ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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百四手進展の企画と進路~sideA~

 

 

 時間が流れるのは早いもので、自主企画ライブを計画してから既に2週間が経過しました。しかし、やはり参加バンド集めは難航しています。

 とりあえず、結束バンドが繋がりのあるバンドは全滅でしたし、告知はしましたが参加希望もほぼ無い現状です。

 結束バンドのイソスタなどでは告知はしていますが、基本的にそういった場所を見るのはファンであり、その中にクリスマスイブ当日にSTARRYに来て演奏ができるロックバンドが居る確率はあまり高くありません。

 

 現状は玲さんと私、あとはお義父様が乗り気なのでそれも数に入れても、2枠しか埋まっていません。結束バンドが多めに演奏して時間を調整するとしても、やはり最低あと2組ぐらいは欲しいところですね。

 そんな中、私はひとりさんから、案が思い浮かんだので相談に乗って欲しいというロインを受けて、ひとりさんと一緒にカフェで相談をしていました。

 

「……えっと、ひとりさん。それで、案というのは?」

「あっ、はい。バンド集めのために、最初は路上ライブの時みたいにビラをって思ったんですけど……そっ、その時にたまたま、これが目について……」

「これは、新宿FOLTのオーチューブチャンネルですね」

「あっ、はい。ギターヒーローのアカウントでは宣伝できないですし、結束バンドのためにならないから使わないって決めてますけど、こっ、こっちで宣伝させてもらえれば人が集まるんじゃないかなぁって……」

「なるほど……」

 

 これは想像していたよりもいい手かもしれません。バンドのオーチューブではなくライブハウスのチャンネルなので、バンドなどが見ている可能性も高いです。そもそもライブハウスとして新宿FOLTはかなり有名どころですし、参加バンドの募集だけでなく集客という意味でもかなり効果はあります。

 

「いい手だと思いますよ。もちろん先方が承諾してくれたらという話になりますが、ライブハウスのチャンネルならバンドグループの視聴者も多そうですし、期待できそうですね」

「あっ、はい! 有紗ちゃんが、賛成してくれるなら自信が持てます。じゃっ、じゃあ、さっそく……長谷川さんに連絡を……」

「あくびさんに、ですか?」

「あっ、はい。お姉さんは、スマホよく落として連絡付かないこと多いですし、大槻さんよりは長谷川さんの方が頼みやすいかなぁと……」

「……なるほど、ところで、少し送る予定の文面を拝見してもいいですか?」

 

 久しぶりに私の直感が働いたというか、なんとなく嫌な予感がしました。そして、ひとりさんが見せてくれたスマホの画面を見ると……そこには顔文字や絵文字を多用した……俗に言うおじさん構文と呼ばれるような、目が滑るメッセージがありました。

 たぶん、緊張して努めて明るく振舞おうとしてこうなったのだと思いますが……これを送れば、間違いなく引かれるでしょう。

 

「……ひとりさん、少し文面を直しましょう。私たちはお願いする立場なわけですし、もう少し丁重な感じで……」

「あっ、はい」

 

 とりあえずメールの文章を添削して送信すると、すぐにあくびさんから返信が来てひとりさんと共に新宿FOLTに向かうことになりました。

 

 

****

 

 

 新宿FOLTに着いて、あくびさんに案内されて室内に入ると、たまたま店内にいたヨヨコさんが首を傾げました。

 

「あれ? 後藤ひとりと時花有紗? なんでここに?」

「こんにちは、ヨヨコさん」

「あっ、こっ、こんにちは」

「ウチが呼んだんすよ。なんか、自主企画ライブやるらしくって、バンド集めに苦戦してるとかでFOLTのチャンネルの力を借りたいらしいですよ」

 

 不思議そうな表情のヨヨコさんにあくびさんが説明をすると、そのタイミングで聞き覚えのある声が聞こえてきました。

 

「ぼっちちゃ~ん、有紗ちゃ~ん、話は聞いたよぉ! 自主企画って大変だよね~。気持ちは凄く分かるし、ここは一肌脱ぐよ」

「おっ、お姉さん……」

「大槻ちゃんが!」

「えっ!?」

 

 唐突に現れたきくりさんの言葉に、私とひとりさんはもちろんヨヨコさんもまったく聞いてないという感じで驚いた表情を浮かべていました。

 ひとりさんが気まずそうに視線を向けると、ヨヨコさんもなんと発言していいか分からないといった感じの表情を浮かべていたので、私がヨヨコさんに声をかけることにしました。

 

「なんにせよ、チャンネルをお借りする形式になる以上誰かの協力は必要になります。ヨヨコさん、申し訳ないのですが力を貸していただけないでしょうか?」

「……あ、はい。なんでもします。いくらでも力になります」

「……私もそうだけど、大槻ちゃんも有紗ちゃんに頭上がらないよね?」

「たぶんすけど、ヨヨコ先輩動画サイトの件でかなり頻繁にアドバイス求めてるっぽいっすよ。じゃなきゃ、ヨヨコ先輩がカラオケで使える歌い方のコツを動画で録ろうなんてするはずがないですし……」

 

 私がお願いすると、ヨヨコさんは綺麗な90度の礼をして了承の言葉を返してくれました。なぜか敬語で……。

 いえ、確かにあくびさんの言う通り、FOLTのオーチューブチャンネルに関して、ヨヨコさんの担当しているコーナーにはたびたびアドバイスはしています。

 歌ってみたがマンネリ気味になってきたと言われた際には、実践的に使えるカラオケなどでの歌い方のコツを発信すればいいと提案して、動画の構成にもいくつか助言はしました。

 

「……ま、まぁ、時花有紗には世話になってるから、協力してあげるわ。いちおう、自分用に考えていた動画の企画がいくつかあって、そのうち時花有紗に相談しようと思ってたけど、それを使って何本か一緒に撮って、そこでついでに宣伝すればいいでしょ」

「あっ、はい……そっ、そんなに自信のある企画なんですね」

「ええ、台本もあるし、いろんな動画を見て研究したわ……メントスコーラ2Lバージョンよ!」

「……ヨヨコさん、失礼ですが台本を見せてください」

 

 先ほどのひとりさんの時もそうでしたが、今日は何故か嫌な予感がよく働く気がします。そして、実際に台本を拝見すると……なんというか、いろいろな人気オーチューバーをツギハギにしたような、それでいて絶妙になんとも笑いどころがない台本でした。

 

 他の企画案も念のために確認してみると、10万円分の弦の開封。コレはおそらくオーチューバーが高級品をレビューしたりする動画を参考にしたと思うのですが、実際にその弦を使用して演奏したりするわけでもなくただ開封するだけという話でした。

 

 そしてもうひとつは二人羽織りをしながらギターの演奏……リアクション次第では面白くなるのかもしれませんが、難しいですね。

 

「……とりあえず、1から相談して考えましょうか」

「有紗ちゃん、ウチも手伝うっすよ。というか、さっき話してたのを配信されたらSIDEROSにも影響でそうですし……」

「え? あ、えっと……」

 

 必死に考えたであろうヨヨコさんには申し訳ないですが、3つの案は全て没にさせてもらいました。最終的にひとりさんとヨヨコさんのギターセッションを行いつつ、私が間に入って質問や雑談をして時間を繋ぐ形になりました。

 撮影は最初は私が行おうとしていたのですが、あくびさんの「ふたりを上手くコントロールしてください」という要望に従って、私も出演しあくびさんが撮影する形になりました。

 

 冒頭に簡単な挨拶が入った後、ひとりさんとヨヨコさんがギターセッション。私が聞き手に回って質問をしつつ、初心者向けのギター講座などを交えつつ、バンド活動などの雑談を行っていきます。

 

「あの、10万円分の弦は?」

「単純な疑問なのですが、なぜそんなに弦を?」

「やっぱり、オーチューブと言えば高級品の紹介でしょ! 皆に羨望の眼差しで見られるのよ」

「あっ、ちょっ、ちょっと、分かります」

 

 高級なものが必ずしも自分に合っているとは限りませんが、まぁ、たしかに見る分には高級品が登場すると話題を作りやすいですし、驚きなどといったインパクトも与えられますね。

 

「……そういえば、有紗ちゃんのブレスレットキラキラしててめっちゃ綺麗ですね。そんなのしてましたっけ?」

「ああ、これは最近お母様とお揃いで購入したものです」

「確かに、高そうね……これ、いくらぐらいなの? あと、なんで後藤ひとりは遠い目をしてるの?」

 

 あくびさんの質問に私は腕に付けているブレスレットを軽くカメラに見えやすいように持ち上げます。ひとりさんには前に話したことがあるので、ひとりさんは値段を知っています。

 

「確か、540万ぐらいだったと思います」

「ごひゃっ……は? え? えぇぇぇ!? な、なんで、そんなちっこいブレスレットが500万もするのよ!?」

「これはフルダイヤモンドブレスレットなので……合計4.5カラット分のダイヤモンドを使用しているので、その値段ですね。あとダイヤモンドを埋め込んでいるブレスレット本体も18Kです」

「あばばばば……」

「……図らずもめっちゃいい絵が……ちなみにそのネックレスは?」

 

 ヨヨコさんが泡を吹くような、動画映えしそうなリアクションをする中であくびさんが続けて聞いてきた質問に、私は笑顔を浮かべて答えます。

 

「あっ、そっ、それは……」

「これは、誕生日にひとりさんにプレゼントしてもらったネックレスですね! ピンクサファイアとムーンストーンが付いたネックレスで、私とひとりさんの髪の色に近いのもふたりでより添っているようで素晴らしいです。そして、それぞれピンクサファイアは愛を象徴する宝石で、ムーンストーンは恋を象徴する宝石ですので、見た目的な相性だけでなく、意味合い的にも……」

「あ、待ってください。尺もあるので、その辺で……500万のブレスレットより遥かに熱量があるんすけど、ぼっちさん愛されてますねぇ」

「あぅ……あぅ……」

 

 私にとって一番気に入っているといっても過言ではないネックレスの話題だったので、つい熱が入ってしまいました。危うく長々と語り倒すところだったので、あくびさんが止めてくれてよかったです。

 そうこうしているうちにヨヨコさんも復活し、もう一度ひとりさんとセッションを行ってから、最後にクリスマスイブの企画ライブの宣伝を行いました。

 

 こうして無事に撮影した動画は、かなりの再生数となったみたいで翌日には複数のバンドの出演希望メールが届き、自主企画ライブに関しては最大の懸念が解消される結果となりました。

 

 

 




時花有紗:500万のブレスレット<<<<<<<<<ぼっちちゃんからの誕プレというあまりにも分かりやすい反応。ヨヨコにもアレコレ、動画のアドバイスをしているらしい。そして相変わらずの黒歴史ブレイカー。

後藤ひとり:有紗によっておじさん構文……通常おっぢ事件回避。ただその代わり、オーチューブチャンネルで、ネックレスの宝石の意味とかを発信されることになり、撮影が終わった後もしばらく茹蛸のような顔だった。

ヨヨコパイセン:有紗によってこちらも黒歴史回避。メントスコーラなどの企画は没にされた。最近はカラオケで使える歌唱テクニック講座の動画を撮影しており、それなりに人気を博しているため、きくりと同じく有紗には頭が上がらない模様。

有後党:なんか、例のネックレスのやり取りを鬼リピートしているとか、していないとか……。
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