ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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レーベル訪問と付けながら、レーベルに辿り着いてないので①と小癪な方法を使って延長します。ぼっちちゃんとのいちゃつきを書きたかったので仕方ない。


八十一手散財のレーベル訪問~sideB①~

 

 

 結束バンドがストレイビートに話を聞きに行く日、虹夏はSTARRYの店内で星歌と話していた。

 

「今日レーベルに話聞きに行くんだろ?」

「うん! 皆で集まっていくんだ!」

「そうか、まぁ、浮かれる気持ちは分かるけど気を付けろよ。バンドとレーベルの方針が違ってトラブルになんてのは、しょっちゅう聞く話だしな。実際、私が現役の頃もレーベルから声をかけられたことがあったが、方針が合わなくてな」

「そうなの?」

「ああ、アルバムの製作まで確約って条件は魅力的だったが、その代わりプロデュース関連はほぼ全部レーベル側の指示に従えって感じで、どうにも息苦しそうな感じで断ったよ。まぁ、レーベル側もたくさん金を出すんだから自分たちのやり方でって気持ちも分かるけどな」

「へぇ~」

 

 現役時代にレーベルからスカウトされたことのある星歌の経験談を、虹夏が感心しながら聞いているとSTARRYのドアが開き、リョウが入って来た。

 扉の開く音に振り向いた虹夏と星歌だったが、リョウの格好を見て硬直することになる。

 

「おはよう」

「な、なんだそのフルアーマーは!?」

「なんで4本もベース持って来てるの!? 今日練習とかないよ?」

 

 両肩に1本ずつ、両手にさらに1本ずつ計4本のベースケースを抱えたリョウを見て、星歌と虹夏が驚愕のままにツッコミを入れると、リョウはどこか誇らしげな表情を浮かべた。

 

「いま、ここに来る途中で買ってきた。見たいなら、特別に見せてあげよう」

「……えぇぇ……は、ハイエンドベースばっかりじゃん!? こ、これ、全部だと100万円近くなるんじゃ……そんなお金何処から……」

「ローン組んだ!」

 

 リョウが持って来た……来る途中で買ってきたというベースは、どれも優に20万を超えるであろうハイエンドベースばかりであり、虹夏が青ざめた表情でお金の出どころを尋ねると、リョウは自信満々の表情で目を輝かせてサムズアップをした。

 すると丁度そのタイミングで、ひとり、喜多、有紗の3人がSTARRYに入って来た。

 

「「「おはようございます」」」

「あ、3人ともおはよ~一緒に来たの?」

「ああ、いえ、有紗ちゃんとひとりちゃんとは偶然入り口で……って、リョウ先輩なんですかそのベース!?」

 

 虹夏の言葉に答えつつ笑顔を浮かべていた喜多だったが、直後にリョウの周りにある4本の高級そうなベースを見て驚愕の表情を浮かべる。

 そして同時に有紗とひとりも、STARRYに入る前に見たリョウの姿は見間違えではなかったのかと、顔を見合わせてなんとも言えない表情を浮かべていた。

 そんな3人に対し、リョウはどこか誇らしげに目を輝かせながら告げる。

 

「さっき買ってきた。レーベルに入るし自分へのご褒美ってことで! 返済は未来の自分にまかせた!!」

「お前はもう少し自分に厳しくしろ!!」

 

 明らかに考えなしに散財している様子のリョウを見て、虹夏が大声でツッコミを入れるが、リョウは余裕そうな表情で微笑んでいた。

 

「レーベルから契約料貰って、印税もザクザク入るし、よゆーよゆー」

「……あっ、えっ、えっと……有紗ちゃんが言うには、今回の契約はスポンサー契約みたいな感じで、給料や契約料は発生しないって……」

「……………………ごめん、ちょっと待って。いま、情報を受け止めきれてない」

 

 ひとりがおずおずと告げた言葉を聞き、先ほどまでの余裕そうな表情から一変してリョウは顔の色を無くした。これが適当な相手が言っているだけなら信じないという自己防衛もできたのだが、有紗が情報源となると話は変わってくる。

 しばし硬直したのちに、リョウはギギギと壊れたブリキ人形のような動きで首を動かして有紗に視線を向ける。

 

「……有紗、いまぼっちが言ったこと……マジ?」

「いちおう、ストレイビートに所属している他のバンドのプロモーションなども含めて情報を集めましたので、ほぼ間違いないと思いますよ。おそらくではありますが、レーベル側の補助を受けて曲を作成して、その曲がサブスクなどで十分な人気となって初めてCDが作成されて、印税などが発生するようになる形でしょうね。それなりの期間所属していても、まだCDを出していないというバンドもありましたので」

「……ほ、ほぼ、なんだよね? 可能性としては? 何%ぐらい?」

「99%ぐらいですね」

「じゃあ確定じゃないか!? むしろ、残りの1%はなに!?」

「社外秘で新プロジェクトを企画していて、その契約形態が他と異なる場合などの、極めて特殊なパターンですね」

「…………」

 

 有紗の言葉を聞いて、リョウは真っ白に燃え尽きた。リョウもなんだかんだで有紗を信頼しているし、かなり頼りにしている。その有紗が99%と言うのであれば、もう確定と思っていいレベルであるとも理解していた。

 真っ白になったリョウは、無言でスマホを取り出して隅に移動して電話をかけ始めた。

 

「……あ、あの、先ほどローンを組んで購入した楽器の返品とかって……あ、返品不可……あ、はい。確かに購入時にも説明されました……はい……」

 

 ベースを購入した楽器屋に電話をしているようだったが、どうやら返品は難しそうであり、リョウの顔はどんどん悲痛になっていく。

 その様子をなんとも呆れたような表情で見つつ、虹夏は有紗に声をかける。

 

「有紗ちゃん、今回は本当に頼りにしてるから……いや、ほら、私たちの中でこの手の交渉事に強そうなの有紗ちゃんぐらいしかいないし」

「ええ、どこまで役に立てるかはわかりませんが、可能な限り力になりますよ」

「ありがと~本当に有紗ちゃんが居てくれてよかったよ。それで、その契約形態に関して聞いてもいい?」

「あくまで私の予想ではありますが……」

 

 話が来たばかりの頃は純粋に喜んでいたが、星歌の話などを聞いて果たして己たちに適したレーベルなのかという不安はあった虹夏だったが、有紗の分かりやすい説明を聞いてホッとした表情を浮かべる。

 投資家としての顔も持ち、財界などにもかなり顔の利く有紗はこの状況では本当に頼りになる存在であり、もういっそ「正式にマネージャーでいいんじゃ……」と思ってしまうほどだった。

 

 有紗が虹夏と喜多に予想を交えつつ契約の説明をしていると、既に前もって話を聞いているひとりは電話を終えて項垂れているリョウに心配そうな表情で声をかける。

 

「あっ、リョウさんの気持ちも分かります。わっ、私も、てっきり給料とか契約料とか貰えるって勘違いして、ワンランク上の女としてハイブランドの服とか買おうとしちゃいました」

「ぼ、ぼっち……そっか、ぼっちは私の仲間……同じく散財を……」

「あっ、いえ、事前に有紗ちゃんに相談してさっきの話を教えてもらったので、散財とかは……してないです」

「ちくしょう! なんで私は事前に有紗に相談しなかった……」

 

 もちろんひとりとしては慰めているつもりではある。だが、リョウにしてみれば同じ過ちをした仲間がいたかと思ったら、実はそんなことは無かったと希望を抱いてから叩き落とされており、むしろ追撃を喰らっている気分ではあった。

 

「……じゃあ、ぼっちはハイブランドを買ったりはしなかったのか……」

「あっ、えっ、えっと、いちおう服一式とジャージを……それだけで100万円超えてて震えました」

「え? 散財……してるじゃん……」

「あっ、えと……有紗ちゃんが買ってくれたので……その……」

「くそっ! コイツ、恋人の財力がチート過ぎる!!」

「こっ、恋人じゃないですって!?」

 

 そう、なにより大きな違いとしてひとりには有紗というあまりにも強大な味方がいる。数十万はするハイブランドの服であっても、有紗には大した金額ではない。

 真っ赤な顔で否定するひとりの声も聞こえない様子で項垂れたリョウは、ただそれでもなんだかんだで自業自得であるというのは理解しているのか、安直に有紗に助けを求めたりはしなかった。

 

「……あ、誰か、ベース買わない? その、新品だけど定価の1割引きでいいから……あ、有紗、ベースとかどうかな? ぼっちとセッションの幅も広がると思うし、わ、私、教えるから……」

 

 まぁ、遠回しに助けは求めるのだが……縋るような涙目を浮かべるリョウを見て、有紗はしょうがないなぁと言いたげな表情で苦笑を浮かべる。

 

「そうですね。じゃあ、1本だけ定価で購入しますよ。残り3本はちゃんと、ご自身でローンを払ってくださいね?」

「あ、有紗ぁ……ありがとう、本当に、ありがとう……」

「自業自得なんだから放っておけばいいとも思うけど、さすがにちょっと哀れだし……リョウ、ちゃんと反省しなよ」

 

 結局有紗が1本のハイエンドベースを定価……にローンの金利分を上乗せした金額で買い取ってくれることになり、リョウのダメージはある程度軽減された。もちろんそれでも、3本のハイエンドベースのローンは残ったままなのではあるのだが、4本の時に比べればマシである。

 心から安堵した表情を浮かべるリョウを見て苦笑しつつも、ひとりの頭の中にはある考えが浮かんでいた。

 

(あっ、あれ? でもこれって、経緯はどうあれ有紗ちゃんがベースを手に入れたわけだし、有紗ちゃんがベースの弾き方をある程度覚えたら、またセッションとかできたり……たっ、楽しそう! キーボードとのセッションはもちろん最高に好きだけど、ベースとのセッションもまた違った雰囲気になると思うし、絶対楽しい!)

 

 有紗の弾くベースとセッションすることを頭に思い浮かべ、ソワソワと期待するようなひとりの視線に気付き、有紗は優し気に微笑みを浮かべる。

 

「ですが、ベースを覚えてみるのもいいですね。ひとりさんのギターとセッションしたら、キーボードの時とはまた違って楽しそうです」

「あっ、はっ、はい! わっ、私もそう思ってました。もちろんキーボードを弾く有紗ちゃんは、最高にカッコよくて大好きですけど、ベースを弾く有紗ちゃんもきっと凄く素敵でカッコいいと思うんです」

「空いた時間にゆっくり練習してみますので、また一緒に演奏しましょうね」

「はっ、はい! あっ、手伝えることがあったらいつでも言ってくださいね。いくらでも力になります!」

「ふふ、それは頼もしいですね」

 

 喜びでテンションが上がっているせいか、有紗のことを「カッコよくて大好き」と発言したことに気付かずひとりは非常に楽しげだった。

 なお、後に……具体的にはその日の夜の就寝前に己の発言を思い出して悶絶するのだが、いまの彼女にそれを知る由もない。

 

 

 




時花有紗:ほぼマネージャー。メンバーからの信頼度は非常に高い。流れでベースを購入することになったが、実際ひとりとセッションの幅が広がるのはいいなぁと思っている。リョウに関しては全額立て替えてあげることも余裕だが、それではリョウのためにならないので、1本分だけ助けた。

後藤ひとり:なんか本音みたいなのがポロりしちゃったぼっちちゃん。有紗とのセッションが大好きなので、テンションが上がり過ぎた結果である。リョウに関しては、本当に追い打ちを仕掛けるつもりは無く普通にフォローしようとした……が、ぼっちちゃんのコミュ力では無理である。

世界のYAMADA:有紗のおかげで最悪は免れたが、3本分のローンは背負ったままである。今回の件以外にも日頃から有紗には世話になっているという自覚はいちおうあるため、メンバーの中でも明確に有紗にだけは勝てないというか、頭が上がらない。

喜多郁代:実は有紗のおかげでリョウが原作より金銭面や食事面で困窮していないため、あまりたかられていないためお小遣いの前借りとかもしていないし、成績も落ちるどころかかなり上がっていることもあって、原作とは違って母親も割とバンド活動に好意的であり、普通に仲は良好と間接的ではあるが良い影響を受けまくっている。
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