ぼっちな貴女に恋をして   作:ぬこノ尻尾

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四十五手祝福の誕生日・ひとり編~sideA~

 

 

 時は満ちました。今日は2月21日……そう、ひとりさんの誕生日です。この日のために半年以上前から準備をしてきました。

 プレゼントももちろん準備は完璧です。正直計画した当初はプレゼントの用意が半年では間に合わないかと危惧しましたが、お母様が強いコネを持っていてくれたおかげで間に合いました。半年はかかりましたが、それでも本来なら1年以上かかることもザラという話なのでかなり早かったです。

 もうひとつのプレゼントの方も、しっかりと自信を持てる仕上がりになりましたし、万全といっていいでしょう。

 

 運命もこの日を祝福しているのか、今年の2月21日は土曜日……最高の日程です。ひとりさんには事前にお話をしていますし、お義母様やお義父様の許可もいただいているので、ひとりさんは今日はウチに宿泊する予定ですので、夜遅くまで祝っても大丈夫です。

 

 念のために漏れが無いか再度全てを確認してから、身だしなみを整えてひとりさんを迎えに行きます。

 

「ひとりさん! 誕生日、おめでとうございます!」

「あっ、ありがとうございます……花束?」

「はい。薔薇の花束です。薔薇は人に贈る際に本数で意味が変わるのですが、今回は最愛を意味する11本の花束を用意しました」

「あっ、そっ、そうですか……しょっ、しょっぱなからテンションが……わっ、私今日大変なことになるのでは?」

 

 本音を言えば「何度生まれ変わってもあなたを愛する」という最上位の意味を持つ999本の花束を用意しても、私のひとりさんへの愛は表現しきれないのですが……まぁ、さすがにそんな本数を渡されても困るでしょうし、片手で持てる11本の花束にしておきました。

 ひとりさんがその花束を一度自室に置いてきたあとで、私と一緒に車に乗って予定通り私の家に向かうこととなりました。

 

「……あっ、あの、有紗ちゃん? きっ、聞くのが怖いんですが……いったいどれほどの用意を?」

「ああ、その辺りは安心してください。ひとりさんが派手なパーティなどを好まないのは重々承知しているので、基本的には私とふたりで過ごすような予定になっています」

「あっ、そっ、それなら少しは安心です」

「いちおう予定としては、着いたあとに早速ですがプレゼントを渡そうと思います」

「いっ、いきなりですね……そっ、その……結構前から準備してたんですか?」

「はい。6月には準備を始めました。特に誕生日プレゼントの手配にかなり時間がかかったので……お母様のコネなども使わせてもらって、なんとか半年ほどで用意することができました。本当に間に合ってよかったです」

 

 早くプレゼントの詳細を語りたいという気持ちもありますが、ここはグッと我慢しなければなりません。やはりサプライズというのは重要ですしね。

 ただ、後回しにするほど我慢できる自信もないので、家に着いたら早々に渡す予定ですが……。

 

「……あっ、有紗ちゃんが用意するのに半年かかる? しかも、クリスティーナ・フラワーのコネを使う必要がある品? あわわわ……」

「まぁ、それは着いてからのお楽しみということで……飲み物も用意していますので、家に着くまでは雑談でもしましょう」

「あっ、はい……楽しみというか……怖いというか……」

 

 とりあえず、ひとりさんの家から私の家まではまだしばし時間がかかりますので、ゆっくりと雑談をしながら行くとしましょう。

 

 

****

 

 

 家に到着したあとは、さっそくひとりさんに私の部屋に来てもらいました。

 

「ひとりさん、こちらです」

「あっ、えっと、そっちってピアノのある部屋ですよね?」

「はい。そちらに用意しています」

 

 ここまできてもったいぶるつもりもなく、プレゼントを用意している部屋にひとりさんを案内します。プレゼントは部屋の中央に分かりやすく置いてあるので、ひとりさんもすぐに気付きました。

 

「……え? あっ、布被ってるけど、あの形……ぎっ、ギター?」

「はい。いろいろ考えましたが、あって困るものではないでしょうし、ひとりさんにもここぞという時に使う用のギターがあってもいいと考えました」

 

 あと、いまでこそひとりさんは2本のギターを持っていますが、プレゼントを考え始めた際にはお義父様から借りているギターのみという話だったので、初めてのひとりさん自身のギターになるのではという思惑もありました。

 まぁ、それに関しては文化祭の一件で新しいギターを購入してしまいましたが、ギタリストのひとりさんにとって何本あっても困るものではないですし、差別化もできます。

 

「こっ、ここぞという時に使う? まっ、まさか、ハイエンド……」

「ハイエンドといえばハイエンドですね。ひとりさんがお義父様から借りていたのは、Gibson(ギブソン)のレスポールカスタムでしたが、今回用意したのはGibson、Fender(フェンダー)と並ぶ3大エレキギターメーカーとも言われるPaul Reed Smith(ポールリードスミス)のギターです」

「あわわわわ……ぜっ、絶対高いやつ……あっ、そっ、そういえば、半年かかったって……」

「はい。今回はプライベートストックを利用して製作したので、どうしても時間がかかってしまいましたね。本当に間に合ってよかったです」

「ぷっ、ぷぷぷ、プライベートストック!? そっ、そそ、それって、特注のカスタムオーダーメイドなんじゃ……」

 

 PRSのプライベートストックは有名で、ギタリストなら憧れる最高級のオーダーメイドギターです。ただ、その最高級品質と人気により1年以上の待ちもよくあるのですが、今回はお母様のコネで優先してもらえたので無事に誕生日に間に合いました。

 ひとりさんもプライベートストックに関しては知っているようで、明らかに驚愕したような表情を浮かべていました。そんなひとりさんの前で、ギターにかかっていた白い布を外します。

 

「はい。なのでこちらは、私がひとりさんに合わせて考えてオーダーメイドで製作したギターで、ひとりさんの演奏の癖や好みをほぼ完全に把握したうえで製作できたと思います」

 

 なので、発注を行ったのが6月でした。ひとりさんの演奏の癖や好みを完全に把握できたのがその頃だった関係ですね。

 

「……凄い……かっ、カッコいい……」

「いちおうデザインとしては、ひとりさんの好む黒色をベースに、ひとりさんの色のピンクと、私の色のシルバーを合わせた模様にしています」

 

 他にも細かな拘りはあり、いろいろと説明をしていると、ひとりさんは目をキラキラと輝かせてギターを見ていました。

 

「すっ、凄く、嬉しいです……けっ、けど、これ、特注って……凄く高かったのでは?」

「ああ、いえ、とはいっても250万程度ですよ」

「にひゃっ!? あばばばば……ぜっ、全然程度なんてレベルでは……うっ、うぅ、ほっ、本当に貰っていいんですか?」

「もちろんです。というより、細部にわたってひとりさん専用になるように調整して作っているので、むしろ受け取ってもらえないと困ってしまいますね」

「あぅ……あっ、ありがとうございます」

 

 ひとりさんは喜びと戸惑いが混ざったような表情で恐る恐るギターを手に取り、構えてみました。

 

「よく似合っていて、とても素敵ですよ」

「あっ、えへへ……ありがとうございます」

 

 戸惑っていてもやはりギタリストというべきか、実際に手に持ってみると喜びが勝るようで、ひとりさんは目を輝かせてギターの具合を確かめています。

 そして、新しいギターを手に入れたのなら演奏してみたいと考えるのが必然でしょう。

 

「ひとりさん、さっそく演奏してみてはどうでしょうか?」

「あっ、そっ、そういえば……有紗ちゃんの家にアンプとかがあったのは、このためだったんですね」

「ええ、その通りです。あの時はまだギター本体は届いてなかったのですが、アンプ等は事前に用意していたので……」

 

 ひとりさんが以前私の家に泊った際には、まだギターは届いていませんでした。じいやに隠してもらったのはもうひとつのプレゼントですね。そちらに関しては、ひとりさんが新しいギターの演奏感を確かめてからにしましょう。

 

 少しして準備を終えたひとりさんがギターの演奏を始めました。それは、初めて扱うとは思えないほど素晴らしい音色でした。PRSのギターは最高峰のテクニカルギターとしても有名なので、ひとりさんの演奏技術をいかんなく発揮できるギターとも言えます。

 

「……すっ、凄いです。すっごく手に馴染むというか、演奏しやすくて……たっ、楽しいです」

「ふふ、喜んでもらえたなら嬉しいですが……実は、もうひとつプレゼントを用意しているんですよ」

「え? まっ、まだほかにも?」

「はい。とはいっても、こちらは品物というわけでは無いのですが……これです」

 

 ひとりさんの言葉に答えつつ、私は離れた場所に置いていたもうひとつの品……布をかけていたものを移動させつつ、布を取りました。

 

「ッ!? あっ、そっ、それ……キーボード?」

「はい。以前ひとりさんときくりさんで3人で路上ライブをした際、私はキーボードに不慣れで最低限のサポートしかできませんでした。なので、同じような機会があった時にひとりさんを完璧にサポートできるようにと、アレ以降キーボードもこっそり練習していたんですよ」

 

 実際当初は特にプレゼント云々は関係なく、同じ状況になった際にひとりさんの演奏をしっかりサポートできるようにと練習をしていたのですが、後々になってこれをもうひとつのプレゼントにできたらと思うようになりました。

 

「え? あっ、じゃっ、じゃあ、もうひとつのプレゼントって……」

「はい。もうひとつのプレゼントは演奏ですね。ひとりさんの手には新しいギターがあって、幸い時間もたっぷりあります。なので、私とのセッションは……いかがでしょう?」

「あっ……はい! うっ、嬉しいです! 本当に、凄く、凄く嬉しいです! まっ、また、有紗ちゃんのキーボードと一緒に演奏したいってずっと思ってたんで……」

「ふふ、そんなに喜んでもらえると準備したかいがあります。では、さっそくやりましょうか、結束バンドのオリジナル曲や最近の流行曲も含め一通り演奏できますので、ひとりさんの好きな曲をセッションしましょう」

「はい!」

 

 ひとりさんは本当に喜んでくれたみたいで、私の言葉を聞いて眩しいほどの笑顔で頷いてくれました。

 

 

 




時花有紗:ついに待ちに待ったぼっちちゃんの誕生日ということで、しょっぱなから非常にハイテンション。ひとりのために特注ギターを用意して、キーボードも練習していた。

後藤ひとり:前からたびたび、また有紗のキーボードとセッションしたいと考えていたこともあって、もの凄く嬉しそう。やっぱりなんだかんだでギターの演奏が大好きである。そして、ハイエンドどころか特注オーダーメイドのギターを入手。
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