ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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七十二手打上のJOJO苑~sideB~

 

 

 結束バンド、SIDEROS、ケモノリアの3組での合同打ち上げとしてJOJO苑にやってきて、それぞれバンドごとにまとまって席に座る。

 バンドごとに固まっているとはいえ席は近くなので会話などを行うのも問題はない。

 

「……ヨヨコ先輩、リーダーっすよね? 今日の店もほぼ勝手に見栄張って決めましたよね?」

「……そ、そうね……それで?」

「ごちになりま~す!」

「ッ!?」

 

 ヨヨコはあくびの言わんとすることを理解したのか、顔を青ざめさせるが……実際に見栄を張ってJOJO苑に行くことを提案したのは己であるため、文句も言い辛い。

 

(私の財布……終わった……)

 

 さらにここでゴネては負けた気がするので、そっと心の中で財布の中のお金に別れを告げつつ、それでも顔だけは平静を装って告げる。

 

「まぁ、貴女たちも今日はよく頑張ったから、特別に奢ってあげるわ」

「さすが、ヨヨコ先輩!」

「ヨヨコ先輩が褒めてくれるなんて嬉しいですね。いっぱい食べましょう」

「久々の屍肉……嬉しい~」

「……あ、あんまり、食べ過ぎないように……ね?」

 

 心の中で悲鳴を上げつつ頬を引きつらせてはいるが、それでもそれを口にすることはなくヨヨコは額に汗を流しつつも必死に平静を装っていた。

 その光景を見ていたケモノリアのドラムがリーダーに向けて口を開く。

 

「……向こうはリーダーが奢るみたいだね。流石トップ通過ともなると、リーダーの器が違う。で、こっちのリーダーは?」

「……え? マジで? そういう流れにするの? そういうノリはよくないと思うなぁ……私たち仲間だよな? 仲間って、協力し合うものだよな!」

「仕方ない。7割で勘弁してあげるよ」

「7割? 私が全体の7割出して、残り3人で3割を割るの? ……安いの頼んで……」

 

 ドラムの言葉に頬を引きつらせるリーダーだが、強引に押し切ったという自覚はあるのか、あまり強く言い返すことはできず、最終的に絶望した表情で7割の支払いを了承した。

 だが、そんなそれぞれのリーダーがメニューに書かれた金額に戦慄しつつ、バンドメンバーに控えめに食べるように告げている中、まったく違う空気の席もある。

 

「有紗、特選頼んでいい?」

「どうぞ。皆さんも好きなものを遠慮せずに頼んでくださいね」

「う、うん。いや、ありがたいけど……大丈夫、有紗ちゃん?」

「ええ、チェーン店には初めて来ましたが、メニューの写真を見る限り質のいいお肉が安価で食べられるみたいですし、本当に素晴らしいですね」

「……うん。完全に聞く相手間違えたよ。よ~し、私も特選頼んじゃお」

 

 結束バンドは有紗の奢りであり、メンバーも有紗の圧倒的な財力は知っている。少なくとも、JOJO苑程度でメンバー全員が高いものだけを選んでお腹いっぱいに食べたとしても、まったく高いとは思わないだろうことも分かっている。

 なので、最初に軽く確認はしたもののその後は遠慮することなく、食べたいものを注文していたが、それを見て驚愕していたのはSIDEROSとケモノリアである。

 

「と、とと、特選!? 特選って1人前5000円ぐらいするやつじゃ……」

「と、時花有紗……流石ね」

 

 ケモノリアのリーダーは信じられないものを見たという感じで驚愕しており、ヨヨコはある程度有紗の財力を知っているので納得はしつつも、それでも驚愕はしていた。

 するとそのタイミングでふと思いついた様子で、有紗はSIDEROSとケモノリアのテーブルの方を向いて微笑みを浮かべる。

 

「SIDEROSの皆さんも、ケモノリアの皆さんも、今回の打ち上げの費用は私が持ちますので、どうぞ遠慮せずに好きなものを食べてください」

「え? えぇぇぇ……ちょっ、さっ、流石にそれは……い、いや、君がお金持ちっぽいのはここまでのやり取りで分かったんだけど……ほ、ほら、私たち大学生だし、少しとはいえ年上だし……」

「どうか、お気になさらず。素晴らしい演奏を間近で聞かせていただいたお礼と思ってください」

 

 SIDEROSとケモノリアの分も支払うという有紗に対し、ケモノリアのリーダーが流石にそれは申し訳なさすぎると断ろうとしたが、優しく眩しい笑顔で気にしないでを告げる有紗の輝くオーラになにも言えなくなった。

 ケモノリアは有紗のことはよく知らないが、それでも有紗の様子を見れば、3組分の支払いをまったく問題にしていない様子が見て取れ、明らかにお金持ちであることを察することができた。

 

「……どうしよう? 私いま、女子高生にビジュアル、財力、人間性のトリプルスコアでボロ負けしたんだけど……今後のために土下座して靴舐めてきた方がいい?」

「やめとけ。あと、せっかくの厚意だしここは甘えさせてもらって……またなんか別の機会にお返しはしよう」

「そ、そうだね……えと、有紗ちゃんだっけ? 本当にありがとう! えと、なんかお返しにできることないかな……あ、芸しよっか! 結構自信あるんだ、歴史武将シリーズなんだけど――あいたっ!?」

「恩を仇で返すのはやめろ」

 

 ケモノリアのリーダーの頭にドラムのチョップが落とされると、話が途切れたタイミングでヨヨコが有紗に声をかける。

 

「……いいの?」

「ええ、もちろんです。ヨヨコさんたちには日頃お世話になっていますしね」

「そ、そう……む、むしろ世話になってるのはこっちというか……ありがとう。このお礼は必ずするわ」

「あ、私たちも! なんかしてほしいことがあったら言ってね!」

 

 ヨヨコとケモノリアリーダーの言葉に有紗は微笑みを浮かべつつ、少し思考を巡らせる。このまま話を終わらせてもいいが、それでは両者に申し訳ないという気持ちも残るだろうと……そう思うなら、多少なにかを要求しておいた方が両者の気も楽だろうと、そう考えて口を開いた。

 

「……それでしたら、また時期はいつでも構いませんので、SIDEROSとケモノリアのライブのチケットを私たち5人分いただけませんか? 他のバンドのライブを見るというのは結束バンドにとっても勉強になりますしね」

「え? ライブのチケット? それは別に構わないけど……」

「そんなのでいいの? 1枚1500円程度よ?」

 

 有紗の要求にケモノリアリーダーとヨヨコはキョトンとした表情を浮かべつつ、戸惑いながら聞き返す。すると、有紗はどこかいたずらっぽく微笑みながら言葉を返した。

 

「いえ、むしろとても欲張りですよ。なにせ、ライブのチケットと『素晴らしい演奏』まで要求してしまうのですから、焼肉程度ではつり合いが取れないかもしれませんね」

「……ふっ、言ってくれるじゃない。いいわ、その時は焼肉代以上に価値のある演奏を聞かせてあげるわよ」

「この子人間出来過ぎじゃないかぁな……けど、うん。そういうのは私も大好きだよ。最高のエレクトロニックロックを聞かせてあげるから、楽しみにしててね」

 

 有紗の言葉にヨヨコもケモノリアリーダーも楽し気な笑みを浮かべて言葉を返す。先ほどまでの申し訳なさそうな空気も消え、SIDEROSもケモノリアもかなり気を楽にして焼肉を楽しめる空気が出来上がった。

 

 

****

 

 

 JOJO苑での打ち上げは楽しげな雰囲気で続いていった。金網で食べごろに焼けた肉を箸で取り、有紗は軽くタレをつけたあとで手を添えてひとりに差し出す。

 

「はい。ひとりさん、どうぞ」

「あっ、いただきます。んっ、美味しいです。あっ、有紗ちゃんもビビンバ食べます?」

「それでは、一口頂きますね」

「はい。どっ、どうぞ」

「ありがとうございます」

 

 流れるように自然に互いに食べさせ合って微笑み合う有紗とひとりを見て、同じテーブルの結束バンドの面々は「またか」と言いたげな表情を浮かべていた。

 

「……躊躇いとか一切なくいちゃつくよね、このふたり」

「いつも通り」

「ですね」

 

 結束バンドの面々にとっては見慣れた光景であり、SIDEROSの面々もクリスマスパーティなどで見ているのであまり気にした様子はないが、ケモノリアは初めて見る光景だったため興味深そうな視線を送っていた。

 そして、ケモノリアリーダーが好奇心に身を委ねる形でふたりに質問をする。

 

「……聞いちゃ駄目だったらごめんね。ふたりって、もしかして恋人同士とかなの?」

「ちっ、違います!」

「あ、そういうわけじゃないんだね」

「いまはただの友人ですね。将来の話で言えば恋人から結婚まで確定しています」

「……おん?」

 

 ケモノリアリーダーは、ひとりの反論に勘違いだったかと納得しかけたが、その次の有紗の返答で頭に大量のハテナマークを浮かべて首を傾げた。

 

「あっ、有紗ちゃん! そっ、そうやって誤解を受けそうなことを平然と……そっ、そそ、そういうのはまだ早くてですね。いっ、いや、有紗ちゃんのことは好きですし、女の子同士の恋愛が絶対に駄目とかそういう話じゃなくて……もっ、もっと、えっと、こう……」

 

 疑問のままに有紗に尋ねようとしたケモノリアリーダーだったが、それより早く顔を真っ赤にしたひとりが食って掛かり、有紗が宥めるような形になったため質問の機会を逃した。

 なんとも言えない不思議そうな表情を浮かべていたケモノリアリーダーに対して、虹夏が苦笑を浮かべつつ声をかける。

 

「……そのふたりは、いつもそんな感じなので、気にしないでください。そういうものだって思っておけば大丈夫です」

「な、なるほど……最近の高校生は進んでるなぁ~」

 

 細かい事情までは分からなかったが、なんとなく察した様子のケモノリアリーダーは、メンバーたちと顔を見合わせて微笑まし気な表情を浮かべていた。

 

 

****

 

 

 楽しい打ち上げも終わり、心行くまで焼肉を楽しんだあとは会計の時間となった。有紗の奢りという話で纏まってはいるものの、ケモノリアリーダーは不安げな表情を浮かべつつ、ドラムの女性に声をかける。

 

「……大丈夫かな? 私たちも、かなりガッツリ食べちゃったけど……」

「いくらだろうね? 間違いなく10万は超える気が……」

 

 もちろんケモノリアだけではなくSIDEROSの面々も不安げに有紗の方を見る中、有紗の元に店員が伝票を持って来た。注目が集まる中、有紗は伝票を受け取って軽く見たあと特にリアクションを取ることもなく、黒いクレジットカードを伝票に乗せて店員に差し出した。

 

「カードでお願いします」

「かしこまりました。お預かりいたします」

 

 確実に10万円を超えているであろう支払いにまるで動じている様子もない有紗を見て、特にケモノリアメンバーは戦慄したような表情を浮かべていた。

 

「……黒いカード出してたんだけど、どうしよう? 本戦で戦う前から、格の違いを見せつけられてるんだけど……」

「お、落ち着け、気持ちは分かるけど……財力と音楽の腕はまた別の話だから……」

「凄かお金持ちで、たまがるね」

「お、親が凄くお金持ちとかでしょうか?」

 

 小声でそんな風に話をしていると、ふと疑問を抱いた喜多が有紗に尋ねる声が聞こえてきた。

 

「有紗ちゃん、前々から思ってたんだけど、高校生でもブラックカードって持てるの?」

「ええ、持つことは可能ですよ。審査に通るかは本人の収入や、年間の支払金額も関係してきますね。まぁ、クレジット会社にもよるのですが、年間のカード支払いが億を超えるとカード会社の方から勧めてきますね」

「怖いこと言ってる……」

 

 サラッと語った有紗の言葉に喜多も唖然とするが、それ以上にケモノリアやSIDEROSは驚愕の表情を浮かべていた。

 

「……有紗ちゃん、マジでパネェっすね」

「あそこまで行くと、凄すぎて嫉妬も湧いてこないわ……」

 

 感心して呟くあくびに、ヨヨコも苦笑しつつ同意する。

 

「……よし、やっぱ今後のために、私一回土下座して靴舐めてくるよ。困ったとき助けてくれるかもしれないし、仲良くしといたほうがいい子だって! よし、そうと決まればさっそくペロペロを――あいたっ!?」

 

 どこか興奮した様子のケモノリアリーダーが暴走気味に席から立ち上がろうとした瞬間、ドラムの女性により本日3度目のチョップが脳天に叩き込まれた。

 

 

 




時花有紗:相変わらず財力はマジでチート。本人は13人分の支払いなど気にした様子もなく、ぼっちちゃんといちゃいちゃしていた。

後藤ひとり:もう本当にあ~んぐらいなら普通にやる。あと、ケモノリアに対する発言から……どうも同性同士の恋愛に関しては、問題ないという考えに変わってきてる気がするし、なんなら手順踏めばOK的なことも言ってる気がする。

ケモノリアリーダー:Q、なぜこんなキャラにした? A、ポンコツなおにゃの子が好きだから。
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