ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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六十七手遊泳のプライベートプール~sideA~

 

 

 ひとりさんとプライベートプール付きのホテルで1泊過ごす予定の週末。その日は快晴といっていい天気でした。梅雨も明けているので天気のいい日が増えてきてはいますが、絶好といっていいロケーションですね。

 まぁ、ホテルのプライベートプールなので天候は関係ないと言えば関係ないですが、それでも雨天よりも快晴の方が心が晴れやかというのはあります。

 

「おはようございます、ひとりさん。今日はよろしくお願いします」

「あっ、おはようございます。こっ、こちらこそよろしくお願いします」

「ふふ、基本的に私とふたりですし緊張しなくても大丈夫ですよ。一週間の疲れを癒すぐらいの気持ちで楽しみましょう」

「あっ、はい。そうですね、有紗ちゃんと一緒なら……えっ、えと、楽しみです」

 

 ひとりさんの家に迎えに来ると少々緊張した様子でしたが、すぐに安心した様子の笑顔を浮かべてくれました。そんなひとりさんと一緒に車に乗り、目的地のホテルを目指して出発します。

 

「あっ、涼しくて気持ちいいです」

「最近はすっかり夏の陽気になって暑くなってきましたからね。ひとりさんは、その恰好で大丈夫ですか?」

「あっ、そこそこ暑いですけど……暑さには割と強い方なので、大丈夫です」

 

 ひとりさんは年中トレードマークともいえるピンクのジャージ姿です。当然夏でも長袖のジャージを着用しているので一見暑そうですが、江の島などでも割と平気そうな様子だったので暑さに強いというのは本当なのでしょう。

 

「それならよかったです。長袖ジャージは少々暑いかと思いましたが……」

「あっ、でっ、でも、今のジャージは夏用の生地が薄めのやつなので、結構涼しいですよ」

「なるほど、季節ごとに使い分けているんですね」

 

 いつも学校に着ていってるので誤解しそうになりますが、ひとりさんのジャージは学校指定のものではなく私物です。秀華高校は、服装に関する校則はかなり緩いらしく、よほど奇抜な恰好でない限りは大丈夫みたいです。

 

「あっ、有紗ちゃんは暑さとか寒さってどうですか?」

「私は特別苦手な季節も、逆に得意な季節も無いですね。ただ、季節で言うと夏の方が好きかもしれません」

「あっ、そっ、そうなんですね。やっぱり、レジャーのシーズンだからですか?」

「ああ、いえ、年末年始は行事が多くて、どうしても冬は忙しいイメージがあるので……」

「そういえば、年明けは珍しく疲れてた感じでしたね。セレブはセレブで大変なんですね」

 

 本当に年末年始の忙しさだけは好きになれませんし、そこを越えてもすぐに誕生日や確定申告などもあるので冬場はやはり忙しいという印象が強いですね。

 それに比べると夏休みは比較的自由に動けるイメージなので、そういったものが作用して冬より夏の方が好きなのでしょう。

 

「ああ、ですが、一点だけ……ひとりさんの誕生日があるということを考えると、冬もいい季節ですね」

「あっ、有紗ちゃんも同じ冬生まれじゃないですか……けど、そうですよね。どっちの季節も楽しいことはありますよね。さっ、最近そういうのも分かってきた気がします」

「確かに、どちらも悪いことも良いこともあるものですね」

 

 クリスマスなどもありますし、去年はひとりさんと旅行にも行けたので総合するといい冬でした。

 

 

****

 

 

 しばらく雑談しつつ車で移動して、宿泊予定のホテルに辿り着いたのでさっそくチェックインをします。今回はホテルのプールで遊びつつ一日過ごす予定です。

 

「よっ、予想はしていましたけど……凄いホテルです」

「今回は1日ホテルで過ごすつもりなので、ホテル内に店などが多いところを選びました。食事も和洋中と揃っていますし、ルームサービスも充実しているので困ることはないと思います」

 

 フロントで手続きをしてカードキー受け取り、ひとりさんと共に専用エレベーターで移動します。

 

「あっ、えっと……プール付きなので当たり前だとは思うんですけど、いい部屋ですよね?」

「ええ、最上階のスイートですね」

「ひぇ……やっ、やっぱ凄いところ……そっ、そういえば、去年の夏ごろにも一緒にホテルのスイートに行きましたね」

「花火大会の日ですね。まだ1年経っていないはずなのに、懐かしい思いです」

 

 去年ひとりさんと花火大会に行った際も、確かにホテルのスイートルームを取りました。あの時は宿泊せずに花火だけを見て帰宅しましたが、今回は宿泊もすると考えると……私とひとりさんの関係は順調に進展しているのではないでしょうか?

 

「あっ、あの時は変な勘違いをしちゃって、恥ずかしかった思い出もありますけど……花火はすごく綺麗でしたね」

「ふふ、そう言えばそんなこともありましたね。ですが、あの時とは違ってこうして一緒に宿泊できるので、以前よりひとりさんとの距離が縮まっているようで、本当に嬉しいです」

「うっ、まっ、またそうやって恥ずかしい台詞を平然と……」

 

 少し懐かしい思い出話に花を咲かせていると、目的の部屋に到着しました。最上階フロアはこのスイートルームのみなので、フロアまるごと私とひとりさんの貸し切りといっていい状態です。

 もちろん人気のある部屋ではありますが、6月という旅行などのシーズンから外れている時期だったのが功を奏して、比較的簡単に予約を取ることができたのは幸いです。

 

「……あわわ、やっ、やっぱり滅茶苦茶凄い部屋……と、扉もいっぱい……完全に部屋が何個もあるパターンですよね?」

「1フロア丸々スイートルームですからね。プライベートプールもそうですが、フィットネスを行える部屋などもありますよ。ちなみにプールはこちらです。先に少し見てみましょうか……」

 

 着替えてから向かってもいいのですが、先に確認ということでプールを見に行きます。流石に競技用の50mプールなどには及びませんが、ふたりで遊ぶには広すぎるほどのプールですし、プールサイドも広々としています。

 

「……すっ、すご……映画とかセレブが寝転がってるイメージの椅子もありますし、なっ、なんか、凄いですね」

「綺麗ですよね。広々としているので楽しく遊べそうですね。早速ですけど、着替えて遊びましょうか?」

「あっ、はい。えっ、えっと、着替えは……」

「向こうに更衣室がありますのでそちらで……」

 

 プールを軽く見たあとはひとりさんと共に更衣室に移動して着替えを行います。ひとりさんが選んでくれた水着に身を包み、鏡で問題がないことを確認してからひとりさんに声を掛けます。

 

「ひとりさん、私は着替え終わりましたが?」

「あっ、わっ、私も終わりました」

 

 ひとりさんの声をきいて視線を向けると共に……目も心も奪われました。ひとりさんは、入浴する際などと同じように髪を両サイドで丸めて纏めており、その上で私が選んだ水着を着用していました。

 可愛らしい髪型に白く美しい肌に映える水着。その美しさと愛らしさはまるで極光のように眩しかったです。天使でしょうか? ああ、いえ、もとより天使でしたね。後光を纏ったと表現するべきでしょう。

 ただでさえ美の化身と言えるほど美しいひとりさんが水着を着ると、これ程までの美貌になるのですね。この姿を見れたこと……感無量です。

 

「ひとりさん……最高に……最っ高っに! 可愛いです!!」

「噛みしめるように言った!? あっ、有紗ちゃんは大げさ過ぎます。わっ、私より有紗ちゃんの方が凄いです。綺麗で可愛くて……見惚れちゃうぐらいです」

「私はもうひとりさんに見惚れていますが……というわけで、ひとりさん。抱きしめてもいいですか?」

「どういうわけですか!?」

 

 目の前に神の奇跡としか表現のしようがないほどに愛らしいひとりさんが居るのです。それこそ問答の間もなく思いっきり抱きしめたいほど、私の胸の内は愛に溢れています。

 ですが、そこはあくまでひとりさんが最優先なので、しっかりと確認をしなければなりません。この返答までの少しの時間ですら、永遠のように長く感じるほど……割と我慢の限界が近いです。

 

「駄目でしょうか?」

「……うっ、うぅ、そっ、そんな縋るような目で……全然理由説明してないですし……」

「ひとりさんが愛らしくて愛おしいから抱きしめたいと、それ以外の理由などありませんし」

「あっ、相変わらずストレートです。物凄くストレート……うぅぅ……ちょっ、ちょっとだけですから――ひゃうっ!? 早い早い!? まだ言い切ってなかったのに!!」

 

 恥ずかしがりつつも許可を出してくれたひとりさん……その言葉を最後まで大人しく聞いている余裕はありませんでした。むしろ愛の力である程度解答を先読みして、即座に動けるように準備していました。

 というわけで、許可も出たのでひとりさんの体を思いっきり抱きしめます。互いに水着ということもあって、肌が直接触れ合う部分が多く、ひとりさんの温もりをダイレクトに感じることができて、なんとも言えない至福の感覚です。

 

「……もぅ、本当に有紗ちゃんは……恥ずかしくて、顔から火が出そうなはずなのに、行動が強引かつ早すぎたせいでビックリして、素直に恥ずかしがるタイミングを逃しましたよ」

「仕方ないです。ひとりさんがあまりにも愛らしすぎるので、世が世なら国をひとつ傾けていたかもしれないほどの魅力にあふれていましたので、それを前に長く堪えるのは困難です。むしろ、あそこまでよく持ったと己を褒めたいぐらいです」

「おっ、大袈裟にもほどがありますよ……はぁ、本当に完璧に見えてそういうところはしょうがないんですから……」

 

 ひとりさんは少し呆れたような、それでいて凄く優しい声で告げたあと、ゆっくりと私の背に手を回して抱きしめ返してくれました。

 ただでさえ幸せだった時間が更に幸せになったような、本当に表現するのも難しいほど至上の幸福です。

 

「……あっ、ところで有紗ちゃん……私、少しだけって言いましたよね? こっ、これ、あとどれぐらい……さすがに、寝起きの時みたいに30分とかは恥ずかしすぎて……」

「では、非常に名残惜しいですが……あと25分でお願いします」

「いつもの要求から5分短くなっただけ!?」

 

 

 




時花有紗:もちろん水着ぼっちちゃんを前にして冷静でいられるわけもない。むしろ冷静でいる方が失礼……というわけで、安定の暴走。水着同士で抱き合っている姿は大変にえっちなのでは?

後藤ひとり:相変わらず有紗のお願いには弱いタイプ。1年前の花火大会の時から考えると、関係の進展具合というか……ぼっちちゃん側の好感度上昇が顕著である。
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