然に告げられるその言葉。心胆を寒くするとはこのことだった。
「なぜそう思うのか聞かせてくれないだろうか」
「なんか安永くんの事がいつもと違く見えるんだよ。目の端で君を追いかけてなくて、ペンの音が心地よくなくて、君と居たいって気持ちが惰性でしか出てきていないんだ」
「それは……」
あれ、思っていたものと違うぞ?
「答えて、何をしたの? 君が私に……というか私を含めた皆に何かをしてそれが辛いって感じがしてる」
「……信じがたい話だとは思うが「何を言っても信じるよ私は。君の事をす……ゆ、『友人』だと思ってる心に嘘はないからね!」そ、そうか」
そうして、己は告げた。今朝からの出来事を好感度MAXチートということを実行してしまったと言うことを。
そして高嶺は言った
「え、お隣さんと女の人の演じ分け凄くない?」
全く予想と違う事を
「……そうだろうか?」
「臨場感ありありだし、言葉の裏の感情とか伝わってくる気がするし」
「聞いたまま伝えたつもりだったのだが」
「聞いたままでツンデレ系ストーカーの内面全部表現できるって何さ。大好きオーラ隠せてない口ぶりとかキャラ作りしないと無理じゃない? 演劇部とか劇団とか行きなよ」
「煽てられた所で出せるものはあまりないぞ。茶のおかわりを持ってくるくらいか?」
「丁度良いや。お願いねー」
高嶺と自分の紙コップをもって角にある給茶機に赴く。
そういえば高嶺は少し熱めのお茶が好みだったなと思い出した。手早くしよう。
「おかえりー」
「ああ。それで話の続きだが」
「うん、好感度MAXの話だね。けどぶっちゃけ何も変わらないっぽいよ? こうして話してるだけでもキミに対しての感情は前みたくなってきてる。もっとキミと話してたいし、君の与太話だって信じていいかな? って気持ちになれてる」
「……それは何故だろうか?」
「思い出じゃないかな? 私が君のことをどう思ってるか? ってのはキミといた時間のことを覚えてて、そこからキミに対しての印象を作り出してるからだと思うんだよね」
「……どのような印象なのだろうか?」
「クソボケ天然で若干価値観がズレてるけど他人のことを思いやれる人?」
「クソボケ天然……」
「あ、あと勉強はできる」
「それはそうだ。努力しているからな。だが講義の評価取れている事と勉強ができることは別ではないだろうか?」
「ほらクソボケ天然」
「……む」
言い負かされてしまった。だが、己を言い負かした高嶺の表情は晴れやかなもので、それだけで言い負かされて良かったなと思えた。
「こんな感じの印象があるわけだからさ、時間が経てば元に戻ると思う。まぁ、キミがこの『好感度』を活かしてナンパに明け暮れるってなら話は別かもしれないけど」
「失礼な。婚前交渉を行った後の責任を取れるアテがないのだから、自制はする」
「ナンパの全てがそういう目当てじゃな……いや、普通にそうだよね。みな下心だもんね。あと、安永くん地味にセクハラ」
「すまん」
「まぁ、良いよ」
花のように笑った顔が見える。話しているうちにいつもの調子に戻っている。やはり高嶺は話していて楽しく、そして得難い友人だ。
「それより、そのお隣さんってどんな人なの? 異世界人ってもそんなに変わりない?」
「あぁ、ベビースモーカーであることは除けば普通の人で、面白い人だったよ」
「えぇ〜本当ですぅ?」
「本当です」
そうして、その日はいつもの感じに戻った高嶺といつも通りの大学生活を過ごすのだった。
「ねぇ、君の家に行って良い?」
「構わないが、何か用があるのか?」
「お隣さんのお部屋の扉にチートコード入力機械があるんでしょ? 見てみたいし、お金増やすのとか使ってみたいかも」
「どんな危険があるか分からないんだからお隣さんに話聞いてからで良いだろうか?」
「大丈夫だよ興味本位だし」
「……まぁ別に構わないか」
そういえば何かを忘れているような気がする。朝の出来事のショックが大きくメモをし忘れていたようだ。
そう悩んでいる己を見た高嶺は一つのアドバイスをくれた。
「そういえばコーヒー買って行かなくて良いの? 少なくなってない?」
「そうだった。少し寄り道しよう」
「うん、行こ行こ」
と、すたすたと『俺の馴染みのコーヒーショップ』への道を歩いていく高嶺。
「高嶺もコーヒーを飲むんだったか?」
「最近ちょっと気になりだしてね」
「なるほど。ならせっかくだからウチでご馳走しよう。店主お薦めのブレンドはなかなかにコクがあって美味いのだ」
「ありがとねー」
安永くんのことを好きになったきっかけは、『困っていたところに声をかけてくれたから』というありきたりなもの。
一緒の時間が増えて仲良くなって、一緒に話をしてその心を好きになった。
だから、もっと彼の事を知りたいと思って色々やっていた。
彼がコーヒーを好きらしいから豆もコーヒーミルも同じものを買ってみた。
彼が読んでいる本と同じものを買って読んでみた。
彼が誰と話しているか気になったから聞こえるように仕掛けておいた
彼の家が気になったから合鍵で中に入れるようにした。
だから、今朝安永くんが聞いていた異世界人? の話は私も聞いている。
そして彼とお隣さんの話だって聞いている。
お隣の無職が効果な煙草、葉巻などを好き勝手に使える理由が安永くんの言った『チート』にあるのだろう。休暇で異世界旅行している人達が働きたいとは思うまい。
もしそれを利用できるのであれば安永くんと二人だけで過ごす日々の到来を早める事ができるだろう。
そうして慣れ親しんだ道を歩いていく。隣に安永くんがいるのが幸せを感じられて、こんな日が早く来てほしいな、と思う。
そうして、安永くんの部屋にたどり着いた。
お隣の部屋は扉こそ閉まっているが鍵は空いている。そして、扉を触ると私にもチートコードの入力コンソールが使えるとわかった。
『所持金』についてのコードはあった。所持金を10万円にするというものであり、これを上手く使うのならば私に紐付いていない口座を作ってそれに財産を十万円ずつ入れるという形になるだろう。
そうして、彼の部屋の中に入る。いつも通り、良い匂いのする部屋だ。
「コーヒーを淹れる。砂糖はいるか?」
「安永くんと一緒でいいよ」
「ならブラックだな」
リラックスしている姿勢を見せつけるようにしながら家の中を見る。いつもとは視点が違うから新鮮だ。
しかし、あるべきものがないように思える。
彼の私物の中に私が仕込んだ2番め3番めの盗聴器とかカメラとかだ。
「ねぇ、イーブイのぬいぐるみプレゼントしたよね?」
「あぁ、アレか。ちょっとお隣さんのところに置いている」
「……なんで?」
「置き手紙の目印として使っている感じだな。アレならば恐ろしい印象は持たれまい」
「別にアレじゃなくて良かったよね? 私のあげたものだから邪魔に思ってた?」
「かなり愛着はある。毎晩毎晩自分の事を見るように向きを
変えられている? 私の侵入に気付いている? だったら私のことを部屋の中に入れたというのは『そういう合図』だったりするんじゃないかな?
嬉しさで顔がふにゃふにゃになりそう。
「へ、へ〜。変えられているって誰に?」
「ストーカーにだ」
「……ストーカー?」
「ああ。通帳だとか印鑑だとか目当てではないらしいのだが、私の部屋に不法侵入者が来ていることがあるのだ」
「え、警察沙汰にしないの?」
「うむ。こちらを害そうとする意思というものが見えなくてな。悪いとは分かっているのだが……」
「そ、そうなんだ……ちなみに、そのストーカーの人にあったらどんな話をしたいの?」
「そうだな……まずはコーヒーが好きかを聞きたいな」
「ストーカーする理由じゃなくて?」
「所感だが、俺のことを知ろうとしてやっていることのようなのだ。彼、あるいは彼女はこうして己のことを知ることで取っ掛かりを掴もうとしているのではないだろうか」
「へぇ?」
「なのでストーカーに関しては極論『いずれ会って話すのだから気にしていない』という事になるな」
あれ、これは私がやっている事だと気付かれていないような気が……
「ていうか、そういうのこそ『チートコード』を使ってなんとかならないのかな?」
「困ってはいないので使う気はないぞ。どのような人であるのか興味が絶えないのだけれどもな」
「どんな人だと、良いの?」
「思いつかないな。会ってみなければ分かるまい」
「ただ、きっと素敵な女性なのだろうとは思う」
その言葉に私の心は弾み続け、もう飛んでいきそうになる。
「君にも、会ってほしいと思うな」
「……愛ゆえのストーカーだと理解しているんですよね?」
「まぁ、憶測だがな」
「部屋の中に入るのも許してるんですよね?」
「拒絶していないだけだが、そうだ」
「それが誰かはわからないけど、素敵な人だと思うんだよね?」
「理屈は聞くなよ? なんとなくそう思っただけなのだから」
「そこまで、理解してて、なんで、なんで! 私のことだと分かってないんだよぉおおおお!」
物思いに耽るクソボケ天然ポンコツ男を背後から抱いて、ベッドへと頭から叩きつける。
後にして思えば、この時はまだ私は『チート』によって思考がいつもと違っていたのだと思う。
数値にして87万6589。それが私の彼への好感度。それがチートによって100まで低下させられていたのだ。
すぐに元の感じに戻ったとはいえバックドロップをした時は恐らく10万にも満たなかったのだろう。
そもそもの話として、そういうクソボケ天然の事を好ましいと思ってトチ狂ったのが私なのだから。
なお、お隣さんはその後一度だけ戻ってきてチートとかの後始末をしてから帰って行った。
残念ながらチートコードで稼げて金額というのはそう多くない。彼と二人だけの生活は、まだ少し遠いだろう。
安永くん
全体的に善良な人で基本的に好感度は高かった。なので好感度100になってもあんまり変わることはなかった。最近指輪を買うためにバイトを始めたとか
仙人風の狂人。金銭的ダメージがなかったからとストーカーを黙認したバカ。普通に警察沙汰にしましょう。
高嶺翠ちゃん
ヤンデレストーカー。安永くんと二人だけの完結した世界の中でドロドロに一つになっていたいという願望を持つ。
ターゲットになったのが仙人風の狂人だから問題になっていないが、普通に被害者は精神を病むレベルのやばい監視を繰り出し続けている。
異世界喫煙者
喫煙したさにVRゲーム世界(ぽいところ)へとやってきた男。同時期に都会に出てきた幼馴染にたくさん世話をされている。
持ってきたチートは『かんたんチートセット』という怪しげなパック商品であり、金回り以外は興味もないので使っていなかった。
好感度
システム的に設定されているのは0から100まで。だがシステム内部で加速度的に人間性を獲得し社会を発展させまくったこの世界の人々は情緒がとても豊かになったので上限と下限は無くなっている。好感度マイナス1万とかの憎むべき怨敵や、好感度+5000の新興宗教の教祖様とかいたりする。