ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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七十六手一同の有紗宅訪問~sideA~

 

 

 未確認ライオットのファイナルステージに向けて、結束バンドは今日もしっかりと練習をしています。星歌さんも応援してくれているみたいで、STARRYの練習スタジオを優先して貸してくれていることと夏休みなのも相まって練習できる時間は増えています。

 ただ、逆に練習をし過ぎてしまうという事態にも繋がりかねませんので、その辺りは私が適度に休憩を提案するのがいいでしょう。

 

「皆さん、飲み物を買ってきたので、少し休憩しませんか?」

「あっ、はい」

「そうだね。じゃ、ちょっと休憩しよっか」

 

 適度なタイミングで声をかけると、皆さんも軽く片づけをして休憩に応じてくれます。ひとりさんが近づいてきたので、用意しておいたタオルを手渡しながら声をかけます。

 

「お疲れ様です、ひとりさん」

「あっ、ありがとうございます……あっ、有紗ちゃんも買い物お疲れ様です。暑くなかったですか?」

「やはり日差しはかなり強いですね。天気がいいのはいいことではありますが、やはり蒸し蒸しとした暑さはありますね」

「相変わらずの子犬感で和むよね」

「ぼっチワワ……」

 

 そのまま隣に座ったひとりさんと、軽く雑談をしていると他の皆さんもこちらに近づいて来て、思い思いの形で休憩を始めます。

 練習は順調ではあります。劇的な成長や進化は無くとも着実に積み上げるように実力は上がっています。これならファイナルステージでもいい結果を期待できそうです。

 

「練習はいい感じですね。確実に実力が上がっている気がしますね」

「あっ、はい。いい感じにやる気が上がってきてる気がします。けっ、けど、やっぱりファイナルステージは強敵揃い、ですよね?」

「ええ、皆さん各地区のステージ審査を突破してきた実力者ばかりですからね。ですが、結束バンドも決して負けているわけではありませんよ。気圧されずに頑張りましょう」

「あっ、はい!」

 

 未確認ライオットの公式ホームページにある通過バンド一覧を確認してみたところ、やはりというべきかネット審査トップ5は全組通過していましたね。それ以外では数組10位以下だったバンドが通過していましたが、やはりある程度はネット審査の上位陣が出てきた印象でした。

 MVも一通り確認しましたが、やはり決勝まで進むだけあって実力者揃いといった印象で、一概にどこが上とは断定しきれませんでした。

 どんな結果になるかは読み切れませんが、あまり気にし過ぎても逆効果です。楽観視は駄目ですが、肩に力が入ってしまわないようにある程度は気楽に考えておくべきですね。

 

 そんなことを考えていると、不意にまったく関係ないことが頭に思い浮かびました。未確認ライオットとはなにも関係ない個人的な話ですが、中元の品をそろそろどうにかしなければいけないです。

 するとそんな私の表情の変化に気付いたのか、ひとりさんが少し心配そうに声をかけてきました。

 

「……あっ、有紗ちゃん? なっ、なにか悩み事ですか?」

「ああ、いえ、未確認ライオットとは関係ない個人的な話なんですが……お中元で貰った品が多くて、食品類などは賞味期限もあるのでそろそろどうにかしなければと思っていたところです」

「あっ、お中元、ですか? お父さんのところに1つか2つ届きますけど、有紗ちゃんだとかなり多そうですね」

「そうですね……いっぱいあります……本当にいっぱい」

「……そっ、相当にありそうですね」

 

 実際お父様やお母様に及ばずとも付き合いはそれなりに多いので、中元や歳暮といった際には相当の数の品々が届きますし、私もかなりの数を贈ります。少なくとも私個人で消費するのはほぼ不可能と思える量が届きますし、お父様やお母様の元に届くものも合わせるとその量は凄まじいです。

 使用人の人たちに配ったりもするのですが、それでもまだまだ大量に余っている現状なので、知り合いなどに配って対処したいところです。

 そう考えていると、なにやら目を輝かせたリョウさんがこちらに近付いて来ました。

 

「……仲間である有紗が困っているなら、私はいくらでも力になる」

「リョウは、食べ物欲しいだけでしょ……なんて分かりやすい反応」

「本当ですね」

 

 リョウさんに続き、虹夏さんと喜多さんも近づいて来て会話に加わりました。ですが正直に言って、リョウさんの言葉はむしろありがたいです。

 

「いえ、単純に助かります。本当に数が多いので……よろしければ、皆さんもいくらか貰ってくれませんか?」

「え? それは嬉しいけど、どんなのがあるんだろ? うちにお中元とかって届かないから、あんまりイメージが……」

「私のうちにはサラダ油が届いていたような?」

 

 虹夏さんはあまり中元については目にした機会がない様子です。まぁ、最近では中元や歳暮を贈ったりしないという人も増えてきていますし、中元をあまり見たことがない日という人も増えているのかもしれませんね。

 

「……それでしたら、皆さんよろしければ今日の練習が終わったあとにうちに来ませんか? そこでお中元の品を見てもらって、持って帰れそうなものがあるなら持って帰っていただく形でいかがでしょう?」

「え? 有紗ちゃんの家……滅茶苦茶興味あるし、行きたいね」

「……ただ、ちょっと恐ろしくもありますよね」

 

 虹夏さんたちを家に招いたことは無かったので、ある意味では丁度いい機会と言えるかもしれません。迎えの車を5人乗れるものに変えて貰えば招待するのは簡単ですし、じいやに一報入れておけば中元の品を一部屋に纏めてくれるでしょう。

 

「ぼっちは行ったことあるんだよね? どう? 凄い?」

「……すっ、凄いです」

 

 とりあえず、練習が終わったあとに皆さんを招待するのは問題なさそうなので、さっそくじいやに連絡を入れておくことにしましょう。

 

 

 ****

 

 

 練習が終わった後、迎えのリムジンに乗って移動して家に到着しました。玄関の前で車から降りると、虹夏さん、リョウさん、喜多さんは家を見上げて呆然とした表情を浮かべていました。

 

「……え? なにこれ? ここ、都内だよね?」

「そ、想像していたよりもかなり凄い家が……や、やっぱり桁違いのお金持ちなんですね」

「ドーベルマンとか居そうな庭……」

「あっ、なんか、皆さんの反応が懐かしいです。わっ、私も初めに来た時そんな感じでした」

 

 実際に都内では最大規模の邸宅といっていいでしょうし、皆さんが驚く気持ちも分かります。家に関しては別に私が凄いのではなく、お父様が凄いのですが……。

 そのあとでひとりさんの時と同じく軽くゲストハウスやガレージを説明したあとで室内に入ります。じいやからは事前に中元の品は第3広間に並べてあると連絡を貰っているので、そちらに移動します。

 

「お、おぉ……に、虹夏、気を付けて……迂闊になにか壊したら、借金地獄だ」

「リョウ、ビビり過ぎだって……いや、気持ちは分かるんだけどね」

 

 廊下には絵画や陶磁器を飾っているからでしょうか、リョウさんが周囲を警戒するようにビクビク歩きつつ、虹夏さんの肩に掴まっており、虹夏さんも呆れた表情を浮かべつつも引き離したりはせずに歩いています。

 対照的に喜多さんは目を輝かせて、絵画や陶磁器を眺めていました。

 

「有紗ちゃん……写真撮っていい!? 映えが凄そうだし!」

「かまいませんよ」

「ありがとう! この絵だと、この角度……あ、いや、もうちょっと下の方から……」

「あっ、きっ、喜多ちゃん輝いてますね。映えモードに入っちゃった」

「ふふふ、なんとも喜多さんらしいですよね」

 

 ひとりさんは何度も私の家に来ていることもあって慣れた様子で、写真を何枚も撮っている喜多さんを見て苦笑を浮かべていました。

 

 そんなこともありつつ、中元の品が並べてある広間に辿り着くと……さすがじいやというべきか、ズラリと綺麗に並べられた中元の品々は見やすくて素晴らしいです。

 蓋を開けて並べられているので中身を確認しやすく、種類ごとに分けている様子なのもありがたい気遣いですね。

 

「なにこれ、デパートの中元コーナーか? 有紗凄すぎるだろ……え? これ、好きなの持って帰っていいの?」

「ええ、もちろん。持ち帰り切れなければ自宅に送らせていただきますので、好きなだけ選んでください。ただ、食品などは賞味期限には注意してくださいね」

 

 もちろん食べ物もありますが、日持ちするゼリーや焼き菓子、ジュースや麺類もあるので種類は本当に豊富です。肉類はハムなどが中心ですね。和牛のギフトなどもあったのですが、そちらは日持ちしないので既に配ったり食べたりしました。

 

 自由に見てもらって大丈夫と話すと、皆さん興味のあるものに移動しました。リョウさんは言わずもがな食品類を見ており、虹夏さんは調味料などのギフトを興味深そうに見ていました。喜多さんは、ソープやバスギフトに興味がある様子です。

 

「……ほっ、本当に凄いですね」

「ひとりさんも、好きなものを持って帰ってくださいね」

「あっ、はっ、はい。あっ、でっ、でも、よく分からないところもあるので……あっ、有紗ちゃんも一緒に見ませんか? あっ、いや、有紗ちゃんは見慣れてるかもしれませんけど、私はよく分からないので教えてもらえたら嬉しいですし、一緒に居たいですし……」

「ええ、では一緒に見て回りましょうか?」

「あっ、はい!」

 

 ひとりさんと一緒に中元の品を見て回ります。不思議なもので、私としては見慣れている中元の品々も、ひとりさんと一緒に見るとなんだか新鮮で楽しい気がしました。

 

「あっ、これ、凄くお洒落ですね。綺麗な瓶が何種類も」

「これは少し珍しくて、海外のいろいろな地方の塩の詰め合わせですね」

「あっ、塩なんですね。へぇ……あっ、こっちの桐箱入りのは?」

「それは水ようかんですね。京都の老舗のものです」

「さっ、さすが、セレブ……どれも高品質な感じがして、凄いです。こっ、この瓶はお酒ですか?」

「ああ、いえ、それはアイスコーヒーですね」

「あっ、そうなんですね。瓶入りのコーヒーは初めて見ました」

 

 興味深そうな表情を浮かべるひとりさんを見ていると、こちらも楽しい気持ちになってきます。品物を説明すると驚いたり感心してくれるリアクションも愛らしいですし、やはりひとりさんと一緒だと些細なこともキラキラと輝いているように見えますね。

 

 

 




時花有紗:交友関係はかなり広く、中元も大量。まぁ、そんなことは関係なくいつも通りぼっちちゃんといちゃいちゃしていた。

後藤ひとり:休憩時間になるとススッと有紗の傍に寄っていく様は、まさにぼっチワワ。今回も例によっていちゃいちゃしていた。

伊地知虹夏:……今回はチベスナ顔をしていない……だと?
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