ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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三十手共感のクリスマスイブ

 

 

 クリスマスイブ……そう呼ばれるようになったきっかけや本来の意味は置いておくとして、やはり恋をするものとしては重要な日といっていいでしょう。

 FOLTでのライブが無ければ間違いなくひとりさんをデートに誘っていたと思います。ただ、STARRYでのパーティが終わったあとに、ひとりさんと一緒に車で帰ることができたのは幸いです。

 

「ひとりさん、せっかくなので途中に軽く寄り道をしませんか?」

「よっ、寄り道ですか?」

「ええ、せっかくのクリスマスイブなのでツリーぐらいは見ておきたいと思うのですが」

「あっ、イルミネーションとかですかね? たっ、たしかにクリスマスらしさはある気がしますね」

 

 そう、せっかくひとりさんとふたりなのですから綺麗に飾り付けられたツリーを一緒に見たいです。

 

「いちおう、これから向かう途中でよさそうな場所は調べてあります。近場に駐車できる場所があるかも確認済みです」

「あっ、相変わらずの行動の早さ……けっ、けど、まぁ、有紗ちゃんが見たいなら……行きますか?」

「はい!」

 

 どうあってもクリスマスイブのツリーとイルミネーションとなると、人は多いでしょうしひとりさんが嫌がるかもしれないと思ったのですが、思いのほかあっさりと了承してくれました。

 私としては願っても無いことなので、まったく問題はありません。運転手にあらかじめ調べておいた場所を伝えて、そちらに寄っていただくことにしました。

 

 ツリーのある場所から少し離れた場所に駐車して、運転手に再度連絡するまでは寒いでしょうし近くの店で休憩してくれて大丈夫と伝え、いくらかのお金を渡した上で車から降りて傘を差してひとりさんと一緒に歩きます。

 少し歩くとイルミネーションと共に、それなりに多くの人が見えてきて、ひとりさんが若干気圧されているのが見えました。

 

「……うっ……」

「ひとりさん、大丈夫ですか?」

「なっ、なんとか……あっ、で、でも、手を繋いでもいいですか?」

「はい」

 

 人が多くて少し不安になっている様子のひとりさんと手を繋いで道を歩きます。イルミネーションによって装飾された並木道が続いており、この先の広場には大きなツリーがあるみたいです。

 

「あっ、右も左もカップルやリア充だらけ……こっ、これがクリスマスの空気……」

「もしかして、青春コンプレックスが刺激されましたか?」

「あっ、え? あっ……あれ? いっ、いや、確かに青春コンプレックスを刺激されてもおかしくないシチュエーションですが、あんまりダメージはない気も……」

 

 思い返してみれば、夏ごろには青春コンプレックスを刺激されれば気を失ったりしていたひとりさんですが、最近はそういったことも少なくなっている気がします。

 ひとりさんも着実に精神的に成長しているのか、以前よりも心が強くなっているというのもあるでしょうが、それ以上に大きなのは……。

 

「……ひとりさんも青春しているから、ではないでしょうか?」

「あっ、わ、私も、ですか?」

「ええ、明確に大きな目的と夢を持って、それに向かって毎日仲間と一緒に努力する。それもまた、青春といっていいと思いますよ」

「……たっ、確かに……あっ、それに、なんか、前は自分には遠いものと思ってましたけど……あっ、有紗ちゃんと一緒に体験してるから、わっ、私も少しは成長しているのかもしれません」

「少しどころか、たくさん成長していると思いますよ。春ごろのひとりさんが、いまのひとりさんを見たら驚くぐらいです」

「えへへ、そうですかね? それなら、うっ、嬉しいですね」

 

 そんな話をしながら歩いていると、大きなもみの木が置いてある広場に辿り着きました。もみの木にはクリスマスらしい煌びやかなイルミネーションが付いており、多くの人がツリーを見上げていました。

 私とひとりさんも広場に入り、手を繋いだままで大きな木を見上げます。

 

「……けど……わっ、私が成長出来てるなら、きっと有紗ちゃんのおかげですね」

「そう思いますか?」

「あっ、はい。有紗ちゃんは私が頑張ったからって言ってくれると思いますけど、本当に有紗ちゃんにはいつもいっぱい助けてもらってます。だっ、だから、有紗ちゃんのおかげです」

「そうですか……ひとりさんの力になれているのなら、私も嬉しいです」

 

 そんなやりとりをしたあとで、ひとりさんがなにやら落ち着きなく視線を動かし始めました。どうしたのでしょうかと思っていると、少し経った後でなにやら意を決したような表情に変わりました。

 そして、鞄から綺麗に包装された包みを取り出しながら、赤い顔で口を開きました。

 

「……あっ、えと、有紗ちゃんにはいつもお世話になってて……だから、えと、くっ、クリスマスプレゼントを用意したんですけど……」

「……え?」

「あっ、えっと、遅くなっちゃったのは申し訳ないと思うんですけど……」

「ああ、いえ、そうではなくて……同じことを考えていたのだと……」

「同じこと?」

 

 ひとりさんの言葉に苦笑しつつ、私も持っていた鞄からひとりさんと同じようなサイズの包みを取り出しました。そう、実は私もひとりさんにクリスマスプレゼントを用意していました。

 元々は駅で渡すつもりでしたが、車で送ることになったのでひとりさんの家についてから渡せばいいと考えていました。

 

「……実は私も、ひとりさんにクリスマスプレゼントを用意してました」

「あっ、た、確かに同じこと考えてたみたいですね」

「ふふ、ええ、なのでこちらは私から……メリークリスマス、ひとりさん」

「あっ、めっ、メリークリスマス」

 

 ひとりさんと互いのクリスマスプレゼントを交換します。しかし、ひとりさんからクリスマスプレゼントを貰えるとは、本当に嬉しいです。中身は何でしょうか? あまり重くは無いですが……。

 

「ひとりさん、開けて見てもいいですか?」

「あっ、はい。あっ、あんまり凄いのとかじゃないですけど……わっ、私も開けていいですか?」

「はい。身につけられるものがいいかと思って……おや?」

「……あっ、あれ? これって……」

 

 ひとりさんから貰ったクリスマスプレゼントを開けて再び驚きました。そして、ひとりさんも同様に私のプレゼントを開けて驚いた様子です。

 互いに驚いた顔を見合わせ、少ししてほぼ同時に笑い合いました。

 

「ふふふ、どうやら私たちは本当に相性がいいみたいですね」

「あはは、かっ、考えてること……一緒でしたね」

 

 私とひとりさんの手には、マフラーがありました。もちろんデザインや色は違いますが、同じようにクリスマスプレゼントを用意していて、同じ様にマフラーを選んでいました。

 ひとりさんの言う通り考えていることがまったく同じだったので、なんだか可笑しくなって笑ってしまいました。

 

 そしてどちらからでもなく、互いに受け取ったマフラーを首に巻いて微笑みます。

 

「ありがとうございます、ひとりさん」

「こっ、こちらこそ……ありがとうございます」

 

 そして互いにお礼を言い合った後、手を繋いで一緒にクリスマスツリーを眺めます。特に言葉はなくとも心が通じ合っているかのような、温かく心地よい感触。

 雪が降っていて気温は低い筈ですが、貰ったマフラーから感じる温もりのおかげか、繋いだ手のおかげか……とても温かいような気がしました。

 

 

****

 

 

 しばらくクリスマスツリーを眺めたあとで運転手に連絡を入れて戻り、再び車に乗って移動します。今年のクリスマスは本当に素晴らしかったです。

 前日にはお父様とお母様とパーティもできましたし、クリスマスイブにはひとりさんと一緒に過ごせてプレゼント交換までできました。本当に大満足です。

 

 さらに、これで終わりではありません。まだまだ、ひとりさんとの幸せな時間は続くのです。

 

「あっ、明日は26日からの旅行の用意をするつもりなんですが、なにか持っていった方がいいものってありますか?」

「基本的には着替えだけでも大丈夫ですよ。向こうで使いたいものがあれば持っていくのもいいですね。あとロープウェイには乗ろうかと考えているので、必然的に標高の高い所に行きますからジャケットなどの温かい服があったほうがいいかもしれません」

「なっ、なるほど……」

 

 そう、ひとりさんと2泊3日の箱根旅行も間近に迫っています。非常に楽しみでした。あまり人が多すぎる場所は避ける予定ですが、箱根に行くなら芦ノ湖周りには足を運びたいですね。

 江の島のことを考えるとトレッキングなどは無理ですが、高い所からの絶景は押さえたいのでロープウェイを考えています。

 もちろんメインの温泉も最高の場所を用意しました。今回はお父様のコネも少し使わせていただいたので、予約が難しい宿も抑えることができましたので準備は万端です。

 

「少々子供っぽいかもしれませんが、ひとりさんとの旅行が楽しみで最近はそればかり考えてましたね」

「あっ、わっ、私も楽しみです。遠出とかは少し不安ですけど、有紗ちゃんが一緒なら楽しみって気持ちの方が強いです」

「年末最後のライブも終わりましたから、ゆっくり疲れを取りましょうね」

「あっ、はい」

 

 私の言葉を聞いて嬉しそうに頷いたあとで、ひとりさんはふとなにかを考えるような表情を浮かべてながら呟きました。

 

「……けっ、けど、思い返してみれば今年は凄い1年でした。こんなにいろいろなことがあった1年は、いままでで初めてです。しょっ、正直、陰キャでコミュ症の私は高校でも友達とかバンド仲間とか作ることなんてできなくて、中学の頃と同じようになるんじゃっていう思いも少しあったんですけど……全然違いました」

「私は、中学時代にたまたま巡り合わせがよくなかっただけで、ひとりさんは友達作りの名人だと思いますよ?」

「え? あっ、で、でも、私はコミュ症で、陽キャでもなくて友達の数も全然……」

「数が全てというわけでもないでしょう。広く浅くたくさんの友達を作るのが得意な人もいれば、少数ですが深く親しい友達を作るのが得意な人もいるというだけですよ。少なくとも結束バンドの皆さんのような互いを思い合える友達は、欲しいと思っていてもそうそう作れるものでは無いと思います。そういった相手と巡り合えて親しくなれているひとりさんは、友達作りの名人ですよ」

 

 100人の友達よりも1人の親友という言葉もあります。多くの友人が居るのもそれはもちろん素晴らしいことですが、少数ですが心から信頼できる友人を作れるのもまたそれに負けないぐらい素晴らしいことだと思います。

 私の言葉を聞いたひとりさんは、少しキョトンとしたあとで……楽し気に微笑みました。

 

「……あっ、こんな私ですけど、ひとつ他の人に誇れることが思いつきました」

「なんですか?」

「私の一番の友達が有紗ちゃんだってことは……私の自慢です」

 

 そう言って笑うひとりさんの表情は、いつも以上にキラキラと輝いている様に見えて、思わず見惚れてしまいました。

 

 

 




時花有紗:ぼっちちゃんとの温泉旅行が楽しみ。かなり凄い宿を確保している様子。今回はひとりとクリスマスイブにもデートが出来て幸せいっぱいである。

後藤ひとり:ぼっちちゃん……クリスマスイブに手を繋いでイルミネーションとツリーを見に行って、クリスマスプレゼントを交換して、互いにプレゼントしたマフラーを身に着けて旅行の話をするって……もう完全に行動が恋人のそれなんですが……。

運転手:……尊い。旦那様、奥様、お嬢様の恋は順調そうです。
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