ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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九十六手親密の遊園地デート~sideA~

 

 

 ひとりさんとの遊園地デート、ヒーロートレーニングを行ったあとは、お昼時といっていい時間になっていました。丁度体を動かすアトラクションを楽しんだあとですし、タイミング的にもいいかもしれません。

 

「ひとりさん、お昼時ですし昼食にしませんか?」

「あっ、はい。さっき体を動かして、お腹も空きましたし丁度いいです」

「どこに行きましょうか? 前は、レストランに行きましたよね」

「あっ、えっと、今回は前回とは違うところに行ってみたいですね」

「なるほど……では、フードコートなどがいいかもしれませんね。出店形式の店が多くて、いろいろなB級グルメが楽しめるみたいですよ」

「あっ、いいですね。フライドポテトとかあったら、食べたいです」

 

 軽く相談してフードコートに向かうことに決定しました。幸い今いる場所からそれほど遠くはないので、さほど時間はかからず移動することができました。

 フードコートにはいろいろな店があり、ひとりさんが希望していたフライドポテトだけでなく、唐揚げや焼きそばなどもあり、お祭り気分で楽しめそうな雰囲気でした。

 

「あっ、美味しそうなのが多いですね。けっ、結構迷うかもしれません」

「ふたりで分けて食べればいろいろな種類を食べられますので、一緒に食べる前提で何種類か買ってみましょう」

「あっ、はい」

 

 いくつかの食べ物を購入して、ひとりさんと一緒にフードコートのすぐ近くにあった飲食スペースの席に座ります。お昼時だけあって、周りにはそれなりに人は居ましたが、混雑しているというほどではありません。

 とりあえず、そのままひとりさんと一緒に昼食をと思ったタイミングで、少し離れた場所に座るカップルの姿が目に留まりました。

 

「はい、あ~ん」

「あ~ん」

 

 仲睦まじく、料理を食べさせているその姿を見て、私は衝撃を受けました。それは何故か? 己の大きな失態を悟ってしまったからです。

 

「……な、なんということですか……」

「あっ、有紗ちゃん? どうしました?」

「ひとりさん、私はいままで大きな過ちを犯していたかもしれません。とてもショックです……己の浅はかさが恨めしいです」

「……あっ、えっと、私も有紗ちゃんのことをよく知ってるからこそ分かるんですけど……これたぶん、もの凄くどうでもいい感じのことを悔やんでる顔だと……あっ、でっ、でも、いちおう聞きますね。どんな過ちを犯してたんですか?」

「いままで、私は結果が同じであれば過程は多少省略したところで問題ないだろうと、浅はかな考えをよしとしてきました。ですが、それは大きな過ちでした。その私が省略してたひとつの行程にこそ、重要な要素が含まれていたのです!」

「……うっ、うん?」

 

 不思議そうに首を傾げるひとりさんの前で、私はグッと拳を握ります。気付くのがあまりにも遅すぎました。いままで一体どれだけの損失を出していたか、考えるのも嫌になります。

 しかし、過去を悔やんでいても始まりません。目を向けるべきは未来です。いま得た知見をもとに、今後の改善を行うことこそが重要なのです。

 

「ひとりさん、私は発声による効果を甘く見ていました。ですが、過去を悔いるのはやめにします! 失敗は恥ずべきですが、そこから学び改善することで同じ失敗を繰り返さない様にしてみせます」

「……あっ、はい。えっ、えっと、頑張ってください……そっ、それで、発声?」

「はい。幸いにして学んだことを活かせる場面です。というわけで、ひとりさん……はい、あ~ん」

「はっ、発声ってそのことですか!?」

 

 そう、私が犯した過ちとはいままでひとりさんと料理を食べさせ合う際に「あ~ん」という発声を行っていなかったことです。正直言って軽視していました。ひとりさんと食べさせ合う行為が重要なのであって、発声は絶対必須というわけではないと……浅はかでした。

 甘い声で「あ~ん」と告げ、ひとりさんも「あ~ん」と返して食べてくれる。この言葉のキャッチボールにこそ、幸福度を高める要因が隠れていたのです。

 

「というわけで、食べさせ合う際に互いに発声を行うことで、より美味しく幸福に感じるはずです!」

「……あっ、えっと、互いにって……あっ、あの……」

「ひとりさん、あ~ん」

「……あっ、えと……あっ、あ~ん」

 

 戸惑った表情を浮かべていたひとりさんでしたが、私がフライドポテトを手に持って差し出すと、少しして諦めたような表情を浮かべ赤い顔で口を開けて食べてくれました。

 ひとりさんに食べさせるという行為自体はいままでも何度もしてきたはずなのに、こうして発声を行うことで……なんというか、恋人らしさが増したような雰囲気です。

 いえ、まぁ、いまは恋人ではないのですが、将来は夫婦なので実質婚約者兼恋人のようなものですし、問題はありません。

 

「……あっ、あの、有紗ちゃん? こっ、これ、もしかして私も同じように……」

「無理にとは言いませんが、そうしてくれると……嬉しいです!」

「あっ、ふっ、普段カッコよくて頼りになるのに、こういう時可愛いのはズルいです……ほっ、本当に、そんな期待の籠った楽しそうな顔されると……うぅ……あっ、ああ、有紗ちゃん。はっ、はい……あっ、あ~ん」

「あ~ん」

 

 ひとりさんも私を真似して、やや恥ずかしがりつつも甘い声で「あ~ん」と言いながら料理を差し出してくれたので、それを頂きます。

 普通に食べる際もそうですが、いままで食べさせ合っていた時よりもさらに美味しく感じられる気がします。

 

「やはり、間違いではありませんでしたね。美味しさも幸福度も3割ほど増したような気分です!」

「はっ、恥ずかしさも3割ぐらい増しましたけどね!? えっ、とっ、というか……他のも同じように食べさせ合うんですか?」

「……私は、ひとりさんと恋人みたいなことをしたいのです!」

「なっ、なんて澄んだ目で欲望全開の台詞を……」

 

 もちろん現時点では私とひとりさんはあくまで仲のいい友人です。私の認識としては、限りなく恋人に近い位置ではあるのですが、それでもまだあくまで友達です。

 ですが、友達同士が恋人っぽいことをしてはいけないという決まりがあるわけではありません。

 

「ひとりさん、私は思うのです。必ずしも恋人同士になってからでなければ、恋人っぽいことをしてはいけないというわけではないはずです」

「あっ、えっ、えっと、それはまぁ……そうですね」

「もちろんいまの私たちはあくまで友人であり、恋人同士というわけではありません。ですが、私はひとりさんが大好きなんです! なので、恋人っぽいこともしたいんです……いえ、それでは受け身ですね。もちろん節度は守る必要があるので、なんでもかんでもというわけではありませんが、せっかくのデートなので状況によっては恋人っぽいことを実行していきます!」

「猛将スイッチ入っちゃったぁぁぁぁ!?」

 

 幸福は待つだけでは掴みとれません。己で動かなくては……幸いにもひとりさんとふたりで遊園地デート中というシチュエーションです。友達同士が行ってもおかしくは無く、それでいて恋人っぽい行動というのも可能なはずです。

 

「あ、もちろんちゃんと考えてやりますよ。ひとりさんが嫌がるようなことはしないつもりです」

「うっ、まっ、まぁ、そこは信頼していますけど……」

「というわけで、引き続きこの食べさせ合いをしたいのですが……駄目、ですか?」

「だっ、だからその甘えるような顔は反則です。じっ、自分の顔面戦闘力の高さを自覚してください……もっ、もぅ、本当に有紗ちゃんはもう……わっ、私が気絶したりしないように……おっ、お手柔らかにお願いします」

「はい!」

「うっ、嬉しそう……本当に、その顔は可愛くてズルいです」

 

 なんだかんだでひとりさんは私の要望を了承してくれて、しばらく私たちは互いに「あ~ん」と言いながら、交互に料理を食べさせ合いました。

 屋台で買うB級グルメが中心というのも素晴らしく、フライドポテトなど手で摘まんで食べるので、それを食べさせ合うということは、箸などを用いるよりも距離が近くなるのも非常にプラス要素です。

 

「あっ、とっ、ところで有紗ちゃん……こっ、これ、結構注目集めてませんか? こっ、怖くて周囲を確認できないんですが、視線を感じます」

「大丈夫です。私の目には、いまはひとりさんしか映ってないので……まぁ、周囲にカップルも多いので周りも似たような雰囲気ですし、それほど注目されているわけではないと思いますよ」

「そっ、それならまぁ……えっ、えっと、あ~ん」

「あ~ん」

 

 恥ずかしそうに頬を染めながらも、ちゃんと私の要望通りに発声しつつ食べさせてくれるひとりさんの優しさが本当に嬉しく、何度目か分かりませんが惚れ直す思いです。

 この調子で、遊園地では恋人っぽいことをしたいものですが……さて、食事の後はなにをしましょうか?

 

 

 




時花有紗:ぼっちちゃんと恋人っぽいことがしたい→よし、しよう。流石の猛将スタイルであり、判断も行動も早い。あ~んの可能性に気付いて修正する様は、流石才女である。

後藤ひとり:恋人っぽいことするのもOKなら、もう実質恋人では? というのはともかくとして、恥ずかしがりながらも有紗の要望をちゃんと聞いてあげる。可愛く甘えてくる有紗は破壊力抜群だった模様。

周囲の人たち:微笑まし気にチラ見。
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