何故か続いてます
見えざる帝国の中央に位置する
「おかえりなさいませ、陛下」
ユーハバッハはエス・ノトを一瞥すると窓枠に指を這わせ、人差し指と親指を擦る
「埃一つないとは良い働きだ」
「もったいなきお言葉を…」
銀架城のエントランスは星十字騎士団は勿論のこと、陛下であるユーハバッハも必ず通るところなので掃除が行き届いていると直接ユーハバッハから褒められると言うことからエントランスの清掃は、連日取り合いとなっていたりする。現在すまし顔をしているエス・ノトだがそのマスクの下では口元をニヤニヤとさせているだろう
「現在の星十字騎士団の所在は分かるか?」
「はい、最高位はバンビエッタ、リルトット、ミニーニャ、キャンディス、ジゼルを連れ遠征に出陣いたしました。あっ…それと『やることがなくなった』と言ってバズビーも最高位について行きました。他の者であればすぐにでも召集可能かと」
エス・ノトはユーハバッハより聞かれた星十字騎士団の所在を懐から取り出したメモ帳をパラパラとめくり報告した
「そうか…であればグレミィは
「はい、通信機を三機ほど
「そうだな…現在召集可能な星十字騎士団を広間に集めさせよ」
「かしこまりました」
エス・ノトはユーハバッハにお辞儀をした後、飛廉脚にてその場を後にした
◆◆◆
真っ白な長机に豪奢な椅子を備え付けた全星十字騎士団が座れる食卓は、いくつかの空きを残し全員が着席していた
「最高位抜きで全員集結なんて珍しいわね」
最初に口を開いたのはドリスコールであり、剣術大会が終了してすぐの帰還である。その言葉には同じくブシン祭終了直後に召集がかかったベレニケとツァンも続く
「うーんと〜、バンビちゃん達もいませんわ〜」
ドリスコールに応えたのは言葉の所々が間延びした喋り方が目立つ長いピンク色の髪を携え、星十字騎士団の真っ白な隊服を羽織り、彼女の寝巻きであるネグリジェがあらわとなっただらしない格好の女性
『
「陛下も余程、急ぎの用事なのでしょう」
同じくドリスコールに応えたのは真っ白な長い髪を携えた雪のような白い肌を保つ赤目のアルビノの女性
『
「まぁ、陛下の事だしまた何か考えてるんじゃないかな?」
グエナリエに続いたのは金髪の猫っ気が特徴的でフードを被った少女
『
「集めたのはエス・ノトですし、何か聞いてたりするんじゃないんですかね?」
エス・ノトに話を振ったのはモノクルをつけた落ち着いた印象を受ける茶髪のポニーテルの女性
『
シャズ・ドミノに話を振られたエス・ノトは首を横に振り、シャズの問いに答える
『
「そういや、バズのやつもいねーな」
やや口調が荒く、乱暴な印象を受ける褐色のサイドテールの少女
『
「ん、バズ、付いてった、ユーゴちゃんに」
ジェロームに答えたが、説明は途切れ途切れで言葉足らずな印象を受けるのは見えざる帝国にて唯一の獣人である黒い猫耳と癖っ毛が特徴的な少女
『
「そろそろ陛下がいらっしゃる。静かにするように」
普段は癖のあるメンバーをまとめている最高位であるハッシュヴァルトが不在のため、星十字騎士団をまとめようと責任感が強いジェラルドが声を発する
『
「おお、そーだ、そーだ」
片腕を上げてやる気の感じられない同意をジェラルドに向けたのはアスキンである
『
「君はもう少し
額に手を置きアスキンにやれやれと呆れた風に声をかけたのはリジェ・バロである
『
そして声は発さないがその場にちゃんといるペルニダとなる
『
ハッシュヴァルト、バンビーズ、バズビー、そしていつ交代してもいいように待機しているロイド・ロイド姉妹を除くと、周りの空気に馴染めないのかそわそわとした居心地が悪そうにちょこんと椅子に座っている赤髪のツインテールの少女を入れて現在の見えざる帝国全戦力となる
そしてこの少女は星十字騎士団から見てもかなり新しい新顔となっており、ほとんど喋ったことがない者も中にはいるくらいである
『
城の雰囲気に合わせて付けられた年代物に見える入り口の扉がギギギと音を立て開けられるとユーハバッハが広間に入ってきて一番奥のいわゆる誕生日席に座る
「待たせたな…それでは今後の方針を話すとしよう」
◆◆◆
「まず初めに質問よろしいでしょうか?」
やはりいきなりの召集であったので生真面目らしいジェラルドから質問が飛んできたので、その質問に私は頷いて肯定する
「今後の方針について話されるのはよろしいのですが、最高位_ハッシュヴァルトと他のメンバーが不在の状態でお急ぎされるほどということでしょうか?」
「そうだ_これは我が愛すべきお前達の生命にも関わる重大な案件だ」
やはり命の危険となったら星十字騎士団でもザワザワとなるな。中には『愛すべき』という単語に反応している者もいるが、本当のことなので訂正するつもりもない
「単刀直入に言おう、私は
全知全能の能力で未来を視たことによりその信憑性が増し、飄々としていることが多いアスキンですら、その言葉を重く受け取っていた
「このままの戦力では我々は絶対ではない_そこで王都並びにそれ以外の国から殺人を犯したものまたはそれ以上の重罪を犯したものを
「ハッ!陛下のお力になれるのなら、喜んでこの身を削りましょう!」
ドリスコールが立ち上がり胸に手を当て敬礼する。確かにこの場では気が引き締まっていいな。ハッシュヴァルトが遠征から帰ってきたらそれとなく褒めておこう
「ドリスコールとベレニケは別行動を取ることが多くなる。故にツァンの負担も多くなるだろう。そこでドリスコールの護衛として新たにアスキンを同行させる。ツァンはベレニケを変わらず護衛するように」
「「はい陛下、仰せのままに」」
アスキンとツァンが敬礼をして了承してくれる
元々管理が行き届かなくなると危惧して聖兵の導入は見送っていたが、未来で視た光景では聖文字で強化されても我々の被害がゼロでないというのだから、シャドウガーデンも侮れないだろう。むしろ侮っていたからこその被害であったのかもしれない
故に聖兵は数による面での制圧に加えて、記憶の改ざんを行い
「新たな兵士の編成はジェラルドに一任させる。期待してるぞ」
「はい陛下、仰せのままに」
責任感の強い彼女なら雑兵だろうとある程度役には立つ兵へと育ててくれるだろう…いかんな悪役のような思考となってしまっている_今更か
「そして最後に、ここからが重要な案件だ。私の愛すべき配下を未来で亡き者にした者たちだが_その者達がシャドウガーデンであることが判明した。故に本腰を入れ、かの者たちを調査することとする。アズギアロ・イーバーン、出番だ」
「はっはいぃ、陛下ッ…」
私にいきなり呼ばれて直立不動で立ち上がる赤毛の少女、アズギアロ・イーバーン
彼女の能力は『
諜報においてこれ以上ない最高の能力とも言える。この能力のせいで彼女を見えざる帝国から出すことはないので、どうにか不満がないようにしなければならないのが玉に瑕だな
彼女が口頭により、自身の能力を説明すると彼女を称賛する声が溢れかえる。無論えげつない能力ではあるがそう言った言葉は聞こえてこない、普通に自分の能力の方がえげつないことが多いからであり、ブーメランとなってしまうからだな。特にリジェなんてヤバい、名前からして万物貫通なんだからヤバくないわけない
ただリジェだけに関して言えば試しに聖文字を与えた時、あわよくば万物貫通が目覚めてくれればと思い聖文字を"X"にしたのだが、本当に目覚めてくれるとは思わなかった。ちなみにリジェはハッシュヴァルトの次に見えざる帝国陣営に加わったメンバーであり、お試し感覚で聖文字を最初に与えたこともあるので、「最初に陛下より能力を授かった」と自信満々に言えるだろう
そして彼女の能力を使うため、ブシン祭で感じた違和感を頼りに
すると彼女の能力の影響により一つのモニターのような映像が空中に映し出され、その付近には縦長のモニター画面が人の顔と名前を映して幾重にも連なって反映される。イメージ的に未来の世界の宙に浮く謎のAR技術のモニターが一番近いだろう
そこに映し出される顔と名前を照合させていくと…そうか、
「シド・カゲノー、お前がシャドウだったか…」
◆◆◆
お疲れ様でした
幹部勢揃いの回でしたね。でも続きどうしましょう?ノリと勢いで書いてしまったので全く次の考えがないんですよね…割と毎回ではあるんですけどね…
能力っぽいものが普通に漢字だけでなんとなくわかっても意外と想像が膨らむんですよねぇ。あとこの回を見ていただくとわかりますが、組織の幹部が二つ名と一緒に紹介されるパターン好きなんですよ
ちなみにこの星十字騎士団の能力はなんとなく漢字から、防御寄りや精神系や過去が関連しそうなものが多いのは悪魔憑きという過去があったからですね。ぺぺの『ザ・ラブ』は割と露骨ですが、上手く設定に組み込めたと思ってます