ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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祝・100話到達


五十五手美装のゴールデンウィーク~sideA~

 

 

 未確定ライオットのネット審査に向けての活動はとても重要です。特にネット審査は実力よりも人気や知名度が大きく影響するので、宣伝などは非常に重要でしょうし活動には力を入れるべきです。

 しかし、かといって根ばかりつめていても駄目です。適度に体と心を休める必要があります。

 

 そして、ここで重要なのは間もなくゴールデンウィークであるということです。大型連休、ひとりさんと過ごさない理由などありませんし、もちろんひとりさんの家にはお邪魔するのですが、それだけというのも勿体ない気がします。

 せっかくのゴールデンウィークなので、ひとりさんとどこかに出かけたいという思いはあるのですが……問題もいくつかあります。

 

 まず、ゴールデンウィークは人が多く観光地などはかなりの混雑が予想されます。ひとりさんはそういった人の多い場所が苦手ですし、気疲れする場所に連れていくつもりもありません。

 そして、もうひとつ年末の時と違って予め計画していたわけでもないので、いまから旅行などに行くのは難しいでしょうし、そもそもひとりさんもバンドの練習やアルバイトがあるので遊ぶことができる日は限られます。

 

「……というわけで、なんとかこの大型連休を活かして、ひとりさんとデートがしたいのですが、いかがでしょうか?」

「あっ、そっ、それを、真っ先に私に直接聞きに来る辺りが、最高に有紗ちゃんらしいです。あっ、えっと……私は、有紗ちゃんが出かけたいなら、大丈夫ですが……あっ、あんまり人が多い場所でなければ……」

「なるほど、ちなみにひとりさんはどこか行きたい場所などはありますか?」

 

 とりあえず悩み続けるよりも行動するのが私なので、ひとりさんに直接尋ねにきました。ひとりさんは、私の願いを快く受け入れてくれて、アルバイトなどが無い日であれば出かけるの自体は構わないそうです。

 ひとりさんの優しさに感謝しつつ、ひとりさんにも希望などが無いかを尋ねてみると、ひとりさんは少し考えたあとでなにかを思いついたような表情を浮かべました。

 

「……あっ、そっ、そういえば、パジャマを買いたいと思ってました」

「パジャマですか?」

「あっ、はい。いま着てるのが古くなったので、新しいのを買おうかと……」

「ふむ……それでは、範囲を広げて服を中心にショッピングに行くというのはいかがでしょうか? 大型のモールなどを避ければ、そこまで人が多いというわけでもないでしょうし……」

「あっ、はい。大丈夫です」

 

 提案したあとで思い至りましたが、これは大変に素晴らしい展開ではないでしょうか? なにせ、服を買いに行くということは……買う買わないは別にしても試着というのは付いて回るものです。つまり、普段とは違う恰好をしたひとりさんを見ることができるという、非常に幸せな要素です。

 

 

****

 

 

 日程などを相談して、ひとりさんと共に服を中心としたウィンドウショッピングにやってきました。やはりゴールデンウィークというだけあってそれなりに人はいますが、渋谷や原宿といった混み合う場所は避けたのでかなりマシといえます。

 ひとりさんと手を繋いで歩きつつ、最初はパジャマなどを置いている店に向かうことにしました。メインの目的はひとりさんの新しいパジャマを買うことなわけですしね。

 

「この店は寝間着の専門店なので、いろいろなものがあると思いますよ」

「おっ、おしゃれなお店ですね。ぜっ、絶対ひとりじゃ来れないやつです。あっ、あと、なんか、高そうな感じも……」

「ものによっては高いものもありますが、幅広い客層に対応しているので、安いものも多いですよ」

「なっ、なるほど……」

 

 ひとりさんと一緒に店内に入るとシンプルなパジャマから、変わり種のものまで非常に多くのパジャマがあり見た目にも華やかな感じでした。

 

「う~ん。せっかく来たんですから、私も新しいパジャマを買うのもいいかもしれませんね」

「あっ、いいと思います。一緒に選びましょう」

 

 どこか嬉しそうな様子のひとりさんと微笑み合って、順番にパジャマを見ていきました。すると何かピンとくるものがあったのか、ひとりさんが手を伸ばして1着のパジャマを手に取りました。

 それは、なんというか怪獣をイメージしたようなフード付きのパジャマで、いわゆる変わり種のものでした。

 

「あっ、こんなのもあるんですね。私の心の中の承認欲求モンスターのイメージにそっくり……」

「これを着こなすのは難しそうではありますが……興味があるなら試着してみてはいかがですか?」

「うっ、う~ん……まっ、まぁ、試着だけなら……」

 

 なかなか着こなすのが難しいデザインではありましたが、可愛らしくもあるという印象でした。例えばフード部分だけを外せば普通に可愛らしいパジャマですし……。

 ひとりさんも興味があったのか、試着してみることに決めたみたいでふたりで試着室に移動しました。そして試着室に入ったひとりさんを待っていると、少ししてパジャマを着たひとりさんが出てきました。

 フードもしっかりと被っており、少し気恥ずかし気な印象でしたが緑を基調とした色合いは、ひとりさんに似合っている感じでとても可愛らしいです。

 

「……がっ、がおー……なんちゃって」

「ふぐぅっ!」

「あっ、有紗ちゃん!?」

 

 なな、なんという可愛らしさですか……思わず膝から頽れそうになりました。はにかむ様に微笑みながら怪獣の真似をするひとりさんの愛らしさときたら、いますぐにでも全力で抱きしめたいほどです。

 

「わひゃっ!? あっ、有紗ちゃん!? なっ、なな、なんでいきなり抱きしめ……」

「……我慢しようと考える前に行動に移していました。仕方ありませんね。これほど愛らしいひとりさんを前にして、冷静さを保っている方が失礼というものです」

「堂々としてる……あっ、あまりにも堂々としてて、逆に正しい行動みたいに思えてくるので不思議です……あっ、えっ、えっと、そんなに似合ってますか?」

「人類の限界を越えてるほど可愛いです」

「いっ、言い過ぎです!?」

 

 よく見ると後ろ部分に尻尾のような飾りもあって、なかなかに凝った造りになっていますね。着脱可能になっている感じなので、寝る際に邪魔にならないようにという感じでしょうね。

 なんにせよ変わり種ともいえるパジャマをここまで可愛らしく着こなせるのは、流石ひとりさんというべきでしょうね。最高に可愛いです。

 

「……あっ、あの、有紗ちゃん? ところで、私はいつまで抱きしめられているんでしょうか……」

「私はこのままずっと抱きしめていたいのですが、流石にそういうわけにも行きませんね」

「あっ、けっ、けど、そんなに気に入ってくれたんなら……このパジャマを買いますね。きっ、着心地もいいですし」

「色合い的にもひとりさんの髪の色がアクセントになっていて、バランスがいいですね。普段ひとりさんが着ているジャージに近い形状のパジャマなので、着やすさもあるかと思います」

 

 実際可愛らしさ云々を抜きにしても、部屋着としても十分使えるデザインですし悪くはないと思います。値段は安めですが、生地などはしっかりしており品質は高いように思えました。

 結局ひとりさんはそのパジャマを買うことに決めたみたいで、その後は私のパジャマ選びに付き合ってくださいました。

 私が現在着用している寝間着は、ワンピース風……いわゆるネグリジェタイプのものなので、普段とは違ったパジャマタイプのものは少し新鮮でした。これから温かくなってくることも考えて七分袖タイプのものを選んで試着してみました。

 

「……どうですか?」

「…………」

「ひとりさん?」

「あっ、すっ、すす、すみません! みっ、見惚れてました……有紗ちゃんはなに着ても信じられないほどに可愛いですけど、そっ、そのパジャマも凄くよく似合ってます」

「ふふ、ありがとうございます。ひとりさんにそう言ってもらえると嬉しいです」

「あぅ、あぅ……えっ、笑顔が眩しい……」

 

 せっかくひとりさんが褒めてくれたので、このパジャマを買うことにしましょう。そしてまた今度ひとりさんがウチに泊りに来てくれたりした際に、互いに今日購入したパジャマを着ることが出来たら素敵です。

 そんなことを考えつつ、元の服に着替えなおしてから、ひとりさんと手と繋いでレジに向かいました。

 

 

****

 

 

 パジャマを買い終えたことで、一番メインとなる目的は達成しました。これからは特に目的は無く目に付いた店に入っていくような形となりますね。

 ただ、ひとりさんは家からこちらまで出てきて、すぐにパジャマを買いに行った状態で疲れているかもしれないので、どこかで休憩するのもいいかもしれません。

 そんなことを考えていると、一件のカフェが目に留まりました。

 

「ひとりさん、ここのカフェでパンケーキフェアをやってるみたいなので、休憩を兼ねて寄っていきませんか?」

「あっ、はい。そういえば、少し喉も渇きましたし……そっ、それにしても、カフェもお洒落……よっ、陽キャオーラが凄い店ですね」

「確かに喜多さんが好きそうな、お洒落な雰囲気ですね」

「あっ、分かります。たっ、確かに喜多ちゃんが好きそうなイメージです。リンゴのパンケーキとかも映えそうですし」

 

 店の看板にはりんごを使ったオリジナルパンケーキの写真が貼られていて、ひとりさんの言う通りかなりお洒落で可愛らしいデザインになっています。

 通常のパンケーキだけでなくスフレパンケーキなどもあるみたいですし、美味しそうです。

 

「あっ、有紗ちゃん。パンケーキとスフレって……何が違うんですか?」

「主に材料が違いますね。パンケーキは小麦粉に卵、牛乳、砂糖、ベーキングパウダーなどを用いてフライパンで両面を焼くもので、パンケーキのパンというのも平鍋を指す言葉ですからね。対してスフレはフランス語で『膨らんだ』という意味があり、メレンゲに材料を混ぜてオーブンなどで膨らませたものを指します」

「なっ、なるほど」

「ちなみにスフレパンケーキというのは、スフレの材料を使ってパンケーキのようにフライパンで焼いたものですね」

「へぇ……さすが、有紗ちゃん。教えてくれて、ありがとうございます」

 

 そう言って嬉しそうに微笑むひとりさんに、私も笑顔を返してから一緒に店内に入りました。

 

 

 

 




時花有紗:相変わらずの猛将。行動力の鬼……例によって可愛いぼっちちゃんが弱点であり、今回も相当冷静さを欠いていた。最近ではひとりと出かける時はいつも手を繋いでいるので……もうカップルでは?

後藤ひとり:有紗が行きたいのであれば、ゴールデンウィークの外出も二つ返事で了承する激高好感度。ぼっちちゃんの怪獣パジャマが気になる場合は「ぼっち・ざ・ろっく パジャマ」で検索すると限定ポップアップストアの書下ろしイラストで見れます。ゴールデンウィークにデートして、ショッピングで服を買って、途中でお洒落なカフェでパンケーキを食べる……ぼっち、お前もう陰キャやめろ。
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