ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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二十二手対応のネットとテスト~sideB~

 

 

 楽しく思い出にも残った文化祭。多くの学生にとって非常に楽しいイベントが終わった後の物寂しさを感じるまでもなく、学生たちに襲い掛かってくるものがある。

 残念ながら楽しいことばかりとはいかないのが学生生活であり、多くの学生たちを苦しめるであろうその名は中間テスト……概ね10月の中旬辺りに行われる学生たちへの試練である。

 

「もうすぐ中間テストだけど、ひとりちゃんって勉強はできるのかしら?」

「あっ、できません!」

「……力強い返事ね」

 

 学校の帰りにたまたま会って一緒に帰っていたひとりと喜多。テストについて問いかける喜多に、ひとりは自信を持ってできないと返した。

 

「正直、私もあんまり得意じゃないから不安なのよね。テストで補習なんかになったら、バンド活動にも影響が出そうだし……ひとりちゃんは、大丈夫?」

「あっ、た、たぶん……有紗ちゃんが教えてくれるので」

「……有紗ちゃんって、やっぱり頭いいの?」

「あっ、はい。物凄くいいですし、教え方も上手いです。私1学期の中間テストは、全教科合計で17点だったんですが……期末テストは有紗ちゃんが数日教えてくれただけで、全部赤点を回避しました」

「……17点を、全教科赤点回避に?」

 

 ひとりが告げた言葉を聞いて、喜多は驚いたような表情を浮かべた。先ほどまでの会話を考えるに、ひとりは自分で自信を持って断言するほど勉強ができないのは間違いがない。

 実際1学期の中間では5教科合計17点という結果……それを教科数が増える期末テストで、全教科赤点回避という結果まで持っていったということは、5教科のみで考えても計100点以上上昇しており、有紗の指導の上手さを感じ取れた。

 

「……あの、ひとりちゃん……私も、有紗ちゃんに教えてもらっちゃ、駄目かな?」

「え?」

「私もあんまり勉強得意じゃなくて、1学期の期末はバンド活動とかで点数結構下がってて、これ以上下がるとお父さんやお母さんに怒られそうで……お願い!」

「あっ、えと、有紗ちゃんに聞いてみますね」

 

 喜多の願いを聞いて、ひとりがロインで確認を取ると有紗は喜多の勉強を見ることも快く了承してくれた。そして、ひとりと喜多と両方に指導するのなら、STARRYで場所を借りるのがいいだろうという話になったので、ふたりはそのままSTARRYに向かうことにした。

 

 

*****

 

 

 STARRYでは赤点常連のリョウが虹夏に勉強を教わっており、ひとりたちが場所を使うことに関しても星歌は快く了承してくれた。

 そのまましばらく試験範囲などを確認していると、有紗が到着する。

 

「こんにちは、皆さん」

「あっ、有紗ちゃん、こんにちは」

「急なお願いしてごめんね、有紗ちゃん」

「いえ、気にしないでください。ひとりさんと喜多さんは同じ学校ですし、試験範囲も一緒なのでそれほど手間でもありませんしね」

 

 そう言って優し気な微笑みを浮かべた有紗は、鞄の中からファイルを取り出し、そこからA4サイズの紙を何枚かひとりと喜多の前に置く。

 

「……これは?」

「ひとりさんからテスト範囲を聞いて、要点などを簡単にまとめたものです。来る途中にコンビニでコピーしてきました。1学期の中間と期末でおふたりの高校の出題傾向はある程度分かりましたので、それを覚えるだけでも50点は越えられると思います」

「え? あっ、え? で、でも、有紗ちゃんは私の解答用紙を見ただけで、もっ、問題とかは見てないんじゃ?」

「出題範囲と解答の正否と問題数を見れば、おおよその出題は推測できます」

「……いや、普通はできないから」

 

 当たり前のように告げる有紗に、思わずといった感じで虹夏がツッコミを入れた。とはいえ、実際に有紗はできているので、なんとも強く言いにくいものではあったが……。

 

「教科書のページ数でみると、範囲が広い様に思えるかもしれませんが、その中でなにが重要で、それの理解をどう問いかけてくるかというのは、意外とパターンは少ないものです。必要な部分に絞って学習すれば、点数を上げるのはそれほど難しいことではありません」

「な、なるほど……」

「いちおう、もしお持ちでしたら、喜多さんの過去の答案も拝見しても?」

「あ、うん。ちょっと待ってね……はい」

 

 喜多から答案用紙を受け取った有紗は、しばしそれを見つめたあとで納得した様子で頷いた。

 

「なるほど……喜多さんは、テストの後半で時間が足りなくなることが多いのではないでしょうか?」

「えっ? う、うん。確かにそういうことが多いけど……答案用紙を見てわかるの?」

「ええ、前半に比べて後半にケアレスミスが目立ちます。時間配分のコツなども合わせて教えた方が良さそうですね」

 

 ひとりの言葉通り、有紗の指導能力は極めて高く、ひとりや喜多の能力に合わせた的確な指導を行ってくれた。その指導はかなり分かりやすく、ふたりともかなり勉強が進んだ実感があった。

 その調子でしばらく勉強を続けていると、ふと喜多が思いついたように口を開いた。

 

「……有紗ちゃん。その、私からお願いしておいてあれだけど、私たちに教えてて有紗ちゃんの方は勉強は大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。特にテスト前に特別な勉強をしたりはしませんので」

「え? そっ、そうなんですか?」

 

 特にテスト勉強はしないという有紗に対し、ひとりが驚いたような表情を浮かべる。ひとりは有紗の得点を知っており、極めて高得点であることを知っていた。

 それだけの優秀な成績を取っているのだから、テスト勉強もしっかり行っていると思っていたが、どうも違うらしい。

 

「それぞれによって考え方は違うでしょうが……私にとってテストは、それまで行ってきた勉強がいかに身についているかを確認する場なので、テスト前に特別な勉強をすることはありません」

「……頭のいい人の発言だわ」

「さっ、流石有紗ちゃん……あっ、えと、ここはどうすれば?」

「その形式で問題が出た場合は、解き方は2通りだけ覚えておけば大丈夫です。最初は……」

 

 丁寧に指導してくれる有紗のおかげで、ひとりも喜多も確かな手ごたえと共に中間テストに臨むことができた。

 

 

****

 

 

 中間テストが終わり、テストの返却も行われたあとに後藤家に遊びに来た有紗だったが、想像外の歓迎によって迎えられた。

 家に入るなりクラッカーを持った後藤一家に迎えられ、そのままご馳走の用意されたリビングに通された。

 

「有紗ちゃん、いらっしゃい! 待っていたのよ」

「お義母様? これは、いったい……」

「有紗ちゃんのおかげで、ひとりが素晴らしい結果を残したからね」

「お義父様? 素晴らしい結果……ですか?」

 

 明るい笑顔で歓迎する美智代に、さすがの有紗も意図が分からず戸惑ったような表情を浮かべる。直樹の言葉にも不思議そうな表情を浮かべ隣に座っているひとりに問いかける。

 

「ひとりさん、素晴らしい結果というのは?」

「あっ、えへへ、その、有紗ちゃんが勉強を教えてくれたおかげで、今回の中間テストの点が凄く良かったので、お父さんもお母さんも喜んじゃって」

「ああ、なるほど、そういうことだったんですね」

「あっ、有紗ちゃんが勉強を教えてくれたおかげです。わっ、私、あんなに高得点をとったのは生まれて初めてでした」

 

 嬉しそうに話すひとりの言葉を聞いて、有紗はようやく合点がいったと頷く。有紗の予想では、今回は平均点よりやや上ぐらいの点数になると思っていたが、ひとり自身も頑張ったのだろう。有紗の予想以上の点を取り、それを家族総出で祝っているというわけだ。

 

「それはよかったです。ですが、私の力は微々たるものですよ。ちゃんとひとりさんが積み重ねてきた基礎があったからこそ、結果につながったんです」

「うへへ……」

「ところで、最高点は何点だったのですか?」

「あっ、なっ、なんと……72点でした」

「……頑張りましたね。素晴らしいです」

 

 高得点というにはやや低い印象ではあるが、なにせ1学期の中間テストは5教科合計で17点という記録を叩き出したひとりにしてみれば、70点越えというのは快挙といっていい得点だった。

 実際、美智代や直樹がはしゃぐほど過去類に見ない高得点であり、72点の解答用紙を額縁に入れているほどだった。

 

「ともかく、今日はお祝いだから、有紗ちゃんも遠慮せずに食べてね」

「ありがとうございます、お義母様」

 

 そんなこんなでひとりの高得点を祝うささやかなパーティは始まり、後藤家の皆と共に有紗は食事を楽しむ。ひとりにとっても珍しく、音楽以外での賞賛であり嬉しそうに食事を楽しんだ。

 そして、一通りはしゃいだ後で、ひとりの部屋に移動してふたりで過ごす。

 

「お義父様もお義母様もとても楽しそうでしたね。改めて、本当によく頑張りましたね」

「えへへ、あっ、有紗ちゃんに褒めてもらえると、その、嬉しいです。あっ、あの、有紗ちゃん……その、有紗ちゃんにはいつもいっぱい助けてもらってますし、なっ、なにか、お礼がしたいです」

「お礼ですか?」

「はっ、はい! なにか、ありませんか? 私にできることなら、なんでもします!」

 

 今回のテストの件もそうではあるが、それ以外でもいつも有紗に助けてもらっているひとりは、有紗になにかお礼をしたいと口にした。

 

「……なんでも……」

 

 なんでもするというひとりの言葉に、有紗は考えるような表情を浮かべた。なにせ、いまは言ってみれば、有紗の要望を自由に通すことができる状態である。

 それこそ、本当に大抵のことならひとりは躊躇なく首を縦に振ってくれるだろう。それほど、ひとりの中の感謝の念は大きい。

 

 しかしかといって、有紗がその言質を元に己の欲望を押し通すようなタイプかと言われれば、そうではない。むしろ、彼女にとって感謝につけ込むような形で要望を通すのは本意ではない。

 だが、拒否をすればそれはそれでひとりの有紗にお礼がしたいという思いを突き放すことにも繋がるため、有紗はしばし考えた。

 

「……ではひとりさん、もしよければですが……冬休みに私と旅行に行ってくれませんか?」

「はえ? りょっ、旅行……ですか?」

「ええ、ひとりさんと遠出をしてみたいんです。ひとりさんとしては、あまり見知らぬ場所に行くのは好ましいことではないと思うので、無理にとは言いませんが……」

「あっ、えっと……だっ、大丈夫です。有紗ちゃんが行きたいなら、行きましょう! 一緒に!」

「ありがとうございます。楽しみです……また、詳細は冬休みが近づいたらお伝えしますね」

「わっ、分かりました」

 

 悩んだ結果、有紗が提案したのは一緒に旅行に行くというもの……日頃からバイトやバンド活動で忙しくしているひとりのリラックスや気分転換にもなり、有紗としてもひとりとふたりきりで泊りがけで出かけるのは最高のひと時になると確信でき、いまから思い浮かべるだけでつい笑顔になるほど楽しみだった。

 

 

 

 




時花有紗:なんでもすると言われて、かなり悩んだ。基本的にいい子なので、お礼をたてに要望を押し通すのは気が進まなかったので、旅費などを自分が出すことで自分の方からもぼっちちゃんになにかができる旅行を提示した。

後藤ひとり:全教科60点以上、最高点72点という本人にしてみれば、過去最高の得点を獲得し家族総出でお祝いとなった。有紗への感謝の気持ちが高まっており、本当に有紗の望みなら何でも叶えるぐらいの気持ちで、お礼がしたいと伝えた結果、ふたりきりで『イチャラブ』旅行に行くことになった。

喜多郁代:こちらも有紗のおかげでかなり得点を上げており、両親に褒められてご褒美のお小遣いも貰えたため、有紗に心底感謝している。

STARRYの大人たち:原作では無様を晒していたが、今回はひとりと喜多を有紗が担当し、虹夏がキャパオーバーしていないのでそもそも助けを求めることが無かったため、評価を落とすことも無かった。
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