ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

107 / 211
閑話・それぞれの反応(ネット投票)

 

 

 未確認ライオットのネット投票が始まり、結束バンドと関係がある者たちもその話題で盛り上がっていた。以前池袋のブッキングライブで一緒に演奏した地下アイドルグループの天使のキューティクルのメンバーも控室で、その話題を話していた。

 

「結束バンドさんたちすごいね~皆、入れてあげようよ」

「天キュルのファンにも呼びかけますね!」

 

 リーダーであるミカエルの言葉に、ウリエルも笑顔で答える。そしてもうひとりのメンバーであるラファエルは、おもむろに鞄から法被と鉢巻を取り出して身に纏う。

 法被の背には「有後党」と文字が刻まれており、ハチマキにも「百合しか勝たん」と文字が入っていた。

 

「……ラファエルちゃん? なにしてるのかな?」

「推しである結束バンドへの投票です。正装して行わなければ、無作法というものでしょう!」

「と、というか、いつの間にそんな法被を……そして有後党ってなんですか?」

 

 やや戸惑いながら尋ねるミカエルの言葉に力強い目で答え、ペンライトまで取り出し始めるラファエルにウリエルもなんとも言えない表情を浮かべて問いかけた。

 だが、オタクと言えるレベルの追っかけにそういった質問は悪手である。問われたラファエルは目を輝かせて、生き生きとした表情で語り始めた。

 

「有後党というのは、有紗様とひとりさんのカップリングを推す派閥で、結束バンドファンの中で非公式最大派閥でもあります。結束バンドのライブを見に行った時に、党首と知り合って、私も入れていただきました。この法被は党首に提案して、先日完成したばっかりの品ですね! 鉢巻は手作りです!」

「……い、いつの間に結束バンドのライブに……」

「有紗様の美貌にやられ、有後の尊さに心を焼かれてから、結束バンドは箱推しするぐらい大好きで、いまや私は立派な結束バンドファンです! ちなみに私の最推しは有紗様なんですが、有紗様は演奏メンバーではないので、個担としてはリョウ様を推しています。カップリング推しはもちろん有後です。有後しか勝たんのです!! あっ、ちなみに個担は同担拒否ですが、カップリングの方は同担歓迎なので、よろしかったらミカエルさんやウリエルちゃんもどうですか! 有後党は、常に新たな同志を歓迎してますよ!!」

「「……」」

 

 そんな質問をしたわけでは無かったのだが、興奮気味に熱く語るラファエルにミカエルとウリエルは完全に気圧されてしまった。なんというか、追っかけの気迫を感じた思いである。

 

「近々メンバーカードが作られる予定ですし、いまなら若い番号も狙える大チャンスですよ!! やはり時代は有後なんです。可愛い女の子がガチ恋距離でいちゃいちゃしているのが、圧倒的なんばーわん! かわちーかわちーちょうかわちー! かわちーカーニバル開演って感じで、常にしゅきしゅきって気持ちが溢れてしゅきめろりーしちゃうんですよ!!」

「……う、うん。とりあえず、ラファエルちゃん……本番までにはその法被と鉢巻は外しておいてね。あと、私はちょっと用事があるから……ウリエルちゃん、後よろしく」

「嘘でしょ!? ミカエルさん、この限界オタクの前に私だけ放置してどっか行くつもりですか!? って、ひぃ、肩掴まれた!?」

「ウリエルちゃん、見てください! この結束バンドのMVなんですけど、最初のMVはいきなり究極ガチエモ尊さ爆発で、しゅきぴーが溢れて止まらないんですよ! ウリエルちゃんもきっとすぐにこの気持ちが分かりますよ!!」

「……じゃ、頑張って、ウリエルちゃん」

「待ってください! 置いてかないで! ミカエルさぁぁぁぁぁん!?」

 

 ラファエルに肩をガッチリ掴まれて布教を開始され、悲痛な叫びを上げるウリエルに申し訳なさそうな表情を浮かべつつ、ミカエルは早足でその場を離脱した。

 

 

****

 

 

 そして時を同じくして、結束バンドファンの1号と2号も大学の一室で結束バンドに関して話していた。

 

「いや~結束バンドもこんなところまで来ちゃったね! 私たちが協力したMVもどんどん伸びてるし、ファン冥利に尽きるよね」

「うん、嬉しいことだよね。ただ、そのおかげで私は最近少し忙しいけどね」

「……というか、さっきからなにしてるの?」

「有後党のメンバーカードのデザインを考えてるんだよ! 最近は党員も増えてきたし、恵恋奈ちゃんっていう期待の大型新人もメンバーに加わったからね。私も党首として頑張らないといけないからね!」

「……そ、そう……」

 

 熱く語りつつ2号は手元のノートパソコンを操作して、メンバーカードのデザインを考えていく。いや、カード自体のデザインは既に決まっているのだが、使う有紗とひとりの写真をどれにするかで悩んでいるようだった。

 

「……というか、なにその写真?」

「有紗ちゃんとひとりちゃんのプリクラ写真だよ! ひとりちゃんがギターケースの裏に貼ってるのをたまたま見つけて……土下座してデータを貰ったんだ!」

「なにしてんの!? ある意味で変な拗らせ方してるじゃん!!」

「……有後はね……希望の光なんだよ。ストレスの多い現代社会を生きる者たちに尊さと癒しを与えてくれる神聖なものなんだよ」

「……そ、そっか……」

 

 あまりにも真っ直ぐな目で語る2号を見て、1号はなんとも言えない表情で頷く。同じ結束バンドファンではあるのだが、1号は箱推し……つまりはバンド全体のファンという側面が強く、2号は個人及びカップル推し……路上ライブで見た有紗とひとりのふたりを強く推している傾向がある。

 どちらも同じ結束バンドファンではあるのだが、熱量という点においては2号の方が強かった。

 

「というか、この法被もしっかりした造りだよね?」

「うん。有後党の中に服飾関係の人が居て、その人が恵恋奈ちゃんと協力して作ってくれた品だね。メンバーズカードも名刺作成の専門家が居るから、ある程度案が出来たら続きはその人に任せる予定だよ」

「……じ、人材が豊富だね有後党……」

「それだけ、世界が有後を求めているってことだね!」

「そっかぁ~まぁ、楽しそうでなによりだよ」

 

 輝くような笑顔を浮かべる2号を見て、1号はそれ以上突っ込まないことにしたのか、苦笑を浮かべつつ話題を変えるのだった。

 

 

****

 

 

 新宿FOLTでは、きくりが銀次郎にスマホの画面を見せながら楽し気に結束バンドのことを紹介していた。

 

「ほら、銀ちゃん見てよ。本当に結束バンド入ってるっしょ?」

「やだ~すご~い。MVもうちでライブした時より超レベル上がってるじゃないの~。またウチでライブしてほしいわ~!」

「うんうん。それに最近は大槻ちゃんも結束バンドの影響受けて、いい感じに伸びてる気がしない?」

「そうね~元々レベルは高かったけど、最近は貫禄みたいなのも出てきたわね」

「ね~若い子ってのは成長早いよね~」

 

 楽し気に話すきくりと銀次郎の会話を、少し離れた場所で聞き耳を立てていたヨヨコは、ふたりの誉め言葉に満足そうな表情を浮かべている。

 

「ヨヨコ先輩嬉しそうっすね~」

「最近、先輩調子いいもんね。歌ってみたの動画も伸びてるし、フォロワーも増えたんだって~」

「ふっ、まぁ、当然の結果ね」

 

 あくびと楓子の言葉を聞き、更に鼻高々といった表情で胸を張るヨヨコだが、それを見たあくびは少々訝し気な表情を浮かべた。

 

「いや、正直自分は、あのヨヨコ先輩の動画は裏があると思うんすよね~。だって、今どき大真面目にメントスコーラとかしようとするような人が、いきなり別ジャンルの流行曲を歌ってみたしようとか考えますかね?」

「……ぎくっ」

「……ぎくって口に出していう人初めて見ましたよ」

 

 あくびの指摘に分かりやすいほど動揺した表情を浮かべるヨヨコを見て、楓子は苦笑を浮かべる。嘘を付けない性格というか、あまりにもあくびの言葉が図星ですと全身で表現するような姿がなんともヨヨコらしいと思ったからだった。

 そんな光景を眺めていた幽々がチラリとヨヨコの頭の上を見てから、口を開いた。

 

「たぶん有紗さんだと思うよぉ~ヨヨコ先輩に憑いてる子の影響を打ち消せるぐらいなのはぁ、有紗さんぐらいだと思うし~」

「幽々ちゃんはこう言ってますけど、ヨヨコ先輩?」

「……うわぁ、こんな分かりやすいほど顔に出ることってあります? ワザとやってるとか言われても納得できるんすけど……」

 

 幽々の指摘にヨヨコは明らかに焦った様子で明後日の方向を向いて大量の汗を流しており、それが正解ですと全身で肯定しているような印象だった。

 

「……けどまぁ、有紗ちゃんなら納得っすね。そもそもヨヨコ先輩が素直にアドバイスを聞く相手も少ないっすし……」

「有紗ちゃんと言えば、この前の高級ホテルのスイーツビュッフェは美味しかったね、はーちゃん」

「ですね。ふーちゃん、めっちゃ食べてましたしね~今度改めて、お礼言わないとっすね」

「綺麗なホテルでしたねぇ~」

「え? なにそれ知らない……」

 

 あくび、楓子、幽々が楽し気に話し始めた高級ホテルのスイーツビュッフェに関して、ヨヨコだけは心当たりが無いようで、唖然とした表情を浮かべていた。

 

「前に~有紗さんが余ってるからってスイーツビュッフェのチケットをくれたんですよ~」

「というか、ヨヨコ先輩にも声かけたじゃないっすか、ほら次の休日暇ですか~って、でも都合悪いってことだったんで、3人で行ったんすよ」

「そっ、そういえば、そんなこと言われたような……」

 

 記憶をたどってみれば、確かにあくびに休日の予定を聞かれた覚えはあった。だが、その時のヨヨコは動画サイトの歌ってみたが好評で浮かれており、カラオケで新曲の練習をするために都合が悪いと返答した覚えがあった。

 完全に自業自得ではあるが、バンドメンバーで自分以外の3人が楽しんで来たというのを聞くと、なんとも言えない寂しい気持ちになるものである。

 そんなヨヨコの気持ち察してか、楓子が笑顔を浮かべながら声をかける。

 

「まぁまぁ、ヨヨコ先輩。また今度改めて4人で行きましょうよ!」

「……そ、そうね。まぁ、その時は私が特別に奢ってあげてもいいわよ」

「え? 本当ですか、やった~また高級ホテルのスイーツビュッフェが楽しめるんですね!」

「……え? いや、高級ホテルとは一言も……」

「ありがとうございます、ヨヨコ先輩!」

「……まぁ、任せなさい」

 

 喜ぶ楓子を見て、いまさら普通のスイーツビュッフェとは言い出せず、ヨヨコは財布の中身を思浮かべながら引きつった笑顔を浮かべていた。

 

 

 




ラファエル:信じられないかもしれないが、原作でもこのぐらい濃いキャラである。さっそく有後党に入っており、期待の大型新人として注目されているとか……。

ウリエル:限界オタクに捕捉された不憫枠。

1号:有後党党首として活躍する2号をなんとも言えない目で見ているが、まぁ、楽しんでるならいいかな~とも思っている。

2号:有後党党首であり、有紗やひとりとも個人的に知り合いとあって、貴重な写真などを入手できる。もちろん、プリクラに関しても使用許可は取ってある(許可取った相手であるぼっちちゃんは、強い押しに思わず頷いた形)。

ヨヨコパイセン:ぼっちちゃんと同じく原作より精神的に落ち着いているというか、ライバルとして真っ当に結束バンドを見ているおかげで、変な嫉妬はしていないし、実力も伸びている模様。でもポンコツかますのは相変わらず。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。