ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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六十九手抱擁のホテル宿泊後半~sideA~

 

 

 ホテルの広いロイヤルスイートにて、ひとりさんに膝枕をしてもらったり、私がひとりさんを膝枕したり、一緒にお茶をしながら雑談をしたりと、まったりと過ごしました。

 とてつもなく幸福感の高い時間であり、気を抜くとつい頬が緩んでしまうほどに幸せです。そして楽しい時間というのは早く過ぎるのが世の常であり、いつの間にか夕食の時間が近づいていました。

 夕食はしゃぶしゃぶの予定に決めていたので、事前にホテルフロントに連絡して準備してもらっていますので、店に向かえばすぐに食べれる状態です。

 予約した時間を考えるとあと40分ほど経ったら出発するのがいいでしょうね。そんなことを考えつつ、ひとりさんを見てふとあることを思いつきました。

 

「ひとりさん、完全な思い付きなんですが……髪を結ってみてもいいですか?」

「はえ? あっ、髪を? ……えっと、私の髪をってことですよね?」

「はい。もちろん私は素人なので、本格的なアレンジヘアができるわけではありませんが……単純にどんな風になるのか興味がありまして……」

「あっ、べっ、別にいいですけど……あっ、でも、前髪は許してください。はっ、恥ずかしいので……」

「分かりました。まぁ、本当に簡単に纏めるだけですよ」

 

 ひとりさんは入浴したりプールに入ったりするときは髪を纏めるものの、それ以外はほぼストレートの状態のままなので興味が湧きました。

 もちろん、普段の姿も最高に、究極に可愛らしいのですが、髪型を変えることで雰囲気が変わると、またひとりさんの新しい魅力が見つかるかもしれません。

 

 ひとりさんが快く了承してくれたこともあって、ひとりさんの髪をアレンジすることにします。夕食までそれほど時間がないので、ヘアアイロンを使う必要がある複雑なアレンジは難しいですし、ここは簡単にハーフアップの形にしましょう。

 ひとりさんは長い髪なので、ハーフアップはきっと似合います。

 

「少しだけアレンジしたハーフアップにしますね」

「あっ、はい。えっ、えっと、どんな風に?」

「左右の髪を一束細めの三つ編みにして、くるりんぱをして、毛先も軽く三つ編みにする、三つ編みアレンジを想定してます」

「くっ、くるりんぱ?」

「えっと、結んだサイドの毛の中央に毛束を入れてくるっと回して結ぶアレンジです。くるりんぱはヘアゴムだけで簡単にできて、いろんなアレンジに応用できるので手軽ですよ」

「なっ、なるほど?」

 

 ひとりさんはあまりヘアアレンジをしないですし、美容室にも行かないと聞いたので聞きなれない単語かもしれませんね。ただ、本当に簡単にできるアレンジなので覚えておけば便利かと思い、軽く説明しつつひとりさんの髪を結っていきます。

 今回は三つ編みアレンジにするつもりなので、左右両側の髪を細く三つ編みにしてから、くるりんぱで作った髪の中央に通すことでフィッシュボーンで行うハーフアップほどボリューミーではないですが、横からの見え方にも華やかさを演出できます。遠目に見れば編み込みっぽく見えるかもしれません。

 

 ひとりさんの毛の長さであれば、髪リボンも作れますがそこまですると少しゴチャゴチャし過ぎるので、くるりんぱで通した毛束をゆるめの三つ編みにして、ヘアゴムで毛先を止めれば完成です。

 

「できました」

「おっ、おぉ……すっ、すごい、全然違いますね」

「はい。やはり物凄く愛らしいです。いえ、もちろん普段のひとりさんも素晴らしく可憐で愛らしいですが、キュートさがさらに増して、いつもと違った雰囲気が凄くいいです!」

「あっ、えっ、えへへ……そっ、そんなに褒められるのは恥ずかしいです。けっ、けど、確かに雰囲気が全然違って、ちょっ、ちょっとだけ上品に見えますかね? まぁ、服はジャージですけど……」

「ジャージに合うようなイメージで結ったつもりなので、ばっちりですよ。せっかくですし、一緒に写真を撮りましょう」

「あっ、はい……あっ、でも、それなら私だけじゃなくて有紗ちゃんも髪型を変えた方が?」

 

 ひとりさんにそう提案されて、時計を確認します。まだ時間は大丈夫なので、私も簡単な髪型なら可能ですね。確かにせっかくなので、私も髪を結って一緒に撮影するのがいいです。

 

「……そうですね。では、私も簡単に……せっかくですし、ひとりさんのアレンジに合わせて、三つ編みをいくつか作って、首の後ろで束ねるローポニーアレンジにします」

 

 それぐらいのアレンジならさほど時間はかからないので、手早く髪を結ってヘアゴムで止めます。ひとりさんと比べれば簡単なアレンジですが、時間的な問題もありますし普段とは雰囲気が違う感じにはなっているので大丈夫なはずです。

 

「こんな感じでしょうか……どうですか?」

「あっ……かっ、可愛いです。あっ、あの、本当に凄く可愛くて……あっ、えっと、可愛いです!」

「ふふ、ありがとうございます。ひとりさんにそう言ってもらえて嬉しいですよ」

 

 おそらく、なにか気の利いた言い回しをしようとして上手く出てこなかったのでしょうが、一生懸命に褒めてくれるひとりさんがなんとも愛らしくて、つい抱きしめたい衝動が浮かびつつも、それをしていては本当に時間が無くなるのでぐっと堪えてひとりさんと写真を撮ります。

 互いに撮影し合ったり、一緒に並んで撮ったりと時間の許す限り撮影したあとで、せっかくだからと結束バンドのグループロインにも投稿しました。

 

『ひとりさんと一緒に雰囲気を変えてみました』

『うわっ、可愛い。有紗ちゃんはもちろんだけど、ぼっちちゃんも完全に美少女じゃん!』

『前髪がそのままなのだけがちょっと惜しいけど、普段と雰囲気が違って凄く可愛い! いいなぁ、私も一緒に写真撮りたいなぁ』

『……ふたりのビジュアルが凄い。その写真ブロマイドにして売ろう。めっちゃ売れると思う』

 

 やはり普段とは違うひとりさんの魅力は、皆さんにも伝わったようです。実際、本当に可愛らしいのでブロマイドに使うのも有りだとは思います。ひとりさんのブロマイドは、未だに売り上げ個数はナンバーワンですし……まぁ、その辺りはひとりさんと相談して決めることにしましょう。

 

「さて、予約の時間を考えると……もうそろそろ部屋を出て出発した方がいいですね」

「あっ、そうですね。移動も考えると、そろそろ出た方がいいですね」

 

 予約の時間が迫っていましたが、まだ余裕はあります。ゆっくり歩いて行ったとしても予約時間の10分前には着くでしょう。

 とりあえず、ひとりさんと一緒に準備をして出発の段階になったところで、チラッと時計を確認します。

 

「……よし、まだいけますね」

「あえ? なにが――ふぁっ!?」

「髪型をアレンジしたひとりさんがあまりにも可愛らしくて、先ほどから抱きしめたい衝動をずっと抑えていたんです」

「それをここで実行する辺りが、本当に有紗ちゃんですよね!?」

 

 そう、流石に30分ハグしているわけにはいきませんが……少しの間抱きしめる猶予はあります。であれば、抱きしめない理由など無いでしょう。

 今回は本当に長い時間抱きしめることはできないので、その分少し強めに抱きしめることにします。何度経験しても、このピッタリとひとりさんに密着する感覚はなにものにも代えがたいですね。

 

「……もぅ、本当に……そんな嬉しそうな顔されたら、なにも言えなくなっちゃいますよ」

 

 ひとりさんは少し呆れたような声でそう言いながら、そっと優しく私の背に手を回して抱きしめ返してくれました。

 

 

****

 

 

 予約の時間が近づいてきたので、ひとりさんと一緒にしゃぶしゃぶの店に向かいました。部屋自体はロイヤルスイート用の個室ですし、事前に予約を入れているので鍋などの準備は既にされていて、すぐにでも食事ができる状態でした。

 和風の室内でひとりさんと並んで座ると、店員が小皿料理としゃぶしゃぶ用の肉を運んできてくれます。

 

「あっ、すっ、すご……肉がキラキラ輝いてるように見えます。すっ、凄く高級そうな肉……」

「この店は米沢牛の専門店なので、使われているのは米沢牛ですね。肉寿司なども食べられるので、興味があれば追加で注文しましょう」

「あわわわ、すっ、すご……セレブ空間……」

「まぁ、基本的に私とふたりだけですから、気軽に楽しみましょう」

「あっ、はい」

 

 鍋に水菜などを入れつつひとりさんに微笑みます。そして、肉を軽く通して、先にひとりさんに食べてもらうことにしました。

 ひとりさんは用意してあったポン酢に軽く肉を浸けて一口食べ、目を輝かせました。

 

「はわっ……おっ、美味しい! すっ、凄いです! スッと、口の中で溶けるみたいで……」

「気に入ってもらえたならよかったです。たくさんありますので、好きなだけ食べてくださいね」

「あっ、はい。あっ、もちろん有紗ちゃんも、作るばっかりじゃなくて食べてくださいね。あっ、わっ、私がお肉をしゃぶしゃぶしましょうか?」

「ありがとうございます。では、お言葉に甘えますね」

 

 私の言葉を聞いたひとりさんは、力強い目で頷いたあと、若干緊張した表情で肉を湯に通しつつ私に声をかけてきます。

 

「……あっ、有紗ちゃん。ポン酢とゴマダレと、どっちがいいですか?」

「そうですね。では、最初はポン酢で」

 

 なんというか、ごく自然な感じの質問ですが……これは、ひとりさんが食べさせてくれると思っていいのでしょうか? もちろん私は望むところですし、むしろ嬉しいです。

 私の返答を聞いたひとりさんは肉を少しポン酢に浸けて、垂れないように手を添えつつ私の方に差し出してくれたので、それをいただきます。

 

「……とても美味しいですね」

「でっ、ですよね!」

「特に、ひとりさんに食べさせてもらったので、より美味しく感じますね」

「はぇ……もっ、もぅ、有紗ちゃんはまたそうやって……」

「ふふふ、さぁ、どんどん食べましょう。今度はお返しに私が、ひとりさんはゴマダレとポン酢、どちらがいいですか?」

「あっ、えっと、今度はゴマダレで……」

 

 やはりこうしてひとりさんと一緒に食事をするのは、何度経験してもいいものです。いつも以上にご飯も美味しく感じるので、本当に……幸せですね。

 

 

 




時花有紗:今回は本当に朝から晩までぼっちちゃんといちゃいちゃしてて幸せ。衝動的に抱きしめるのを我慢したと思ったら、僅かな隙を見つけて実行する様はさすがの猛将スタイル。

後藤ひとり:髪型アレンジしたぼっちちゃんは、完全に美少女。有紗とのツーショットは顔面戦闘力が凄まじいことになってそう。そして、なんだかんだでぼっちちゃんも普通にいちゃついてる気がする。

有後党:勢力は順調に拡大している。新商品(ツーショットブロマイド)は、また驚異的な売り上げを叩き出すことだろう。
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