ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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九十五手遊戯のアトラクション~sideA~

 

 

 待ち合わせの駅で、可愛らしい私服に身を包んだひとりさんを抱きしめたあとは、名残惜しかったですが早めに体を離しました。本当に名残惜しいですが……。

 ひとりさんの現在の格好は、白い袖がふっくらとしたバルーンスリーブのシャツに、藍色のズボンを履いており、コーデ自体はシンプルですがだからこそひとりさんの素材の良さをグッと引き立てていました。

 特にバルーンスリーブの上着が可愛らしいですね。七分袖の白い上着の膨らみがなんとも愛らしいです。

 

「改めて、今日はよろしくお願いしますね」

「あっ、はい。こちらこそ……えっ、えっと、ここからバスでしたっけ?」

「以前は人数も多かったのでバスで行きましたが、今回はゴンドラで行きませんか?」

「ゴンドラ……あっ、アレですね」

 

 現在の駅から遊園地であるよみ瓜ランドを繋ぐゴンドラがあり、よみ瓜ランドのキャッチコピーのひとつである「空からいけちゃう遊園地」はこのゴンドラがあるからだと言われています。

 

「ええ、10分から15分で遊園地に着くみたいですし、景色もいいのでそちらで行きましょう」

「わっ、分かりました。あっ、でも、チケットとか居るんじゃ……」

「既に買ってあります」

「さっ、流石有紗ちゃん、行動が早い」

 

 元々今回はゴンドラでいくつもりだったので、先に駅に来て購入しておきました。ゴンドラで隣同士に座って、いい景色を眺めながら遊園地に向かう。とても素晴らしいです。

 

 そんなわけでひとりさんと手を繋いでゴンドラ乗り場に向かって、ゴンドラに乗って並び合う形で座ります。ゴンドラからの景色は非常に綺麗で、緑が多く美しいです。

 

「綺麗ですね」

「あっ、はい。なんか、こうしてゴンドラで景色を眺めながら移動してると、ワクワクしてきますね」

「ふふ、そうですね。いまから遊園地が楽しみです。最初はせっかくですし、カチューシャを買いに行って、一緒に付けませんか?」

「あっ、なっ、なんか陽キャっぽい感じですね。やっ、やりましょう!」

 

 やはり遊園地デートといえば、お揃いのカチューシャというイメージがあります。だいたい出入り口付近に土産物などを取り扱う店はあるので、そこで購入してアトラクションを楽しむ形ですね。

 以前に行った際には乗らなかったアトラクションなどにも乗ってみたいです。特に2人乗りゴーカートなどのふたりで楽しめるタイプのアトラクションは抑えておきたいところです。

 

「ひとりさんは、どこか行ってみたいアトラクションなどはありますか?」

「あっ、えっと、前にあまり行かなかった……もの作りエリアとかですかね?」

「大手の企業とのコラボが多いエリアですね。もの作り体験が出来たり、いろいろ独自なものもあって面白そうですね」

「あっ、はい。あと、屋内アトラクションが多いので……絶叫系とかが無いのが、ありがたいです」

 

 以前来た際は5人で周ったこともあって、大人数で楽しめるアトラクションを中心に周りましたし、やはり遊園地の定番となる様なアトラクションを周りました。

 あと喜多さんができるだけ多くのアトラクションを周ることを希望していたこともあって、体験エリアのような比較的ひとつのアトラクションの時間が長いものは避けていた印象です。

 

「あっ、有紗ちゃんはどこか行ってみたいところはありますか?」

「ふたり乗りのゴーカートなどに乗ってみたいですね。全長1000mを超えるコースをゆっくりと周るみたいです」

「あっ、楽しそうですね。あんまり怖くなさそうですし……」

「今日は私とひとりさんふたりですし、絶叫マシンなどには乗らずにのんびりと楽しめるものを中心に周りましょう」

「あっ、はい! 私もその方が嬉しいです」

 

 ひとりさんは絶叫マシンが苦手なので、もちろんそういったものに乗るつもりはありません。ゴーカートやメリーゴーランド、コーヒーカップといったタイプのアトラクションを中心に周ろうと考えています。

 ただ最後にはやはり、観覧車に乗りたいところですね。

 

 

****

 

 

 遊園地に辿り着き入園の手続きをして園内に入りました。やはり休日だけあってそれなりに人は多いですが、前回来た時よりは空いている印象なので、これならアトラクションなども長時間待つようなことは少なそうです。

 最初はゴンドラの中で話していた通り、お揃いのカチューシャを購入することにしました。よみ瓜ランドのキャラクターを模したカチューシャ……。

 

「こっ、こんな感じですかね?」

「か、可愛いです! ただでさえ可愛いひとりさんが、可愛らしいカチューシャを着けると相乗効果が凄いですね!」

「いっ、いや、むしろ有紗ちゃんの方が凄く可愛くて、同じものを着けてるとは思えないぐらいです」

 

 互いにカチューシャを着けた姿を褒め合って笑い合い。改めて手を繋いで園内を歩き始めます。最初はひとりさんが言っていたもの作り体験のできるエリアに向かうことにしました。丁度出入り口から近い場所にあるエリアなので向かいやすいです。

 

「あっ、あの、有紗ちゃん?」

「はい?」

「なっ、なんで、この手の繋ぎ方なんでしょうか?」

「デートなので」

「……あっ、駄目だこれ、この一言で全部押し切るつもりの顔してる」

 

 ひとりさんとは手を繋いで歩いているわけですが、もちろんそこは恋人繋ぎです。いえ、まぁ、そういう通称があるだけであって恋人でなければこの手の繋ぎ方をしてはいけないというわけではありませんので、まったく問題は無いです。

 

「いえ、むしろある程度自重している方といいますか……」

「あえ? 自重? どっ、どの辺りが?」

「肩を抱いたり、腕を組んだりではない辺りですかね」

「…………なるほど?」

 

 ひとりさんは、どことなく諦めたような表情で少しの沈黙の後で頷きました。とりあえず恋人繋ぎに関しては変える必要はないといった感じなので、このままで行くことにしましょう。まぁ、アトラクションなどで遊ぶ際には、手を離すのであくまで移動中だけですが……。

 

 そうこうしているうちに最初のアトラクションに辿り着きました。そこは栄養ドリンクが有名な大手の製薬会社とコラボしているアトラクションで、錠剤を選んで薬作り……という体でアトラクションを楽しむことができます。

 さっそく中に入って、ひとりさんと一緒に薬作り風のアトラクションを進めていきます。

 

「あっ、えっと、次はこのレバーを……」

「はい。一緒に下ろせば完了ですね」

 

 とはいえ、小さな子供でも楽しむことができるように作られているアトラクションですので、特に難しい工程などは無く、サクサクと進めることができました。

 基本的には数種類ある味からラムネを選んで打錠機という機械を模したアトラクションで、画面の指示に従ってレバーを上げ下げ、その後にラムネにプリントする絵柄を選んでラムネが完成します。

 そして代表的な栄養ドリンクのラベルに似たデザインの容器に、作ったラムネを入れて完成となります。あとは、容器をデコレーションしたりできるコーナーがあるので、そこで容器をデコレーションして持ち帰る形です。

 

 ひとりさんと一緒に用意されているシールなどを使って容器をデコレーションしてアトラクションは終了となり、外に出て明るい場所で作ったラムネの入った容器を見ます。

 

「あっ、結構可愛い感じですね。サイズ大きいですけど……」

「直径5㎝とのことですから、なかなかボリュームがありますね」

 

 アトラクションで作るラムネは2個で1セットとなっており、ひとつは必ず栄養ドリンク風味で、もうひとつはフルーツ系の味から選ぶ形になっていました。

 そしてひとつのラムネは直径5㎝ほどあるので、実際に見てみるとかなり大きい印象です。容器のデザインや、首から掛けられる構造なのを考えると、サイズはオリンピックのメダルをイメージしているのかもしれません。

 

 ラムネの容器を鞄にしまって、次にひとりさんと一緒にやってきたのは電動のふたり乗りゴーカートで遊べるアトラクションでした。

 全長で1kmほどのコースを電動ゴーカートで周る形になっていて、途中にチェックポイントというかマークのようなものがあり、その上を上手く通過できれば特典が加算されていく形式とのことです。

 難しいコースと易しいコースがあるみたいで、時期によっては難しいコースで高得点を取ると景品がもらえたりするみたいですが、いまの時期は特にそういったキャンペーンはやっていないようでした。

 

「……あっ、えっと、私が運転でいいんですかね?」

「ええ、私は助手席で……ひとりさんのドライビングテクニックに期待ですね」

「えっ、えぇ……ぷっ、プレッシャーが……」

「まぁ、特に得点を競ったりする必要も無いので、ゆっくり景色を楽しみながら行きましょう」

 

 全長1kmのコースは少し高い位置になっており、ぐるりと周る間に園内の景色を楽しめるようになっています。

 ひとりさんの運転で出発して、ゴーカートはゆるやかに進んでいきます。あまり大きなサイズではないので、隣り合うと軽く肩が触れるのがいいですね。

 

「あ、ひとりさん上手いですね。いまのところチェックポイントは綺麗に通過できてますね」

「あっ、えへへ、けっ、結構いい感じで行けてますよね? もしかして、運転の才能が有ったり……なんて」

「そうかもしれませんね。18歳になれば免許が取れますよ?」

「……あっ、いや、本物の車は怖いので……」

 

 コース上にあるマークを、ひとりさんはかなり上手く周っており、ここまでは満点を取れていました。距離感を掴んだりするのが上手いのかもしれませんね。

 

「……あっ、あのチェックポイントは、難しそうな……こっ、この角度でいいんですかね?」

「そうですね。もう少しこう、ほんの少しだけ右に……」

「こっ、こんな感じで……あっ、いけまし――顔近っ!?」

 

 助手席に座ったままでは上手く見えなかったので、ひとりさんの肩に顔を乗せるようにして指示を出しました。なので、いま私はひとりさんの肩に寄り掛かっている状態ですね。

 

「……あっ、あの、有紗ちゃん? もうチェックポイントは通過したんですけど……」

「そうですね」

「あっ、離れる気ないやつだこれ……」

「こうしていると幸せなので……駄目ですか?」

「うっ、そっ、そんな顔されると……べっ、別にいいですけど……」

「ありがとうございます!」

 

 実際の車であれば運転中の方にもたれ掛かったりは危険ですが、ゆっくり走るゴーカートなら問題はありませんので、しばしこの密着を楽しんでおくことにしましょう。

 しかし何というか、運転しているひとりさんの横顔はカッコよくて素敵ですね。

 

 

 




時花有紗:ひとりとのデートを満喫中。大体のことは勢いで押し通すスタイルは流石猛将である。

後藤ひとり:なんだかんだで、恋人繋ぎもOKだし、肩にもたれ掛かるのもOKと……もう実質恋人だろこれ状態。
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