ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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四十一手祝福の誕生日・有紗編~sideA~

 

 

 リョウさんもスランプから脱し、皆の意見も聞きつつ新曲は間もなく完成しそうな状態です。そんな中STARRYに訪れていた私に、虹夏さんが声をかけてきました。

 

「ねぇねぇ、有紗ちゃん。もうすぐ誕生日だよね?」

「え? ええ、その通りですが?」

「じゃあさ、誕生日付近でどこか空いてる日とかないかな? 有紗ちゃんにはいつもお世話になってるし、ちょっと前にもリョウの件で助けてもらったし、皆でお祝いしたいんだよね」

 

 たしかに私の誕生日は1月22日なので、あと少しで誕生日です。お父様とお母様に誕生日の感謝として渡すプレゼントの購入も終わっており準備は出来ています。

 しかし、どうやら虹夏さんもパーティを開いてくれるつもりのようで、驚きつつもなんともありがたい話です。するとそのタイミングで、喜多さんが少し首を傾げながら虹夏さんに声を掛けました。

 

「そういうのって、サプライズとかにした方がよくないですか?」

「……いや、コソコソ準備してても有紗ちゃんにはバレそうな気がする」

「あっ、その気持ち、分かります」

「確かに企みは全部バレそう」

 

 ひとりさんとリョウさんも話に加わってきたところで、私は念のためにスケジュールを確認してから最初の虹夏さんの質問の答えを口にします。

 

「……そうですね、当日であれば空いています。今年はお父様とお母様の仕事の都合で家でのパーティは21日に、学校の友達などが企画してくださるパーティは23日の予定ですので、当日の22日であれば大丈夫です」

「お、おぉ……」

「いっそどちらかに参加してくださっても大丈夫ですよ?」

 

 本当にありがたいことですが、誕生日を祝ってくださる方が多く、1度のパーティですべてを集めるのは難しいので、複数日に分かれています。

 ちなみに誕生日当日が空いているのは……実はワザと空けていました。お父様とお母様の都合は本当ですが、友達からパーティの日程を聞かれた際に翌日を希望して当日が空く様にしました。

 いえ、浅ましい話ではありますが……もしかしたら、ひとりさんが祝福の言葉とかくれたりしないかなぁという欲があって……当日はひとりさんに会いに行こうかと思っていましたので、丁度いいと言えば丁度いいです。

 

「……豪華な料理があると思うと、迷うところではある」

「でっ、でも、絶対半端なパーティじゃないですよ。たっ、たぶん本格的なやつです」

「芸能人とか居そう。興味はあるけど、参加する勇気は……」

 

 リョウさん、ひとりさん、喜多さんが小声で話す中、虹夏さんは気を取り直すように軽く頭を振ってから明るい笑顔を浮かべました。

 

「……うん。じゃあ、当日にSTARRYでやろう! 22日は店休みだし……いいよね、お姉ちゃん?」

「うん? ああ、いいぞ」

「じゃあ、決まりだね!」

 

 星歌さんの許可も出たことで、当日にSTARRYにて皆さんが私の誕生日をお祝いしてくれることになりました。本当になんともありがたい話ですし、誕生日にひとりさんと過ごせるのはやはり嬉しいですね。

 

 

****

 

 

 そして迎えた誕生日当日、STARRYにやって来た私を迎えてくれたのはクラッカーの音と、たくさんの料理やケーキでした。

 

『有紗ちゃん、誕生日おめでとう!』

「皆さん、本当にありがとうございます」

 

 今回はSTARRY関係者のみということで、結束バンドの皆さんと星歌さんにPAさん……あとどこからか話を聞きつけて、呼んでも無いのに来たらしいきくりさんです。

 虹夏さんに促されて中央の席に座ると、隣にひとりさんが座ってくれてコップを手渡してくれました。

 

「あっ、有紗ちゃん、飲み物をどうぞ」

「ありがとうございます。こうして、ひとりさんや皆さんに誕生日を祝ってもらえるのは、本当に嬉しいです」

「えへへ、あっ、有紗ちゃんが喜んでくれたなら、私も嬉しいです」

 

 虹夏さん辺りが気を使ってくれたのかもしれませんが、ひとりさんが隣の席というのが大変素晴らしいです。幸せな気持ちの時に、近くに好きな人が居てくれるというのは幸せな気持ちを何倍にも大きくしてくれます。

 温かな気持ちで思わず笑顔を浮かべていると、虹夏さんが少し苦笑しながら声をかけてきました。

 

「有紗ちゃんの家のパーティに比べるとしょぼくて申し訳ないけど……」

「そんなことはありませんよ。豪華である方が上というわけでもありません。皆さんが私のためにこうして準備してくださったことが、なによりも嬉しいです」

「あはは、そんな風に喜んでくれたならこっちも嬉しいよ。あっ、飲み食いする前に誕生日プレゼントを渡しちゃうね」

「いいペンですね、新しいものが欲しいと思っていたので、嬉しいです。ありがとうございます」

 

 虹夏さんが笑顔で渡してくれたのは、高級感のあるペンでした。かなりしっかりした造りになっているので、それなりに高価だったと思います。未確認ライオットに向けてライブ活動などを増やして、金銭的には厳しいであろう中、こうして用意してくれた気持ちがとても嬉しいです。

 すると、続いてリョウさんが立ち上がって包装された包みを差し出してくれました。

 

「んっ、これ、オススメのバンドのアルバムを何枚か……」

「ありがとうございます。聞くのが楽しみです」

「……おい山田、お前私の時とずいぶん違わないか?」

「……たまたまお金に余裕があったので」

 

 星歌さんの誕生日の際は、気持ちが大事となにも用意しておらず、外で雪だるまを作ってプレゼントしていましたが、私に対してはちゃんとプレゼントを用意してくれたみたいでした。

 その指摘に対して、リョウさんはどこか哀愁の漂う微笑みを浮かべ……それを見た虹夏さんがハッとした表情を浮かべます。

 

「ちっ、違う、この顔……本当はまったくお金は無いけど、さすがに有紗ちゃんには世話になりまくってる自覚があったし、自分の誕生日にプレゼント貰ってるから用意しないって選択肢を選べなくて、明日から草を食べる覚悟でプレゼントを用意した顔だ!」

「……リョウ先輩が草を食べるのって、久々ですよね」

「……あっ、たぶん、12月で有紗ちゃんからの誕生日プレゼントの効果が切れたから……」

 

 虹夏さんの言葉に、リョウさんは少し青ざめた顔でサムズアップをしていたので、どうも本当に相当無理をして誕生日プレゼントを用意してくださったみたいです。

 株主特典などで送られてきた食事券などが使いきれないほどあるので、今度持って来て差し上げることにしましょう。

 

「じゃあ、次は喜多ちゃんかな?」

「あ、はい。私は~はい、フォトフレームです!」

「クリスタルフォトフレームですか、お洒落なデザインですね」

「うん。ここに今日の写真とかを入れて飾ってもらえたらなぁ~って」

「なるほど、それはいいアイディアですね。ありがとうございます、大切に使わせていただきますね」

 

 喜多さんが贈ってくれたのは、透明感があるお洒落なクリスタルフォトフレームです。喜多さんの言葉を借りるなら、映えるデザインといったところでしょうか。

 

「あっ、じゃあ次は……」

「おっと、駄目だよ! ぼっちちゃんはメインなんだから、濃厚なハグと一緒に一番最後にね。というわけで、次はお姉ちゃん!」

「え? あっ、ちょっ、そそ、そんな話初耳なんですが……あっ、あと、濃厚なハグってなんですか!?」

 

 濃厚なハグ……それはいったいどの程度に濃厚なのでしょうか? ひとりさんは把握していないようですが、濃厚とまではいかなくとも、雰囲気に流されて普通のハグぐらいならしてくれる可能性もあるのでは?

 い、いえ、駄目です。欲望に負けては……優先すべきはひとりさんです。

 

「ひとりさん、虹夏さんの言葉は気にしなくても大丈夫ですよ。私は気にしませんから、雰囲気に流されて無理をしたりしないでくださいね」

「あっ、はい……いや、別に嫌とかじゃ……」

「はい? 申し訳ありません。いま後半の声が小さくて……」

「なっ、なんでもないです!」

 

 ハグは惜しいですが、ひとりさんに嫌な思いをさせてまで求めるものではありませんので、事前に雰囲気に流されなくて大丈夫と伝えておきました。

 ひとりさんの返答の後半は声が小さすぎて聞こえなかったのですが、ひとまず頷いてはくれたので大丈夫だと思います。

 

 その後、星歌さんとPAさんからもプレゼントを頂き、順番的にはきくりさんの番になったのですが……きくりさんはそもそも、虹夏さんに呼ばれたわけでは無く、どこからでもなく話を聞きつけてやってきただけなので、プレゼントは用意していない可能性が高いです。

 そう思っていたのですが……きくりさんは、酔った表情のまま緩い笑顔でなにかを取り出しました。

 

「えへへ、私はねぇ~じゃ~ん。ワインだよ~」

「お前……未成年の誕生日プレゼントに酒持ってくるなよ。あと、山田と一緒でお前も私の時とずいぶん違うじゃないか……」

「いや~ここに来る前にさ志麻がねぇ。『有紗ちゃんには日頃迷惑かけてるんだからこれでちゃんとしたものを買っていけ』ってお金渡してきたからぁ、それで買ってきたんだよ~」

「じゃあ、それ実質岩下からのプレゼントじゃねぇか!?」

 

 星歌さんの鋭いツッコミの通り、確かに志麻さんが渡してきたお金で買ったのであれば……実質志麻さんからのプレゼントといえるのかもしれません。

 まぁ、選んで買ったのはきくりさんですし、志麻さんときくりさん2人からのプレゼントと思うのが正解ですね。

 そう考えて苦笑した私は、きくりさんからワインを受け取りつつ口を開きます。

 

「ありがとうございます。それでは、私が成人した際には、きくりさんと志麻さんにこのワインを飲むのに付き合っていただくことにしますね」

「いいね~それっ! いや~いまから楽しみだねぇ」

 

 楽し気に笑うきくりさんに釣られて私も笑みを溢しました。これでひとりさん以外の方からプレゼントは一通り頂いたので、次はいよいよひとりさんの番です。

 

「さて、次はいよいよぼっちちゃんだね。ぼっちちゃんは、かなり前から有紗ちゃんの誕生日プレゼントをいろいろ探してたんだよ~私も相談されたしね!」

「にっ、虹夏ちゃん! なっ、なんでそれ、言っちゃうんですか!?」

 

 なんと、ひとりさんは私の誕生日のために以前からプレゼントを探してくれていたみたいです。とても嬉しいですね。

 いったいどんなプレゼントを贈ってもらえるのか、ワクワクとした気持ちが収まってくれません。

 

 

 




時花有紗:1月22日が誕生日。実はぼっちちゃんの誕生日2.21の逆である。なおこのふたつの誕生日は相性もいいらしい。

後藤ひとり:有紗のためにかなり前から10万という予算を用意してプレゼントを考えていた。だいぶ真面目に考えていたようで、虹夏や喜多にも相談していたため周知の事実である。

世界のYAMADA:流石に前回の件もあるし、誕生日プレゼントに気持ちとか、そんな真似はできなかった。あと、ちゃんと贈っとけば来年確実にいいものを貰えるという期待もある。


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