ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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百八手加入の新体制~sideA~

 

 

 素晴らしいクリスマスイブから一夜明け、朝目が覚めると私の腕の中には天使が居ました。重要なのでもう一度言いますが天使が居ました。

 もちろんひとりさんのことです。昨日のクリスマスイブについにひとりさんと想いが通じ合って結ばれ、恋人同士となりました。

 終電の時間の関係もあって、昨年と同じようにひとりさんは私の家に泊り、一緒のベッドで眠りました……まぁ、ライブの疲れなどもあり本当にすぐ寝ただけなので、なにも無かったのです。

 さすがにそこまではまだ性急すぎますね。ひとりさんも言っていたように焦らずじっくりと私たちのペースでいいです。

 

 それはそれとして、いまはひとりさんと同じベッドで眠った際に発生する至福の一時です。私の寝覚めがいいのも要因ですが、ひとりさんは自主企画ライブで疲れていたことと私への告白に勇気を振り絞ったこともあってかなり疲れていたのでしょうね。いつも以上にぐっすり眠っている印象です。

 そんなひとりさんをそっと包み込むように抱きしめて、温もりと柔らかさを堪能しつつ軽く頭を撫でます。

 

 どれぐらいそうしていたでしょうか、しばらくひとりさんを抱きしめていると、目が覚めたのか軽く身じろぎをしたあとでひとりさんの目がゆっくり開かれます。

 

「……有紗ちゃん?」

「おはようございます、ひとりさん。いい朝ですね」

「あっ……おはようございます。なっ、なんか、この姿勢で目が覚めるのもにちょっと慣れましたけど……温かくて、なんか……幸せです」

「ふふ、私もこうやってひとりさんを抱きしめている時間は至福ですね」

「あっ、有紗ちゃんは大袈裟ですよ……」

 

 そう言った苦笑しつつ、ひとりさんは私の背中に手を回して抱き返すような形になりました。過去の経験上私がすぐに離さないのが分かっているのと、恋人となったことでこういったハグをある程度素直に受け取ってくれるようになった印象です。

 これはとてもいいですね。いままででもこれ以上ないほど幸せでした。朝の心地よい時間にひとりさんを抱きしめられるのは……ただ、恋人となったことでこちらが愛情を示すと、恥ずかしがりながらも同じように愛情を示してくれるようになったのは、本当に筆舌に尽くしがたいほどに喜ばしいです。

 はにかむ様な、それでいてこちらへの好意が現れているひとりさんの笑顔の破壊力は凄まじく、油断すると意識を持っていかれそうなほどでした。

 

「……これは、おはようのキスもいけるのでは?」

「あっ、有紗ちゃん? あの、欲望が思いっきり声に……」

「もちろんこのまま、穏やかで幸せなひと時をゆっくり楽しみたいという思いもあります。ですが、ひとりさんの愛らしい表情を見ていると、どうしても抑えきれないというのはありますね。可愛いんです、とにかく可愛いんです」

「……もっ、猛将モード入ってる……あっ、あの、有紗ちゃん? わっ、私としてはこのままゆっくりした方がいいんじゃないかと……きっ、キスは……やっ、やっぱり恥ずかしさが凄いといいますか……こっ、こう、顔から煙とか出そうになるので……」

「……そうです! キスをしたあとでゆっくりすればいいですね! 深いキスではなくバードキスのような軽いもので、穏やかに愛情を確かめ合うような形で……」

「両取りしてきた!? しかも、何回もキスするみたいなこと言ってないですか!?」

 

 方針は決まりました。そうなれば、後は実行に移すだけです。幸せなひと時を、更に幸せにしようとそう思いつつひとりさんの方を見ると、明らかに意識した様子で顔を赤くしており潤んだ目でこちらを見ていました。

 その表情はとてつもない愛らしさではあるのですが、このタイミングでこういう反応をするということは……おや?

 

「……もしかして、声に出ていましたか?」

「あっ、はい。おはようのキスもいけるのでは……あたりから、全部口に出てました」

「そ、それは、失礼しました」

 

 ひとりさんと一緒にいるとたまにひとりさんへの愛情が溢れすぎて無意識に考えていることが口から出てしまうことがありますが、今回もそうなっていたようです。

 先ほどまでの考えが全部口に出ていたというのは、やはり気恥ずかしさを感じて少し頬が赤くなる気がしましたが……それ以上に利点もありますね。

 

「……いえ、しかし、説明の手間が省けたと思えばむしろプラスでは?」

「あっ、この切り替えも早い無敵メンタルが、完全に有紗ちゃんって感じですね」

「というわけで、ひとりさん、失礼しますね」

「うっ、あっ……ちゅ……」

 

 抱きしめたひとりさんに顔を近づけ、軽く唇にタッチするようなバードキスを繰り返します。しっかりと唇を重ね合わせたキスももちろん素晴らしいですが、こうした軽いキスを繰り返すのも、なんというかひとりさんとイチャイチャしているという感じが強くて、実に素晴らしいです。

 ただ、ひとりさんの反応を見る限り、あまり連続ですると気を失ってしまいそうな感じなので、数度バードキスしたあとは再びひとりさんをぎゅっと抱きしめて頭を撫でます。

 

「あぅぅぅ……あっ、有紗ちゃん? そっ、その、これ、すっごく恥ずかしいんですけど……おっ、終わりですよね?」

「いえ、出来ればあと30分ほどは……」

「ハグですよね!? ハグのことですよね!! キス含めてじゃないですよね!?」

「キス含めてですが、大丈夫です。ひとりさんが恥ずかしさで気絶してしまわないように、間隔は空けるつもりなので……嫌ですか?」

「うっ、いっ、嫌というわけじゃ……そっ、その、幸せ……ですし……あっ、でも……恥ずかしいので……その……控えめで」

「はい!」

「……あはは、もぅ、本当に有紗ちゃんは……」

 

 控え目であればと許可を出してくれるひとりさんに満面の笑みで返事をすると、その私の反応が面白かったのか、ひとりさんは苦笑を浮かべてどこか楽しそうでした。

 そのまましばし、私はひとりさんとの幸せなひと時を満喫しました。

 

 

****

 

 

 昼食を食べ終えたあと、私とひとりさんはSTARRYに向かっていました。今日は練習日……昨日の今日ではありますが、私がキーボードとして所属して初めての練習ということになります。

 ひとりさんは私の家から一緒に向かう形になります。ひとりさんの家まで帰ると片道2時間かかるので、練習前に往復4時間の移動は大変でしょうから……。

 ひとりさんが突発的に泊まることはこれまでも何度かあったので、うちにはひとりさんのサイズに合わせた着替えも置いてあるので問題はありません。ちゃんとトレードマークのピンクのジャージもあります。

 着替えた服は使用人に頼んで洗濯の後にひとりさんの家に届けてもらうので、ひとりさんの荷物が増えたりする心配もありません。

 

 STARRYに到着して皆さんに挨拶をして練習スタジオに移動したあとは、機材などを確認しつつ持ってきた自分のキーボードをセッティングします。

 

「今日は、有紗ちゃんを交えての初めての練習だね! 有紗ちゃんなら大丈夫だと思うけど、なんか分からないことがあれば遠慮なく聞いてね」

「……有紗、キーボードパートは?」

「いちおう自作したものがありますので、確認してもらえますか?」

「OK」

 

 結束バンドの曲には元々キーボードのパートはありませんが、ひとりさんとセッションする時のために自作して練習しておいたパート譜があるので、それをリョウさんに確認してもらいます。

 あくまでギターのひとりさんとのセッションを前提に作っていて、軽く手直しはしましたが念のためにリョウさんに確認してもらいます。

 

「……流石、ほぼ完璧だと思うけど、実際に演奏すると変わってくるかも?」

「そうですね。一度通して演奏してみて、細かな部分を詰める形でいこうかと……」

 

 リョウさんからのOKも出たので、さっそく一度通して練習をしてみようということになりました。演奏メンバーとしての参加は初めてですが、日頃から練習風景やライブ風景を何度も見てきたので、皆さんの演奏の癖なども含めて一通り把握しているつもりです。

 実際に始まった演奏でも問題なく皆さんの演奏についていけましたし、上手く音も合わせられていると感じました。

 

 演奏を終えると、虹夏さんがこちらを向いてキョトンとした表情を浮かべます。

 

「…………いや……上手っ!?」

「凄かったですね! いつも以上に演奏が迫力あって、私でも分かるぐらい明らかにレベルが上がってましたよ」

「やっぱり、上手いキーボードがいるとメロディーの幅が全然違う。音の途切れも無くてスムーズに繋がるしいい。もっといろいろできそう、パート譜少し弄りたい」

 

 どうやら私の演奏は比較的高評価だったみたいで、ひとまずはこの形で問題は無さそうです。

 

「期待に応えられる演奏ができたならよかったです。ただ、イメージは固めていても合わせるのは初めてだったので、多少音のズレを感じる個所があったので、その辺りは修正しないといけませんね」

「あっ、でも、本当に凄いです。一発でここまで合うなんて、さっ、流石有紗ちゃん」

「ふふ、ありがとうございます。皆さんの練習風景はいつも見ていましたからね。そのおかげなのと、ひとりさんと度々セッションしていたので、結束バンドの曲を合わせる経験を積めていたので、ひとりさんのおかげでもありますね」

「あっ、えへへ、有紗ちゃんの役に立てたなら嬉しいです。あっ、でもでも、やっぱりキーボード演奏してる有紗ちゃんはカッコいいです。それに、ポニーテールも似合ってます」

 

 演奏中は髪が邪魔になる場面もあるのでポニーテールに纏めています。ひとりさんからは高評価みたいなので、今後も演奏の際はポニーテールの形で纏めるのがいいですね。

 

「ひとりさんも、髪を纏めてみますか? きっと可愛いと思いますが……」

「うっ、う~ん。やっぱり恥ずかしさが……あっ、でも、有紗ちゃんが見たいなら……」

「今度一緒にいろいろやってみましょうか? 気に入ったのがあれば、ライブなどで試すのもいいですしね」

「あっ、はい。ですね。一緒にやりましょう。わっ、私も有紗ちゃんのいろんな髪型、見てみたいです。なんて、えへへ」

 

 嬉しそうに笑うひとりさんに、私も笑顔を返します。初めての練習ですが、気心知れた間柄であり、ひとりさんも居るということもあって、楽しい雰囲気で練習できるというのはとてもありがたいですね。

 

「……前よりいちゃついてない?」

「恋人同士になりましたからね」

「有紗の方は変わってない。ぼっちの方が、好意を隠さなくなってきてるからだと思う」

 

 

 




時花有紗:終始ぼっちちゃんとイチャイチャしていた。演奏の腕はその才覚をいかんなく発揮しており、最初っからほぼ完璧に合わせる有能っぷり。ぼっちちゃんと一通りいちゃついたあとは、リョウとアレコレ曲の調整を行っていた模様。

後藤ひとり:有紗への好意を自覚したことで、いままでよりある程度積極的になった結果イチャラブ度がかなり増したぼっちちゃん。いちゃいちゃしてた。かわりに周りはチベスナだった。
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