未確認ライオットネット投票の最終結果の発表日も近いですが、その前に虹夏さんの誕生日があります。今回は星歌さんも協力してくれて、STARRYでパーティを行うことになっています。
料理などは星歌さんが注文してくれて、私たちが簡単に飾り付けを行って準備は完了。リョウさんに連れられて虹夏さんがやってくると、誕生日パーティがスタートとなりました。
「……い、いきなり、リョウが買い物に行こうとか言うからなにかと思ったら、こんな準備を……ズルいなぁ、もう……皆、ありがとう」
サプライズパーティに驚いていた様子の虹夏さんでしたが、すぐに嬉しそうに眼に涙を潤ませました。
「おめでとうございます、虹夏さん。ちなみに、今回のパーティの企画はリョウさんですよ」
「有紗!? なな、なんでバラすの……」
「え? リョウが……そっかぁ、リョウがねぇ」
「……そうすればただ飯食べれるかと思ったから……」
今回の誕生日パーティの主催はリョウさんです。正しくはリョウさんが提案して、星歌さんが乗り気になったことで私たちも巻き込んで開催となった感じですね。
ただ、リョウさんの性格上自分からは絶対言わないでしょうから、ここは私が伝えておくことにしました。虹夏さんはニヤニヤと嬉しそうに笑み浮かべており、リョウさんは気恥ずかしげな様子でプイッとそっぽを向きました。
「料理なんかは、店長さんが注文してくれましたよ。飾りつけは、私とひとりちゃんと有紗ちゃんでやりました!」
「あっ、えと、おめでとうございます」
「……もう、私こういうの弱いんだよね。泣いちゃうじゃん……」
「鬼の目にもなんとか……」
「リョウ?」
「なんでもない」
虹夏さんとリョウさんも席に座り、星歌さんが注文してくれたちょっと多すぎるぐらいの料理を食べつつ、ワイワイと盛り上がり……頃合いを見て、虹夏さんへのプレゼントタイムとなりました。
喜多さん、ひとりさんがそれぞれプレゼントを渡したあと、私も虹夏さんにプレゼントを贈ります。
「私からはこちらですね」
「ありがとう……封筒? なんだろう?」
「ああ、そこに描かれている場所に連絡をして納品日を決めてもらうような形です。ちなみに、プレゼントはベッドですね」
「……ベッド!?」
「はい。リョウさんから、虹夏さんの使っているベッドが古くなって、新しいのを欲しがっていると聞いたので……」
「た、たしかに、ベッド欲しいなぁとは思ってたけど……えぇぇぇ!?」
「ちなみに部屋やベッドのサイズなどは、事前にリョウさんに調べてもらっているので問題ありません。元のベッドは不要であればそのまま業者が引き取ってくれますので、その辺りは連絡して相談してみてください」
虹夏さんのプレゼントには少々迷いまして、リョウさんに案を求めました。そのおかげでベッドを欲しがっているという情報を貰ったので、サイズなどを調べてもらって用意した感じですね。
驚きつつ私とリョウさんを交互に見る虹夏さんに、リョウさんは軽くサムズアップをして告げます。
「……ふっ、有紗から事前に聞いたけど……想像よりだいぶすげぇやつ買ってて、驚いた。流石金持ちは違う」
「……え? なにそれ、怖い」
「でも、寝心地は凄くよさそうだった」
「た、楽しみなような、怖いような……と、ともかくありがとう、有紗ちゃん!」
こうして私たちが渡し終えて、次はリョウさんの番になりました。なにやら落ち着かない様子で視線を動かすリョウさんに、虹夏さんはなにかを察したような表情で苦笑を浮かべます。
「リョウはアレでしょ? どうせ、お金が無くて用意できてないとかそんな感じだよね。気にしなくてもいいよ、こうやって祝ってくれただけで、十分嬉し……」
「……ん」
「え? あっ……プレゼント……」
「いや、たまたまお金あったから」
リョウさんは気恥ずかし気に綺麗に包装されたプレゼントを渡しており、それを見た虹夏さんは心底意外そうな表情を浮かべていました。
ちなみに先月頭ぐらいに「自分で持ってたら使ってしまうから預かっておいてほしい」とリョウさんに言われて、私が一時的にお金を預かっていて、そのお金で購入したプレゼントです。
虹夏さんは、しばらく唖然としたような表情を浮かべていましたが、少しして本当に幸せそうな笑みを浮かべて口を開きました。
「……凄く嬉しい。リョウ、ありがとう」
「う、うん。まぁ、喜んでもらえたなら……よかった」
「……先輩たち、なんかラブの波動が出てないですか?」
「「出てない!!」」
そんなやりとりがありつつも、虹夏さんの誕生日パーティは賑やかで楽しく過ぎていきました。
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虹夏さんの誕生日から2日、5月の最終日となった日。今日はいよいよ、ネット審査の最終結果の発表日です。今回も前回と同じく12時発表ということで、STARRYに集合して皆で結果を確認する予定になっています。
おそらく票数は伸びているはずです。結束バンドは変わったバンド名ですが、その分人目を引くので10位以内という人目に付きやすい場所にあれば、興味を持ってくれる人も多いでしょう。そして、MVなどを見てさえもらえれば、十分にファンを獲得できるだけの力はあります。
少なくとも、30位以下に落ちていることはあり得ないと断言できますので、そこは安心でしょう。
「あっ……あと、30分ですね。あっ、有紗ちゃん。だだ、大丈夫ですかね?」
「大丈夫です。きっと、いい結果になりますよ。不安なようなら手を繋ぎますか? 人肌に触れると安心感があるものです」
「あっ、はい……有紗ちゃんと手を繋いでると安心するのは、そういうことなんですね。あっ、あの、ちょっともたれ掛かったりしてもいいですか?」
「はい。もちろんです」
「えへへ、ありがとうございます」
やはり結果発表間近ということもあって、ひとりさんもかなり緊張している様子で、手を握ったあとで甘えるように私にもたれ掛かってきました。
私の存在がひとりさんの安心の一助となれているのなら、とても嬉しいことですし、私自身も多少は緊張しているのでひとりさんとこうしていると安心感を覚えますね。
「……伊地知先輩、いまこのふたりの思考の中に私たちって存在してると思います?」
「してないんじゃないかな? 有紗ちゃんの方は、分かった上で気にしてない気もするけど……というか、最近さらにいちゃつくようになって来たよね、このバカップル」
「ふたりのキツネ顔も板についてきてて、ウケる」
ひとりさんが甘えてきてくれているという素晴らしいシチュエーションを最優先するのは必然であり、周囲の様子はまったく問題ありませんし、気にもなりません。ただ、ひとりさんは気にしたり恥ずかしがったりすると思うので、その辺りのフォローは忘れないようにしないといけないですね。
そんなことを考えつつ、しばらく待っているといよいよ結果発表の時間が近付いて来ました。
「……そ、そろそろですよね?」
「あと1分……よ、よし、更新するよ。皆、覚悟はいい?」
その言葉に私たちが頷いたのを確認してから、虹夏さんはスマートフォンのページを更新し全員で画面を覗き込んで結果を確認します。
「結束バンドは――7位! やったぁぁぁ!」
「凄いですよ! 有紗ちゃんの言ってた最高順位まで1つのとこまで来てるじゃないですか!!」
「……ほっ」
虹夏さんと喜多さんが抱き合って喜び合い、リョウさんもホッとした表情を浮かべています。もちろん私とひとりさんも抱き合って喜びを共有しています。
「あっ、有紗ちゃん! 私たち……」
「ええ、見事ネット審査突破……ここからは本当に実力勝負の、ステージ審査ですね。頑張りましょう」
「はい!」
ネット審査を突破すれば次はステージ審査があり、そこを突破すれば夏にあるファイナルステージへの出場が決まります。
ステージ審査は7月に行われるのでまだ時間はありますし、ここからさらに本番に向けて練習を積んでいきたいところですが……ひとまずいまは、皆で喜ぶべきですね。
「ねね、お祝いしようよ! なんか、食べ物とか買ってきてさ!」
「いいですね~! やりましょう!」
虹夏さんと喜多さんが喜びながらお祝いについて話していると、星歌さんとPAさんが近付いて来ました。星歌さんは目が少し潤んでおり、PAさんはホールケーキを持っています。
「皆さん、ネット審査通過おめでとうございます~。このケーキは、店長からのお祝いですよ」
「え? わっ、ありがとう! お姉ちゃんこんなの用意してくれてたんだ!」
「……中間がよかったからいちおうな……」
「えへへ、凄いでしょ? 私たち7位だよ!」
「……まぁ、今回ばかりは素直に褒めとくよ。大したもんだ」
嬉しそうにピースをする虹夏さんを見て、星歌さんは優し気に微笑んで賞賛してくれました。その後はもちろん星歌さんが用意してくれたケーキでお祝いとなり、皆で通過の喜びを噛みしめました。
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ネット審査の結果発表から一夜明けた翌日。今日はオープンスクールがある関係で高校が短縮授業となり、昼前には下校となりました。
まぁ、オープンスクールといってもうちの学校は外部からの入学生はほぼ取らないので、エスカレーター式となる中学校の生徒たちの高校施設の見学という意味合いが強いです。
元々今日が短縮授業であることは分かっていたので、いくつかの予定を組み込んでいました。これから何か所か回ることにはなりますが、幸い夕方までには予定は全て終わるのでSTARRYに顔を出せそうです。
今日はひとりさんもアルバイトでいる筈なので、ひとりさんの顔が見れるのは嬉しいです。ひとりさんの顔を一目でも見れるかどうかで、翌日のコンディションも変わってくる気がしますしね。
そんなことを考えながら迎えの車に乗ると、丁度そのタイミングでひとりさんから電話がかかってきました。なんとも珍しいというか、今は学校の昼休みだと思うのですが……急ぎの用事でしょうか?
「はい、もしもし?」
『あっ、ああ、有紗ちゃん、たっ、たた、助けて……』
「ひとりさん? いったいどうしたんですか?」
『……あっ、あの、なっ、なぜかロッキンジャポンに出るって誤解されて、ほっ、ほほ、放課後に全校生徒の前で演奏することに……』
「……」
……なぜ、そんな状況に? ロッキンジャポンの話はいったいどこから?
時花有紗:さすがの有紗ちゃんも電話で話を聞いた時はキョトンとした表情になった。ぼっちちゃんとのいちゃいちゃ度はさらに上がって来た。
後藤ひとり:未確認ライオットのネット審査を通過しただけのはずが、学校でロッキンジャポンの大トリを務めると誤解を受け、放課後に演奏まですることになって慌てて有紗に助けを求める。
世界のYAMADA:実は虹夏の誕生日のために結構早い段階から有紗に相談したり、お金を預けるなどして準備をしていたが、もちろん本人には恥ずかしがって言わない。