唯我独尊自由人の弟は強欲だった件   作:あもう

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なんか書きたくなったのでやり始めました。暖かい目でお願いします。


プロローグ

4月1日、俺はいつもの様にお気に入りの目覚まし時計のアラームを止めて布団から出て顔を洗う。

 

我が家は無駄に広いので洗面所まで多少歩く事になるのだがそれが意識をかえって覚醒させる。朝のルーティーンである。

 

「ふぅ……。いよいよだな。」

 

今日は国主導である『東京都高度育成高等学校』へ双子の兄と共に入学する日だ。もっとも兄貴は自由人なので何処に行っても我が道を貫き通すのだろうが。

 

俺は顔を洗い終えると修練室に入り坐禅を組む。修練室と言うのは精神統一をしたり筋トレをしたりする部屋だ。ヤケに重厚感のある鉄製の扉を開けると、先客が右手の人差し指1本で逆立ちをしていた。

 

「おはよう兄さん。相変わらず起きるのが早いね。」

 

先客は自分の双子の兄である。輝くような金髪とアスリートのように美しい筋肉美は汗に照らされてツヤツヤと光っている。

 

「おはよう七助、朝日に照らされている私は美しい、そうは思わないかい?」

 

「うん、今日も兄さんは美しいね。俺は今日は坐禅を組ませてもらうね。」

 

「坐禅か……私も坐禅を組むとしよう。自分の心と向かい合う私も美しいのだからね。」

 

俺の兄さん、高円寺六助は近年稀に見る変人であり、同時に十年に一人の天才である。類稀なる身体能力、学力、知性、判断力、マネジメント力からマナーまで、何から何まで兼ね備えた天才であり、行く行くは我が家、高円寺コンツェルンの社長が約束されており、既に会社のホームページでは次期社長として公開されている。

 

そんな兄さんを一言で表すならば「太陽」である。兄さんは常にストイックかつポジティブであり、常に周りを明るく照らしている様に感じる。本人にその気は無いだろうが。

 

そんな兄さんのたった一つの欠点は自分至上主義な所だ。これに関しては何を言っても治らないし治ることも無いだろう。父さんも諦め気味だったし……。

 

兄さんは自分を美しいと信じて止まない。実際顔も整っていて筋肉も美しいので美しいのだが、兄さんはそれ故に自分の美しさ以外に滅多に興味を持たないのだ。俺は本人がそれでいいならそれでいいと思っている。

 

残念な事に俺は勉強や運動で兄さんと勝負しても3回やって2回は負けるだろう。だが勿論、兄さんと違って自分の事を美しいと思ったり、自分に酔いしれたりはしない。というかこんな兄を持つと出来ないのだ。この悩みは高円寺六助という完全生命体を兄に持たなければ分からないだろう。

 

「六助お坊ちゃま、七助お坊ちゃま、朝ごはんの用意がそろそろ出来ますのでシャワーを浴びて食堂へいらしてください。今日は東京都高度育成高等学校の入学式で御座います。」

 

「わかった。ありがとう松尾。」

 

「私はそのまま朝食に行くとしよう……今の私は美しいからねぇ!」

 

俺は執事の松尾に言われた通りにシャワーを浴びに浴場に行くが兄さんはそのまま行くらしい。兄さんの応対に苦戦する松尾を横目に見ながら俺はシャワーを浴びる。

 

浴場の鏡には自分の姿が写っている。兄さん程では無いがアスリートの様に筋肉美を感じさせる肉体、オパールの様な銀色の髪、整った顔立ちに180近くある身長。こうしてみると俺も中々美しい部類なのでは無いだろうか、なんて思ってしまうのは兄の影響かもしれない。

 

俺はそのままシャワーを出て食堂へと向かう。食堂には既六助兄さんと弟の八助、三助父さんに一叶母さんが座っている。どうやら俺が最後らしい。

 

「六助と七助は今日から3年間会えないのか……寂しくなるな。」

 

席に着くや否や珍しく父さんがそんな事を言い出した。柄にも無い。

 

「その分沢山の学びを経て帰ってきたいと思います。」

 

「私は何処に言っても美しいから大丈夫だよ父上。それよりも早くご飯にしたいねぇ。」

 

相変わらずだな兄さんは。兄さんの言葉は何処に行っても大丈夫って言う不思議な安心感を感じさせてくれる。

 

「僕も兄様達の様に頑張って二年したら東京都高度育成高等学校に行きたいです!父上!」

 

俺の弟八助は俺と年が2つ離れている。若い頃の兄さんのような肉体美はまるで若い頃の兄さんみたいだ。違うのはブロンズの髪ぐらいか。

 

「そうだな……私もあの学校の出だが…一つだけアドバイスをしよう。あの学校では何が起こってもおかしくないと思え。常に高円寺家の末裔として堂々毅然とした振る舞いをしろ。必ず無事に卒業して来い。」

 

「わかりました。父上。」

 

「任せたまえ父上。」

 

堂々毅然とした振る舞いは兄さんにとってはなんの問題も無いだろう。恐らくは俺に向けて言った言葉か。

 

「それと六助、七助、卒業後には経験を積むためにお前達の為の支社を用意しておく。高校で気に入った人間がいたら雇っても構わん。」

 

「まぁそんな人間に会うとは思えないがね…。一応心の隅に止めておくよ。」

 

「分かりました。」

 

将来的に会社を継ぐのは兄だろうが、俺もナンバー2のポジションにはなるだろう。そして父さんがそう言うって事はそれだけの何かがあの学校にはあるという事だ。

 

会話もそれきりで、俺達はそのまま朝飯のフォアグラのムニエルを食べ終える。父上にしては珍しい空気だった。それ程までにこれから行く学校では大変な事が待っているのかもしれない。

 

俺達は服を着替えて、バス停まで歩く。それにしても初めてだなバスに乗るのなんて……楽しみで仕方無い。

 

「バスが楽しみなようだね七助、だけどそこまで期待する程のものでは無いよ。」

 

「兄さんは乗った事があるの?」

 

「まぁ何度かねぇ…所詮は庶民の乗り物さ。」

 

そんな事を話していると俺達はバス停に無事に着いた。バスは5分もしたらバス停に着き、俺達はそのままバスに乗り、近くの席に2人で座った。兄さんは手鏡を見ながら髪をとかしていたが、生憎俺は自分に美を見出すタイプでも無いので良い株のサーチでもしよう。

 

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「ちょ…あ…た…!席…譲ってあげようとは思わないの?」

 

ん?どうやら俺は気付かぬうちに寝落ちしていたらしい。目の前のOLは俺、いやこれは兄さんに怒っているのか?

 

 

「実にクレイジーな質問じゃないか、レディー。そんな事をして私になんのメリットがあると言うんだい?」

 

兄さんはさも当然という風に言うが、兄さんの事を知らない人間からすれば煽りに聞こえるだろう。事実目の前の賞味期限ギリギリっぽいOLはブチギレてるし。

 

 

「君が座っているのは優先席なのよ。お年寄りに譲るのは当然でしょう?」

 

優先席?確かお年寄りや妊婦が座る席の事か。普段バスや電車に乗らなさすぎて一瞬何の事か分からなかったぜ。

 

 

「それならば私が譲る義務は無いねぇ。優先席を譲るのは強制では無いのだからねぇ。」

 

兄さんの言う事には一理ある。それに兄さんは何があってもこの感じだと譲らないだろう。相手もそれを察したのか標的を俺に向けて来る。

 

「じゃあ隣に座ってるアンタ!アンタが譲りなさいよ。」

 

どうやら兄さんのせいで溜まったフラストレーションをオレに向けてきたらしい。女ってのはヒステリックだと兄さんも言っていたな。

 

「初対面の方をアンタ呼ばわりするのは品性を疑われるので辞めた方がいいかと思います。それと他人に八つ当たりするのも良くないですね。」

 

「うるさい!いいからさっさと譲りなさい。」

折角教えてあげたのに更にヒステリックに切れるとは……学習能力は低そうだな。周りからも迷惑そうな目線を向けられてるし。

 

「周りの方々も迷惑に感じて居るみたいですし騒がないでください。それと席を譲って欲しい場合は貴方ではなくお婆さんが話に来るべきでは?見たところ知り合いでも無いようですし、本人の意思も確認せず部外者が首を突っ込むのは如何なものかと思いますよ。」

 

「……っ!!」

 

「私は大丈夫だから……ありがとぅねぇ……。」

 

ブチ切れそうなのを我慢したOLをお婆さんが慰める構図となってしまったが、これでは俺達が悪役みたいだ。こういう人間が痴漢冤罪とかをやるんだろうなぁ……。

 

「あの……私も、お姉さんの言う通りだと思うな。」

 

話ももう終わりかと思った頃、俺達と同じ制服を来た女の子が話し掛けてきた。正直むっちゃ可愛い。年上派の兄さんと違って俺は同学年以下派なので心にぶっ刺さる。

 

「今度はプリティーガールか。どうやら今日の私は思いの外、女性運があるらしい。だが私の意見は変わらないねぇ。」

 

兄さんは年上派なのでプリティーガール、直訳して(外見が)可愛いなんて意味でそう言うとは思えない。となると外見以外。性格なんかを指している筈だが兄さんは何に気付いたんだ?

 

「お婆さん、さっきからずっと辛そうにしているみたいなの。席を譲ってあげてもらえないかな?その、余計なお世話かもしれないけど、社会貢献にもなると思うんだ。」

 

成程そう言うタイプか。確かに言われて見れば要所要所であざとさを感じるな。話し方や仕草もセールスマンや詐欺師のそれに近い。となると次はなんで彼女がそんな仮面を被る生活をしているのかだな。

 

 

「社会貢献、か。中々面白い意見だ。確かにお年寄りに席を譲ることは、社会貢献の一環かもしれない。しかし残念だが私は社会貢献に全く興味が無いのだよ。私はただ私が満足であるならばそれでいい。

 

それともう一つ。このように混雑した車内で優先席に座っている私を槍玉に挙げているが、他にも我関せずと座り込み沈黙を貫いている者は放っておいていいのかい?

 

お年寄りを慮る心があるのなら、そこには優先席か否かは瑣末な問題でしかないと思うのだがねぇ。」

 

まぁ兄さんはそう言う人だ。他人の興味は全くもって0。他人に興味を持ちまくる俺とは対極だろう。そして目の前の彼女は知性的にはは少なくとも悪くなさそうだな。恐らくは仮面を作ったりする事で承認欲求を満たしたり世間的評価を上げたいタイプなのだろう。それにしてもこの年にしちゃ上手いもんだな。

 

「それじゃあ…貴方はどうかな?」

 

そして俺の趣味の一つは他人を精神的に嬲ることである。この手のタイプの仮面をテクノブレイクするのも一興だが先は長い。後に楽しみを持つ為にも嬲る方向性で行こう。

 

「お婆さんが望んで居らっしゃるのでしたらお譲りします。ですがそう出ないのでしたら貴方のそれはただの自己満足だと思いますよ。お婆さんはあんまり騒動を大きくしたくないみたいですし。」

 

ありがた迷惑という言葉がある。目の前のお婆さんに取っての最優先事項はこの揉め事を収束させることだ。その為なら不利益を多少被る事も覚悟の上。それを個人の価値観で勝手に優先席を動かすのは如何なものか。

 

「えっと……確かにそうかもしれないけど、でも流石にこのままって訳には……。」

 

「お婆さんはどうしたいですか?」

 

結局大事なのはお婆さんの意見そのものだ。勿論お婆さんから頼まれれば譲るべき事だろう。

 

「私は……座れたら良いけどそこまでして座らなくてもいいからねぇ……気持ちは有難いけどあんまり争わないでおくれ。」

 

やはりそうか。俺は自分の予想通りだった事に内心安堵しそのまま席を譲る選択をした。勿論別にお婆さんの為を思って行動した訳では無い。ただ目の前の少女が承認欲求を満たせなくする為である。今も表向き笑顔で取り繕っているが内心はキレているに違いない。愉悦を感じる。

 

「そうですか。それならばどうぞ。優先席だと気付かなかった俺にも非はありますから。」

 

「……いいのかい?」

 

お婆さん、というか皆驚いた視線を向けてくるがそんなに驚くべき事だろうか?

 

「はい。大事なのは本人が本当はどう思っているかですから。お婆さんの気持ちを自分勝手に解釈して押し付けた挙句、騒いで他人に迷惑を掛けるなんてのは、良い格好したいだけの自己満足ですしね。」

 

後半はお婆さんでは無くOLとプリティーガール(仮)を見ながら発言する。乗客の大半は優先席を譲る譲らないでは無く、騒々しい事に腹を立てていた。大半の乗客は騒々しいのが終わった事に安堵しているだろうが、OLやプリティーガール(仮)に対しての感情等精々面倒事を作ったヤツ程度だろう。こんなモノでは承認欲求を満たすなど不可能だろう。

 

まぁぶっちゃけ自分勝手な解釈なんでどうでも良くて、コイツらの腸が煮えくり返ってる心の奥底が見たいだけなのだが。プリティーガール(仮)は誤魔化すのが上手い為分からないが、OLは今にもぶち切れそうである。大変愉悦感を感じられて美味である。

 

「相変わらず悪趣味だねぇ七助は、どうもその手合いの趣味だけは美しさを感じられない。」

 

「兄さんは美しさを求めている見たいだけど俺は愉悦感を求めて居るからね。仕方無いよ。」

 

別に俺は他人を嬲ったりプライドをぶっ壊したり他人を服従させるだけに愉悦感を感じる何処ぞの愉悦部さんとは違う。美味しい物を食べたり、気持ちよく眠れたり、可愛い女の子を見たり、他人から尊敬の目で見られる事でも俺は愉悦感を感じられる。愉悦感とは言っているが欲に近いのかもしれない。

 

「愉悦感と言うと聞こえはいいが欲、つまりは醜さだと私は思うがねぇ……。」

 

「醜さにも醜い醜さと美しい醜さがあると思うな。俺が求めているのは美しい醜ささ。醜い美しさや醜い醜さは醜いし美しい美しさは僕には眩し過ぎるからね。」

 

美しい美しさだけを求めているのが目の前の兄さんだ。そう言う意味では相容れないのかもしれないな。

 

そのまま後に特に何が起きる事も無く、俺達はそのままバスを降りていった。そしてそのまま門を潜り、俺達は桜並木の道を通っていく。それにしてもかなり広い場所だな…東京ドーム何個分だ?

 

「あの、席を譲ってくれてさっきはありがとう。私は櫛田桔梗って言うんだ。」

 

「私は先に行っているよ七助。それにしてもこの学校は……まぁ多少は退屈せずにすみそうだね。」

 

それだけ言い残して兄さんは先に行ってしまった。それにしても兄さんは一体何を見つけたんだ?

 

「気にするな、俺の名前は高円寺七助、さっきの金髪の人は俺の双子の兄さんの高円寺六助だ。」

 

俺は挨拶だけ残してそのままクラス掲示表の元へ向かう。その道中に3つ程監視カメラを確認したがこの敷地にその割合だと恐らくは500以上ある事になる。防犯と言うにはあまりにも手が込みすぎて居ないか?

 

「あ、ちょっと待って、ここで会えたのも何かの縁だし一緒に行こ……え……歩くの速いよぉ……。」

 

この手のタイプは恐らくは傍若無人に扱うのが一番嫌だろう。俺はそのまま言葉を無視してスタコラサッサと掲示板へ向かった。俺のクラスは…Dか。どうやら兄さんやさっきの櫛田も同じクラスらしい。

 

「はぁ…はぁ……高円寺君だと紛らわしいから七助君…って呼んだ方がいいかな。クラスは……だから待ってよぉ……。」

 

俺は櫛田が掲示板に追いついて来たのを確認して教室へと歩き出す。別に櫛田が嫌いな訳では無い。寧ろ好きだ。ただ、櫛田を無視する事で櫛田がストレスを貯める姿を想像して楽しんでいるだけである。

 

俺は櫛田がいい玩具になる事を確信しながら教室へと向かうのだった。

みたいキャラは?

  • 綾小路
  • 櫛田
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