動画をトゥイッターに投稿してしばらくコメントなどを見てひとりさんと楽しんだあとは、一緒にトゥイッチでゲームをすることになりました。友鉄という有名な多人数でプレイする定番のゲームですが、実は私は初めてプレイするのでひとりさんに教わりながらのプレイとなりました。
「ふっ、ふふ、私は目的地まであと3マス、有紗ちゃんは29マス……今回はもらいましたよ! あっ、有紗ちゃん、移動系のカード使ったほうがいいですよ」
「えっと、たしかコレですね。サイコロを増やせるんですよね?」
「あっ、はい。そのカードだと5個に増えますね」
「なるほど、これで一気に長距離を移動するわけですね」
友鉄には移動系や妨害系といったカードが存在して、それを駆使して進めていくすごろくゲームのような感じです。初めは少し戸惑いましたが、ひとりさんの指導のおかげもあってある程度は理解することができました。
種類が多くて複雑そうには見えますが、実際の目的はシンプルなので遊びやすいゲームですね。
「……あ、29ということは、これで目的地に到着ですね」
「あえぇぇ!? なっ、なんでぇ……あっ、有紗ちゃん、さっきから射程内に目的地があると全部一発で行くんですけど……なっ、なんで、教えてるはずの私がボロ負けしてるのか……こっ、これが天運……生まれながらの勝ち組の力……」
「たまたまだと思うのですが……ビギナーズラックのようなものですよ」
ひとりさんのいう通り、初めてのプレイではありますが、どうも運が味方してくれているみたいで現在私はコンピューターも含めた4人対戦でトップの状態でした。とはいえ、この手のパーティゲームには逆転の手段はたくさんあるので、あくまで現時点ではという話ではありますが……。
「……あっ、有紗ちゃん、ごめんなさい。勝負の世界は非情なんです。この妨害カードによって、有紗ちゃんは1を出すまで動くことができません。その間に逆転を――なんで一発で出すんですか!?」
「まぁ、6分の1ですから16.7%は出るわけですし……ですが、なるほどだいたい分かってきました」
「あっ、なっ、なんか嫌な予感が……」
その後もひとりさんと一喜一憂しながら楽しくゲームを行いました。今回は私にビギナーズラックがあったようで、最終的な順位も私がトップで終わることになりました。
ひとりさんもCPUを抑えて2位なので、決して弱かったりというわけでは無く私がたまたま幸運だっただけです。
「楽しかったですね。またやりましょう」
「……あっ、有紗ちゃん、つっ、強すぎです……運が絡む類のやつ全部勝つじゃないですか……」
「今回はビギナーズラックがあったおかげですね」
「……いっ、いや、私の直感ですけど、再戦しても似たようなことになりそうな……」
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ゲームである程度遊んだあとは、おやつ時となったので休憩を兼ねておやつを用意することにしました。
「あっ、きっ、綺麗ですね。ハーブティーですよね?」
「ええ、今回は優しい香りが特徴のカモミールです。王道のジャーマンカモミールですね」
「あっ、え? ジャーマンカモミール?」
「ええ、カモミールはいろいろな種類がありますが、その中でハーブに向いているもので代表的なものは、ジャーマンカモミールとローマンカモミールの2種類です。精油などにも使われることが多いですが、今回はハーブティーに絞って説明すると、ジャーマンカモミールは甘く優しい香りと味が特徴で、カモミールティーと言えばこちらを差すことが多いです」
「ふむふむ、ローマンカモミールの方は?」
「ローマンカモミールは香りはとてもフルーティーでよいのですが、ハーブティーにした場合は苦みが強く出る特徴があるので、ミルクを入れたりして楽しむことが多いですね」
「なっ、なるほど……」
今回はシフォンケーキをおやつとして食べる予定なので、淡い味わいに合うカモミールを選びました。普通の紅茶でももちろんいいのですが、せっかくの軽井沢ですし少し洒落た雰囲気のハーブティーもいいでしょう。ガラス製のポットに入れると、見た目にも華やかです。
「なっ、なんてお洒落な……あっ、美味しくて飲みやすいですね」
「ハーブティーはスッキリとした後味のものが多いですから、こういったおやつには丁度いいですね。ひとりさんが気に入ってくれたのなら、私も嬉しいですよ」
「わっ、私ひとりじゃ絶対ハーブティーを飲むって発想が出てこないので、こういう新しい味に出会えるのも有紗ちゃんのおかげですね」
そう言って柔らかく微笑むひとりさんは大変可愛らしく、なんというかまたしても衝動的に抱きしめたくなりましたが、いまはおやつを食べているので我慢しましょう。食べ終えた後に……いえ、いっそ、前に旅行に行った時のように……。
「あっ、有紗ちゃん?」
「……ひとりさん、おやつを食べたあとなのですが、耳掃除などいかがですか?」
「あっ、えっと、そっ、それはつまり有紗ちゃんが私にしてくれるってこと……ですよね?」
「ええ、前に箱根に行った際にもしましたので、それと同じですね」
「……あっ、あの時は罰ゲームでしたが、今回は?」
「ただ私がしたいだけです」
「いっ、潔い……」
素直に要望を告げると、ひとりさんは一瞬呆れたような顔をしましたが、少しして頷く形で了承の意思を返してくれました。
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おやつを食べ終えたあとは、話していた通り耳掃除をすることになりました。ソファーに私が腰かけ、ひとりさんが寝転ぶ形で私の膝に頭を置きます。
「それでは、始めますね」
「あっ、はっ、はい。よろしくお願いします」
一言告げてから耳掃除を開始します。以前の旅行の際にも思いましたが、これは癖になってしまいそうな幸福感がありますね。膝の上に感じるひとりさんの頭の重みや温もり、こちらを信頼して身を委ねてくれている姿や、普段とは違った角度で見るひとりさんの顔……どれも非常に素晴らしいです。
ひとりさんが気持ちよさそうにしてくれれば、なんというかこちらも嬉しくなる思いで、幸福度がさらに増す印象ですね。
「……痛くはないですか?」
「あっ……んっ……ちょっとだけ、くすぐったいですけど……あっ、その……気持ち……いいです」
「それならよかったです。リラックスしてくださいね」
「あっ、はい」
穏やかに時間が流れていくような感覚の中で、耳掃除を進めていきます。できればもっと長くこうしていたいと思える時間ではありますが、残念ながら幸せな時間が過ぎるのは早いもので、あっという間に両側の耳を掃除し終えてしまいました。
「あっ、ありがとうございます……あっ、えっと……」
幸せな時間が終わってしまったことに少し寂しさを感じていると、ひとりさんがなにやら悩むような表情を浮かべ、少しして顔を赤くしながら口を開きました。
「……こっ、交代しましょう! つっ、次は私が有紗ちゃんに、してあげます」
「ひとりさんが、私に?」
「はっ、はい! あっ、えっと、ふたりの耳かきを何度かしたことがあるので、たっ、たぶん大丈夫だと思います……あっ、もっ、もも、もちろん、有紗ちゃんさえ嫌じゃなければ……ですが」
なんと、今度はひとりさんが私に耳掃除をしてくれるらしいです。朝から引き続きなんたる幸運……朝起きた直後に感じた今日はいい日になりそうだという直感は、間違いではなかったようです。
「もちろん、嫌などでは……むしろ、嬉しいです」
「あっ、よっ、よかった……じゃっ、じゃあ、どうぞ」
「はい。失礼しますね」
私の返答にホッとした表情を浮かべながら、ひとりさんはソファーに腰かけて軽く自分の腿を手で軽く叩きました。そう、ひとりさんに耳掃除をしてもらえるということは、必然的にひとりさんに膝枕をしてもらえるということでもあります。
逸る気持ちを抑えつつ、ひとりさんの腿に頭を乗せると……なんと言うことでしょう、天国はここにあったようです。
「あっ、そっ、その、寝心地悪かったりしませんか?」
「むしろ、極楽です。ひとりさんの柔らかさと温もりを感じていて、ひとりさんがとても近くに居てくれるのを実感するかのような、表現するのも難しいほどに幸せです」
「まっ、またそうやって恥ずかしいことを……まっ、まぁ、でも、喜んでくれたなら……よかったです。じゃっ、じゃあ、始めますね。痛かったら言ってください」
「はい。よろしくお願いします」
私が返答をすると、ひとりさんの手が私の耳に触れ、少しして耳かきを用いて優しく耳掃除をしてくれている感触が伝わってきました。
これは大変に気持ちがいいです。ひとりさんの手つきが優しいこともそうですが、耳の中を見るために顔を近づけているのか、時折ひとりさんの吐息が耳に当たってなんとも言えない心地良さがあります。
「……これは、癖になってしまいそうなほど気持ちがいいですね」
「あっ、そっ、その気持ちは分かります。私も、有紗ちゃんにしてもらう耳掃除が凄く気持ちよくて、癖になりそうだって思ってました」
「私でよければ、いつでもしますよ」
「あっ、えっと、そっ、そうですね。またこんな風に交代しながら、ふたりでやりましょう」
するのもされるのもどちらも幸福で素晴らしいことですし、ひとりさんもそう思ってくれているのがなによりも嬉しいですね。
さらにこうして約束をしたことで、次の機会まであるという……本当に今日という日の幸運に心から感謝したいです。
「……ひとりさん、話は変わるのですが、耳掃除が終わったら抱きしめていいですか?」
「あぶっ!? あっ、有紗ちゃん!? 耳掃除してる時にビックリするようなこと言わないでください! 手元が狂ったらどうするんですか……」
「申し訳ありません。ですが、ひとりさんへの愛おしさが溢れているので……というわけで、耳掃除が終わったら抱かせてください」
「言い方ぁ!? はっ、ハグならしていいですから、いまは黙っておいてください。手元が狂うと危ないので……」
「はい。ありがとうございます!」
ひとりさんの許可も貰えたので、耳掃除が終わったらしっかり抱きしめることにしましょう。う~ん、本当にこうしてひとりさんとふたりきりで過ごす時間は幸せいっぱいで、最高ですね。幸いまだまだ時間はありますし、もっとひとりさんと幸せな時間を共有したいものです。
時花有紗:今日はいつもよりぼっちちゃんが積極的で、いちゃいちゃ度が高いため非常に幸せでずっとニコニコ笑顔である。なお、運もチート級なので運の絡む勝負は激烈に強い。
後藤ひとり:ちょっと積極的になって、有紗にしてもらうだけではなく自分からもいろいろしようと行動に移すことが増えてきた。運は悪い方……だったが、不思議と有紗といる時は割と運がよく、友鉄もCPUを抑えて2位だったし、有紗に敵わないまでもそこそこいい勝負ができていた。