ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

153 / 211
八十三手団欒の手持ち花火

 

 

 正式にストレイビートと契約を結び、結束バンドも新たなステージで活動開始という感じではありますが、とりあえず8月中にこれといった大きな活動はありません。

 というのも、未確認ライオットに集中して頑張っていたこともありますし、結果がどうなるか……ひいては結束バンドのメンバーの精神状態がどうなっているか予想もできなかったので、今月に関してはライブの予定も入れていません。

 それに虹夏さんは運転免許を取るため教習所に通っているので時間を作りにくいということもあって、8月は散発的にスタジオ練習があるぐらいで予定はフリーといった感じです。

 

 夏休みという学生にとって時間が沢山ある期間であり、予定の都合も付けやすいとなるとひとりさんと遊びやすいという大きなメリットもあります。

 というわけで今日もひとりさんの家に遊びに来ました。近々一緒に軽井沢に行く予定もありますし、その詳細の打ち合わせも兼ねています。

 

 勝手知ったると言えるほど訪れているひとりさんの家で、お義母様やお義父様、ふたりさんやジミヘンさんに挨拶をしてから出迎えに降りてきてくれたひとりさんと一緒に、2階のひとりさんの部屋に向かいます。

 

「……ところで、ひとりさん? なぜ、リビングに見覚えのある商品券が飾られていたのでしょうか?」

 

 先ほど訪れたリビングに新しく額縁に入った音楽ギフト券2万円分が飾られていました。その音楽ギフト券には見覚えがあります。というか、未確認ライオットの審査員特別賞で貰ったものです。

 審査員特別賞には副賞として楽器やCDなどに使える音楽ギフト券10万円分が付いて来て、それを私たち5人で分けたので、ひとり2万円分所持しています。

 ただ、それがなぜ真新しい額縁に入ってリビングに飾られているかは分かりません。

 

「あっ、えっと、お父さんとお母さんがはしゃいじゃって……しっ、審査員特別賞の賞状はSTARRYにありますし、代わりに商品券を飾って同額のお金をくれました」

「なるほど……まぁ、おふたりらしいですね」

「あっ、あはは、でっ、ですね」

 

 たしかに審査員特別賞の賞状とミニトロフィーはバンドに対して贈られたので、ホームであるSTARRYに保管しています。星歌さんがウキウキと、スタッフルームに飾っていました。

 お義母様とお義父様のことですから、ひとりさんが頑張った記念としてなにかを飾りたいと考えたのでしょうね。テストの最高点も飾っていますし……それで、音楽ギフト券を飾ったと。

 言われてみればなるほどと感じることに、ひとりさんと顔を見合わせて苦笑しました。

 

「ああ、そういえばひとりさん。軽井沢に出かける件なのですが……」

「あっ、今日打ち合わせするんでしたよね?」

「はい。いろいろ考えてみたんですが……特定のホテルなどではなく、避暑地にある別荘に行きませんか? 軽井沢高原の辺りにお父様がかなり広い土地と別荘を持っているので……」

「すっ、凄く当たり前のように別荘とか言い出した……まっ、まぁ、有紗ちゃんと思うと全然不自然に聞こえたりはしないですけど……」

 

 軽井沢にはかなり強めのコネがあるので、通常であれば確保が難しい人気の宿泊施設なども予約することは簡単ですが、少し考えがあって別荘への宿泊を考えました。

 

「最初は冬に行った箱根旅行のように観光地を巡ることも考えたのですが、未確認ライオットのファイナルステージやレーベルと多くのことがあったので、なんだかんだで疲れが溜まっているでしょうし観光ではなく避暑をメインにしようと思いました」

「なっ、なるほど……確かに、ここの所いろいろありましたね」

「ええ、それで、別荘で基本的に私とひとりさんのふたりで過ごす形ですね。一緒に料理をしたり、近場に湖などもあるのでそちらに行ったりというのを計画してます」

「あっ、でっ、でも、私もその方がいいかもしれないです。人が多い観光地とかよりは、そうやって有紗ちゃんとふたりで過ごすのが楽しそう……」

 

 旅館やホテルと違って別荘で過ごす間は、食事の用意などは自分たちですることになります。それは言ってみれば朝から晩までひとりさんとふたりきりという大変に素晴らしいシチュエーションです。

 そしてまるで新婚生活のようにふたりで料理をしたり遊んだりと、涼しい高原には夏に定番となる虫なども少なく、軽井沢高原は8月の平均気温も20度前後とかなり過ごしやすいです。

 

「それとですね。今回は楽器も持っていきましょう。というか、事前に私の家の使用人の方に運んでもらっておく予定です。それなら移動中に荷物にならないですからね」

「あえ? がっ、楽器ですか?」

「ええ、アンプなども合わせてですね。今回行く別荘の土地はかなり広く楽器を演奏しても近隣の迷惑になったりしないので、大自然の中でセッションなども楽しいのではないかと思いまして」

「あっ、たっ、楽しそうです! いいですね! 屋外でのセッションとかだと、音の聞こえ方とかも違ってきますし、たっ、楽しみです!」

 

 私の言葉を聞いてひとりさんは非常に喜んでくれて、明るい表情で何度も頷いてくれました。軽井沢の別荘はお父様がお母様や私と一緒に、家族水入らずで過ごせるように建てたものなので、土地も広いですし別荘内もかなりいろいろなものが揃っていて、私とひとりさんのふたりだけでも不自由なく生活できます。

 ひとりさんも将来的には家族になるわけですし、別荘を使用するのもまったく問題ありませんし、実際お父様も快く使用許可を出してくれました。

 ただ若干不安なのは、食材などを事前に別荘に用意しておくのですが……お父様が用意してくださると言っていました。お父様は家族に対する贈り物に加減を知らない方なので、山海の珍味などの超高級食材が山のように用意されている気がします。

 素人が取り扱えないような食材を用意しないように釘を刺しておきましょう。

 

「そうです。せっかくですし、軽井沢で過ごすときは前に買ったお揃いの服にしませんか? ジャージもお揃いで買いましたし、それを着て過ごすのもいいのではないでしょうか?」

「あっ、たっ、確かにジャージだと動きやすそうですね。まぁ、クッチのジャージなので贅沢ですけど……」

「ふふふ、そうですね」

 

 その後もひとりさんと軽井沢に行く日程などを話し合います。今回は目的地が別荘なので、ある程度日程などの融通は効きますし、それほど準備が必要でもないのですぐにでも行けそうです。

 ひとりさんと旅行も楽しみですが、別荘に居る間はずっとふたりきりと思うと、それも本当に素晴らしいですね。湖では釣りなどもできますし、いろんなことを一緒にしてみたいものです。

 そんな風にひとりさんと楽しく会話していると、部屋がノックされお義父様とお義母様とふたりさんがやってきました。

 

「有紗ちゃん、ひとり、後で皆で花火でもやらないか? 少し行ったところにある河川敷は花火をしても大丈夫だからね」

「はなび~。おとーさんと一緒にスーパーで買ってきたんだよ!」

 

 そう言ってふたりさんが掲げたのはこの時期コンビニやスーパーでよく見かける手持ち花火を中心としたパックでした。

 そういえば花火もいつか一緒にやろうと話していましたし、ある意味ではちょうどいいタイミングかもしれませんね。そう思ってひとりさんの方を見ると、ひとりさんも私の意図を察したのか頷いてくれました。

 

「お誘いありがとうございます。それでは、せっかくの機会ですしご一緒させていただきますね」

「やった~! 有紗おねーちゃんと花火~!」

 

 嬉しそうに飛びついてきたふたりさんを抱き留めて、軽く頭を撫でながら微笑み返します。花火ということなので日が暮れてからになるでしょうが、楽しみですね。

 とりあえず迎えの時間を調整する必要があるので、じいやに一報だけ入れておきましょう。

 

 

****

 

 

 ひとりさんの家で夕食を頂いたあと、お義父様の運転する車で河川敷に移動して手持ち花火をひとりさんと一緒に楽しみます。

 

「あっ、なっ、なんか、いいですね」

「そうですね。大きな花火とはまた違ったよさがありますね」

 

 打ち上げ花火も非常に綺麗で見ていて楽しいですが、手持ち花火もまた違ったよさがあるものです。綺麗な花火を眺めつつ、他愛のない会話もできるというのがいいですね。

 

「おねーちゃん! 有紗おねーちゃん! 一緒にこの花火やろ~」

「あっ、うん。危ないから、火をつけるのはお姉ちゃんがやるからね」

「うん! えへへ……」

「うん? どうしたの、ふたり?」

 

 花火を持って来たふたりさんは、ひとりさんを見てなにやら楽しそうに笑顔を浮かべて、それを見たひとりさんが不思議そうに首を傾げます。

 

「おねーちゃん、前は幽霊みたいだったけど、有紗おねーちゃんと会ってから? バンドに入ってから? なんか、カッコよくなったよね~。この前のフェス? での演奏もカッコよかった!」

「え? そっ、そうかな?」

「うん! 100点満点中58点ぐらい!」

「かなり現実的な数字!?」

 

 そういえば以前に比べてふたりさんは、ひとりさんを慕っているような印象を覚えます。いえ、以前からひとりさんのことは姉として好きではあったのですが、最近は尊敬といった感情もあるような気がします。

 ライブなどで演奏しているひとりさんは素敵ですし、その姿に憧れを持つのも必然でしょうね。

 

「有紗おねーちゃんは100点!」

「おや? ふふ、ありがとうございます」

「ぐぬぬ……でっ、でも、有紗ちゃんが100点なのに関しては、異論は無し……ほら、ふたり、火が付いたよ」

「ありがと~おねーちゃん!」

 

 ひとりさんが火をつけた花火を受け取るふたりさんは嬉しそうで、それを見たひとりさんも優し気に微笑みを浮かべました。なんというか、仲のいい姉妹といった雰囲気で癒されますね。

 そんなことを考えつつ、私とひとりさんも手に持った花火に火をつけ、ふたりさんと3人で花火を楽しみました。

 

「……うぅ、娘たちが仲良さそうに、感動だぁ」

「有紗ちゃんの将来的には私たちの娘だから、3姉妹かしら?」

「義姉は姉妹数のカウントに入るのかな? 3人娘ぐらいでいいんじゃないかな?」

「それだとユニットぽい気もするわね~」

 

 




時花有紗:ひとりといちゃいちゃ旅行パート2を企画。今回はふたりでの共同作業に着目している模様。なお、後藤家ではもう普通に家族として扱われている。

後藤ひとり:有紗ちゃんと一緒に出掛けることに関しては一切抵抗がない模様で、軽井沢も普通に楽しみ。原作と比べ妹のふたりにあまり舐められておらず、姉妹中は結構良好である。

後藤ふたり:高校に入ってからひとりが、有紗の影響もあって精神的に成長しており、バンドを頑張っている姿は素直にカッコよく、勉強などもある程度できるようになり、友達もそれなり増えていることもあって原作のように舐めていたり馬鹿にしていたりという感じがほぼ無く普通に仲良し。友達などにも、姉のバンドのMVなどを自慢している。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。